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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十一章:学園~二年目の始まり~
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第415話:そして崇敬へ・・・

「い、行きますっ!

 たあっ!」


ゴーズの合図に、気合を入れつつまずルーシャが仕掛けた。

ライカウン学園とはいえ一位の実力を持つルーシャである。

今朝の鍛錬でレキに仕掛けるのも慣れたのか、一瞬の躊躇はあったもののしっかりとレキめがけて攻撃を繰り出した。


「えいっ」

「きゃっ」


もちろんルーシャ程度の攻撃がレキに通じるはずも無い。

ガージュでもかわせる程度の攻撃、レキなら打ち払うのも容易い。


この時、レキが打ち払わず切り上げるか、あるいはガージュの様にかわしたなら結果も違っただろう。


ファラスアルムと違い目は閉じていなかったルーシャだが、レキ様に無様な真似を見せるわけには行かないと必要以上に力んでいた。

今朝の鍛錬で実力差が分かっていた分、より一層の力を込めようとした結果だ。


そんな全身全霊の一撃を切り払われ、杖の勢いに体を持っていかれたルーシャが足をもつれさせてた。


「っと、大丈夫?」

「・・・えっ?」


攻撃をそらされ、体勢を崩し転びそうになったルーシャ。

来るべき衝撃に備えていた彼女がふと顔を上げれば、何故かレキの顔が間近にあった。


転びそうになったルーシャを、レキが横抱きに抱えたのだ。


やはり手合わせには慣れていないのだろう。

初撃から全力を出し過ぎていたように思える。

というか力加減を間違えているようだ。

攻撃に体重を乗せるのは悪い事ではないが、攻撃後の姿勢制御すら忘れてしまえば、ルーシャの様に転び隙を晒す事になってしまう。


実際は、相手がレキだからこそ必要以上に力を入れた結果、転びそうになったのだが。


「えっ?」


この時のルーシャの心中はいかほどだっただろうか。


自分の全力をやすやすと切り上げたレキに対する尊敬。

助けてくれた事への感謝。

崇敬を抱くレキに抱き留めてもらった事の歓喜。


間近に見える、可愛らしさが抜けないが整った顔。

自分を抱きかかえる逞しい腕。


それら全てが混ざり合った結果・・・。


「・・・ふぅ」


ルーシャもまた、ファラスアルムの様に意識を手放した。


――――――――――


「だ、大丈夫?」

「気を失っているだけみたいです」

「ファラさんが言うなら大丈夫なのでしょうね」


心配そうにのぞき込むユミに、ファラスアルムがルーシャの様子を注意深く観察する。

青系統の魔術の実力をめきめきと伸ばしているファラスアルムは、今では学年でも屈指の治癒魔術士である。


そんなファラスアルムが言うのだからと、同じく心配していたルミニアがこっそり安堵の息を漏らした。


今はまだ授業中。

本来ならもう少し、ルーシャが疲れるくらいまで手合わせする予定だったが、こうなっては仕方ない。

幸いルーシャに怪我はなく、おそらくは頭が混乱してしまった為に意識を失ってしまったのだろうと言うのがファラスアルムの見解だった。


意識を失う事にかけて、ファラスアルムの右に出る者はいない。

レキ達はルーシャの介抱をファラスアルム達に任せ、武術の授業を再開した。


――――――――――


「・・・はっ!?」

「気が付きましたか、ルーシャさん?」

「・・・ファラスアルムさん?」


ルーシャが気が付いたのは、武術の授業が終わる少し前だった。

気を失い慣れているファラスアルムと違い、ルーシャが気を失ったのはこれが初めて。

故に、意識を取り戻すのに多少時間がかかってしまったようだ。


頭を強く打ったとかではない分マシである。

ただ、武術の時間中に意識を取り戻したのは良かったかどうか・・・。


