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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十八章:学園~二度目の武闘祭・本戦・チーム戦~
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第540話:それぞれの様子

「そうか、今年はレキ殿と」

「はい。

 レキ様を全力で支えて見せます」


レキと共に学年の代表になり、準決勝で四年生のフィルアに勝利し見事三位となったルミニアは、何一つ恥じる事なく、まるでフランの様に胸を張って父ニアデルに報告した。


槍のイオシスの異名を持つニアデル=イオシス。

公爵でありながら武人でもある彼は、娘の活躍とその堂々とした戦いっぷりを心から誇りに思った。

アランに敗れたとはいえ、お互い正々堂々持てる全てを尽くして戦った事をニアデルは知っている。


実力的には上であろうフィルアに臆する事無く攻め続け、そして勝利したルミニア。


もはや幼い頃の病弱な娘の面影はどこにも無く、目の前にいるのはニアデルの誇りである愛娘。

槍の才能を正しく受け継ぎ、座学に魔術にと研鑽を続け、学年の代表になった才女だ。


あれほどの激戦を見せてくれた娘が、チーム戦ではフロイオニア王国の英雄レキと共に戦う。

それも娘が指揮を執るというのだ。


娘の活躍が今から楽しみで仕方ないニアデルである。


「うむうむ、流石は我が娘。

 槍のイオシスの名を継ぐのもそう遠くない・・・」

「お父様?

