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黄金の双剣士  作者: ひろよし
三章:レキの力
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第56話:悪者退治

美女がならず者を撃退した。

その光景は、街の住人から更なる関心を集める事となった。


リーニャへ歓声を送る者や倒された男に野次を送る者。

先程まで窮地だった女性が反撃に出たとあって、舞台は盛り上がりを見せはじめた。


「なっ・・・」


舞台上には、リーニャの反撃に唖然とする男がいた。

ただの女だと思っていたリーニャが、子分とはいえ大の男を撃退したのだ。

予想外の状況にフランを掴む手を緩めそうになった男だが、すぐさま気を取り戻してリーニャを睨みつけた。


「てめぇ!

 このガキがどうなってもいいのか!」

「にゃぁ!」


掴む腕を強引に引き、リーニャとの間にフランを立たせた男が威嚇する。


子分はやられたが子供は今だ自分の手の中、状況はまだ自分に有利のはず。

逆転は出来ずとも、子供を盾に自分だけでも逃げ出そうと考えていた。


「あなたこそ、おとなしくその子を解放すれば痛い目をみずに済みますよ?」

「リーニャ~」

「うっせぇ!

 そっちこそ、このガキを傷付けられたくなきゃおとなしくしやがれ!」

「ええ、もちろん」

「あぁ!?」


フランを盾にリーニャを脅す男だが、返ってきたのは何故か了承の言葉。

普通ならフランを開放する為何かしらの取引を持ち出すか、あるいはフランを傷つけずに攻撃を仕掛けるかするだろう。

リーニャが反撃したのも、元々は男がフランを捕まえたからだ。

そのフランを、リーニャが諦めるはずはない。


男も当然、リーニャが素直に引くとは考えていない。

だが、おとなしくしろという要求以外は思い浮かばなかった。

このまま自分のヤサへと逃げ込もうと、男は後ずさりを始めた。


「フランを無傷で助けるのは私には無理そうですからね、悔しいですが」

「あぁ、何言ってやがる?」

「ですので・・・レキ君、後はお願いします」

「えっ、うん」

「は?」


対するリーニャは、そばに立つレキの肩に手を乗せ、前面に押し出した。

まるでレキの盾にするような行動だが、実際は選手交代だった。

男の混乱をよそに、託されたレキが男の正面に立つ。


「フランを離して」

「レキ~」

「・・・おい」

「何?」

「何って、テメェこそなんだよガキ

 なんかようか?」

「オレはレキ。

 おじさん、フランを離してよ」

「レキっ

 レキっ!」

「てめぇなんざガキで十分だ。

 いいからとっとと失せろ」

「やだよ。

 おじさんこそ早くフランを離してよ」

「うっせぇなぁガキ。

 今はてめぇなんぞにかまってる暇はねぇんだよ」

「ガキじゃないよ、レキだよ」

「・・・てめぇ、舐めてんのかガキ」

「いいからフランを離して」

「・・・あ~、そうかいそうかい。

 さっきの女といい、よほど俺様を怒らせてぇようだな」

「ねぇ、聞いてる?」

「うっせぇ!

