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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十三章:学園~二度目の野外演習~ 後編
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第459話:光の精霊の申し子様の恩人たるお方、リーニャ様

話は尽きず、日はすっかり傾いていた。


レキ達は外出届こそ出しているが外泊が許されているわけでは無い。

食事に関しては寮でとろうが外で食べようがどちらでも良いが、就寝時間までには寮に帰らねばならないのだ。


本日は昼も夜も食事はリーニャを交え宿でとったレキ達。

まだまだ話足りず名残惜しそうにするフランを引きづり、レキ達は何とか日が沈み切る前に寮へと戻る事が出来た。


昨年の武闘祭以来である。

話題はまだまだたくさんあった。

それこそ、つい先日までレキ達は野外演習でゴブリンと戦ったばかり。

昨年はあまり連携も取れず、何とか撃退できたに過ぎないゴブリンの群れとの戦いを、フランは英雄譚の一節の様に語った。

レキの活躍もさることながら、今年はフラン達も力を合わせて戦っている。

誇る事の出来る内容に、リーニャも嬉しそうに聞き続けた。


そんな楽しい一日を終えたレキ達は、翌日もまた街へと繰り出した。

一応本日の目的は野外演習で消費したお茶などの買い足しである。

基本的な食事の材料は学園が用意してくれたが、お茶などのいわゆる嗜好品は各自で用意せねばならず、最上位クラスはルミニアが代表して用意してくれていた。

六日間の移動でお茶もすっかり空になり、本日買い出しにと繰り出したのである。


もちろん、リーニャのいる宿に顔を出すのも忘れていない。

リーニャは王宮侍女。

それもフランや王妃フィーリアの専属侍女である。

非常に優秀な彼女はお茶にも詳しく、何よりフランやレキの好みも熟知している為ルミニアやユミがアドバイスを受けるにはもってこいだった。


と言う事で、本日の買い出しはリーニャをアドバイザーとして連れまわす事となったのである。


――――――――――


「まさかレキ様とお会いできるとは・・・」

「いつかとは思っていましたが、こんなに早く」


ただの買い出しのはずがまさかのレキとの会合。

更にはレキが慕いお世話にもなったと言うフロイオニア王宮侍女のリーニャとも会い、紹介までされてしまった。

素晴らしき幸運に恵まれた二人は、教会に戻ると真っ先に創生神と精霊に感謝の祈りを捧げた。


彼女達が他国であるフロイオニア王国の教会に派遣されたのは、彼女達が優秀であると言う理由以上に、ここアデメアの街にレキがいるからだ。

二人のみならず、ライカウン教国全体でも崇敬の対象となっているレキ。

光の精霊の申し子として半ば神格化すらしているレキと同じ街にいられると言うのは、ライカウン教国の者なら誰もが羨む事態だ。

もちろん希望者は多く、本来ならいくら優秀だとは言え卒業したばかりの二人がアデメアの街に派遣される事は無い。


それが叶ったのは、ひとえに二人がレキと見知った仲だからだ。


リーラもファイナも大武闘祭の期間中にレキとは何度も言葉を交わしている。

リーラに至っては、クラスメイトのファラスアルムの悩み相談に乗った事で感謝すらされている。

そんな二人がレキのいるアデメアの街の教会で働いていれば、あるいはレキも教会に、更には教国そのものも興味を持ってもらえるかもしれない。

そんな打算から、二人が派遣される事になったのである。


もちろん二人も了承の上だ。

と言うかアデメアの街の教会に派遣される事を二人も強く、それはもう非常に強く希望している。

レキと同じ街に住む。

それだけでも素晴らしいと言うのに、十日に一度の休暇なら偶然レキと出逢える可能性すらある。

二人が希望するのは当然であった。


ライカウン教国も他国についてはある程度調査している。

