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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十四章:学園~レキと二年目の学園~
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第475話:宴まであと少し

レキ達が王宮に来て数日が経った。

この頃になれば、光の祝祭日の宴の参加者もだいぶ王都に集まっている。

伯爵家の嫡男であるガージュや子爵家の三男であるユーリもまた、レキ達に遅ればせながら王都へとやってきた。


「やあ、今年もお世話になるよ」

「うんっ!

 いらっしゃい!」

「別にレキの家じゃないだろうが」


昨年同様、二人は学園を出た後家族と合流した後、王都へ訪れている。

家族そろって王都入りする貴族はそれなりに多く、むしろルミニアの様なケースの方が稀である。

子供だけで王宮に入るなど、それこそフランやアランの伝手が無い限り無理だからだ


昨年同様レキに挨拶をしたガージュとユーリではあるが、昨年と違い早々に立ち去る事は無かった。


「レキと仲が良いのは武闘祭で十分見せることが出来たからね。

 ただ、フラン様達との仲はどうだってうるさくて・・・」

「今年もフラン様達とは別のチームだからな。

 決して仲たがいしているわけでは無いと見せる必要が出来てしまってな・・・」

「ふ~ん、大変だね」

「「まったくだ」ね」


今、レキ達がいるのは王宮にある騎士団の鍛錬場。

王宮に来てからの日課のように、レキは毎日ここで騎士達と手合わせをしている。

昨年と同じであり、ガージュ達も理解していたらしい。

レキならここにいるだろうと当たりをつけ、足を運んでみれば案の定騎士の一人をレキが盛大にぶっ飛ばしていたところだった。


「もうすぐフラン達もくるよ」

「そうか。

 フラン様達には申し訳ないが、もう少しここに居させてもらおう」

「用が済めば帰るから。

 もうしばらくお世話になるよ」

「折角だから手合わせしていけば?」

「「それはいい」」


騎士団とてレキ以外の生徒に全力を出すつもりは無く、カルクやミーム達が参加している事からも分かるとおり、学生には稽古を付けてくれている。

それでも鍛錬はきついのだろう。

最上位クラスでも体力に自信のある二人が、鍛錬場の端で大の字になって寝転がっている姿を見ればそのきつさが良く分かる。

指揮担当であるガージュや遊撃担当であるユーリでは、おそらくはついて行けないに違いない。


それに・・・。


「あそこに混ざると僕まで脳筋になりそうだしな・・・」

「ん?」


騎士団の脳筋っぷりはルミニア達に聞かされていた。

最上位クラスでも特に脳筋気味なミームが、嬉しそうに鍛錬の様子を語っていた事もまた、ガージュが参加を遠慮する理由である。


「僕は指揮官として戦術の幅を広げる事を課題としているのでな」

「僕は遊撃要員として、魔術の腕を磨こうかと」

「そっか~。

 じゃあフィルのとこ行く?」

「うん、ぜひお願いするよ。

 ガージュは?」

「フィルニイリス様なら是非もない」


宮廷魔術士長であるフィルニイリスなら、ガージュの求める戦術もユーリの求める魔術の実力向上も果たしてくれる。


今年の武闘祭はレキ抜きで戦わなければならない、

少しでも自分の力を磨く為、二人もあがく事にしているのだ。


――――――――――


レキ達が学園に入学してから二度目となる光の祝祭日の宴。

こう言っては何だが、参列する貴族のほとんどは社交を目的としている。


国王主催の宴。

参列する貴族には公爵、侯爵などの高位貴族も多く、少しでもお近づきになりたい貴族達がこぞって列をなす。

貴族同士の繋がりを得る為、中にはこの場で子供達の縁談を決めてしまおうと考える者すらいる始末。


そんな貴族にとって、学園もまた家同士の繋がりを得る為の場所であった。

有力な貴族の子供と縁を結ぶ為、何なら将来の伴侶を求める為、貴族達は子供を学園に入学させた。


大人達の思惑とは裏腹に、子供達はこの一年実に有意義に過ごしていた。

野外演習に始まり、武闘祭、進級試験を経て二度目の野外演習。

一人では成し遂げられない事をクラスメイトと力を合わせて乗り切り、文武共に成長してきた。


中庭での交流もあり、顔見知りも随分と増えただろう。

二年目は座学も選択授業が始まり、他クラスの生徒と机を並べる機会も増えた。

二度目の野外演習は二年生全体で行動をとり、野営時は打ち合わせなども行われ、森からの帰路などはルミニア指揮下で二年生全員力を合わせてゴブリンに立ち向かった。


ある意味、貴族の当主達の思惑通り縁も結ぶ事が出来た。

二年生全体を指揮したのは公爵家令嬢のルミニア。

その補佐に入ったのもフロイオニア王国古参の貴族である伯爵家のガージュ。

最上位クラスには王族のフランも在籍し、ゴブリン戦では縦横無尽に立ち回った。

