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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十九章:学園~ライカウン教国
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第566話:ライカウン教国の冒険者ギルドにて

各国の冒険者ギルドに持ち込まれる依頼には特色がある。


プレーター獣国であれば当然魔物の討伐が・・・と言いたいところだが、意外にも他の依頼の方が多い。

これは、プレーター獣国には日常的に狩りを行い、生活の糧を得ている者がいるからだ。


ミームの母親が良い例だろう。

彼女も冒険者でないにもかかわらず、日常的に狩りを行っては肉を得、素材を夫の商会に卸している。

そう言った狩人がプレーター獣国には存在している為、わざわざ魔物の討伐依頼を出す必要が無いのだ。

逆にその他の依頼、例えば素材の採取や護衛は一般人は行わず、冒険者が担っている。


フォレサージ森国なら討伐と採取に加え、魔術の実験や研究の補佐と言った依頼もある。

魔術や魔力に傾倒するフォレサージ森国ならではだろう。

最近では無詠唱魔術の講師や指南役をお願いする、などと言う依頼もあるそうだ。


ここライカウン教国はフロイオニア王国同様魔物の討伐依頼が多い。

プレーター獣国のような狩人もおらず、フォレサージ森国ほど魔術士も多くいない。

魔物を討伐できる者が少なく、冒険者ギルドに頼るしかないと言うのが現状だ。


冒険者自体の数は少なくとも魔物が少ない訳では無い。

街の外に出なければ安全ではあるが、魔物の素材の需要はある。

肉を始め、毛皮や角、牙などの素材は冒険者の武器以外にも使い道はあり、それを求める者達が依頼を出すのである。


「倒せるのか?」


最近ではライカもゴブリン程度なら倒せるようになったらしく、討伐依頼を率先して受けているらしい。


「やっぱ冒険者っつたら討伐だろ」


そう言って愛用のメイスを振りかざすライカである。

およそ女子らしく、と言えば世の女性を敵に回しかねない為訂正するとして、およそライカウン学園の卒業生とは思えない発言ではあるが、カルクやミームはうんうんと頷いた。


「メイスはあまり相応しくないのではないか?」

「そうか?」


魔物の討伐依頼を受けた場合、討伐の証明として特定の部位を持ち帰りギルドに提出する必要がある。

基本的には魔物の攻撃手段となる部位、ゴブリンなら牙や爪等が該当する。

倒さねば入手できない部位であり、仮に生きていても止めを刺すのが容易くなるからだ。


同時に、そういった部位は素材として買取も行ってくれる。

ゴブリンの牙や爪は素材としては安いが討伐報酬と合わせればそれなりの金額になる。


素材は、当然ながら質が良ければ良いほど高く買い取ってくれる。

逆に、素材の質が悪ければ安く買いたたかれ、下手をすれば討伐証明以外の価値が無くなってしまう。

メイスなどで討伐した場合、上手く倒さねば牙や爪が折れたり砕けたりしてしまい、素材としての価値が無くなってしまう可能性もあるのだ。

冒険者として生計を立てていくなら、ただ討伐するより素材の価値を下げない戦い方もした方が良いだろう。


まあ、ラリアルニルスが使っている大剣も大差ないが。


素材の質を気にし、倒し方にばかり注意してしまえば負けてしまう。

確実に倒せるようになって初めて、素材を傷つけない戦い方を模索できるのだ。

何より優先すべきは依頼を達成する事。

素材が使い物にならずとも、それなら最低限達成報酬は貰えるのだから。


――――――――――


護衛依頼の割合が多いのもライカウン教国の特徴か。

プレーター獣国の様に誰もが戦えるわけでは無く、フォレサージ森国やマウントクラフ山国の様に基本的によそに行かないところと違い、人の行き来のある国は、特に教皇のような重要人物が移動する際には、当然の如く護衛が付く。

