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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十六章:学園~二度目の武闘祭・予選 後編~
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第502話:フランVSルミニア

フランにとってルミニアは最初に出来た親友である。


王女であるフランは、王家との繋がりを求め、それこそ生まれた時からお近づきになろうとする貴族が多かった。

同い年の赤子から学園を卒業した者まで、その大半は子供の意志すら無視してただ繋がりを求めていた。

中には幼いフランを今の内自分達の都合の良いように教育、あるいは洗脳しようと、まだろくにおしゃべりも出来ないフランに教育係を名乗り出る者すら現れる始末。


赤子であればまだ早いと突っぱねる事も出来たが、ある程度成長すればそうも言ってられない。

王家としても、国内の貴族との繋がりを蔑ろにするわけにもいかず、何よりフランの将来を考えれば友人の一人くらいいた方が良いに決まっていた。


ルミニアは、そんなフランにとってこれ以上ないほど素晴らしい子供だった。


王家との繋がりが元よりある公爵家。

当主であるニアデルは王家に忠誠を誓い、王家の槍を自称する武人。

利権など求めず、病弱である娘の将来の為にもぜひにと懇願された。


王都とフィサス領はかなりの距離があった。

それでも折角出来た友人に会う為、フランは幼い頃から頻繁に逢っては共に過ごした。

病弱であるが故に部屋に引きこもりがちなルミニアと、活発であり外で遊ぶのが好きなフラン。

気弱でお淑やかなルミニアと無邪気で元気なフランと、およそ正反対でもある二人は、正反対であるが故に馬が合った。


フランが剣術を学び、ルミニアが勉強を学ぶ。


「将来は私がフラン様を支えますからね」


そう言われ、大人になっても一緒に居られるとフランは大いに喜んだ。


そんなルミニアと、フランは今全力で戦っている。

あんなに気弱で体も弱く、武術の鍛錬などとてもではないが出来そうになかったルミニアと。


槍のイオシスの二つ名を持つ父親に鍛えられ、レキやフィルニイリスに魔術を習い、更にはフランが苦手とする座学にも精を出し、学園に入ってからもフランの世話をやく傍らクラスの纏め役にして野外演習では二年生全体の指揮を執った。


