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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十三章:学園~二度目の野外演習~ 後編
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第446話:移動開始、そして戦闘へ・・・。

「それでは移動を開始しろ」


レイラスの号令で、レキ達二年生は予定通り移動を開始した。

戦闘は上位クラス。

ミル=サーラ指揮の下、しっかりと隊列を組んで歩き出す。

その後ろに中位クラスが、更に下位クラスと続いた。


レキは上位クラスのすぐ後ろに付き、右にルミニア、左にガージュが並んでいる。

後方には教師や護衛の騎士達が控えている為、少しばかり前よりに配置したのだ。


レキの役目は索敵や警戒、と言っても特にやる事は無い。

精々ゴブリンが近づいてきたらレキがルミニアに伝える程度。

最悪レキが飛んで行って倒してしまえばよく、少なくともレキやルミニアには余裕がある。

と言ってもあまりおしゃべりが過ぎればゴブリンを引き寄せ、余計な戦闘行為が発生してしまう為、会話は極力少なく、するときは小声でと徹底されている。


「ゴブリンはどの辺りにいる?」

「んっと・・・向こうの方」

「こちらに気付いていそうですか?」

「ん~・・・まだ大丈夫」


森の外からでもゴブリンを察知できるレキがいる以上、奇襲を受ける事はまずない。

連携こそ使ってこないゴブリンだが、単体では勝てない事を本能で理解しているのか襲う時は常に複数で襲ってくる。

その為、ゴブリンが近づいてくればレキで無くとも察知し易い。


もちろん音の届く範囲での話だが。


遠くにいるゴブリンの行動を知るには、ある程度の気配察知能力か魔力探知能力が必要となる。


なお、魔物は基本魔力を持たない。

魔素を直接取り込み己の力としている為、魔力に変換する必要が無いのだ。

とは言え魔素は魔力の元であり、その性質は魔力に近い。

故に、魔力探知を使えば魔素の塊である魔物を見つける事が出来るのである。


そこまでレキが知っていた訳では無い。

だが、魔力探知を行う事で魔物も見つけられる事は知っていた。


レキは今、魔力による探知を行いながら歩いている。


本来なら、レキほどの質の魔力を用いて魔力探知を行えば、いかに知恵の無い魔物とて危険を感じ避けるはずだった。

だが、ここにはその危険を犯してでも襲いたくなる獲物が集まっている。

前日の反省から、魔力探知に用いる魔力を抑えていたのも影響しているのかも知れない。


どれほど声を抑えても移動の際に生じる音は消せない。

足音、草を踏む音、木の枝を踏み折る音。

邪魔だからと枝を手折った音。

そのどれもが、ゴブリンにこちらの場所を教える音となる。


「あっ」


恐怖より食欲が勝るゴブリン共が、レキ達の方へと移動を開始した。


――――――――――


「来る」

「どっちだ?」

「えっと、右の方が早いかな?」

「分かりましたっ!」


遠方にいるはずのゴブリンの一群が、レキ達に向けて移動を開始したらしい。


ゴブリンは森に適性を持つ魔物である。

それは何も、個体の大きさや森に溶け込む皮膚の色だけではない。

人が歩く音、草や木の枝を踏む音、木の葉を手で払いのける音。

移動の際に発するありとあらゆる音を、ゴブリンはある程度離れた距離から察知するのである。


それは獲物を確実にとらえる為のゴブリンの能力。

あるいは食料にありつく為の生物的な能力か。

100人以上が発する音を、ゴブリンが聞き逃すはずが無い。


「右側面からゴブリンが現れますっ!

 皆さん、戦闘の準備をお願いしますっ!」

「えっ!?」

「せ、戦闘?」

「準備って・・・」


これまでチーム単位での戦闘しか行っていなかった二年生が、ルミニアの指示にどまどった。

チーム戦における戦闘準備は前衛・中衛・後衛に分かれ陣形を組む事から始まるが、今は二年生全体での移動中、チームごとに分かれているわけでは無い。

戦闘は最小限で切り抜けるという指示もあり、身構えたは良いがその後どうすれば良いかほとんどの生徒がさっぱりだった。


「魔術が使える方は詠唱の準備をお願いしますっ! 