 何度も言いますが私は武人ではありませんから」

「ぬぅ」


槍の才能は受け継いだが、武人としての魂までは継がなかったらしい。

それが少々残念なニアデルであった。


――――――――――


更には・・・。


「そうか」

「ええ、伯爵様も楽しみにされていたのですが」

「いや、いい。

 父上も多忙なのだ。

 それに今年は・・・」


昨年、多忙ながら息子の応援に駆けつけたガージュの父デシジュ=デイルガ。

今年はどうしても時間が作れなかったらしく、アデメアの街へは来ていないそうだ。


伝えてくれたのはデイルガ伯爵家の分家の一つであるイラ男爵家の当主。

上位クラスの生徒ライラ=イラの父親である。


「なんでも領地内に新たな遺跡が見つかったとかで」

「ふむ」


デイルガ伯爵家が治める領地はそれなりに広く、分家と共に管理してはいるが時折こうした未発見の遺跡や洞窟などが見つかる事がある。

デイルガ伯爵領に限った話では無く、またそれらを発見するのは領内で活動する冒険者である場合が多い。


「冒険者の方々と共同で探索しておりまして、伯爵様も指示を出したり支援物資を手配したりと手が離せない状況のようです」

「なるほど、父上らしい」


ガージュの父デシジュは神話・伝承の類を好んでいる。

遺跡から見つかる遺物などは歴史の謎を解くカギとなるだろうと、こういった場合では率先して支援し、時には自ら遺跡に赴く事もある。

そんな父を良く知るガージュだからこそ、今回観戦に来ないのは仕方ないと割り切る事にした。


もちろん寂しさは感じている。


だが、デシジュの趣味は別として、歴史的な遺物の発見はフロイオニア王国にも利がある為、貴族として率先して働くのは間違ってはいない。

父親を貴族としても尊敬しているからこそ、ガージュはむしろ父親のその活動も誇らしく思っているのだ。


「それで、ライラとはどうですか」

「・・・は?」

「いえ、ガージュ様と我が娘ライラは昔から・・・」

「ま、まて。

 そ、その話はまた今度で・・・」

「いえ、ですがガージュ様もライラも二年後には卒業し領地へ戻られるわけですから・・・。」

「わ、分かっているっ!。

 だからこそその話はもう少し時間をっ!!」


「ガージュ様?」

「なあっ!!」


思わぬ話題に声を荒げたガージュ。

そんなガージュの声は扉の外にまで届いたようだ。


まずは父親とガージュとの会話を優先し、扉の外で待機していたライラ。

ガージュの声が聞こえ、思わず声をかけてしまったようだ。


「・・・ふむ、仲は良さそうで安心いたしました」

「ま、まて。

 今ので何故」

「いえ、まあ父親としてのカン、でしょうな」

「カ、カン・・・」


そういってにっこり微笑むライラの父。


分家の当主とは言え相手は想い人の父。

無下にも粗雑にも扱えず、閉口するしかないガージュである。


なお、イラ男爵とデシジュ伯爵も幼少の頃からの付き合いがあり、立場こそ違うが親友といって良い間柄。

幼少のガージュの面倒を見ていた事もあり、ガージュもあまり強く出られない。

本家の嫡男であろうと軽口も叩けるのもそれが理由だ。


もちろん、公的な場では控えている。


「それでは後は娘と語らいたいと思います。

 ガージュ様、明日のご活躍をお祈りしております」

「あ、ああ・・・」


報告も、そして揶揄いも終わったようで、ガージュを促し代わりに娘を呼ぶイラ男爵。


「よ、余計な事は話すなよっ!

 いいなっ!!」

「ガ、ガージュ様?」

「ライラもだっ!