特にフロイオニア学園については、レキがいる事からそれはもう些細な事までだ。


二人も大武闘祭でレキやファラスアルム達から学園生活についてそれとなく聞いており、十日に一度の休みにはみんなで街に出ているという事も把握していた。

故に、時間を合わせればあるいは出逢えるかもという期待をしていた。

加えて今年フロイオニア学園に編入したルーシャに手紙を渡し、ぜひ一度レキ様を連れて教会に来てくださいと招待すらしていた。


まさか偶然、本当に偶然レキと出逢えてしまった。

これほどの幸運、二人にとっては軌跡以外の何物でもない会合に、創生神や精霊に祈らずにはいられなかった。


「リーニャ様でしたね」

「はい、レキ様が大変お世話になられた方だとか」


二人は本日、新たなる出会いを果たした。


レキが王宮でお世話になった女性リーニャ。

レキ曰く、魔の森で独り生きてきたレキが出会った女性であり、レキが魔の森を出る最初のきっかけとなった女性。

リーニャにとっても、レキは自分と何よりフランを助けてくれた恩人。

王宮でお世話をしたのは恩返しでもあったと言っていた。


二人の親密さは見ていれば良く分かった。

レキはリーニャを姉の様に慕い、リーニャもまたレキを弟の様な親愛の情が見て取れた。

羨ましい、そういった感情が無かったわけではないが、それ以上に感謝があった。

リーニャがいなければ、レキが魔の森を出る事は無かったかも知れない。

いずれは出たと言っていたが、それはレキが冒険者になれる年齢、十五歳になってから。

当然学園に来る事は無く、大武闘祭でリーラ達と出逢う事も無かった。


そもそも学園の存在自体知らなかったのだ。

例え子供のうちに森を出たとて、おそらくは狩りでもしながら十五歳まで過ごした事だろう。


リーニャがいなければそうなっていた可能性が高く、リーニャがいたからこそレキは学園に入り、様々な出逢いを果たしたと言う事。

二人がリーニャに対しても感謝をするのは当然である。


それが無くとも、リーニャという女性は実に素晴らしい人物だった。

王族の専属侍女を任されるくらいなのだから優秀なのは当然。

見目麗しく、気品と落ち着きを持ち、レキや王女であるフランが姉の様に慕っている事から内面も素晴らしい事が分かる。


「出来ればもう少しお話をさせて頂きたかったですね」


レキの話も非常に興味深かったが、それを抜きにしてもリーニャともっと話がしたかった。

女性としても憧れるほどの魅力があり、王宮の侍女としての様々な知識や経験があり、加えてレキとも親しいとなれば何をおいても親しくなりたい相手だ。

レキの好みについてももっと聞きたいし、レキの王宮での生活についてももっと聞きたかった。

何なら教会で盛大にもてなし、レキ様を我々に遣わして下さった素晴らしき女性としてライカウン教国に紹介したいくらいだ。


リーニャは明日以降もアデメアの街の宿に宿泊していると言う。

野外演習の期間中、護衛の任に付いている騎士団の為、アデメアの街で様々な物資の手配などを行うらしい。

フランやレキに逢えるからと、本人も自ら志願したそうだ。


お互いが大切に想い合っている素晴らしい関係。

そんな彼女に、羨望と敬意を抱くリーラとファイナである。


レキ教などと言う教えがあれば、リーニャは教祖か何かに祭り上げられたかも知れない。


――――――――――


この機会を逃すべく、リーラとファイナは後日何度かリーニャの宿泊している宿にお邪魔した。

もちろんリーニャの迷惑にならぬ様、尋ねる際には事前に連絡も入れたし、出来るだけ長居も避けた。

リーニャに失礼が無いよう、また邪魔にならぬ様配慮し、加えて二人で押しかけては迷惑だろうと交代でだ。


二人が派遣されている教会は、言うまでも無く精霊信仰を司るライカウン教国の教会である。

当然そこに勤める者達も創生神や精霊を崇める者達であり、レキに対する崇敬の念も立派に抱いている。

外ならぬライカウン教国教皇フィース=ミル=ライカウン直々に光の精霊の申し子様という通達を受けているのだ。