「えっと、私は・・・」

「レキさんとの手合わせの最中に気を失ったのですけど、覚えていますか?」

「・・・あっ!?」


意識を失う直前の事を忘れるケースは多い。

特に頭を強く打った場合や、精神的に強い衝撃を受けた場合などでは。

幸い、ルーシャは頭というか感情が多少混乱しただけであり、それほど衝撃を受けたわけでは無い。

初めての経験に、心がふり切れてしまっただけだ。


意識を取り戻したルーシャは、自分がなぜ意識を失ったかを思い出した。

同時に、自分が何をしでかしてしまったかもだ。


「・・・ああ」

「だ、大丈夫です。

 私も良く気を失いますから」


両手で顔を隠すルーシャ。

レキの前で無様を晒してしまい、更にはそんなレキに抱きしめられた事を思い出し、ルーシャの顔は今まで無かったほどに赤くなっていた。

手の隙間から見える顔も、耳までもが赤いルーシャである。

更には羞恥やら何やらで限界が来たのだろう、起き上がったかと思えば頭を地につけ丸くなった。

まさに穴が合ったら入りたい、無ければ魔術で作ってでも・・・と言った心境だろう。


なお、それを素直に告げれば心優しいレキが即座に穴を掘ってくれるに違いない。

それも、オーガ数匹が余裕で入れるほどの穴をだ。

まあ、流石のルーシャもその行動に感謝するとは思えないが・・・。


顔を隠し額を地にこすりつけ丸くなるルーシャ。

それはまるで、創生神や光の精霊に祈りを捧げる信者の様だった。


なお、そんなルーシャが信仰を捧げる相手であるレキはといえば、武舞台上で七人を相手に楽しそうに剣を振るっていた。


――――――――――


「くっそ、また一撃も当てられなかったぜ」

「ふっふ~ん」

「でもフラン様は惜しかったですよね?」

「うむ、あとちょっとじゃったな」


武術の授業が終われば次は魔術の授業。

武術用の鍛錬着から魔術用の演習服に着替え、レキ達は魔術演習場へと仲良く移動した。

なお、ルーシャの精神はまだ落ち着いていない。

平静を装えてはいるものの、頭の中は絶賛混乱中である。


そんなルーシャに対する最大の試練と言っても良いだろう。

レキの強さを更に知り、ついでにレキの優しさやカッコよさ、逞しさまでもを知ってしまったルーシャ。

そんなルーシャが、改めて光の申し子たる黄金の魔力を見たらどうなるか・・・。


「・・・ああ、これが」

「・・・ふぅ」

「あ、今度はファラがっ!」


跪き、ルーシャが祈りを捧げ始めた。

誰に言われたからでもなく、あふれんばかりの信仰心が体を勝手に動かしたのだ。


今、ルーシャのレキへの想いは完全に崇敬へと至った。


レキ様は確かに光の申し子様でした。

ああ、精霊様。

私をこのフロイオニア学園に編入させて頂いた事、心より感謝いたします。


一心に祈るルーシャの隣では、意識を失ったファラスアルムをユミが抱えていた。


――――――――――


それからのルーシャは、暴走する事無くむしろ落ち着きを取り戻していた。

何というか、感情の針が振り切り過ぎて一周し、元の位置に戻ってきたといった感じである。


必要以上にレキに干渉する事無く、もちろんお世話をする事も無く。

食事の際の席ですら、レキの隣を確保するような真似をしなくなった。

ただ、朝夕の鍛錬には欠かさず参加するようになり、その際レキの汗を拭く為のタオルなどは必ず用意している。


お世話する、と言うより気を利かせる程度に収まったようだ。


突然の変化に、別の意味で心配するルミニアである。


元々レキ以外の者に対しても普通に接し、教国の教えを持ち出す事も押し付ける事も無かったルーシャ。

レキに対しても他者と大体同じ程度の距離感に収まり、武術の授業ではレキ以外の生徒とも手合わせするようになった。


ルミニアの危惧が完全に晴れたかはまだ分からないが、今のところ問題は無さそうだ。

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