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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十一章:学園~二年目の始まり~
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第417話:新たなるチーム

「レキ様のチームになりたい方」

「へっ?」

「「「はいっ!」」なのじゃ!」


ルミニアのストレート過ぎる言葉にレキがきょとんとした。


そりゃレキは昨年の個人戦で優勝した立派な学園の代表だ。

でも、チームの指揮官はガージュであり、女子はルミニアである。

隊長やリーダーと言う肩書こそ無いが、仮につけるならガージュチームとルミニアチームになるはず。


ただ、昨年のチーム分けはレキと同じチームになるか、それともレキと戦うべく別のチームになるかで分かれていたのも事実。

つまり最上位クラスのチーム編成はレキを基準に考えるのが当然である。


レキと一緒に大会に出るか、あるいはレキと戦うか。

昨年は男子と女子で分かれたチーム分けも、今年は各個人の目標を元に分ける事にしたのである。


手を挙げたのは四人。

フラン、ルミニア、ユミ、ファラスアルム。

昨年レキと戦う事を選んだ五人の内、四人が今年はレキと組む事を希望した。


「今年はチームでも敵ね」

「うむ、負けぬのじゃ!」


ミームは相変わらずレキと戦う事を選んだ。

勝てないからと言って逃げるのは獣人に非ず。

勝てない相手に挑んでこその獣人である。


「カルクさん達は良かったのですか?」

「おう!」

「去年はレキにおんぶにだっこだったからね。

 今年はフラン様達にゆずるよ」

「僕達の力がどれだけ通じるか試すのも悪くはない」


優勝できたのはレキの力が大きかった事は否定できない。

レキがいなければ大武闘祭での優勝はもちろん、学園の武闘祭ですら優勝できなかったかも知れない。

だからこそ、レキを除いた自分達の実力がどれほどの物か知りたくなったのだろう。


「ルーシャさんは?」

「私ではレキ様のお力になれるとは思えませんので・・・」


意外だったのはルーシャである。

最近特に強くなっていた崇敬から、てっきりレキを支える為同じチームを希望すると思ったのだが・・・。


チームを組むという事は一緒に戦うという事。

フォレサージ森国やライカウン教国の者なら誰もが夢見る話である。

大武闘祭でレキの実力を見た多くの者が、同じチームでレキと戦うガージュ達を羨ましく思っていた。


だが、一緒に戦うと言う事は少なからずレキの力にならなければならない。

ましてやレキの足を引っ張るような真似は・・・。

そう考え、ルーシャは栄誉よりレキの足を引っ張らない道を選んだのだった。


もっとも、レキと力を合わせ、レキの武力方面で力になれる者などこの学園はおろかこの世界にすらいないのかも知れないが。


武力以外ならいくらでも力になれるだろうが、戦闘となれば剣姫ミリスや騎士団長ガレムですら邪魔になりかねない。

こちらが何かするより前に、レキがぴゅ~と行ってえいっ!とやって終わるからだ。


ライカウン学園では一位だったルーシャの武術もフロイオニア学園では九位。

魔術は無詠唱に至っておらず、試合の経験すらほとんど無い。

試合における知識と経験、戦術面でも役に立てず、足手まといにしかならない。


レキの役に立てるなら肉壁にすらなる覚悟のルーシャも、邪魔になるのであれば仕方ない。


「あまり深く考えないでも・・・」

「そうだ、こう見えてレキはこちらの指示はちゃんと聞くぞ?」

「たまにガージュが間違えるけどな」

「うるさいぞカルク」


これもまた、レキを特別視する弊害なのだろう。


レキの方はいくらでもみんなに合わせて戦うつもりであり、それだけの技量も持っているが、おそらくはそんな気を遣わせる事自体怖れてしまっているのだろう。

崇敬の念を抱きすぎると言うのも考えものだった。


――――――――――


一応のチーム分けは出来たが、いきなり野外演習で試すにはさすがにリスクが高い。

この一年でフラン達の実力もかなり上がっている為連携を見直す必要もあるだろうし、何より相手は魔物である。

ゴブリン程度と侮れば、待ち受けるのは死なのだ。


「次の武術の時間に確認しましょう」

「おう」


カルクとミームはその身をもって知っている。

フラン達もまた、魔物との戦いを経験した生徒である。

他クラスの生徒がまともに戦わず逃げ出した事を考えれば、まがりなりにも立ち向かい、数匹とはいえ倒しているフラン達は昨年の時点で十分な実力を持っていると言える。

それでも、試合と違い負ければ死が待っている事を理解しているだけあって、誰もが連携訓練に余念が無かった。


そして始まる武術の授業。

野外演習を控え、連携の見直しを余儀なくされたレキ達だったが。


「レキ様がいると安心感が違いますね」

「ふふ~ん!」

「ぬぅ、負けんのじゃ!」

「へへ~、やっと一緒に戦えるね」

「が、頑張りますっ!」


レキと一緒に戦える事を素直に喜ぶフラン達と。


「ミームっ!

