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黄金の双剣士  作者: ひろよし
三十章:学園~フォレサージ森国
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第593話:そしてレキ

「折角だ、度肝を抜いてやれ」

「いいの?」

「ああ、多少壊しても修復するだろうし、その方が生徒達も喜ぶだろう」


フラン達はフロイオニア学園の、つまりは純人族の実力を見せる為に披露した。

無詠唱魔術を伝えたのがフロイオニア王国の魔術士である為、今更純人だからと見下すような者はいないだろうが、それでもフラン達が無詠唱魔術を見せる事で無詠唱魔術は何もレキにしか出来ない魔術では無いと言うことが十分伝わっただろう。

平民のユミ、同じ森人のファラスアルムまでもが使って見せたのだ。

フォレサージ学園の生徒だって、頑張れば無詠唱で魔術を放てるようになると思わせるには十分。

つまりはお手本のようなもの。


これから披露するのは生徒達が目指すべき頂。

どれほど研鑽してもたどり着けないであろう、純人や森人と言った種族の違いすらどうでも良くなるほどの。

フォレサージ森国国王カミルサラルスが感激し、ライカウン教国が崇敬の対象にした、この世界最強の存在であるレキの魔術だ。


『お、おお・・・おおぉ~~~!!!』


的の前に立ち、レキが魔力を高める。

全身から吹き上がる黄金の魔力がレキを、そして演習場を染め上げる。


「ああ・・・これが」

「レキ様の魔力・・・」


既に感嘆の声を漏らし始める生徒達。

中には感涙する者や早くも意識が遠のき始める者すら現れ出す。


そんな周囲にお構いなしに、レキは高めた魔力を用いて魔術を放った。


「えいっ!

 えいっ!

 えいっ!

 えいっ!!」

『っ!!!!』


レキが放ったのは当然上位系統。

それも、真紅系統グリム・ランス、紺碧系統アズル・ランス、深緑系統ダグン・ランス、雄黄系統オプリ・ランスの四つの魔術。

それをレキは連続で、矢継ぎ早に放って見せた。


無詠唱、上位系統、四系統全て。

この時点で既にフォレサージ学園のどの生徒を上回っていると言うのに、それを順に、矢継ぎ早に放つレキ。

もはやフォレサージ学園の生徒達に声は無く、ただただ唖然と魔術を放つレキを見ているしかなかった。


「えいっ!

 えいっ!

 えいっ!

 えいっ!!」


炎の矢が魔木の的に突き刺さり、燃え上がる直後に氷の槍が凍てつかせ、通常なら天より降り注ぐ雷の槍がレキの手から放たれて凍てついた炎の的を粉砕し、更には地に手をつかねば生じないはずの黄雄系統、オプリ・ランスが遠距離から地より生み出される。


新たに生まれた石の槍、それを的にレキが再び四系統の魔術を放つ。

いくつもの炎の剣を投げつけ、突き刺さり爆ぜる石の槍を氷の柱に閉じ込める。

目視出来ない速度の雷の矢がいくつも降り注ぎ、天より岩の塊が氷の柱を粉砕した。


その岩の塊を的にレキが再度魔術を放つ。


地より吹き上がる炎の柱が余すところなく岩の塊を包み込み、燃え上がるそのまま凍り付く。

その内側から紫電が走ったかと思えば氷の柱がひび割れ、破裂するかと思われたその瞬間石の壁が四方を囲み、その内側から轟音が鳴り響く。


魔術演習場で繰り広げられる非現実的な光景。


それに反して、見守る生徒達に声は無く、息遣いすらも聞こえなかった。

誰もが呼吸すら忘れて魅了されていた。

黄金に輝くレキ。

そこから放たれる数多の魔術は、創世神話における創生神と破壊神との戦いすら彷彿とさせた。


森人の祖と言われる精霊。

自分達の遥かな祖先もまた、あのような魔術を行使してきたのだろうか。


そんな感想すら抱かせる光景。

やがて・・・。


「終わりっ!」


ありとあらゆる上位系統の魔術を披露したレキが、最後に演習場全体に魔力を流し込み、荒れ果てた地面を元の演習場の地面へと戻して見せた。

威力や規模だけではなく、繊細な魔術をも見せつけたレキ。

それに対する周囲の反応はと言えば・・・。


「・・・ふぅ」

「あ、ファラ~!」

「・・・こんな、こんなことが・・・」

「だ、大丈夫ですか?

