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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十四章:学園~レキと二年目の学園~
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第473話:お風呂

今更ではあるが、王宮には王族専用の浴場と来賓向けの浴場、侍女や文官が用いる浴場といくつかの施設がある。

王族専用の浴場は、当然ながら許可が無ければ使用できない。

例えレキやルミニアでもだ。

フランが「一緒に入るのじゃ!」とでも言わない限り、ルミニアは来賓用、レキも来賓か文官用の浴場を使う。

もっとも、ルミニアが王宮に来た時は必ずと言ってよいほど一緒に入るし、レキを誘って入る事すらあった。

それ以外でも、レキは王やアランと入る事もある。

レキなら許可が無くとも王族用の浴場を使っても文句など言われないだろうが、レキ自身が良しとしない為誘われない限り王族用以外の浴場を使用する事にしている。


今回は、レキは事前にアランからお誘いを受けていた為、カルクやジガ、ラリアルニルス、他の四年生達と一緒に来賓用の浴場へ向かった。

王族用ではないのは、そちらはフランがルミニア達と入るからだ。


王宮の浴場は広く、フラン達が一度に用いても問題ない。

晩餐前でもあり、一度に入った方が効率も良かった。


「ふぅ・・・」


学園とは違う環境。

初めて訪れる他国の王宮。

加えて、その王宮を案内してくれたのが崇敬して止まないレキとあれば、ルーシャだって多少は緊張もする。

恐縮し、感謝と感激もしていたレキの王宮案内。

あっという間の時間ではあったが、終わってみれば思ったより疲れていた事に気付いた。

多分、肉体より精神的な面が強いのだろう。

嬉しかったり感激したり緊張したり、レキの一挙手一投足を注視し続けたり、案内される側としてどうかとも思うが、相手がレキなのだから仕方ない。


ゆっくりとお湯につかりそっと息を吐く。


なんだかんだ言えば、至福の時間であった。


数日前、王宮で開かれる光の祝祭日の宴に誘われてからずっと、ルーシャの至福は続いていると言って良い。

リーラやファイナと違い、クラスメイトであるルーシャは参加する事がさも当たり前であるかの様に誘われた。

もちろん断る事も出来たのだろうが、そんな選択肢がルーシャの中にあるはずが無い。

まだ出逢って数か月しか経っていないと言うのに、ルーシャはクラスメイトからまるで昔からの親友の様に接して貰っている。

最初こそレキにしか興味が無かったルーシャも、今ではすっかりクラスに馴染んでいた。


「ルーシャさん」

「・・・」

「ルーシャさん」

「・・・はっ!」


お湯につかり、先ほどまでの時間を振り返りぼ~っとしていたルーシャが、ルミニアの声にはっとした。

精神的な疲労とお湯の気持ちよさ、先ほどまでの至福の時間を思い出しつつどこか夢見心地になっていたようだ。


「どうですか、フロイオニアは」

「ええ、どこも素晴らしかったです」


ルーシャの言葉に嘘はない。

レキに案内してもらったという事が上乗せされているとは言え、フロイオニアの王宮は他国に誇れる造りをしている。

外見もさることながらその施設もだ。

レキが自慢げに案内したくなるのも無理はない。


「レキ様の案内は大丈夫でしたか」

「そ、それはもう!」


レキの説明は言葉足らずでありレキの主観で語られていた。

正直、他国の者への説明と言う点では不十分と言わざるを得ないだろう。

そもそもレキが良く足を運ぶ場所のみの案内であり、客間などの施設はほとんど案内されていない。

ルーシャ達が足を運んで良い場所、宜しくない場所の説明もされていないのだ。


案内役としては失格。

それでもレキが案内してくれたというだけで、ルーシャ達からすれば満点以上なのだ。


あえて聞いた時点でルミニアも分かっているのだろう。

後日、改めてそれとなく案内し直そうとこっそり決めたルミニアである。


「・・・レキ様は、愛されておられるのですね」

「はい、それはもう」


レキに連れて行ってもらった王宮のあちこち。

レキが顔をのぞかせる度、その場所の者達が笑顔で迎え入れてくれた。

レキの学友でしかないルーシャや大武闘祭で知己を得ただけのリーラやファイナですら、レキの友人と言うだけで歓迎してくれたのだ。


それはレキが、このフロイオニアの王宮で愛されていた証拠。

学園に来るまでの間レキがどのように過ごし、どのように接していたかが良く分かった。


「恩人、と言うだけではありませんね。

 皆様の心には感謝のみならず親愛の情がありましたから」

「騎士や魔術士の方々は敬意も抱いていましたね」


体を洗い終えたリーラとファイナもお湯に入り、先ほどの事を振り返りながらゆっくりとお湯につかる。


今日は満足のいく一日だった。

明日は、流石に二日続けてレキに案内してもらうのは気が引ける。

レキだってやりたい事もあるだろう。

騎士や魔術士達、お城の侍女だってレキと一緒に居たいはず。

余り独占してしまっては申し訳ない。


「む?