 だから左だと言っただろう!」

「レキを無視できるはずないじゃないっ!」

「くそっ、ガドがいねぇとやり辛ぇ」

「ルーシャ、君は後方で支援を」

「わ、分かりましたっ!」


レキが抜け、ガドがいなくなった事による戦術の見直しを余儀なくされたガージュ達という、実に分かり易い二チーム。

実戦で試すには、もう少し連携の訓練が必要のようだ。


――――――――――


ガージュのチームと違い、ルミニアのチームは一見すれば上手くいっている様に見える。

だが、それでも指揮官であるルミニアは今まで以上に頭を働かせる事になっている。

具体的にはレキの使いどころ。

温存し過ぎればレキの出番はなく、かと言って初手でレキに指示を出せば試合が終わってしまう。

ここぞと言うタイミングでレキに指示を出す為には、今まで以上に試合の流れを掴む必要があった。


ガージュも通った道。

ガージュ以上にレキの実力を知るルミニアだからこそ、レキの使いどころに苦慮するのだった。


レキの役割はひとまず遊撃となっている。

剣も魔術も万能過ぎるほどに出来る為、というのもあるが、前衛に置けば誰も突破できず、後衛に置けば魔術の一発で勝負がついてしまう。

指揮が出来ないレキのポジションは、基本的に遊撃以外にないのだ。


同じく遊撃要員であるフランと共に、レキが縦横無尽に武舞台を駆け回る。

ルミニアの指示が追いつかないほどの速度で駆け回るレキに、最初はフランやミームとの差に戸惑ったルミニアだったが、ガージュの指揮を思い出し最低限の指示のみで後はレキの判断に任せる事にした。

その分ユミとフラン、ファラスアルムの指揮に専念し、少しでもレキの負担を下げるかあるいはフラン達がピンチになる瞬間を見極めレキに指示を出す。

ルミニアが槍を振るう機会が無さそうなのが、少しばかり残念だった。


フランはレキとの共闘が嬉しくてたまらず、ユミもようやくレキの役に立てると張り切っている。

そんな中、ファラスアルムだけは再び自信を無くしかけていた。


今まではフラン、ユミ、ミームそれぞれの支援や回復、合間に相手チームへ魔術を放つなど、チームの一人としてそれなりに活躍していたファラスアルム。

新しいチームでもファラスアルムの役割は変わっていないのだが、レキがいる以上支援や回復、相手チームへの攻撃すらもその機会を大幅に減ってしまう。


以前のチームであれば、まずミームが意気揚々と突っ込んで行った。

負けじとフランも駆け出し、相手の攻撃はユミが一手に引き受けた。

そんな三人の治癒や支援にと、ファラスアルムは一生懸命頑張っていた。


新しいチームはどうかと言えば、まずレキが怪我を負うなどありえない。

ミーム以上の速度で突っ込み、だがミームと違い怪我一つ負わずに相手を倒していく。

誰を狙うかはルミニアが指示し、それに従い矢のように飛んでいくレキ。

ルミニアの的確な判断とレキの速度、二つが組み合わさった速攻はミームとガージュでは対応出来ないだろう。


ミームの時と違い、フランもレキと張り合うような真似はしない。

張り合っていたのは実力が互角だったから。

レキとの実力差は圧倒的で、何より指南役でもあるレキと必要以上に張り合う意味などどこにもない。

むしろ、ようやくレキと一緒に戦える事を心から喜んでいるほどだ。


ユミもフランやミームの時ほど相手を食い止める必要が無くなっていた。

数回打ち合う内に、レキが駆け付けてくれるからだ。

ありがとねっ!と笑顔で言いながら次の相手に向かうユミ。

レキが誰かを倒すまでの時間稼ぎ、それでもレキの役に立てている事にユミもまた喜んでいた。


ルミニアは言うに及ばず。

もちろんチームが変われば戦術も変えなければならないが、昔からレキを見てきただけあってレキの使い方もそれなりに心得ている。

あるいは、昨年あえてレキの敵になり、どう戦えば良いか頭を悩ませ続けた経験が活きているのかも知れない。

戦術も大幅に変わり、ルミニアもより指揮に専念する事になる。

槍を振るう機会がほぼ無くなっているが、それでもレキを指揮出来る事、ルミニアの指示にレキが従ってくれる事、何よりルミニアの指揮をレキが褒めてくれた事に、ルミニアも満足気だった。