未だレキの黄金の魔力を見たわけでは無いと言うのに、伝え聞いた言葉だけでレキを崇敬する辺りさすがはライカウン教国の者達である。


仮に、教会の者達がレキの黄金の魔力を実際に見たなら・・・。

教会は涙で溢れ、感謝の念が教会全体を覆い尽くす事だろう。

近いうち教会の方にも顔を出す、とレキはリーラ達と約束を交わしている。

その日がやって来るのは確実だった。


なお、教国からはなるべく自重するようにも通達を受けている。

レキはあくまで学生であり、何よりレキ本人が自分を学生扱いして欲しいと思っている。

過剰に持ち上げたり信仰したり意味も無く祈ったりするのは止めて欲しい。

出来ればフランやルミニア達と同じように接して欲しい。

それがレキの願いであるなら、叶える事こそが教国の者達の務め。


そこに「羨ましい代われ私も行きたい」という念が込められている気がしないでもないが、とりあえずレキの迷惑にだけはならないよう念は押されている。

その為、教会の者達は極力こちらから手を出さないようにしているのだ。


今は溢れる崇敬の念を抑え、一般の方と同様の扱いを心掛けなければならない。


なお、リーラとファイナはルーシャからレキの好みを既に聞き出している。

何時レキが来ても良いよう、レキの好きなお菓子や茶葉を取りそろえ、更には料理の材料も欠かさない。

いつかレキが来たなら、自重しつつも盛大に歓迎し、あの手この手で持て成す事だろう。

それでレキが気に入れば、十日に一度の休暇はレキ様をお迎えする日として教会の基本行事の一つになるに違いない。


もっとも、レキだって休暇の度に教会に向かうはずが無い。

フラン達と買い物もしたいだろうし、雨など降ろうものなら寮でおとなしく過ごす事だろう。

独占したい気持ちを抑え、レキの学生生活を優先する事もまた、教会の者の務めであった。


それでもどうしてもレキ様をお迎えし、盛大に持て成したいという教会の者達にとって、リーラとファイナ両名の赴任は渡りに船だった。

崇敬するレキ様にひと目お逢いしたい、伝え聞いた黄金の魔力に触れてみたいという想いが溢れ出る者達にとって、二人はそんなレキが自ら教会に足を運ぶきっかけとなるからだ。

ファイナの妹分であるルーシャがレキと同じクラスに所属している為、そのルーシャの案内で教会にも足を運びやすい。

なんなら休暇の昼食は毎度教会でとってもらうのも良い。

レキ達も金銭が浮くし、こちらはレキ様を持て成す事が出来る。

お互いに利があるのだから、この提案はもしかしたら受け入れてもらえるかもしれない。


更にリーラはレキのクラスメイトであるファラスアルムの相談に乗った事で、レキ達全員から感謝されていると言う。


レキのクラスメイトであるファラスアルムが慕っているリーラ。

レキのクラスメイトであるルーシャの姉代わりであるファイナ。


両名はアデメアの教会にとってかけがえのない存在となった。

そして今回、実際にレキに逢い教会に来てもらえるよう約束を取り付けた為、二人は教会にてまるで英雄であるかのように褒め称えられた。


後は実際にレキ様をお出迎えし、盛大に持て成すだけ。

その日がいつ来ても良いよう、その日からアデメアの教会はいつにもまして綺麗になり、お茶やお菓子などが潤沢に置かれるようになったと言う。


――――――――――


とは言え問題が無かったわけでは無く。

レキが来るのは早くても次の休暇。

レキと実際に逢い、いろいろと話をしたと言うリーラとファイナの話を受け、私達もお話ししたいと思ってしまうのは人として仕方のない事。

そんな教会の者達にとって、リーニャの存在はレキと逢いたくとも逢えない心の空洞を埋めるにはもってこいだった。


リーニャは何も遊びでアデメアの街に来ているわけでは無い。

野外演習の護衛の任務を受け、アデメアの街や実際に演習が行われるアデニアの森に派遣された騎士団のお世話や物資の管理、あるいは不足した物資の購入の為アデメアの街に滞在しているのだ。

