第518話:武闘祭予選終了
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悔しがったり反省したり項垂れたり。
相手がレキチームだろうと負けて良しとしないチームメイトを見ながら、ルーシャは自身の認識が間違っている事を理解した。
レキは強い。
それも圧倒的に。
フロイオニア学園に編入する前、学園長や教皇直々に聞かされていた話以上に、レキの実力は高かった。
ただそれは聞いていた以上であって違っていた訳では無い。
ルーシャが勘違いしていたのは、そのレキに対する周囲の認識だ。
レキが強いと言う事は共通の認識。
でも、ほとんどの生徒はそれでもレキに挑んでいた。
試合で当たっても諦めず、勝てないと分かっていても全力で。
それは何も学園の評価に繋がるからではない。
ある者はこれまでの鍛錬の成果をぶつける為に。
ある者は日々手合わせしてくれたレキへの感謝の想いと共に。
そして、最上位クラスのほとんどの生徒は、そんなレキに勝つ為に。
レキの強さはルーシャ以上に知っているはず。
それでも勝つつもりで挑み、誰もが敗れて行った。
チーム戦でもそうだ。
ガージュはレキ要するチームに勝つ為に戦術を練り、ミームやカルクはレキを倒そうと全力で。
ユーリはその二人が全力で戦えるようフランを食い止めていた。
レキを尊敬していない訳では無い。
強さはもちろん、その性格、人格面でもレキは優れており、恋慕の情を抱く女子も多い。
功績も素晴らしく、非の打ち所の無い男性だ。
光の精霊の申し子である事を除いても、魅かれる要素は多い。
レキを見下しているわけでは無く、嫌悪しているわけでも無い。
尊敬、友情、恋慕。
様々な好意的感情を抱きつつ、それでもレキを倒そうと全力で挑み、そして今、誰もが全力で悔しがっている。
強すぎる者は時に孤独になる。
余りにもかけ離れた実力は、畏怖すら抱かせる。
レキほどの圧倒的な実力の持ち主なら、学園で孤立していてもおかしくはない。
だが、最上位クラスは元より、ほとんどの生徒はレキに対し好意的で、何よりも親し気である。
それはもちろんレキの性格があってこそ。
とは言え、あれほど隔絶した存在であるレキを対等の学友として接するなど、早々出来るものでは無い。
仮にここがライカウン学園であったなら・・・。
光の精霊の申し子として祭り上げ、特別な存在として扱ったに違いない。
確かにフロイオニア学園はある種で変わっている。
王族や公爵家の子女が権威をひけらかさず、貴族と平民が平等に学ぶなど。
どれほど理念を抱きかざしても、普通は無理だろう。
考え方や風習、更には種族すら違う生徒達がこれほどまでにまとまっているなど・・・。
フロイオニア学園は実力主義。
レキが一位である事は当然で、羨望こそ抱いてもライバル心等抱けるはずが無い。
だが、ミームは全力で悔しがり、カルクとユーリはもっと何とかできなかったのかと反省し、ガージュは次こそはと決意している。
武闘祭の本戦に向け、あるいは来年に向け、明日からも努力をするだろう。
それがルーシャには不思議でならず、そして眩しく映った。
そんなガージュ達と、そしてレキの学友でいる為、ルーシャもまたより一層の努力をしなければならない。
少なくとも、相手がレキだからと言う理由で杖を向けるのをやめるようでは、彼等の学友にはなれない。
むしろ、レキ様に自身の全力をぶつけ、レキ様の全力を受け止められるように。
レキ様達と共に鍛錬し、研鑽に務め、レキ様と肩を並べて戦えるように・・・。
フロイオニア学園に編入出来た事に、改めて感謝の祈りを捧げるルーシャであった。
――――――――――
二年目の武闘祭、その予選は無事終わった。
昨年はまだ勝手の分からない事も多く、特にチーム戦ではただ五人ずつ一度に戦うだけで連携も戦術も何もないチームも多かった。
あれから一年。
どのクラスの生徒も個々の実力は元より、チームでの連携もだいぶ上がった。
作戦を練り、役割を決め、指揮官をたて戦った。
武闘祭の本戦で上級生の戦いっぷりを見たのが功を奏したのか。
あるいはそんな上級生達に劣らず戦ったフラン達に感化されたのか。
一年生ながらにして本戦で優勝し、大武闘祭でも優勝して見せたレキ達に憧れたのか。
野外演習で苦労し、今回の武闘祭で手ごたえを確実にした。
昨年の自分達を思い出し、どれだけ自分達が無知で弱かったかを思い知った。
そして、自分達の成長を実感した。
今年は勝てなかった相手にも、来年は勝てるかもしれない。
今年はどれほど手を伸ばしても掴めなかった勝利に、来年は手が届くかもしれない。
何故なら、自分達はこの一年でこれほど成長できたのだから。
このままずっと鍛錬を続ければ・・・。
ただ、それでもレキ達には敵わないと思ってしまうのは仕方ない。
自分達が強くなればなるほど、レキの圧倒的な実力が分かるのだから。
昨年はただ強いとしか思わなかった。
無詠唱魔術がどれほど素晴らしいものか、身体強化せずに優勝するのがどれほど圧倒的な事か。
昨年の準優勝者であるミームが、二人がかりで一撃も当てることが出来なかった。
ガージュやユーリ、カルクは昨年レキと共に戦い大武闘祭を優勝した。
そんな彼等が手も足も出ない存在、それがレキなのだ。
レキは今年もまた武闘祭の本戦に臨む。
二年生の代表として、そして昨年の優勝者として。
共に出場するルミニア。
彼女もまた素晴らしく優秀な生徒だ。
座学にも優れ、チーム戦では指揮を担当する才女。
武術や魔術も優秀で、総合力ならレキに次いで二位。
彼女もまた、今年の武闘祭本戦の優勝候補である。
そして、チーム戦ではそのルミニアとレキが共に戦う。
フランやユミ、ファラスアルムと言った昨年の武闘祭本戦で不屈の闘志を見せ、観客達を感嘆させた彼女達。
今年はその彼女達がレキと共に武闘祭本戦に挑む。
ガージュやユーリ、カルク達は新たに昨年の武闘祭本戦出場者であるミームと、ライカウン学園からの編入生であるルーシャを加え、二連覇に挑む。
今年の武闘祭本戦もまた目が離せなくなる事は必然である。
そんな、誰もが期待せざるを得ない武闘祭の本戦は数日後である。




