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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十四章:学園~レキと二年目の学園~
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第463話:レキと学園の女子達

「ミルさんは行かなくていいのですか?」

「えっ、あ、その・・・」


学園に来て一年。

いい加減学園生活にも慣れ、ゆとりも生まれる頃。

二度目の野外演習をも乗り切った二年生達は、ここへきてようやく授業や鍛錬以外にも意識が向くようになった。


すなわち異性。


元々家の命令で学園に入った貴族の子供達は、将来の伴侶を探すと言う目的も持っている。

貴族の婚姻にはどうしても家同士の繋がりが関係し、親が勝手に相手を決める事も多い。

とは言え親同士が一方的に決めた伴侶より、惹かれ合って結ばれる事を望む者は多い。

いつかは婚姻を結ばねばならないと分かっていても、分かっているからこそ相手くらいは自分が希望する者を望んでしまうのだ。


学園とはそういった相手を探す出会いの場でもあったりする。


何せ国中から子供が集まってくるのだ。

光の祝祭日の宴でしかお目にかかれない高位の貴族、王族や公爵、侯爵家の子供もこの学園には在籍している。

あわよくばと考える生徒も少なくない。


貴族位の最高位である両家は、婚姻相手としても最高峰だろう。

例え家格が合わなくとも、お互いが惹かれ合っていれば可能性も生まれる。


貴族は時に余計な力を付けぬよう無難な、爵位の低い家から伴侶を迎える場合も多い。

実際、現在のフロイオニア王国は安定している為か、どの貴族も発展より安定を求める傾向にあった。

逆を言えば、王家が余計な力を付けぬ様子爵や男爵家から伴侶を迎える可能性だって十分考えられるのだ。


アラン=イオニア王子には既に婚約者が存在する。

ティリル侯爵家の子女であるローザ=ティリルは家格的にも申し分ない女性であるが、何よりこれは両者が惹かれ合った結果の婚約である。

つまりは恋愛結婚。

仮にローザの家が男爵家であろうとも、いや平民であろうともアランはローザを選んだだろう。

つまり、王族だからと言って高位の貴族としか結ばれないという訳では無いと言う事。


兄がそうなら妹のフランも。

そう考えるのは何もおかしい話では無く、実際フランが最も懇意にしている異性は平民のレキである。


王族であるフランに限った話では無い。

公爵家の子女ルミニア=イオシスもレキとは懇意にしており、それどころか彼女はレキに対してはっきりとした好意を、恋慕の情を抱いており、何よりそれを隠そうともしていない。

「将来レキ様を支えられる女性になりたいと思っています」と宣言すらしているほどで、そこには他の男子など眼中にありませんと暗に言っているようなもの。


二人が、アランとローザを含めれば高位の貴族四人が求める伴侶の条件に家格は無く、あるのは純粋なる恋慕だった。

そして、四人ともその恋慕を抱く相手と将来を誓い合っている。


フランには今のところ恋愛感情は生まれていないようだが、それでも学園を卒業してもレキと一緒じゃと言う発言をしているし、何よりあれだけ四六時中一緒に居て仲睦まじいさまを見せられれば諦めるしかない。