後方からの支援を役目とするファラスアルムは、先ほどの試合では結局何もする事が無かった。

ファラスアルムが何かするより前に試合が終わってしまうからだ。

誰も怪我をする事無く、支援する必要もなく、相手の魔術に対するけん制も必要としない。

レキが抜けたとはいえ、相手はあの大武闘祭を勝ち抜いたガージュ達。

そんなガージュ達を相手に、今のところレキ達は完勝し続けている。


自信を無くしかけているのはガージュ達も同じだった。


レキの代わりにミームが入り、ガドの代わりにルーシャが入った。

ガージュの戦術もまた、大幅に見直す必要が生まれている。

それでもあの大武闘祭を勝ち抜いた経験と、培ってきたチームワークは学園でも上位のはず。

依然として全力を出す事を禁止されているレキが相手ならば、ある程度は食いついていけるはずだった。


だが・・・。


――――――――――


「レキ様は前に。

 フラン様はレキ様の後についてください。

 ユミさんはガージュさん達の警戒を。

 ファラさんはルーシャさんに注意してください」


「ミームはフラン様を抑えろっ!

 ユーリとカルクはレキだっ!

 ルーシャっ、ルミニア様に牽制をっ!」


翌日の武術の授業。

野外演習の日も近づき、更にはその後に行われる武闘祭を見据え、昨日同様チームでの模擬戦を行うレキ達。


「うおりゃ!」

「はあっ!」

「っと」


「はあぁっ!」

「うにゃにゃにゃっ!」


ルミニアの指揮に従い突っ込むレキを、カルクとユーリが二人がかりで食い止める。

カルクの剣をレキがひょいっとかわし、合わせるように振るわれたユーリの剣をレキが双剣で受け流す。

後ろは任せるのじゃ!と張り切るフランが、ミームと壮絶な打ち合いを繰り広げている。


「ん~、出番なさそうだね~」

「は、はい・・・」


時折ルーシャが魔術を放とうとするが、試合の経験が圧倒的に不足している為か、判断も詠唱速度も遅く、縦横無尽に動くレキやフランへのけん制にすらなっていない。

それどころか、詠唱の始まりを察知したルミニアの指示によりファラスアルムが魔術を放つ事で、ルーシャの詠唱を魔術によって妨害できてしまっている。

それはちょうど、大武闘祭でレキがフォレサージ学園の代表達にやったような。

呪文の詠唱に集中するあまり、ルーシャはファラスアルムの魔術を防ぐ事も避ける事も出来ないでいた。


「ファラさんその調子でお願いします」

「は、はい!」

「ユミさん、そろそろ行ってください」

「うんっ!」


昨日の模擬戦でファラスアルムが自信を無くしかけていた事に、ルミニアは気付いていた。

丁度戦術の見直しもしなければならなかったところである。

回復や支援の必要が無いのであれば、その分攻性魔術で相手の魔術を防いでもらえば良い。

幸い、大武闘祭でレキがお手本を見せてくれているのだ。

ファラスアルムに自信を持たせ、更には目指すべき頂をも教えてくれたあの光景。

新たなチームでのファラスアルムの役割にぴったりだった。


元より実力では女子の方が上なのだ。

そこに最強のレキが加わる事で、ガージュ達に勝ち目など最初から無かったのかも知れない。


それでもそのレキと一緒に戦ってきた経験が、レキと大武闘祭を優勝した自負が、ガージュ達の自信になっていた。

それが・・・。


「か、勝てねぇ・・・」

「分かってはいたけど・・・」

「・・・くそっ」


何度目かの敗北の後、武舞台上でカルク達が分かり易く落ち込んでいた。

更に。


「くぅ~・・・」

「レキ様だけでなく、皆さんまで・・・」


昨年同様レキと戦う道を選んだミームと、力不足を理由にレキのチームメイトになる事を遠慮したルーシャ。

二人もまた、レキの実力やフラン達の連携に打ち負かされていた。


「なんか、フラン達も強くなってねぇか?」

「そうだね、フラン様もルミニア様も生き生きとしているように見える」


戦意というのは結果に繋がる。

弱腰逃げ腰な相手と勝気でやる気溢れる相手では、後者の方が圧倒的に手ごわい。

実力が互角なら尚更。

ましてやガージュ達の場合、相手の方が実力も戦意すらも上回っているのだ。

今まで通りの戦い方では、フラン達に土をつける等当分無理だろう。


「まずは戦術の見直しだ。

 ミーム、フラン様とじゃれ合うのは後にしろっ!」


ふふんっ、どうじゃ!

なによっ!次は負けないんだから


仲良く喧嘩している二人にガージュが声をかけ、本日の模擬戦は終了した。

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