つまりは仕事である。

なんだかんだと忙しいリーニャの邪魔をしてしまえば、レキへの印象もまた悪くなるに違いない。


そうリーラやファイナに言われ、それでも一度くらいはと諦めきれない教会の者達との長い話し合いの結果、リーニャの都合の良い日に一度、短時間でも良いから教会に来てもらえないかと打診する事になった。

リーニャが拒否すればもちろん無し。

受けて貰えた場合も、リーニャの負担にならぬ様最大限配慮するという条件で。


とは言え、招かれるのはフロイオニア王国王族付き侍女のリーニャ。

招くのはライカウン教国の教会である。

ある意味これは外交の一環である、残念ながらリーニャの方に断るという選択肢は無かった。


後日、リーニャは護衛の騎士を伴い教会へと向かった。

そして・・・。


リーニャはこれでもかというほどの歓待を受ける事になった。


――――――――――


リーニャはあくまでフロイオニア王国の侍女である。

間違ってもレキの母親でもなければ姉でもない。

いくらレキが姉の様に慕っていても、レキとリーニャの間に血の繋がりは無いのだ。


にもかかわらず、教会の者達はリーニャをレキの身内の様に持て成した。


レキに対する心象を良くしようと言う下心と、フロイオニア王国の王族付き侍女であるリーニャに無礼な真似は出来ないと言う外交的配慮。

何よりもレキの話を聞きたがった教会の者達の思惑が重なり、リーニャはまるで王族のような歓待を受ける事になってしまったのだった。


流石のリーニャも多少戸惑い、そして若干辟易した。


レキが他国にどう思われているかは聞かされている。

獣国からはその武力を、森国からは黄金の魔力と無詠唱魔術を、山国からは最高峰の武具の使い手として。

商国からはそんな他国から重んじられているレキを商売のタネとして。


教国からは、光の精霊の申し子様として崇敬の念を集めていると。


タイミングも悪かった。


リーニャが教会に訪れる数日前、レキもまたリーラやファイナとの約束を果たす為教会へ行っていた。

その際、教会の者達に乞われたレキはその黄金の魔力を披露したのだ。


光の精霊と見紛う黄金の輝き。


神話に聞く輝きを、あるいは教会に飾られている絵画のごとき眩い光を目の当たりにしたライカウン教国の者達は、誰もが涙し祈りを捧げた。

既に何度か見ているルーシャやリーラ、ファイナですら感涙し膝から崩れ落ちたと言うのだから、初見の者達の感動はいかほどのものだったか・・・。


そんなレキが姉の様に慕っているリーニャと言う女性。

教会の者が最大級の敬意をもって持て成すのも当然だろう。

侍女であり、他者を持て成す事に慣れているリーニャですら戸惑うほどのもてなしを受け、若干疲れすら見せるリーニャである。

それでも彼女達のもてなしは純粋たる好意・・・とは言えないかも知れないが、少なくとも悪意があっての事ではなく、当然ながらリーニャを害する考えなど欠片もない。

心証を良くしようと言う下心こそあれど物欲的な見返りは求めていない為、リーニャもおとなしく、あるいは諦めて歓待を受ける事にした。


リーニャが忙しく、都合がついたのが僅か半日だったのはある意味幸いだった。

もちろん幸いだったのはリーニャ側で、教会側からすれば一日どころか数日は持て成したかっただろうが。


後日、王都に戻ると言うリーニャの見送りに来たレキは、彼女がら何故か恨めしそうな目を向けられたらしい。

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