 ルーシャさん」


ファラスアルムが意識を失い、感激のあまりルーシャが泣き崩れる。


「ああ・・・あれが」

「黄金の輝きが・・・」

「レキ様・・・」

「レキ様・・・」


フォレサージ学園側からは感嘆の声が漏れ、誰もが感涙していた。

中にはファラスアルムの様に意識を失う者、両ひざをつき祈るようにレキを見つめる者。

他者には見せられないような恍惚とした表情で立ち尽くす者等様々。


「・・・あぁ、レキ様」


レキ達についてきたミルアシアクル達もまた、尊い物を見たような表情で心ここにあらずと言った様子。


「・・・どうしよ」

「とりあえずフラン=イオニアたちの方へ戻っておけ」

「うん」


奇妙に静まり返った演習場。

この後間違いなく大騒ぎになるだろう学園を、レキ達はレイラスの指示でこそこそと立ち去る事にした。


――――――――――


レキを最後にしたのは当然このような事態を想定しての事だが、フランやルミニア達のインパクトが薄れるからでもある。

恐らく、演習場に集った者達の中からフラン達の魔術などすっかり消え去っているに違いない。

それでもふとした時に、後日レキの魔術を思い出しながら鍛錬する時に、レキ以外の純人族でも無詠唱が扱えていた事を思い出し、より一層励む事だろう。


同族であるファラスアルムでも出来たのだ、自分達だって頑張ればきっと・・・。

そう奮起してくれることを望みつつ、一向は宿へ向かった。


大武闘祭まではまだ数日ある。

万が一のトラブルを想定し、このような場合はある程度余裕を持って移動するのが常だからだ。

その分、大武闘祭までに心身とも十分休ませる事が出来るし、フォレサージ森国の観光だってできる。


と、言う事で翌日、レキ達はミルアシアクル達の案内でフォレサージ森国の散策に出かけた。

レキ達二年生十人に加え、ミルアシアクル達、リーラやファイナ、ライカ達ライカウン学園卒業生、加えてアリル=サとリリル=ヤ達も一緒だ。


かなりの大所帯となってしまったが、下手に分散して万が一が起こらないとも限らない。


特にレキは、ライカウン教国に続きこちらでも有名人である。

容姿が広まっていなかった二日前と違い、昨日学園で大々的に魔術を披露してしまった以上、フォレサージ学園の生徒を通じて知れ渡っている可能性もある。

学生以外ならまだ大丈夫だろうが、それも時間の問題かもしれない。


そもそもレキ達は純人族の学生。

フォレサージ森国では異質であり、固まって行動すればどうしても目立ってしまう。

賢き者の多いフォレサージ森国なら、フロイオニア学園の生徒が集まっていると言うだけでレキがいると察する者もいるだろう。

そういった者への対処として、卒業生であるミルアシアクル達には頑張ってもらいたいものだ。


なお、アラン達四年生は別行動をとっている。

こちらはさほど騒がれる事も無いだろうと言う事で、アランはローザと、フィルア、ジガ、ラリアルニルスもそれぞれ自由行動をとるそうだ。

他の四年生達もまた、それぞれ思う様に行動するらしい。


なお、ラリアルニルスについては、早朝とある女子生徒が宿に押しかけ、強引に引っ張って行ったとかなんとか。

楽しそうで何よりだ。


元々知識と魔術を重んじるフォレサージ森国である。

魔術関連の店が多く、各大樹には必ず図書館のような施設がある。

ルミニアやファラスアルム、ルーシャなどは楽しめるだろうがレキやフラン達には少々物足りない。


幸い冒険者ギルドはどの街、どの大樹にもあり、見るところが全くないと言う訳では無い。

武具屋だって一応はある。

お菓子屋や服屋なども・・・。


「俺はいいよ~」

「いいえ、そうは行きません!」


相も変わらずレキを着飾る事に余念がないルミニア達である。

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