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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十二章:学園~二度目の野外演習~ 前編
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第440話:見張りと話し合い

「武闘祭のチーム戦などと一番違う点は、ゴブリンには連携を取るような知恵が無い事でしょう。

 ただし、その分数は多いですし私達が予想もしない行動に出る場合があります」


話し合いは具体的な戦い方へと移行した。


日中戦い苦戦した生徒も多い為か、ルミニアの言葉はしっかりと頭に入ってくる。

魔物の生態についてはある程度授業でも習っているが、知識として知るのと実際に体験するのとでは理解度が違う。

なるほど、と言った言葉がそこかしこから聞こえていた。


「ゴブリンにとって私達は御馳走です。

 目の前に現れたら食らいつかずにはいられないのでしょう」


だからこそ、ゴブリンは我先にと襲ってくる。

牙を、爪を立て、この獲物は俺の物だと、早い者勝ちだと言わんばかりに。

そこに連携など何もない。

獲物を独占する権利を勝ち取る為、少しでも早く食らいつこうとしているのだ。


「前衛の働きが大事です。

 前衛がゴブリンを引き受けてくれれば、その分後衛の負担が減り魔術などで攻撃や支援する余裕が生まれます」


向こうに多少なりとも知恵があれば、回復や支援を担当する後衛を先に潰そうとするかも知れない。

実際、魔物の中には魔術士を優先して狙ってくる種類もいる。

それが戦術的なものなのか、魔力か何かに反応しているだけなのか、あるいは弱そうな個体から狙っているからかは不明だが、所詮は魔物と侮ればたちまち壊滅してしまうだろう。