 イラ男爵の軽口をうのみにするな」

「え、ええ。 

 大丈夫です。

 父の軽口には慣れていますから」


二年連続で本戦に進むチームの指揮官とは思えない慌て方だった。


――――――――――


「レキ君、優勝おめでとうございます。

 これで二連覇ですね」

「うんっ!」


フラン達が家族と語らっている間、レキは昨年同様リーニャとミリスに優勝報告を行っていた。


実力的にレキが優勝するのは当然の結果であり、むしろ常識と言っても良い。

それでもフラン達やリーニャは相変わらず心からの称賛をレキに送ってくれる。


それが嬉しくて、だからこそレキはもっと頑張ろうと思えるのだ。


心温まる光景。

だが、レキほどの実力を有している者が、当然の結果を出しても褒めてもらえるのはある意味特殊な光景でもある。


レキほど隔絶した実力を持つ者は孤立し易い。

どうせ勝てないのだからと棄権し、鍛錬時も実力差から手合わせすら拒否し、中庭で剣を振ればあんなに強いのにまだ鍛錬するのかと奇異の眼を向けられる。


それは入学前、故郷の街でミームが体験した事に近い。


ミームの場合は周囲がミームに内緒で隠れて鍛錬していたと言うのが真相であり、孤立していたかも知れないが孤独になったわけでは無かった。

レキの場合、どれだけ鍛錬しても追いつけないと、周囲の者が早々に諦め離れて行ってしまう可能性もあった。

「レキに勝つ」と言う言葉が、夢追い人の戯言の様になる可能性もだ。


「あいつは俺達とは違う」

そう言って、普段から距離を置かれたかも知れない。


そうならなかったのはレキの人柄か。


フランを助け、ルミニアを助け、ユミを助けた。

入学試験前にファラスアルムを助け、野外演習でカルクとミームを助けた。

レキに助けられた者達は感謝し、好意を抱き、レキの近くにい続ける事を選んだ。

誰もがレキの力を恐れず、今まで通り接してくれた。

だがらこそ、他の者達もフラン達と同じようにレキと接するようになった。


あるいはそんなフラン達のおかげか。


ルミニアやユミ、ミームにファラスアルムなどは恋慕の情も多かれ少なかれあるようだが、それでも誰もがレキをレキという一人の少年と見て接してくれる。

好意を除いても、フランは家族同然の親友として、ルミニアは敬意を抱く相手として、ユミは恩人、ファラスアルムは崇敬を、ミームは目標の相手として。

同性であっても、カルクやユーリは親友、ガージュは少々扱いづらい友人と言ったところだろう。

ミルやヤック、ライなども、レキを目標にしつつ友人として接してくれている。


そんな輪が広がり、武闘祭、大武闘祭を勝ち抜いたレキを、同じ学園の生徒として誰もが誇りに思うようになった。


確かにレキの力は隔絶している。

だが、その力を正しく振るってきたからこそ、レキは孤立せず皆の輪の中にいられる。


これからもレキは皆の期待を背負い、皆の代表として頑張るのだろう。

そんなレキに、皆は心からの声援を送るのだ。


武闘祭本戦、チーム戦。

レキは昨年同様学年の代表として戦う。

皆が憧れ、目標とする存在として。


――――――――――


「フラン様、レキ様、お茶が入りました」

「お菓子もあるよ~」

「「お~」」


「・・・皆さん落ち着いていますね」


チーム戦当日。

学年の代表として大舞台へと立つレキ達二年生最上位クラスの面々は・・・普段通り。

緊張とは無縁な性格のレキ達は、ファラスアルムをのぞいてのんびりお茶を楽しんでいた。


レキ達の出番は一回戦最後。

今から緊張しては持たない、と言う意見もあるが、それ以前に誰も緊張などしていなかった。

自分達の出番が来るまで、こうしてのんびり試合を観戦する予定である。


「こ、これがレキ様達の強さの秘密?」

「違うと思うよ、お姉ちゃん」


そんなレキ達の様子にケルンが感心し、コルンがそんな姉の勘違いを訂正した。

ケルンとコルンは同じ一年生第一チームに所属し、試合は一回戦第二試合。


「けっ、一年かよ」

「侮るなよカム。

 レキ殿だって昨年は一年生だったんだ」

「あいつは別格だろ」


対戦するのは三年生第一チームのカム達である。

昨年は一回戦の第一試合で運悪くレキのチームに当たり敗退したカム達。

今年こそはレキやアラン達に勝って見せると意気込んでいる。


ただ、気合を入れているのはカムばかりで、残りのメンバーはそこまでではない。

意気込みはあれど優勝は無理だろうと誰もが考えていた。

勝てて一回戦。

二回戦は無理だろう、ましてやレキやアラン達には勝てるはずもないと、諦観していたりする。


実際、カム達が一回戦を勝ち抜けば次に当たるのはガージュチームかアランチームのどちらか。

昨年の優勝チームか準優勝チームのどちらかと当たるのだ。


「何言ってやがる。

 あっちにゃレキがいねぇんだぞ?

 俺達でも勝てるだろうが」

「いや、その代わりミームがいるだろ?」

「レキ君以外はほぼ同じなのだろう?

 勝てるかどうかわからないじゃないか!」

「第一彼等が弱くなっていたとして、当たるのはアラン様達なんだ。

 どっちにしろ勝ち目など・・・」


アランチームはともかく、ガージュチームには肝心のレキがいない。

それだけで戦力が格段に落ちているのはまぎれもない事実。

アランチームならともかく、ガージュチームとならまだ勝てる可能性もある。

昨年の優勝候補筆頭だったティグ=ギを倒したミームがいるとは言え、レキさえいなければ何とかなるはずなのだ。


その場合、やはり勝つのはアランチームだろうが。


カムチームが戦うのもまたアランチームと言う事になる。

打倒アランを掲げるカムにとっては都合が良いが、そうではない他のチームメンバーにとっては運が悪いと言わざるを得なかった。


「けっ、腑抜け共が」

「まあまあ。

 どのチームに当たろうと僕達のやる事は変わらない。

 ただ全力でぶつかるだけだろ?」

「・・・ちっ」


カムと仲間達との温度差。

それを埋めるのは同じ学年代表であり、チーム戦では指揮を担当するカシーヤの務め。

もっとも、カシーヤはどちらかと言えばカム寄りの考えをしている。

アランチームに勝てるとは思っていないが、それでもなお全力で挑むつもりでいるし、無謀であろうと優勝を目指している。


折角学年の代表になったのだ。

戦う前から諦めてしまえば、代表になれなかった他のチームに申し訳が立たない。

カシーヤ達もまた、三年生全員の想いを背に武闘祭に出場しているのだから。


「まずは初戦。

 二回戦の事はその時考えればいいさ」

「お、おう、そうだな」

「あ、ああ。

 カシーヤの言う通りだ」

「ま、まずは一回戦・・・」

「ちっ」


カシーヤの言葉に仲間達も落ち着きを見せ、カムも不貞腐れながら口を閉ざす。

まずは一回戦。

それはここにいるどのチームにも言える事だろう。


因みに・・・。


「俺達、初戦でレキと何だが・・・」


一回戦でレキチームと当たる事になった四年生第二チームの生徒達が、絶望に染まった表情で控室の椅子に項垂れていた。

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