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黄金の双剣士  作者: ひろよし
三十章:学園~フォレサージ森国
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第592話:ルミニアとフランの魔術

レイラスは何も、フォレサージ学園の生徒に目に物を見せる為に提案したのではない。

彼女はフロイオニア学園の教師にしてルミニアの担任である。

何より考えるべきは教え子の事。

フォレサージ学園の事など二の次。


ファラスアルムの両親に言われ、ルミニアは自身の魔術に自信を失っていた。

レキに少しでも近づけたと思った矢先の出来事。

ルミニア自身分かっていた事とは言え、やはり第三者に言われるのは少々堪えただろう。


だが、あの魔術はルミニアの学園での研鑽が生み出した魔術。

疑似的とはいえ確かに紺碧系統、氷属性の魔術なのだ。

レキのような膨大な魔力も無く、フィルニイリスの様に長い研鑽の果てにたどり着いた魔術でもない。

僅か十一歳の子供がたどり着いた魔術。

それは称賛に値する技術であり、決して否定される物では無い。


それを教える為、レイラスはルミニアの背をそっと押しただけなのだ。


――――――――――


両の足でしっかりと立ち、目を閉じる。

精神を集中し、魔力を高める。


下は土。

武闘祭の時の様に、あらかじめ水を撒いてそこに干渉、制御すると言う手法は使えない。

とは言えそれは練習していた時と同じ。

なんの支障も無い。


やる事は変わらない。

違うのは大勢詰め掛けたフォレサージ学園の生徒の数。

そんな大勢の観客の前で、否定された魔術を披露する。


ただでさえあまりよろしくない評価を受けたばかりだと言うのに、不思議とルミニアの精神は落ち着いていた。

それはおそらくレイラスのおかげ。

あるいはレイラスの言葉で思い出した、自分がなりたい自分の姿を改めて思い描いたから。


ルミニアが扱うのは疑似上位系統。

レキの扱う上位系統に少しだけ近づいた、ただそれだけの魔術。


それでいい。

ルミニアはずっとレキの背を追いかけてきた。

その成果が少しでも現れていたなら・・・。

誰に何を言われようと、それは誇るべき事なのだ。


集中し、脳裏にイメージを描く。

杖代わりの槍を構え、その先端に魔力を集め、そして放つ。


「いきますっ!」


穂先から真っ直ぐ打ち出された水の一筋。

それが魔木で出来た的に中る直前、ギュッと槍を握る手に力と魔力を込める。

次の瞬間。


『っ!!』


打ち出された水の一筋が瞬く間に凍り付き、氷の槍へと変化した。

それだけではない。

その氷の槍は、ルミニアが魔力を込めることで長く、どこまでも長く伸びていく、やがて魔木の的を貫いた。


「あ・・・あれは?」

「上位系統?

 いや、でも・・・」

「紺碧だったけど・・・」

「青系統を変化させたのか?」

「そんな事出来るの?」


ユミの魔術に驚愕し、ファラスアルムの魔術に森人の面目をかってに取り戻した気になり、そしてルミニアの魔術に困惑する。

確かにルミニアの魔術は通常の上位系統ではない。


青系統の中級魔術、ルエ・ランス。

本来は水を圧縮、槍状に固めたのちに放ち対象を貫く魔術である。

ルミニアはそれを放つのではなく、ただひたすらに水を集め槍を伸ばし続け、的へたどり着く直前に再度干渉、氷の槍へと変化させたのだ。


ルミニアが水を氷へ変化させる為には、水に触れていなければならない。

土の上に放ってしまえば氷と成す前に土へと還ってしまう為、地に付けず真っ直ぐ水を伸ばした状態で変化させたのだ。


簡単に言っているようだが実際は非常に難しい。

何故なら、水は伸ばし続けなければ地についてしまう為、常に魔力を込め制御し続けなければならないからだ。

水を制御しつつ更に氷と成す。

分かり易く言うなら、水を伸ばす魔術を行使しながら、その上で水を氷へ変化させる魔術を同時に発動したと言う事になる。

いわば一度に二つの魔術を行使したも同然。

青系統とその上位である紺碧系統とは言え、違う系統の魔術を同時に行使するのはあのレキにすら出来ない芸当である。


もっとも、レキほどの威力があれば一発で片が付いてしまう為、必要ないと言えばそれまでだが・・・。


今、ルミニアが行った魔術制御を正しく理解できたものがどれだけいたか。

分かるのは、それを理解できた者も出来なかった者も、等しくルミニアの魔術に驚き戸惑いを隠せないでいるという事だけだった。


その後、ルミニアは黄系統の魔術も行使した。

こちらは残念ながら疑似ですら上位系統を発動できなかったが、その分ユミ、ファラスアルム、ルミニアの三名の魔術で荒れた地面を一瞬で整地して見せると言う繊細な魔術を見せ、少なくない称賛を受けた。