 赤系統は避けて、青か緑系統でお願いします」

「お。おお」

「はいっ!」


「前衛の方は魔術士の前に出て下さい」

「わかったっ!」

「そう言う事ならっ」


「中衛、遊撃要員の方はしばらく待機を。

 ゴブリンが最接近してきた場合、個別に撃破をお願いします」

「任せろっ!」

「おうっ!」


そんな生徒達の戸惑いも、続くルミニアの指示により持ち直した。

100人いようと生徒一人一人が担う役割は変わらない。

自分が任された事を全力で精いっぱいやれば良いのだ。


「レキ様はそのまま索敵をお願いしますね」

「うんっ!」

「では、フラン様、ユミさんは前に。

 ファラさんは牽制の魔術をっ!」

「うむっ!」

「わかったっ!」

「は、はいっ!」


「左も時期に来るぞっ!

 カルクとミームは今のうちに前に出ておけ。

 ルーシャは詠唱の準備だっ!」

「おうっ!」

「ええっ!」

「は、はいっ!」


移動中、最も気を付けなければならないのは奇襲である。

特に森と言う木々に視界を遮られている環境では、いつどこから魔物が襲ってくるか分からない。


だが、今年の二年生にはレキがいる。

レキの索敵能力で奇襲を完全に防げてしまう以上、後はいつも通り戦うのみだ。


「ミルさん達は止まらず移動をお願いします。

 魔物の対処は私達が受け持ちますので」

「分かりましたっ!」


目的はあくまで森を抜ける事。

襲撃の度、いちいち全力で相手していては何時まで経っても森を抜けられない。

戦闘はレキ達が基本を担い、他の生徒は牽制や接近してきた場合の排除のみを任せる。

そうして少しでも距離を稼ぎ、全員で森を抜けるのが何よりも大切なのだ。


「来ますっ!

 ファラさんっ!」

「はいっ!」


そうして身構えつつ移動をしていたレキ達の横、木々の隙間からついに数匹のゴブリンが現れた。

ギャーギャー騒ぎながら跳ねるように近づいてくる深緑色の魔物に、ファラスアルムの魔術がさく裂した。


「続けて魔術士の方お願いしますっ!」

「おうっ!」

「はいっ!」


撃退が目的でない以上、近づけさせなければいい。

フランやユミと言った前衛、中衛の攻撃要員が前に出るには早く、まずは魔術による遠距離攻撃にて排除を行う。


「左も来た」

「っ!

 どのくらいだ」

「えっと、3分くらい?」

「ちっ!

 ルーシャ、行けるか」

「お、お任せくださいっ!」


お次はガージュの番。

元より実力でも知識でも指揮官としてルミニアに劣っているガージュは、それでも負けまいと努力してきた。

せめてレキやみんなの足手まといにならぬ様、指揮だけはと様々な戦術を学んでいる。


「中位クラスの魔術士は詠唱準備っ!

 下位クラスは中位クラスが魔術を放った後だ」

「あっ、前からも来る」

「っ!

 上位クラスっ、前からも来るぞっ!

 油断するなっ!!」


二年生全100名、森の中ゴブリンの群れとの戦闘に突入した。


――――――――――


ゴブリンはゴブリンを呼ぶ。

これはゴブリンがその数をあっという間に増やすところからきている言葉ではあるが、同時にゴブリンとの戦闘では次から次へと増援が来てきりが無い様子からくる言葉でもある。

実際、つい先ほど戦闘に突入したレキ達フロイオニア学園二年生達は、あっという間にゴブリンの群れに囲まれていた。


ただでさえギャーギャー騒ぎながら近づいてくるゴブリンである。

その声がゴブリンを呼び、気が付けば四方を囲まれてしまう。

ましてや森の中で戦闘など行おうものなら、あっという間に群がられ囲まれるのは当然なのだ。


「上位クラスは前方のゴブリンに集中してください」

「左っ!