そんな彼等彼女等に、家の命でお近づきになろうとしていた生徒達は早々に撃沈。

女子生徒も、レキとフラン達の間に割り込むのは無理だろうと早々に他の男子に目を向けていたのだが・・・。


先日のレキの活躍を目の当たりにし、一抹の望みをかけレキにアプローチをかける女子生徒が増えたようだ。


「レキ様はお忙しそうですし、私は先日も稽古をつけて頂きましたので・・・」

「・・・」

「そ、それに私がレキ様に挑むなどやはり無謀と言うか、あれほどのお力を持つレキ様に私などがお相手するなど烏滸がましいと言うか・・・」

「・・・ミルさん?」

「決してレキ様と何かあったわけでは無くてですね。

 ただあの時助けて頂いておきながらこれ以上レキ様の手を煩わせるなどと・・・」

「ミルさん?」


アプローチと言う点では言えば、上位クラス一番手のミル=サーラは昨年からレキにアプローチをかけていた女子である。

とは言え彼女はレキに恋慕を抱いていた訳では無く、彼女が尊敬する王宮騎士団のミリスの愛弟子であるレキを最初はライバル視し、その後は兄弟子として敬っていた。

レキの強さの秘訣を知る為、レキの日頃の鍛錬内容を知る為、そしてレキと手合わせする為。

彼女がかけていたアプローチとはつまりはそう言う事だった。

・・・少なくとも今年の野外演習前までは。


「で、でもさすがはレキ様ですよね。

 魔の森で過ごされいたとはお聞きしておりましたが、まさかあれほどのお力を持っていたなんて。

 武闘祭でレキ様が見せたお力などその一端でしか無かったのですね。

 いえ、騎士団長様に勝利された事は聞き及んでおりますし、魔の森のオーガすら倒された事も知っております。

 でもあの黄金に輝くレキ様のご雄姿など、今もまだ瞼に焼き付いて・・・」

「・・・ミルさん」


野外演習以降、彼女のアプローチは明らかに減った。

話しかけたそうにレキを見つめたり、手合わせの順番に並ぼうとして躊躇したり。

以前はレキに次いで早起きしては一緒に剣を振るっていたと言うのに・・・。

今は早起きこそすれレキの鍛錬を眩しい物でも見るかのようにただ見つめるだけ。


まあ、ミルも女子。

将来は騎士団に入りたいと願っているとはいえ、年頃の少女なら仕方のない事。


何より相手はレキである。


自分もレキに救われ、感謝から恋慕に至ったルミニアとしては、ミルの気持ちは痛いほど分かる。

分かってしまう。


「それにレキ様は」

「いいのですよミルさん。

 レキ様は将来フラン様の伴侶として共にフロイオニア王国を導いて行かれます。

 ミルさんはそんなレキ様の騎士として王宮に使えれば良いのですから」

「き、騎士っ!

 わ、私がレキ様の・・・」


ルミニアの言葉に顔を赤くし、何やら思案に耽り始めたミル。

恐らくは将来、王宮騎士団の鎧に身を包み、レキの隣に立つ自分でも想像したのだろう。


「まあ、レキ様に護衛が必要になるとは思いませんが」

「・・・ですよね」


レキを守りながら戦う光景だけは想像できなかったらしい。


自分より圧倒的に強い者をどう守ればよいのか。

むしろ足手まといではないか。

実際窮地を救われている分、守られる光景だけは容易く想像できてしまい、ルミニアとミルは仲良く肩を落とした。


――――――――――


レキとお近づきになろうとする女子は多い。


その大半は貴族の家の子供であり、当然ながら将来を見据えての事。

もちろん平民の女子とて、学園で将来の伴侶を探そうとする者はいる。

家の両親に言われたり、貴族の女子達に感化されたり。

あるいは純粋にお年頃だった人と、その理由は様々だがどの女子も将来の優良物件をGetする為に必死になる。


今はまだ二年生と言う事もありそこまでではないが、四年生ともなればそれはもう必死に、男子がドン引きするくらい必死にアプローチを仕掛ける女子も現れるそうだ。


「レキ君は最優良なのですから、夜中に女子生徒がたずねてきても、決して部屋に入れてはいけませんよ」

と言うのはリーニャからの忠告である。

いわゆる既成事実と言う事なのだろう。

それほどまでに必死なのだ。


「あ、でもフラン様ならいいですよ」

とも、リーニャには言われているが。


以前なら、平民であるレキなど眼中になかっただろう。

例えレキがフランやルミニアの恩人にしてフロイオニア王国の英雄であろうともだ。

所詮は平民。

どれほど強かろうとも、将来は精々騎士か魔術士団。

王宮に伝手があるなら王宮のとなるだろうが、それでも他家に嫁ぐ事を考えればそれほど魅力的では無い。

両親からもなるべく家格の高い家の子供をと言われている。


だが、レキが大武闘祭で優勝し、その名を他国に知らしめた事で状況は変わってしまった。


獣国はレキの強さを讃え、森国はレキの魔力に敬意を示す。

山国はいずれレキに相応しい武具を作り上げて見せると意気込み、商国はそんなレキに商機を見出している。


教国はレキを光の精霊の申し子だと崇敬し、編入生と言う形で使者を送り込んですらいる。


他国がどれほどレキを重要視しているかは編入生のルーシャを見れば一目瞭然。

出逢ったばかりのレキにあれほどの敬意を示したのだ。

さぞかし教国から言われてきたのだろうと、誰もが思った。


実際、ルーシャも姉代わりのファイナやライカウン学園の学園長、更には教皇フィース=ミル=ライカウンからくれぐれもレキ様に無礼を働かぬ様強く言われてはいるが、お近づきになれとは言われていない。