それもこれもフランを支え続ける為。

自分の為にこんなに強く賢くなったルミニアは、フランの自慢の親友である。


だからこそ、そんなルミニアが仕えるに足る存在である事を、フランは示さねばならなかった。


何より、幼い頃からの親友であるルミニアと全力で戦えている事がただ嬉しかった。


こう見えてフランは負けず嫌いである。

学園で知り合ったミームとはお互いライバルと言える関係であり、親友であるルミニアにも、座学で勝てない分武術や魔術では負けるつもりは無い。


試合開始からずっと、フランは全力でルミニアにぶつかっている。

双短剣を巧みに扱い、時折魔術を放ち、親友のルミニアから勝利を得る為に全力でだ。


そんなフランの心意気が伝わったのか、あるいは親友であるからこそ遠慮は無用とお互い考えているのか。

しきりに懐へと飛び込んで来ようとするフランを、ルミニアは槍を回し迎撃する。


学園の評価では、フランは武術が四位で魔術が二位。

対するルミニアは武術が二位で魔術が三位。

武術と魔術、総合的に見てもルミニアの方が実力は上。

加えて魔術の相性と、フランには無い戦術という武器もルミニアにはある。


フランが上回っているのは素早さと間合いに入ってからの怒涛の攻め、そしてレキとの対戦経験くらい。

王宮にいた頃から考えれば、レキとの手合わせや模擬戦の回数ならフランがダントツ。

レキの双剣に倣い鍛錬した双短剣の技術も、お手本であるレキの傍で磨き続けた。

至近距離からの打ち合いであれば、フランはレキに次いで強い。


そんなフランの戦い方をルミニアは熟知している。

フランがレキと手合わせを重ねるように、ルミニアは槍のイオシスの異名を持つ父ニアデルと手合わせを重ね、王都に来た時はレキやフランとも鍛錬を重ねてきた。

フランがレキを手本とするように、ルミニアもまたフランやレキを手本としてきた。

病弱であった頃はとにかく見て習い、健康になってからは仮想相手としても鍛錬を重ねた。


ルミニアにとってフランは敬愛する仕えるべき主君であると同時に何者からも守らねばならない存在であり、当然そんなフランより弱いなどあってはならない。

他ならぬルミニア自身が許さない。


学園の行事である武闘祭だろうと、フランに負けるわけにはいかない。


槍の間合いと双短剣の間合い。

身長差も手伝い、二人の勝負はいかにしてお互いの有利な間合いで勝負するかにかかっていた。


「にゃっ!」

「甘いですっ!」


けん制の魔術を放ち、そちらに意識を向かわせた隙を突いてフランが右から攻める。

地面を滑る様な低い姿勢から全力で突っ込むフランを、ルミニアは冷静に槍で防いだ。


「にゃっと!

 そこじゃ!」

「させませんっ!」


タイミングを見計らい切りかかるフランに対し、ルミニアが槍を突き立てる。

武舞台に突き刺さろうとする槍を横っ飛びでかわし、お返しと言わんばかりにフランが魔術を放った。

そんなフランの攻撃を、ルミニアが対抗する魔術で迎撃する。


空中で炸裂する魔術。

もう何度目かになる攻防に、周囲の生徒達はただ黙って魅入っていた。


――――――――――


「うむ、さすがルミじゃ」

「フラン様こそ、いつもお寝坊している癖に流石です」

「にゃっ!

 そ、その分夕方の鍛錬は参加してるのじゃ!」

「朝も参加していればミームさんに抜かされる事は無かったと思いますよ?」

「むむ・・・」


双短剣と槍をぶつけ合い、魔術を放ち、これまで互角に戦い続けた二人。

お互いの手の内が分かっている分、なかなか決め手に欠けている状況である。


現時点での成績は、武術はフランが四位でルミニアが二位。

魔術はフランが二位でルミニアが三位。

武術と魔術の総合でもルミニアは二位でフランは三位である。


昨年と比べ、フランが武術でミームに抜かれている。

もっともこれは昨年の武闘祭の結果が大いに影響している為、フランよりミームが強いと言う訳では無い。


それでも、ルミニアの言う通りフランが朝の鍛錬にも参加していれば、結果は違ったかも知れない。

一応夕方の鍛錬も、授業も真面目に受けているフランではあるが、朝が弱いと言う欠点はなかなか克服できないでいるのだ。


「まだわらわの方が勝ち越しておるぞ」

「でもこのままですと・・・」

「・・・むぅ」


ミームの成長は著しく、それは間違いなくレキの影響だろう。

獣人であるミームは才能だけなら随一。

レキという圧倒的な強者との手合わせにより、その才能に磨きをかけ続けているのだ。


フランも才能なら負けていない。

学園に来る前、王宮で散々磨かれたその才能は、学園でも一応伸びてはいる。

ただ、ミームの伸びが上回っているのである。


対戦成績は今のところフランが勝ち越しているが、それだってどうなるか・・・。


「ですから朝はちゃんと起きましょうって」

「お、起きてるのじゃ!