 前に出すぎだっ!

 カルクっ!!」

「おうっ!」


戦いの中心にいるのは最上位クラス。

実力は元より魔物との戦闘経験も豊富な者が多く、ルミニアやガージュの指揮の下二年生全員を守るべく奮戦していた。


「ファラさんっ!」

「はいっ!」

「フラン様っ、ユミさん!」

「うむっ!」

「うんっ!」


もはや阿吽の呼吸。

細かい指示など出さずとも、ファラはルミニアの目線だけで適切な方へと魔術を放ち、フランとユミが討ち漏らしたゴブリンを仕留めに出る。


「カルク、ユーリ。

 下位クラスは任せた」

「おう!」

「ああ」

「ルーシャは二人の支援を」

「は、はいっ!」


ただ、二年生全百名の内最上位クラスは僅か十名。

実力的には特出していても、残る九十名をたった十名で守り切れるかと言えば正直厳しい。


縦に長い隊列もまた、少数での守りを厳しいものにしていた。

前方は上位クラスに、後方は付き添いの教師や護衛の騎士団に任せればよいが、それでも左右を守るには十人では足りないのだ。


「レキ様、増援は?」

「後ろ、は大丈夫として、うん、次は右」

「フラン様、ユミさん、一度下がってくださいっ!」


レキが出れば殲滅も容易いのだが、この後一年生の野外演習が控えている。

昨年ルミニア達が経験したように、今年の一年生も何も知らず森に入り魔物の脅威を知るという経験をせねばならなず、その為にはある程度のゴブリンは残しておく必要があった。


というか、別に森のゴブリンを殲滅する必要は元から無い。

これもまた演習の一環。

昨日はチームでのゴブリン討伐を経験した二年生達、本日はいわば中~大規模な部隊での戦闘、あるいは撤退戦を経験しているとも言えるのだ。


「くっそ、次から次へと・・・」

「文句を言ってる暇があったら目の前のゴブリンを倒せ、ライ=ジ」

「うっせぇ!」


あくまで森を出る為。

戦闘が発生するかも知れないとは言われているが、発生した場合どう対処すれば良いかの指示は受けていない。

当然どうすれば良いか自分達で考えなければならず、つまりはこれもまた演習なのだ。


「うらっ!

 待ちやがれっ!!」

「なっ、待てライ=ジ」

「うっせぇ!」


次から次へと現れるゴブリンに業を煮やしたのか、ライ=ジが森の奥へと駆け出した。


逃げる為ではない。

迎え撃つのを止め、援軍の切れ目を狙いこちらから攻め込む為だ。

まあ、彼の性格上迎撃と言うのが合わなかったのかも知れない。


これが騎士団であったなら、このような勝手な行動は厳罰である。

だが彼もまた学生、フロイオニア学園の二年生。

総指揮をルミニアが、その補佐をガージュが務めているとはいえ、誰もが素直に従うかと言えばそうはいかない。


「あいつらだって戦ってんじゃねぇか!」

「それは事前にっ」

「うっせぇ!

 俺だって倒せんだよっ!」

「ライさんっ!」


フロイオニア学園は実力主義であり、最上位クラスの面々はその主義に相応しい実力者ぞろい。

武術ではクラスで八位のガージュですら、上位クラスが相手なら負けやしない。

それでも、いやだからこそ、負けん気の強い者ほどそんなガージュ達ばかりが戦っている現状が不満で仕方なかった。


これではまるで、自分達がただ守られるだけのか弱い子供ではないか。

昨日は自分達だってゴブリンと戦えたのだ。

ゴブリンが襲ってくるなら返り討ちにすればいい。

全部倒せばこんな風にちまちま移動する必要も無い。


そんな事を考えたのかは分からないが、それまで余計な手を出さぬよう我慢していたライ=ジの限界が来てしまったようだ。


それがきっかけとなり、撤退戦はゴブリンとの全面対決へと移行したのだった。

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