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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十八章:学園~二度目の武闘祭・本戦・チーム戦~
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第554話:圧倒

「カムに続けっ!」

「魔術で援護をっ!」


アランを攻めきれず、交代させてしまった事で四年生もまた呼吸を整える為後ろへと下がった。

そんな四年生に代わり、今度は三年生達が全力でレキに仕掛けた。

先程も魔術で援護していたが、ジガとラリアルニルス達と戦うアランに仕掛ける隙が無かった。

今はその四年生が後方へ下がり、代わりにカムが躍り出た事で、三年生達も本格的に攻撃を仕掛ける事が出来た。


カムを含む三年生達の猛攻を、レキは両の剣で軽々と捌き続ける。


アランは王宮で習った騎士剣術を用い、盾と剣で相手の攻撃を受けつつ反撃すると言うスタイルを得意としている。

そこに戦術と魔術を加えることで、アランは相手がどのような戦いをしようと確実に対処し、勝率を上げてきた。


レキも王宮で習ってはいたが、基本的には我流である。

ベースにあるのは魔の森での狩りで身に付けた戦い方。

時にゴブリンやフォレストウルフの様な群れを成す魔物を相手にし、時にオーガのような巨大な魔物を切り伏せてきた。

魔術も習得しているが、やはりレキの戦いは双剣にある。


その双剣を手に、レキは五十人の生徒の真ん中へと躍り出る。


密集している状態なら相手もうかつに剣を振るえない。

無理矢理振るえば仲間を傷つけてしまう。

それは魔の森でも同じ。

知性の低いゴブリンなら仲間を巻き込む事もいとわず攻撃してくる事もあるが、その時は遠慮なく同士討ちをさせつつ数を減らし、一匹一匹確実に仕留めるだけ。


流石に生徒達はゴブリンとは違う。

同士討ちを避ける為、レキを中心に距離を取り始めた。


ならば、単純に一人一人倒していけば良い。


「来やがったなっ!」

「ていっ!」


まずは一番先頭にいるカムを倒す。


三年生の中心であり、今最も勢いのある生徒、つまりは群れのリーダーのような存在。

魔の森では群れのリーダーを倒す事で残りの魔物も多少は動揺するのか、撃退し易くなった。

混乱を引き起こし、その隙に一人ずつ倒していく。


これもまたレキが魔の森で身に付けた戦術であり、狩りの仕方である。


「やあっ!」

「ぐおっ!!」


「うおっ!」

「なっ!!