 この状況で離すバカがいるかっ!」

「にゃぁ!」

「あっ!」


レキの言葉に、最初は子供と思って適当に扱っていた男も、同じ事を繰り返すレキにしびれを切らしたのか、再び激昂しフランの腕を強く引いた。

思わず叫ぶフランに、レキが声を上げる。


「レキ君。

 それ以上言っても無駄ですよ。

 彼はフランを離すつもりはありませんから」

「リーニャ?」


相対する相手が子供に代わった事で、男も逃げ出すのを止めたようだが、これ以上長引かせてはフランが怪我を負いかねなかった。

そう判断したのだろう、リーニャが口を挟んだ。


「それにホラ、先ほどそのゴブリンさんが言ったではありませんか。

 力があるものが全てを手にする、と」

「う、うん」

「ですので、レキ君はもう力づくでフランを奪い返せば良いのです。

 あ、でもフランに怪我をさせないよう気を付けてくださいね」

「う~ん・・・わかった」


リーニャに諭され(?)、レキは改めて男と対峙する。

今度は話し合いなどせず、強引にでもフランを奪い返すつもりだ。


今から突撃しますとでも言いたそうなレキの仕草。

ただでさえ男を無視してリーニャと相談していたレキに、男の怒りは爆発寸前である。


「ガキぃ~。

 そりゃあなんのつもりだぁ?」

「えっとね、フランを助ける?」

「てめぇ・・・いい加減にしろよ」

「少し痛いけど我慢してね」

「けっ、やれるもんならやってみやがれ!」

「うん!」


男の言葉に頷き、レキが足に力を入れる。

直後。


「ていっ!」

「ぐへぁっ!」


レキの右拳が男の顔面を捉えた。

十分に手加減した一撃だったが、それでも男の負ったダメージは少なくない。


「あ、が、が・・・」

「フランを離して」

「へ、へへぇ・・・」

「フランを離して」

「こ、殺ふ!」


痛みはある。

おそらくは顎も外れかけているのだろう。

それでも、子供に殴られたという怒りが男を動かした。


あの距離を一瞬で詰め、防ぐ事はおろか反応すら出来なかった攻撃。

それを繰り出したのが目の前の子供だという事を、男は怒りで理解できなかったらしい。

フランを捉えたまま、石を持つ右手でレキに殴りかかった。


「てぃ!」

「あがぁ!」


そんな男の一撃がレキに届くはずもない。

男の右手が届くより先に、レキの右拳が男の腹に突き刺さる。

男の右手から石がこぼれ落ちる。

反対の腕に囚われていたフランも解放され・・・。


「っと、大丈夫?」

「・・・レキ?」


レキに、しっかりと抱きとめられた。


――――――――――


「ぐ、ぐおぉ・・・」


「大丈夫、怪我無い?」

「う、うむ。

 大丈夫じゃ」


「へ、へへぇ・・・」


「はい、石」

「あ!」


「こ、こほやほ・・・」


「今度はちゃんと持ってなきゃだめだよ?」

「うむっ!」


腹を抑えうずくまる男をよそに、レキはフランの無事を確認し、ついでにフランの宝物をも奪還した。

フランも先ほどまでの泣きそうな顔はすっかり消え失せ、いつもの笑顔をレキに向けている。


「こ、殺ふ・・・殺ひへやふ」


「じゃあリーニャのとこ戻ろう?」

「うむ!」


ようやく取り戻した石を大事に抱え、リーニャの元へと戻るフラン。

そんなフランの手を握りながら、レキも続こうとして・・・。


「殺ふっ!」

「えい」

「がはぁっ!」


背後から襲う男に、レキが蹴りを放った。

まともに喰らった男が後方へと吹き飛んで行く。


「うにゃ!?」

「あらあら」


聞こえてきた衝撃音にフランが振り返った。

そこには、先ほどまで自分を捕らえていた男が、無残な姿で転がっていた。


――――――――――


「ご苦労様でしたレキ君。

 お怪我はありませんか?」

「大丈夫」

「ですよね」


「ありがとうなのじゃ」

「へへ~、どういたしまして」


道端に倒れている男達を他所に、リーニャがレキを労わり、フランが笑顔でお礼を告げる。

緊迫したムードはどこへやら、いつもの和やかなやり取りだった。


「さて、それでは宿に戻りましょうか」

「うむ!」

「うん」


横たわる男達を無視し、宿へと向かおうとするレキ達。

気が付けば街の人達に囲まれていた。


ここは街の往来。

平穏なトゥセコの街では珍しい騒ぎに、街の住人の注目は高まる一方だった。

美女と子供の撃退劇。

盛り上がらないはずがない。


そんな街の人達の様子に、レキが首を傾げた。

一瞬、カランの村の様に怖がらせてしまったんじゃないかと思ったのだが・・・。


「す、すげぇ!」

「なんだ坊主、なにもんだ!」

「あの男を一瞬で!」

「か~、こらすげぇもの見ちまったなぁ!」


住人達の反応は、レキの予想とは違うものだった。


「えっ?えっ?」

「すげぇな坊主!」

「なんだ、何したんだ?」

「カッコ良かったよボク」

「良いもん見せてもらったぜ!」


予想外の盛り上がりにレキが戸惑う。

そんなレキの戸惑いを無視するかのように、街の人達が口々にレキ達を褒め称えた。


「大体あいつらにゃいつも迷惑してたんだ。

 坊主がやってくれてスカッとしたぜ!」

「そうそう。

 いつもああやっていちゃもんつけては乱暴すんだよ」

「わざとぶつかっては因縁つけてくるのよねぇ。

 お嬢ちゃんも運が悪かったね」

「今回で少しは懲りただろうな」

「ちげぇねぇ」


ここぞとばかりに男達の日頃の悪行を口にする街の人達。

どうやらよほど迷惑していたようだ。

「領主や衛兵に訴えなかったのですか?」というリーニャが疑問を口にしたが、どうやら連中は冒険者であるらしい。


「あいつらああ見えても魔鉄級の冒険者なんだよ」


アレほど強気だったのは、相応の実力を持っていたから。

魔鉄級と言えば下位ランクの壁を越え、フォレストウルフを倒せる程の実力を有している冒険者である。

ならばあの強気も、街の人達がうかつに手を出せなかったのも納得のいく話ではある。


因みに、魔鉄級からは採取や討伐に加えて、簡単な護衛依頼を受ける事が可能となる。

と言ってもせいぜい街の周辺か、あるいは近隣の村までという制限付きだが。

それでも昇級する為、数回はそういった依頼も受ける必要がある。

男達が魔鉄級止まりなのは、おそらくはそういった護衛依頼を果たせないからだろう。


「ゴブリンに護衛が務まるはずありませんからね。

 むしろ討伐対象です」


リーニャはそう言って、街の人達の笑いを誘っていた。


しばらくの間、レキ達は街の人達にもみくちゃにされていた。

レキは頭を乱暴に撫でられたり、肩や背中を叩かれては「すごいすごい」と称賛を受けた。

子分を撃退したリーニャも同様ではあるが、こちらはむしろ女性から羨望の眼差しを受けていた。

唯一活躍していないフランはフランで、レキやリーニャを褒め称える声に「そうじゃろそうじゃろ」とただ胸を張っていた。


結局、騒ぎは衛兵が駆けつけるまで続いたのだった。

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