「次はフラン=イオニア」

「うむ!」


そして四番手。

何気に魔術の実力ではルミニアの上を行くフランの出番である。


なお、ここで言う実力は魔術の行使速度と威力が主な評価点であり、先ほどルミニアが行った制御力や繊細さは評価に加わっていない。


フランの適性は赤と緑。

どちらも中級までは難なく放てるが、上位系統には至っていない。

上位系統に至る為の制御力などが足りないのだろう。


「うにゃっ!!」

『おおぉ~~!!』


それでも王宮で、そして学園で鍛錬してきた実力は十分である。


赤系統中級魔術エド・アロー。

火を矢の形に変化させ、対象に向けて放つ魔術。

ただ火の形を変化させただけにあらず、その形に凝縮し固定し放っている。

その威力は初級魔術とはけた違いで、相手を貫くと同時に傷跡から燃焼させる殺傷能力の高い魔術だ。


フランはそのエド・アローを数十と言う数を同時に出現させ、一気に放ってみせた。

もはやアローレインと称して良いほどの数。

フランの眼前に存在した全ての的を等しく貫き、穴だらけにしただけにとどまらず、フランと的の間の地面すら穿ち燃え上がらせた。


「まだじゃっ!」


フランは前方に向けて更なる魔術を放つ。


緑系統中級魔術、リム・トルネード

風を集め渦を生じ、対象をその周囲ごと切り刻む大規模な魔術。

フィルニイリスが魔の森のフォレストウルフを一掃する際にも用いた強力な魔術だ。

それをフランはまたもや無詠唱で放って見せる。

これもまた、フランの努力の結果だ。


フランが生み出した風の竜巻は、演習場で燃えていた火を巻き込み、集め、そしてかき消してみせた。


『・・・お、おぉおぉ~~~!!!』

「お、おぉ?」


一瞬の間を空け、先程より更に大きな歓声が演習場を包み込んだ。


通常、緑系統の魔術は赤系統とは相性の関係にある。


火は風を受け勢いを増し、風は火の熱により対流を活性化する。

お互いが影響を及ぼし勢いを増していく関係。


だが、フランは風によって火を消すと言う、相殺を行ってみせたのだ。

生半可な風では火を更に燃え上がらせるだけ。

完全にかき消す為には相当な威力が必要であり、それこそ周囲一帯の空気を一か所に集めなければならないだろう。

これがどれほどの事かは、フォレサージ学園の生徒の反応を見れば分かる。

むしろ、そんな生徒達の反応に、これまで何度もフラン達の魔術を見てきたカルクやミームなどが驚いていたほどだ。


「では最後だな・・・レキ」

「うん!」


「あれがレキ様?」

「思ったより小さいな・・・」

「みて、可愛らしいお顔をされていますわ」


満を持して登場するのはレキ。

最後を飾るに相応しい出番ではあるが、フォレサージ学園側の反応は微妙だった。


レキの存在は広く知れ渡っているが、その容姿までは伝わっていないのがその理由だろう。

ここまで四人とも素晴らし魔術を披露した。

少なくともフォレサージ学園の二年生で同等の魔術を放てる生徒はいない、そう断言できるほど。

ただ、フィルニイリス以下フロイオニア王国の魔術士達が無詠唱魔術を他国に伝え始めて三年が経過し、他国にも無詠唱魔術を扱える魔術士が少しずつ現れ始めている。

とりわけここフォレサージ森国は、魔術大国の矜持もあったのだろうその人数はフロイオニア王国をも超えつつある。

王宮の魔術士達はもちろん、ここ学生が研鑽を重ねるフォレサージ学園の教師達も、学生の手本となるべく、あるいは学生に追い越されぬ様研鑽を重ね続けた結果、全員無詠唱魔術を会得したそうだ。


流石は魔術の国フォレサージ。

それでもまだ二年生のフラン達が無詠唱魔術を放って見せた事と、その練度の高さは教師達をもうならせた。

フラン達の魔術はフォレサージ学園の生徒以上、下手をすれば教師達にすら勝るとも劣らない。


それはつまりフォレサージ森国の高位魔術士に匹敵すると言う事。


レキの魔術を実際に見た事の無い者達が、フラン達の魔術こそがフロイオニア王国の最高峰と考えるのも無理はない。

噂のレキという少年も、先ほどの少女達と同等か少しばかり威力か行使速度が速いだけ。

そんな考えすらしていた教師達の内、何名かはこの後腰を抜かし、その他の教師達は感涙にむせび泣く事となる。

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