恐れ多いからだ。

あと、お近づきになるなら自分が、という思惑も無くは無いが。


そんなルーシャも編入直後は敬意こそ抱いてもそれだけだった。

あるいは興味だろう。

ファイナや学園長、教皇までもがあれほど崇敬するレキという子供はどんな存在なのだろうかと。

それが今となっては興味も敬意もすっ飛ばし、立派に崇敬しているのだから・・・。

真直に見て、接して、そして崇敬するようになった。


そんなルーシャの行動さえも、他の生徒からすればライカウン教国がわざわざレキに使えさせるための従者を送り込んだようにも見えた。


つまりレキは、フロイオニア王国のみならず六か国全てにおける重要人物であるという事。

それほどの人物とお近づきになれば・・・。

彼女達の将来は安泰である。


幸いレキは実力のみならずその容姿にも優れている。

今はまだまだ可愛らしいという表現の方が適しているが、あと数年もすれば男らしくも綺麗な容姿になるに違いない。

性格も好ましく、純粋過ぎるきらいはあるが嫌う要素にはならない。


更には先の野外演習で見せた雄々しい姿。

自分達を背に守りながら戦うその雄姿。

仲間の窮地に飛び出し見事救い出した光景は物語の英雄のごとく。

そんなレキの姿に見惚れた生徒は多く、実力はあれど中身は幼いただの子供であるというそれまでのレキの評価は、純粋な心を持ち、仲間の為にその剣を振るう真の英雄となっていた。


――――――――――


これまでレキへのアプローチが少なかったのは、何もレキが平民だったからという理由だけではない。

レキの周りには、自分では到底敵わない女子が常にいた事も、他の女子生徒がアプローチを控えていた理由である。


王族のフラン。

公爵家の子女ルミニア。

王侯貴族でも最高位の二人がいつも一緒に居てはアプローチなど仕掛ける事もままならない。

容姿に優れ、性格も良く、二人ともレキに好意を抱いている。

レキも二人を嫌ってなどおらず、恋慕は無くとも親愛の情は深い。


授業も一緒で休暇も一緒。

食事も一緒とあれば、他者が割り込む隙などどこにも無かった。


だがそれも一年生までの話。

二年生から始まる選択授業、レキとフラン、ルミニア達は授業が分かれ、そこに他の女子が介入する隙が生まれた。


レキの人気は高く、その理由は出自や実力だけではない。

毎日欠かさず中庭で剣を振るう様は人を引き付け、手合わせを申し込めば誰とでも気軽に付き合ってくれる。

レキに指南を受けた生徒も多く、無詠唱魔術のコツを聞いた生徒も多い。

魔術に関しては感覚で行っている部分が多い為、教えることは出来なかったようだが、武術に関してはフランやルミニアの指南役を務めていた事もあり申し分ない。

あの大武闘祭で優勝したレキが直々に教えてくれるとあり、手合わせを申し込む列は日に日に長くなっている。


元は我流だったレキの剣術も、王宮でミリスを始めとした王宮騎士団と鍛錬する事により立派な剣術へと昇華した。

苛烈にして洗練されたその剣術に憧れる生徒も多く、時折披露してくれる剣舞は異性同性関係なく魅了する。


模擬戦を挑めば一瞬で終わってしまうが、手合わせならこちらの全力を出させた上で勝負を決める。

稽古を願えば、こちらの悪いところを指摘すらしてくれるのだ。


今年の二年生が全体的に優秀と言われている理由の一つは、間違いなくレキにあると言って良い。


そして座学。

選択授業でレキと席を共にした生徒達は、レキの普段の様子に最初は驚いた。

あんなに強く、他国からも一目置かれている学園最強の生徒が、座学の授業でまさか居眠りするとは・・・。

レイラスなどから鉄拳をくらい、頭をさする様子はどこにでもいるちょっと抜けた生徒のそれ。


一応、学園に来る前から王宮で勉強をしていただけあって、レキの成績は悪くはない。

ただ、ルミニアやファラスアルムに比べれば数段劣るし、何よりレキは頭を使うより体を動かす方が好きなのだ。

故にただじっと授業を聞くだけの座学ではどうしても眠くなってしまい、毎度の様に鉄拳を喰らっている。


そんな様子に最初は戸惑っていた他クラスの生徒。

だが、その様子こそがレキが英雄では無く自分達と同じ生徒である証明にもなった。


武術ではあんなに勇ましいレキが、座学の授業でしょっちゅう居眠りしてはレイラスに鉄拳を喰らっている。

さほど痛みは無いはずなのに、それでも涙目で頭をさする様子は年相応の子供でありその容姿もあって可愛らしくも見えた。


いわゆるギャップである。


もちろんレキが意識してやっているわけでは無いが、レキの人気は更に高まっていった。

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