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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十四章:学園~レキと二年目の学園~
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第478話:生徒達とルミニアの提案

学園でレキを知らない者はもはやいないと言って良い。

一年生に関してはまだ噂レベルだろうが、二~四年生に関してはその実力も実績と言う点で知れ渡っている。

昨年の武闘祭でのレキの活躍は記憶に新しく、大武闘祭で優勝したと言う話も教師や同じく出場したアラン達から聞かされている。


二年生は中庭や選択授業で接点があるが、他の学年は残念ながら接点の持ちようがない。

十日に一度の休暇を狙おうにも、レキは基本フラン達と行動を共にしている。

王族や公爵家の子女が相手では、例え年が上でも強く出られないでいる。

大武闘祭が終われば他学年との合同授業も開かれるが、ここでもレキはフラン達と一緒なのだ。


学園が寮生活であり、一種隔離された状況である事も、他学年がレキに手を出せない理由だ。

子供達が社交に本格的に乗り出すのは学園を卒業してから。

度々開かれる社交パーティーも、学生である内は誰も出席しない。


故に、この光の祝祭日の宴は、他学年の生徒にとってもチャンスだった。


日中、レキは基本騎士団と鍛錬したり魔術士達と一緒に居る事が多い。

研究や実験を行う魔術士達の区画は許可が無ければ立ち入る事は難しいが、騎士団の鍛錬場は光の祝祭日の前後は解放されている。

昨年、レキの素性を良く知らず絡んできた生徒がいたように、王宮に出入りできる貴族の子供であれば鍛錬場に立ち入る事が出来てしまう。


女子生徒はレキの姿を見る為。

チャンスがあればそのまま、せめてお茶の一時でもと虎視眈々と狙う。

男子生徒はと言えば、こちらはレキの実力を直に確認する為か、あるいは英雄レキと剣を交えると言う栄誉を賜る為か。


「レキ殿、手合わせをお願いしたい」

「ん~、ちょっとまってね」

「次は私と」

「その次は私だ」

「お、俺もだっ!」

「僕もお願いしよう」

「え~・・・」


剣を片手に挑もうとする者が後を絶たなかった。


――――――――――


他学年の生徒からすれば、昨年の優勝者と手合わせできる絶好の機会でもある。


ただでさえレキは王女フランや公爵令嬢ルミニアと仲の良い男子生徒。

レキと知己を得られれば、そのレキを通じ将来的な利益を得られるかもしれない。

もちろんレキの名自体有名で、個人的に友誼を結ぼうとする者も多い。

卒業を控える四年生は当然として、将来を見据え始めている三年生もまた、この機会に何としてもレキに近づこうと必死なのだ。


なお、祝祭日の宴には既に学園を卒業した元生徒も多く参加している。

特に昨年卒業した生徒などは、ついぞ叶わなかったレキとの対戦を希望する者もいた。


貴族の思惑についてはともかく、挑まれれば受けて立つのが騎士である。

レキは騎士ではないが、昨年の武闘最後に行われた合同授業で顔見知りになった先輩たちもいた為、レキも受けて立つ事にした。


王宮の鍛錬場は学園のそれより広く、頑丈である。

伊達に騎士団長ガレムやイオシス公爵を壁にぶっ飛ばしていない。

治癒魔術士も常に控えており、遠慮なく手合わせする事が出来る。


学園では出来ない本格的な鍛錬と、レキがある程度全力を出しても問題ない騎士達との手合わせ。

手加減に慣れ過ぎては全力の出し方を忘れてしまうだろうからと、ガレム以下騎士達も全力で挑んでくるため、こう言っては何だがレキも久しぶりに思う存分鍛錬する事が出来た。


もちろん他学年の生徒との手合わせも魅力的である。

騎士達の多くは王宮剣術、すなわち剣と盾を用いた戦い方をしている。

副団長のレイク=カシスの様に槍を扱う者もいるにはいるが、王宮の騎士達は基本に忠実な、堅実な戦闘を得意としている。

反面、生徒達の中には斧や棍、あるいはミームの様に徒手空拳で戦う者もいる。

様々な武具の使い手との手合わせもまた、レキにとって良い経験になるのだ。


とは言え光の祝祭日の宴の日まで、鍛錬ばかりしているわけにもいかない。

魔術士達のところにも行きたいし、教会にも顔を出す約束をしている。

何より王宮にはフラン達がいる。


基本的にはそれぞれ自由に行動しているが、食事などは極力一緒に取る事にしている。

加えて折角帰ってきたのだからと、王都で買い物などをする約束も。

王都は初めてだと言うカルクやルーシャにも案内したいし、なんならガージュやユーリも誘いたい。


鍛錬だって、手合わせばかりとはいかない。

自身の鍛錬もしたいし、フラン達の稽古にも付き合わなければならない。

一応、レキはフランの指南役でもあるのだ。


そういった行為が、フラン達がレキを独占しているように見えたららしい。

「ちょっと同じクラスだからって」「こんな時くらい私達にもレキ様を貸して下さればいいのに」などと、この機会を狙っていた女子達が、一応は不敬であると分かっているのだろう、遠くからフラン達を睨んでいた。