 これはルミたちの服じゃな」

「ちょ、フラン。

 そんなに急ぐと転んじゃうよ?」

「ほらっ、ファラも急がないとっ!」

「ま、待ってくださいミームさん~」


「あらっ、フラン様達もいらっしゃったようですね」


フラン達も汗を流すべく浴場へとやって来たようだ。

遅れてきたフラン達ともお風呂を堪能したルーシャ達は、若干のぼせながら晩餐へと向かった。


――――――――――


「・・・むぅ」

「ふ、フラン様はこれからですよ」

「そ、そうだよ。

 ちゃんと大きくなるよ」


――――――――――


さらに翌日。

学園でも規則正しく朝日と共に目覚めていたレキは、約一年ぶりとなる王宮でも相変わらずだった。

加えて王宮での生活を覚えていたようで、着替えを終えたレキは何も考える事無く侍女達の部屋に挨拶へ向かった。


「おはようっ!」

「おはようございますレキ様」

「「「おはようございますレキ様」」」


部屋に入ったレキは、以前の様に部屋に待機していた王宮侍女達と笑顔で挨拶を交わす。

最初に返してくれたのはサリアミルニス。

学園では魔術講師フィルニイリスの補佐として公私ともにサポートしている彼女ではあるが、王宮に滞在する期間中は以前同様侍女として活動していた。

サリアミルニスはあくまで侍女、学園には出向しているに過ぎないのだから。


レキのお世話が出来ると言うのも、王宮滞在中に侍女として働いている理由なのだろう。


レキが来てくれることを期待していたのだろう、他の侍女達も皆手を止め挨拶を返してくれた。


以前はついでに食事を受け取ったり、あるいはそのまま一緒に食事したりしていたが、今回はフラン以下学園の友人達も一緒に来ている為挨拶だけに留めた。


「この後のご予定は?」

「まず騎士団のとこに顔を出して、朝ごはん食べた後はフィルのとこかな」

「では早朝鍛錬の後皆様とお食事にしましょう」

「うん、よろしく」


そう言って騎士団の鍛錬場に向かったレキは、早朝鍛錬をしていた騎士達から盛大な歓迎を受けた。

昨日はルーシャ達に王宮を案内するという使命(?)があり、騎士団の鍛錬に参加したのは早朝だけだったからだろうか、レキとの手合わせを出来なかった騎士達が今か今かと待ち構えていたのだ。


自己鍛錬を終え、騎士達との手合わせが始まるころには、カルク達も鍛錬場にやって来た。

昨日は王宮の騎士達と共にほぼ一日鍛錬していたと言うカルク達。

手合わせでは十分手加減されていたにもかかわらず、手も足も出なかったそうだ。

大人と子供、何より学生と王宮騎士。

背丈も経験も技術も何もかもが違う。

身の程を知った、と言うほど自惚れていた訳では無いが、それでも王宮騎士の実力をその身をもって知ったカルクである。

今日も今日とで騎士達に指導を受ける為、鍛錬に参加させて貰うそうだ。


レキやフランの学友であるカルク達を、騎士達も快く迎え入れている。

ミームは昨年から引き続きであるし、カルクも血気盛んではあるが素直な少年だ。

騎士達との手合わせにも真剣に挑み、負けて悔しがる姿はそれだけ武術に真剣である証拠。

諦めず何度も挑んでくる姿も騎士達には好印象だったらしい。


「今日も来たか」と笑顔で迎え、手合わせしたり指南したりと実に面倒見が良かった。


卒業後はアランに恩を返す為にも騎士団を希望するフィルアや、子爵家の子女でありながら騎士に憧れているミルなどもまた、騎士達の対応に感激しつつ一生懸命鍛錬に精を出していた。


「やはり実戦で魔術を用いるには無詠唱が必須か」

「一人だとそうやろな」

「詠唱しながら距離を詰めるという戦術もある。

 でもそれには高度な駆け引きが必要」


獣人でありながら魔術を得意とするジガ。

森人でありながら前線で大剣を振るうラリアルニルス。

女性でありながら騎士を目指すフィルア。


種族も得意な戦術も違う三人ではあるが、掲げる目標は一つ。

それは、チームのメンバーとしてアランを支え、今年こそは優勝して見せると言う事。

アランが優勝を目指すなら、自分達はそれを全力でサポートする。

それが、学園生活でアランから受けた恩に報いる事になる。

例え相手がレキだろうと関係ない。

アランが諦めない限り、自分達はそんなアランを信じ力になるだけ。


王宮に来たのだって、騎士団や魔術士団から教えを乞い、実力を伸ばす為だ。


ジガ達も四年生。

武闘祭に出るのも、大武闘祭に出場できるのも今年が最後。

昨年は運よく大武闘祭にコマを進める事が出来た。

もちろん実力があっての事だが、その実力はアランによって身に付ける事が出来たと言っても過言ではない。


効率の良い狩りの為、獣人の学園では習う事が出来ない魔術を会得する為、ここフロイオニア学園にやってきたジガ。

魔術に頼らない戦い方を身に付ける為、大剣を手にやってきたラリアルニルス。

憧れの騎士になる為、入学当初から剣を振るい続けてきたフィルア。


他者からの視線を気にする事無く鍛錬し続けてきた三人は、アランと出逢い今ほどの実力を身に付ける事が出来た。

アランと出逢わなければ、三人は今のような学園生活を送れなかっただろう。


適性の無い獣人の自分に、諦める事無く魔術を教えてくれたアラン。

その身に似合わない大剣を振るうラリアルニルスに、幾度となく手合わせをしてくれたアラン。

騎士を目指すと言う無謀な夢を馬鹿にする事なく、王宮剣術を教えてくれたアラン。


三人がアランから受けた恩は、おそらく一生かけても返しきれないだろう。

それでも、少しでもアランの力になる為、三人は武闘祭で全力を尽くすつもりだ。


その為には、ここフロイオニアの王宮で更なる力を身に付けなければならない。


全てはアランの為。

三人は今の自分達に出来る事を全力で模索し続けるのだった。

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