幸い、ゴブリンにはそのような習性は無く、ただただ矢継ぎ早に襲い掛かってくるだけ。


「そういう意味ではカルクやミームの動きはまぁまぁだったな。

 どちらもただ目の前のゴブリンに集中していただけだろうが」


それでもゴブリンを引き付けるという意味では成功していた。

実際、最上位クラスの戦闘では最後までガージュ達後衛がゴブリンに狙われる事は無かった。


「・・・私達は、ライさんが」

「一人で突っ込んで行ってしまいました」


「木が邪魔で・・・」

「挑発しても意味なかったのか・・・」

「赤系統禁止って言われて・・・」


それぞれに反省すべき点は多かった。

ルミニア達ですら湖に到着後は多少なりとも反省会を行っていたのだ。

他クラスなら尚更だろう。


一年間の鍛錬で強くなったつもりで、もう昨年のような無様は晒さないと意気込み、いざ戦ってみれば上手くいかない。

良くある話だが、それが実戦なら死にも繋がる。


「鍛錬と実戦は違うとは良く言いますが、試合と魔物との戦闘も違うという事です」


実戦に開始の合図は無く、こちらの準備が整うのを待ってくれるはずも無い。

負けて武器を手放したところで、見逃してくれるはずもない。

死が待っている以上、生徒達に負けは許されない。


言い訳など意味は無く、死ねば言い訳すら出来ない。

後悔も反省も生きてこそ出来る行為。


ここにいる生徒は全員が敗北を経験している。

だが、実戦での敗北が何をもたらすかを知る者は少なく、経験した者は皆無である。


――――――――――


昼間の戦闘を各々省みて、この日は解散となった。

日は完全に沈み、各クラスが用意した焚火が湖と天幕を照らし、森の木々の影を濃くしている。


明日も森を移動する。

ゴブリンとの戦闘も発生するだろう。

予想以上に苦戦した生徒達ではあったが、大けがを負った生徒はおらず、心が折れた者も今のところはいない。


空は満天の星空。

ゴブリンとの戦闘さえなければ、呑気にお茶でも飲みながらワイワイ騒ぎたいところ。

だが、焚火を囲う生徒達の顔には悔しさと疲労が浮かんでいた。


「皆さんお疲れの様ですね」

「無理もないな」


そんな中、まだまだ元気いっぱいな最上位クラスでは、本日最初の見張り当番であるルミニアとガージュが周囲を見渡しつつ話し合っていた。


本日の見張りもまた、違う組み合わせを試す事にしたのだ。

最初はルミニアとガージュ。

本日の戦いを踏まえ、明日以降の行動指針やら戦術やらを見直す為、指揮官同士見張りついでに残ったである。


因みに、次はミームとルーシャ。

昼間の戦闘中ではカルクに加えミームのストッパーにもなってくれたルーシャに、折角だからこのままミームの面倒を見てもらおうと押し付けたのだ。


その次はカルクとユーリ。

森の中、他クラスもいる状況で今更カルクが勝手な行動を取るとは思えないが、昼間の反省もあるだろうカルクの相談相手としてユーリが抜擢されたのである。


四番目はレキとフラン。

五番目がユミとファラスアルムと言う組み合わせ。


この四人については見張りに関しても、昼間の戦闘に関しても問題は無かった。

ただ、昨日レキと組んだルミニアがとても嬉しそうにしていた為、次は自分だわらわだと残る三人でじゃんけんをした結果である。

ミームやルーシャも加わりたそうにしていたが、ミームは素直になれず、ルーシャは初日に組んでいる事もあり辞退したようだ。


順番については、カルクとユーリがお願いしてレキを自分達の後にしてもらった。

ユミとファラスアルムが最後の方が朝食の支度をするのに都合が良かった、というものあるが、もちろんそれ以上に次が女子二人では起こしに行き辛いと言うのが理由である。

レキ同様恋愛感情など育っていないカルクだが、それでも何となく性差を感じているらしい。

そんな二人より精神的に育っているユーリは言うまでもなく、昨年同様レキに任せようと言う話であった。


「明日は他のクラスも一緒に移動する事になると思いますが、今日の様子を伺う限り少し考えた方がよさそうですね」

「と言ってもどうする?

 まさか僕達が手分けして護衛に付くとでも?」


なお、カルク以上に恋愛感情どころか性差すらいまいち感じていないレキではあるが、起こしに行く役目はフランに任せる事になった。

レキが天幕に入っても怒るような女子はいないが、無防備な寝顔を見られて喜ぶ女子もまたいないのだ。

ましてや相手がレキとなれば、少しでも可愛い、あるいは綺麗な顔を見せたいと思うのが女子というもの。

もう少し大人になり、お互いの立場や関係が変わればまた違うのだろうが。


「そこまでする必要は無いと思いますよ。

 ただ、帰りはどうしても縦に長くなりますからね。

 左右から狙われてしまえば、最悪分断されてしまいます」

「森で散り散りになるのはまずい・・・か」


なお、女子が男子を起こしに行く事に関しては問題が無いらしい。

だらしのない格好や寝顔を見られて恥ずかしがる男子はおらず、見る事を恥じらう女子もまたいない。

さすがに裸の一つでも見れば女子は目を背けるだろうが、最上位クラスの中に裸で眠る男子は今のところいないので大丈夫だろう。

以前、レキが上半身裸になって魔術行使をした際、背ける振りして実は見ていたり、両眼を手で隠しつつ指の隙間から見ていたりしたので、あるいは裸でも大丈夫なのかも知れないが。


「後方は教師や騎士達が付くのだ。

 警戒する必要はないだろうな」

「索敵はレキ様にお任せしましょう。

 昨日とは違い戦う必要も無いのですから」


そういった事情を含め、見張りの順番は決められた。

男女が常にペアになれば問題ないのだが、今の最上位クラスは男子四人に対し女子が六人。

どうしても女子のみと言うペアが発生してしまう。


実力は元より、正確や相性的に問題ないのが幸いである。

この一年、最上位クラスの生徒達は実力と共にクラスの仲も良くなっているのだ。

レキが絡むと時折争いになるが、それもじゃんけんなどで済む程度。

チームワークも抜群である。


「他のクラスがどうでるか・・・」

「ミルさんなら大丈夫だと思いますよ?

 ライさんは分かりませんが」


そういう意味では、ルミニアとガージュもこの一年ですっかり打ち解けたと言える。

お互いチームの指揮官であり、精神的にも成長している為か、頭脳労働担当同士良く話し合っていたりするのだ。


お互い明確に好きな異性がいると言うのも打ち解けられた理由だろう。

ガージュには、一応隠してはいるが入学前から好きな女子がいて、ルミニアもまたレキに好意を寄せている。

だからこそ、お互い遠慮なく話し合いが出来るのだ。


「ミームと言い、どうしてこう獣人は・・・」

「ふふっ。

 でも上位クラスにはライラさんもいますし。

 よっぽど大丈夫だと思いますよ?」

「っ!

 あ、ああ。

 そうだな」

「・・・ふふっ」

「くっ・・・」


こうして揶揄う程度には遠慮が無くなった二人である。

まあ、ルミニアの方は元々遠慮など無かったかも知れないが・・・特にガージュに対しては。

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