第538話:チーム戦
レキにとって二度目となる武闘祭。
先に行われた個人戦は、今年もレキの優勝で終わった。
昨年の、一年生にして優勝という前代未聞の結果を残したレキであるが、一年から二年連続で優勝したのもまたレキが初めてだった。
レキの実力を知る者が少なかった昨年は、その圧倒的な実力に驚愕する者も多かった。
だが、昨年のレキの試合を見ていた今年の二~四年生は今回の結果に納得し、今年初めてレキの実力を目の当たりにした新一年生は驚愕した。
そして、誰もがこの結果を称賛した。
一年生の代表であるケルンとコルンの獣人姉妹。
姉のケルンはルミニアが、妹のコルンはレキがそれぞれ打ち破った。
どちらも瞬殺した訳では無く、まるで稽古をつけてあげているかのような試合運び。
ルミニアはケルンの攻撃を受けきり、レキは攻撃させては悪い個所を指摘するという試合展開に、流石の一年生達も自分達とレキ達との実力差を感じざるを得なかった。
姉妹二人は試合に満足し、自分達の代表にして頭一つ抜けた実力を持つ姉妹が良いように扱われた事に、他の一年生達は驚きと興奮を隠しきれなかった。
ルミニアはアランに惜しくも敗北したものの、続く三位決定戦ではローザに代わり出場していたフィルアを僅差で打ち破り見事三位に輝いた。
レキはフィルアを圧倒、決勝でもアランを相変わらずの強さで寄せ付けず、今年も見事学園の代表の座を手にした。
そんな個人戦の興奮冷めやらぬ翌日、いよいよフランやガージュ達も出場するチーム戦の日がやって来た。
――――――――――
「うっし、行くぜっ!」
そう言って、控室へと先陣切って入って行ったのはカルク。
二年生最上位クラス、今年も大武闘祭に出場するレキの友人達の中で、おそらくは最も気合が入っている生徒だろう。
それもそのはず。
カルク達は今年、レキと敵対する道を選んでいるからだ。
昨年はレキと共に武闘祭に出場し、見事優勝した。
レキの実力によるところが大きいが、カルクだって頑張った。
それでもレキがいなければ優勝出来なかった事くらい、他ならぬカルク自身が良く分かっている。
だからだろうか。
今年はそんなレキと戦う道を選んだのは。
己の実力を確かめる為、仲間であり友人であり、様々な意味で恩人であるレキに己の実力をぶつける為。
様々な理由はあるが、それでもカルクはレキと戦う道を選んだのだ。
「おかげでレキとフランを同時に相手する事になってしまったではないか」
「そ、そんな事を言われましても・・・」
そんな気合の入るカルクを見つつ嘆息気味にそんな事を言うのは四年生代表のアラン=イオニア。
先日の個人戦で準優勝し、二年連続で学園の代表となった実力者である。
チーム戦にも四年生代表チームのメンバーとして出場し、組み合わせ次第ではカルク達と戦う事になるだろう。
「お前達は昨年レキと一緒に大武闘祭を戦ったではないか?
何故今年も一緒に挑もうとしない」
「そ、それが今年はガドの奴が・・・」
ガドの件はアランも聞いていた。
ガド=クラマウント=ソドマイク。
レキ達が一年生の頃のクラスメイトであり、チーム戦では前衛を担っていた山人の少年。
そんなガドが故郷であるマウントクラフ山国に帰ってしまった事は、レキやフランに少なくない衝撃を与えた。
光の祝祭日の休暇中聞かされた話に、「ガドにはガドの考えがあっての事だ。別れを悲しむより再会を楽しみにすればいい」と励ましている。
さすがにそれが今回の事態に繋がるとは思っていなかったが。
ガドが抜けた穴は、今年ライカウン学園から編入してきた女子生徒ルーシャ=イラーが埋めた。
山人で前衛のガドの代わりを純人で魔術士であるルーシャが埋めるのは難があるが、レキの代わりにチームメイトとなったミームもいる。
実力的には落ちているが、それでも二年生の代表に成れる程度には、カルク達も強いのだ。
新たなメンバーとの連携訓練もそれなりにこなした。
絶対優勝してやるぜ!などと言うカルクほどではないにせよ、ガージュ達だってやる気は十分だ。
「そうではない!
何故レキが別のチームになったかをだな・・・」
確かにガドの抜けた穴を埋めるだけなら編入生のルーシャ一人で良かった。
レキ、カルク、ユーリ、ガージュ、そしてルーシャ。
この五人でも問題は無かった。
そう考えるアランに、ガージュはしっかりと答える。
昨年はレキにおんぶにだっこだったと。
優勝したのはレキのおかげで、ガージュ達はただのオマケだったと。
確かに大武闘祭で優勝できたのはレキのおかげだ。
だが、ガージュ達だって少なからず活躍している。
同学年では、最上位クラスの全員が他クラスより頭一つ上をいっているくらいだ。
それでもレキのオマケだと評価する者はいなくならない。
自分達の実力を証明する為にも、ガージュ達はレキと戦う道を選ぶ必要があったのだ。
「だからと言って何故フランが・・・」
「ああ、そりゃフラン様が手を挙げたからだぜ?」
「なっ!」
「バカっ、カルクっ!!」
ただ戦うだけなら個人戦でもできる。
問題は何故チーム戦で袂を分けたのか。
実のところ今回のチーム分けはガージュ達男子だけが希望した訳では無い。
むしろフラン達女子の方が、今年はレキと共に戦う道を選んだと言って良いだろう。
武闘祭の前、野外演習の打ち合わせで決めたチーム。
レキと同じチームにと手を挙げたのは、昨年レキと戦う事を選んだ女子五名の内四名。
真っ先に手を挙げたのはフランで、つまりはフランこそがレキと同じチームになりたいと望んだと言う事。
「・・・何と言う事だ」
打倒レキを掲げる以上、フランとの対決は避けられなくなった。
ただでさえ凹んでいたアランが、何よりそれを望んだのがフランであると知り、控室で床に手をつき項垂れた。
武闘祭の本戦、チーム戦の部が間もなく始まろうとしていた。