学園にいる間は爵位を持ち出してはならないと言う規則があるが、そんな事考えるまでも無く生徒達はこの一年ですっかり仲良くなっていた。


クラスの垣根無く会話する機会も増え、休暇の際には他クラスの生徒とお出かけする生徒も増えているらしい。


貴族の当主が子供達を学園に入れた目的は半ば達成された。

後は有力な家の子供と更に縁を深め、伴侶として迎え入れる、相手の家に入れる約束が出来れば・・・。


光の祝祭日の宴は、その為の場でもあった。


さて、ここで言う有力な、貴族が縁を結びたい子供と言うのはどのような存在か。


一つは爵位。

公爵・侯爵家はフロイオニア王国でも王族に次ぐ力を持つ家である。

ルミニアなどは王位継承権すら有しており、国王ですらむげには出来ない。


次期国王であるアランの婚約者ローザも、幼い頃からアランと出逢う事が出来たのは家が侯爵家だったからと言われても否定できない。

もっとも、二人が婚約に至ったのは二人の気持ち以外の何者でも無く、仮にローザが貴族ですらない平民の子供であっても婚約を交わしただろう。

最低限の教養は必要ではあるが、ローザは入学当初から最上位クラスに席を置く才女であり、アランの伴侶としても次期王妃としても申し分ない教養を備えている。


本人の能力、優秀さが二つ目であるなら、ローザは実に有力であると言う事だ。


当主ではなくその子供達本人からしてみれば、見た目の良さと言うのも縁を結びたい理由になる。

まあこれは交際したい、結婚したい異性の条件とも言い換える事が出来るだろう。

誰だって見目麗しい異性、好みの異性と交際したいし結婚するなら好みの異性と願う。

人の好みは人それぞれだが、その好みにあった異性と結婚出来れば、少なくとも結婚後に顔を見る度げんなりする事は無い。


また、魅力的な容姿を備えている者は、その容姿に魅かれた他家の異性が寄ってくる事もある。

闇の中に灯る焚火に集まるように、社交の場では容姿の良さは武器となる。

もちろん容姿だけで中身が伴わない者もいるだろうが、そこは優秀な家臣や部下、何なら伴侶が直々に采配を振るっても良い。

容姿は生まれ持ったもの。

才能と同じく、持ち得るなら武器となる。

ならばそれを活かすのに何の問題があろうか。


容姿と同じく、強さと言うのも異性を引き付ける能力である。

三つ目。

野外演習や武闘祭で見せつけた実力に魅かれる者は多く、最上位クラスの人気が高い理由の一つでもある。

レキなどは顕著で、中庭での鍛錬を通じ友誼を結んでいた生徒達は、それまではフランやルミニアと仲が良いからと言う打算で近づこうとしていた。

だが、武闘祭で優勝、大武闘祭でも優勝して見せたとあってはレキ本人の実力を認めざるを得なかった。


武力が高ければ騎士として、あるいは冒険者として大成するかもしれない。

貴族程優雅な暮らしは出来ずとも、金銭面では不自由しないかも知れない。

魔金オリハルコンクラスの冒険者であれば、その扱いは貴族以上。

他国にもその名は広まり、国王直々に依頼が来ることすらあると言う。

そこまでくれば扱いは貴族以上。

その伴侶となれば、十分な贅沢が出来るはず。


レキは既にその実力を他国にも知らしめた。

獣王が、森王が、山王が、教皇が、商国代表が認めるほどで、既に並の騎士や冒険者、いや貴族以上の扱いを受ける事は決定している。

そのレキと共に戦ったガージュ、ユーリ、ガド、カルクもまた、レキの仲間として一定の知名度を得ている。

最上位クラスの生徒の人気が高まった要因だった。


野外演習、武闘祭、進級試験を得て学園の生活にすっかり慣れた生徒達。

二年目となり、選択授業で他クラスの生徒と席を並べ、野外演習で力を合わせ、異性にも目を向ける機会も増えた。


家からは将来の伴侶を探せだの有力な生徒と今の内から交友を深めろだの、唾を付けろ、お手付きになれなどとすら言われ、年頃からか本人も色恋に心をウキウキさせる年頃。

王宮で開かれる光の祝祭日の宴は、そんな生徒達の出会いの場である。

一部の生徒はまるで獲物を探すような目つきで周囲を見渡し、既に目を付けた異性がいる者は共に宴に出ようと策をめぐらし、約束を取り付けた者はドキドキワクワクウキウキとその日を待ちわびる。


社交と言うのは一種の狩場である。

国内中の主要な貴族が集まる光の祝祭日の宴などは特にだ。

学園でも顔見知りな子供達が、普段とは違う装いで集まる。

昨年まではあまり意識していなかった生徒達も、今年は異性の目を気にしドレスで着飾る。

普段とは違う女子に、男子の目も釘付け。

更には昨年まで何とも思っていなかった女子にまで目を奪われ、早熟な男子は色目すら・・・。


この宴を切っ掛けに、異性を意識するようになる男子生徒も多いと聞く。


そんな中、いまだそういった事に目覚めていないレキはと言えば・・・。


「きゃ~!!」

「レキ様~!!」

「かっこいい~!!」


最近何かと増えてきた黄色い声援を受けながら、今日も今日とで騎士団との手合わせに明け暮れていた。

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