あるいはマチアンブリ商国の様に、街から街へ、国から国へ行き来する商人が多い国もだ。

ライカウン教国に関しては、教会に務める者が他の街の教会へ赴く際、念の為冒険者を護衛として雇うからである。


リーラ達の様に魔術を扱える者は多いが、それは精霊学を学ぶ上で身に付けたもの。

決して人や魔物に対抗する為に身に付けた訳では無い。

仮に戦えても、それだけで快適な旅が出来る訳でも。

野営の知識、馬車の扱い。

地図がよめない者だっているかも知れない。

護衛を雇うのは、この世界では必須なのだ。


「教皇様が雇っていたのはライカウン教国一の冒険者だぜ」


冒険者の数が少ないライカウン教国とは言え、それでも優秀な冒険者はいる。

教皇が雇った冒険者もライカウン教国では数少ない金級の冒険者である。

ただでさえ少ない冒険者の更に少ない金級。

いかに教皇が重要人物なのかが分かるだろう。

故に、こんな国境沿いの街になど軽々しく来てはいけないのだが。


「他国より少ないならその分稼げそうやけどな~」

「簡単な討伐は教会がやっちまうからな・・・」


教会は創生神や精霊の教えを広める為の組織だが、同時に街や国へ奉仕する活動も行っている。

無料と言う訳では無く、寄付と言う形で対価も得ている。


活動内容だが、こちらは街の簡単な雑用から教会が販売提供している回復薬の製造、その原料となる薬草の採取など。

低級の魔物なら討伐も行っている。

冒険者程の力量は無く、武具を扱う者も少ない教会ではあるが、誰もが魔術の心得があり人数さえ集めれば討伐も可能。

オーガやアースタイガーと言った強力な魔物は無理でも、街や村人を脅かすゴブリン程度なら追い払う事なら出来る。


料金は前述した通り寄付と言う形であり、冒険者ギルドの依頼料より低くとも引き受ける。

故に街や村の者は、魔物の被害があればまず教会に相談しに行くのだ。


それでは冒険者ギルドと対立するのでは?

という疑問が沸くだろうが、そこら辺は案外うまくやっているらしい。


先程、教皇が冒険者を護衛として雇ったのもそうだが、薬草の採取も教会の者だけでは足りず不足分は冒険者ギルドに頼っている。

その分冒険者ギルドには格安で提供している。


魔物の討伐も、教会側はあくまで追い払う程度。

確実な討伐となれば、冒険者ギルドに協力を仰いでいる。

その際の費用も教会が持ち、相談を持ち掛けてきた村人達に追加で請求する事も無い。

教会側も治癒魔術士を同行させ、討伐に協力している。


あるいは簡単な依頼は教会が受け持ち、冒険者はその他の依頼を中心に引き受けると言った感じに上手く分けていたりもするのだ。


村に被害が無ければ(村人からの陳情が無ければ)教会が動く事は無い。

採取依頼のついでに森を見回るのも、冒険者の担当である。


そもそも教会は創生神や精霊の教えを広める為の組織であり、人々の救済は創生神や精霊に代わり人々を救済すると言う業務の一環でしかない。

人々が人々の力のみで解決できればそれに越した事は無い、と言うのが教会のスタンスだったりするのだ。


そう言う意味では、冒険者ギルドこそ人々が創生神や精霊の助けを得る事無くあらゆる困難を解決する為の組織であり、教会が冒険者ギルドと対立する事無く両立する一番の理由なのかも知れない。


――――――――――


「ん?

 ライカじゃねぇか。

 そっちの子供達は・・・」


ギルドに掲示されている依頼を見ながらあれこれ話していたレキ達に声をかける者が現れた。


壮年の男。

騎士団長ガレムやルミニアの父ニアデル公爵、あるいはエラスの街の領主兼冒険者の男くらいの年だろうか。

見た目はそれほど屈強そうでは無い。

武器を手に立ち向かう戦士ではなく、後方から支援する魔術士タイプなのだろう。

あるいはフロイオニア騎士団副団長のレイク=カシスのような参謀タイプかも知れない。


見た目も温厚そうだが、冒険者らしい粗野な印象も受ける。

ライカに親し気に話しかけてくるところを見れば、ライカウン学園か冒険者ギルドの関係者なのだろう。

あるいはライカの親族か顔見知りか。


「おう、ギルド長じゃねぇか」


誰だろうと、いろんな想像しつつこそこそ話し合っていたレキ達だが、ライカから告げられた男の素性は正直予想外であった。


――――――――――


冒険者ギルドは独自の組織構造をしている。

本部はフロイオニア王国の王都。

各国にはそれぞれ統括ギルドが設置され、各街にあるのは支部である。


ここライカウン教国の街にも当然存在する。

目の前の男は、この街のギルドのトップ、支部長であった。


「そういやもうすぐ大武闘祭か。

 ってことはそいつらは・・・」

「おう。

 大武闘祭に出場する生徒だ。

 ってもライカウン学園のじゃねぇぞ。

 聞いて驚け、レキ様とフロイオニア学園の代表生徒達だっ!」

「おおっ!」


冒険者ギルドの支部長なだけあって、彼も大武闘祭の日程はしっかりと把握している。

万が一他国の学生に絡まない用、冒険者達に通達も行っている。


ライカが連れている子供達の服装から、彼等が大武闘祭に出場する生徒である事は一目瞭然。

ただ、どの国の学生かまでは分からなかったようだ。


なお、レキの名はライカウン教国で広く知れ渡っている。

当然、冒険者ギルドの一支部を預かる者が知らないはずが無い。


ただ、容姿までは知らなかったようで、ライカの紹介に驚きの声を上げた。

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