 ただちょっと・・・」

「ちょっと?」

「ちょっと、その、お布団が・・・」


布団の誘惑に勝てないフランが、気まずそうに眼を背けた。

今が試合中とは思えない、仲の良い二人のやり取り。

開始からずっと試合を見ていた生徒達の中にも、どこか弛緩した空気が流れ始めた。


勝負の行方は分からない。

実力は互角。

お互いの手の内も知り尽くし、レキですらどちらが勝つか分からないだろう。


武器の間合いはルミニアが有利。

だが懐に入ればフランが勝つ。


魔術の相性はルミニアに軍配が上がり、威力や速度ならフランがわずかに上回っている。


しいて言うなら戦術だろうか。

それだってフランがその隙を与えず攻め続けば容易くひっくり返る。


勝負を決めたのは果たして何だったのだろうか。


幼い頃からの親友。

共に全力を出し続けるかけがえのない時間。

そんな楽しい試合も、やがて終わりを迎えてしまった。


「やあっ!」

「はあっ!」


真正面から魔術を放ちつつ、その魔術を追いかけるようにフランが真正面から突っ込んだ。

対するルミニアは、槍に魔力を込めフランの放った魔術を切り払い、フランを迎撃せんと更に魔力を高める。


そして・・・。


「にゃあっ!」

「はっ!」


低空から全身のばねを使い、飛び上がるように切り上げたフランの短剣。

それを槍を回転させ、絡めとるようにしながらルミニアが受け流す。


「やあぁっ!」

「しっ!」


双短剣の片方を手放し、その場で回転しながらもう一本の短剣でフランが再度切りかかる。

素早く勢いの乗ったその攻撃を、ルミニアは全身を回転させて受け流し、そして槍を突きだした。


「・・・参ったのじゃ」

「それまでっ!

 勝者、ルミニア=イオシス」


黄ブロック決勝。

今大会の最長時間を記録した試合は、ルミニアの勝利で終わった。


――――――――――


「惜しかったね~」

「次は負けぬのじゃ」

「おめでとうルミっ!」

「うむ、おめでとうじゃなルミ」

「はい。

 ありがとうございます、ユミさん、フラン様」


「・・・ふん」


お互いをたたえ合うフランとルミニア。

そんな二人と共に健闘をたたえ合うユミ。


仲の良い女子三人を遠くから見守るのは、同じブロックで戦っていたガージュである。


恐らくはこの黄ブロックこそが最も激戦だった。

武魔の総合二位のルミニアと三位のフラン、そして四位のユミ。

この三人なら誰が勝ち残ってもおかしくなかった。


親友でありながら全力でぶつかり合った三人。

この程度で三人の仲がどうにかなるなど露ほども心配していなかったガージュだが、それでも負けた直後に相手を讃える等なかなかできる事ではない。

例えば勝利に執着していなかった、初めから負けるつもりだった、等であればまだしも、三人はそれぞれ優勝するつもりで試合に臨んでいる。


あるいは全力を尽くして戦ったが故に、素直に敗北を受け入れられたのだろうか。


負けた後、全力で悔しがる者は多いが、文句を付けたり認めなかったりする者は意外と少ない。

いない訳では無いが、やはり全力を尽くしたが故に認めざるを得ないからだろう。


ガージュだって試合の結果には納得しているし・・・満足もしている。


入学直後、ルミニアとの模擬戦で一方的に敗北した頃を思えば、随分と成長した者だと自分でも思う。

それもこれも学園でレキ達と知り合い、友人となったからだろう。


そう考えれば、友人に今の自分の全力を見せられた事が嬉しかった、と言う事なのだろうか。

以前のガージュならとてもではないが理解できない心境。

それが分かるようになったのは、ガージュが成長したからと言うより最上位クラスの空気に当てられ馴染んだから。


例えばガージュが敗れたのがユーリだったなら、ガージュは「ふん、僕の分まで勝てよ」とでも言ったかも知れない。

例えばカルクなら「お前には武術くらいしか取り柄が無いのだから、僕に勝つのは当然だ」とでも言ったに違いない。

レキなら「お前に勝てるなど最初から思っていない」と言いつつ全力でぶつかったはずだ。


以前のガージュなら憎まれ口を叩いて終わった。

あるいは負けを認めず審判が止めるのも聞かずに切りかかったかも知れない。


成長しているのはガージュも同じ。

だからだろうか、満足していても少しだけ悔しいと言う気持ちがあるのは。

そして、おそらくはあの三人もまた、どこかにそんな気持ちがあるに違いない。


「次は準決勝だね」

「ミームに負けてはならぬぞ!」

「昨年のフラン様の分まで勝って見せます」

「うにゃ」


「おい、とっとと行くぞ」


存分にお互いを讃え合った三人を促す様に声をかけ、ガージュもまた自分に勝利したルミニアの応援をすべく次の会場へと移動した。

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