 ぐはっ」


カムの斧を跳ね上げ、露わになった腹部に蹴りをお見舞いする。

レキの蹴りをまともに食らい、カムが仲間達の方へとぶっ飛んでいった。


「っつつ・・・くそっ」

「てめぇ、カム」

「うっせぇ、んなとこにつっ立ってんのが悪ぃんだろが」

「んだとっ!」


進路上にいた仲間のおかげで場外までぶっ飛ばされるのは避けられたらしい。

その分ぶっ飛んできたカムに当たった不幸な生徒達は、当然のようにカムへとからみ始めた。

レキを相手にそんな事をしている猶予など無いだろうに・・・。


「やっ!」

「うおっ!」

「がはっ!」


一瞬でカム達のところまで突っ込みレキが剣を振るう。

かろうじて防御が間に合ったカムと違い、他の生徒達はレキの猛攻を受けあえなくダウンしていった。


アランと四年生の戦闘中、後方に控えていた三年生は、体力が尽きるより先にその人数をどんどん減らしていった。


――――――――――


「・・・」


先程、アランの奮戦っぷりに感心していた一年生のケルンは、続くレキの戦いに声を忘れた。


アランの戦いも素晴らしい物だったが、レキはやはり次元が違った。

誰もレキを捉えられず、レキの攻撃をかわす事も出来ないでいる。

唯一斧で受け止めたカムも、その衝撃に耐えきれず体勢を崩し、続く攻撃にあえなく場外へとぶっ飛ばされた。


更にはそんな三年生に続けと言わんばかりに、先ほどアランに襲い掛かっていた四年生達も加わったが、やはりレキには通じなかった。

魔術はかわされ、あるいは対抗魔術で撃ち落とされた。

距離を詰め、切りかかってもレキに一撃与えられた者はおらず、反撃を受けてぶっ飛ばされる。


三・四年生参加者全五十人が、たった一人に手も足も出ていなかった。


試合用に刃を魔術でコーティングしていなければ、今頃武舞台は死屍累々だっただろう。

過去、同様の武器で鉄製の槍を切り落とした事もあるらしい。

そんな事出来るのかと疑う反面、レキならあるいはと思ってしまう程度には、ケルンもレキの凄さを理解し始めていた。


声を忘れているのはケルンだけではない。


先程、アランの猛攻に歓声を上げていた観客席の生徒達も、レキの戦いを黙って食い入るように魅入っている。

声を上げている余裕など無かった。

目で追いかけるだけで精一杯。

全身を黄金に輝かせながら武舞台を縦横無尽に駆け回るレキの姿は、神々しくも見えた。


「これが、レキ様・・・」


妹のコルンがそんな事を呟いた。


プレーター獣国で行われた大武闘祭。

来年は自分達も学園に入るのだからと興味本位で見学した大会で繰り広げられた圧倒的な試合。

獣人を武術で、森人を魔術で、他者を寄せ付けず最後まで圧倒し優勝した少年。

あの人と戦いたい。

そう思い、フロイオニア学園にやってきた双子の姉妹は、武闘祭が始まってからと言うものそのレベルの高さに圧倒されっぱなしであった。


「「・・・」」


それでも体が疼いているのは、彼女達が生粋な獣人である証拠か。


二人の目は、今までにないほど輝いていた。


――――――――――


レキが全身を黄金に輝かせ、それを見る獣人の双子の姉妹の目も輝いている頃、来賓様に用意された観覧席では二人の女性が跪いて祈りを捧げていた。

ライカウン学園から編入したルーシャ=イラーとレキからの招待を受け、武闘祭を見ていたたリーラ=フィリーとファイナ=イラーの二人である。


レキの戦いっぷりは昨年の大武闘祭でも見ていた。

リーラに至っては実際に戦い、ルーシャもまた今年何度もレキの戦いっぷりはまじかで見て、手合わせもしている。


黄金の魔力を纏い武舞台を縦横無尽に駆けまわるその姿は神々しく、レキ様こそは光精霊の申し子様に違いありませんとライカウン教国の教皇を始め誰もが理解し、崇敬を捧げた。

そんなレキに招待され、感謝感激しつつ大会を見続けていた二人。

レキの試合はどれも感激し通しで、時に感涙し、時に天に祈りを捧げていた。

フロイオニア学園のレベルが、特に武闘祭の本戦に出る生徒達の実力が非常に高かったこともあり、リーラとファイナもレキの強さをしっかり堪能する事が出来た。


優勝したレキを精いっぱい讃え、祈りを捧げ、満足した二人がさてルーシャとレキ様に挨拶して帰りましょうと考えていたところに始まった特別試合。

レキ様の試合が再びみられるのですねっ!

と喜び勇んで観覧席へと陣取ってみれば、感激も称賛の声すらも上げられないほどに素晴らしいレキの奮戦が始まった。


アランも確かに強く素晴らしい戦いっぷりだったが、レキはやはり格別だった。

流石は光の精霊の申し子様。

等と感心感激していたのも最初の内。


今はもう、感激の涙を止める事も出来ず、ただただ祈りを捧げる事しか出来ないでいる。


思えば、レキがこれほどまでに長い事身体強化をし続けた事は無かったかも知れない。

昨年の武闘祭、大武闘祭はレキの実力がそれほど広まっていなかったと言う事もあり、なるべく手加減し相手に全力を出させた上で倒せ、とレイラスからも言われていた。

元々素の身体能力も高いレキである。

魔術はおろか身体強化すら行う必要も無く、実際に魔術を使ったのはフォレサージ学園の生徒と戦った時くらい。


それでもライカウン教国の者を筆頭に、あらゆる者達を魅了した。


だが、レキの真の実力はあんなものではない。


大武闘祭の後、プレーター獣国の王宮で行われたプレーター学園とフォレサージ学園の代表生徒各五名との試合。

手加減の必要は無いと言われ、身体強化を解禁したレキの神々しい姿は今も二人の脳裏に焼き付いている。


今再び、全身を黄金に輝かせたレキが武舞台を舞い踊る。


二人は改めてフロイオニア王国の教会へ派遣された事を、創生神や精霊に感謝していた。


――――――――――


「それまでっ!」


三・四年生の希望者五十人対、レキ・アランコンビの試合が終わった。


最初はアランが、次にレキが、そして最後は二人で協力し、五十人の生徒相手を圧倒し続けた。


共に戦うのは初めてな二人ではあるが、レキとアランは不思議と息が合っていた。


アランは初めてレキと出逢ってからと言うもの、ずっとレキに勝つ事を目標に鍛錬してきた。

レキはレキで、そんなアランと王宮で会うたび手合わせしてきた。

つまり、二人はお互いの実力を理解し合っているのだ。


アランが最も秀でているのは指揮能力である。

癖のある仲間を導き続けてきた手腕は、相手がレキであっても存分に発揮されていた。


四年生達もローザを中心に纏まってはいたが、アランとレキのコンビはその上をいっていた。

カムを先頭に攻め続けた三年生達も、最後は四年生とも上手く連携を取り始めたが、それでも二人には及ばなかった。


特別試合の前半戦、レキ&アラン対三・四年生達の試合はレキとアランの勝利で終わった。

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