今のところはただ悔しそうに見ているだけで特に実害はない。

レキが単独行動を取ろうものなら、どこからともなく現れてはあの手この手でレキを連れて行こうとしただろうが、あいにくと王宮内はそこかしこにレキの顔馴染みがいる。

フランやルミニア達と別行動をとっていたとしても、行き先は騎士団の鍛錬場か魔術士達の施設。

あるいは王宮の侍女とお茶を飲んだり、王や王妃に呼ばれていたり。

王宮の外に出る時だって、基本的にはサリアミルニスが同行している場合が多い。


こんな時ですら隙の無いレキに、女子達は歯噛みするしかなかった。


――――――――――


一方、手合わせを望む男子生徒達はと言えば、連日騎士団の鍛錬場に詰め掛けては騎士に交じり鍛錬に励んでいた。

こちらは純粋に強くなりたい者、レキと言う英雄と手合わせしたい者等ばかりで、余計な下心を持つ者は少ない。

レキに一泡吹かせてやろう、レキに勝って見下してやろうと考える者はいたかも知れないが、無駄な事を悟りいつの間にか姿を見せなくなった。


ただ、あまりにも人数が増えすぎてしまった結果、別の問題も発生する。

すなわち手合わせの順番を巡り、挑戦者の間でけん制や恫喝等、余計な諍いが生まれたのである。


話し合いで解決するには人数が多すぎ、爵位を持ち出す者も表れる始末。

学園であれば爵位など無意味だったが、あいにくとここは王宮。

フロイオニア王国全土から貴族が集まり、レキを一目見ようと詰め掛けている場所。

上は公爵、下は準男爵まで様々な貴族やその子供が、英雄であるレキと手合わせを望み連日列をなす。


順番に相手をしていけば良いのだろうが、あいにくレキとて鍛錬ばかりしているわけでは無い。


レキが悪い訳では無いのだが、原因である以上何もしない訳にもいかず。

とは言えこれと言った解決方法も思い浮かばず、いっそのこと全員纏めて相手しても良いのだろうがそれで納得するかと言えばおそらくしないだろう。


さてどうしようかと少々悩んでいたところ、ルミニア達が協力を申し出てくれた。

すなわち「レキ様と戦いたければ私達を倒してからにしてください」という、学園でも採用した案をここでも持ち出したのである。


――――――――――


ルミニアの提案も最初は反発が多かった。

そもそもの目的はレキとの手合わせであり、鍛錬する、強者と戦うのが目的でない以上ルミニア達と戦ったところで意味はないのだ。

それでもレキ様の都合を考えて下さいと、公爵家の子女であるルミニアに言われれば従わざるを得ない。


一部の貴族はそれで引き下がり、その他の鍛錬自体が目的の者達は今の二年生の実力も確かめられるとむしろ乗り気になった。


提案したルミニア達にももちろんメリットはある。


光の祝祭日の休暇が終われば武闘祭が始まる。


今回、ルミニア達はレキのチームメイトとして参加する予定だ。

ルミニア達も実力を伸ばしている。

それでもまだまだレキの足下の影にすら及んでいないのは確かで、足を引っ張るとまではいかずとも役に立てるかどうかは微妙だった。

武闘祭が始まるまでの間、少しでも強くなる必要があるのだ。


王宮での鍛錬は実力を伸ばす絶好の機会だった。

王宮の騎士達は精鋭ぞろい。

あのレキですら剣を学んだと言うのだから、実力を磨くにはうってつけの環境である。


故に、カルクやミームほどではないが、ルミニア達も時間を見ては鍛錬に参加していた。

騎士達の指導は的確であり、手合わせ相手にも不自由しない。

フランが王族だからとか、ルミニアが公爵令嬢だからと言って手加減する者はおらず、変に持ち上げたりもしない。

そもそもルミニアの父であるニアデル=イオシス公爵が毎日のように参加しているのだ。

今更爵位を理由に遠慮する騎士など、フロイオニアの王宮にはいなかった。


鍛錬場に現れた他学年の生徒達も、ルミニア達からすれば絶好の鍛錬相手となる。

あるいは武闘祭の本戦に出場した際、ライバルとなる可能性を持つ生徒もいるのだろう。

自分達を成長させる為にも、本戦の情報収集の為にも、この機会にぜひ手合わせしておきたかった。


そう言った理由からの提案。

一部の反発はあれど学生からすれば絶好の機会であり、なんだかんだ受け入れられる事となる。


昨年の武闘祭、その本戦でルミニア達も四年生相手に善戦した。

初参加の一年生ながらの奮戦に、彼女達を侮る者もいない。

何よりルミニア達は無詠唱魔術を会得している。

他学年の生徒からしても、模擬戦の相手としてうってつけなのだ。


そうして始まる他学年の生徒を交えた鍛錬大会。

王国騎士団の指導の下、学園の生徒達が学年の壁を越えて仲良く鍛錬する姿はフロイオニア王国が安泰である証明でもあった。


そこかしこで行われる手合わせはレベルが高く、フロイオニア王国の実力主義を物語る。

四年生達は確かな実力を持ち、三年生はそれを追い越さんと意気込んだ。

そんな上級生達に勝るとも劣らないルミニア達。

フロイオニア王宮の鍛錬場は、かつてないほどの活気に覆われていた。

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