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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十一章:学園~二年目の始まり~
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第406話:編入生

編入を希望したからと言って、それが叶うとは限らない。

前述したように、編入枠が空いて無ければどれだけ希望したところで編入は出来ない。

編入枠が空いていたとしても、その枠が少なく希望者が多ければ振るいにかける必要がある。


つまりは試験である。


レキ達が学園に入る際、入学試験を行ったように、編入の際には必ず編入試験を受ける必要がある。

入学に満たない能力、知識や実力が無ければ学園に入ったところでついていけないだろう。

そもそもフロイオニア学園を始めとした各学園は、その国に沿った実力主義を貫いている。

たまたま編入枠が空いたからと言って、無条件で入れるほど甘くはないのだ。


試験内容は編入先の学園に合った物で、プレーター学園なら武術が、フォレサージ学園なら魔術の評価が最も重要視される。

フロイオニア学園は座学に力を入れている為、編入試験も座学の評価が最も重要となるのだ。


なお、試験は各国の学園で行われた。


入学試験のように、わざわざフロイオニア学園に来て試験を受けさせるのは難しいからだ。

何せ各国からフロイオニア王国までは距離がある。

少なくない危険を冒し、わざわざフロイオニア学園まで来て試験を受けさせるわけには行かない。

ただでさえ狭き門なのだ。

大半、いやほとんどの者が受からず落ちて帰国する事を考えれば、あらかじめ各国で試験を行い合格者のみが来た方が良いだろう。


今年、フロイオニア王国から伝えられた編入枠はたった一つ。

希望した生徒は多く、一枠をかけた壮大な争い(試験)が各学園で行われた。


例年、大武闘祭を経て他国の学園に編入したいと願い出る生徒は少なからず現れる。

もっとも多いのはプレーター学園で、言わずもがな大武闘祭での優勝回数が最も多い事に起因している。


皮肉にも昨年はそのプレーター獣国で大武闘祭が行われ、武を重んじる獣人達の前で優勝したのは純人の生徒レキだった。


プレーター獣国の王都で行われた大武闘祭。

試合を見た生徒達の間で、レキの実力は広く知れ渡った。

自分達の学園の代表生徒を圧倒したレキを見て、その強さに憧れ戦ってみたいと思うのは獣人の本能だろう。


まあ、中にはレキではなくミームと同じ学園に、と希望した者もいたようだが。


故に今年の編入枠の希望者が最も多かったのはプレーター学園の生徒だった。


次に多かったのはフォレサージ学園とライカウン学園。

どちらもレキの持つ黄金の魔力に光の精霊の申し子を幻視し、あるいは無詠唱で放たれる多くの魔術に、ぜひともレキ様のお近くで共に学びたいと希望する者が現れた。


プレーター学園より少なかったのは、実際に見た者が少なかったから。


昨年の学園代表の生徒と引率の教師。

それに国の代表と使節団の面々。

実際にレキの魔力や魔術を見(る事ができ)たのは以上。

学園の代表だった者は既に学園を卒業し、国の代表達はそもそも生徒ではない。

いくら希望しようとも、今更学生になどなれるはずもないのだ。


中にはフロイオニア学園に教師として派遣してもらおうなどと考える教師もいたらしいが、それはそれぞれの国の代表が責任をもって止めた。

まあ、フロイオニア学園には無詠唱魔術の第一人者であるフィルニイリスがいる訳であり、そもそも他国の無詠唱魔術の練度はそれほど高くない。

彼等が来てもレキに教えられる事などおそらくは無いだろう。

彼等とてレキに教えを乞うつもりで希望しているのだから、採用されるはずが無かった。


そんな学園の代表や教師達から話を聞いた生徒が、今回編入を希望したのである。


少なかったのはマウントクラフ学園とマチアンブリ学園の生徒である。

レキと共に学びたい、お近づきになりたいと考えた者はいるが、それより自分達に必要な知識や技術を学ぶ方を優先したのだろう。

どれだけレキに魅力を感じようとも、レキの方が見向きもしなければ意味が無い。

マウントクラフ学園の生徒は鍛冶士として、マチアンブリ学園の生徒は商人として、将来を見越し今は己を磨く事を優先したのである。


なお、座学に重きを置いているという時点で、プレーター学園の編入希望者には不利だったと言えるだろう。


レキという強者と共に学園を過ごしたい、共に競い合い全力でぶつかり合いたい。

叶うなら毎日手合わせしたい。


そう願う獣人は多く、国王ですら願ったほどだ。

だが、試験内容が座学を中心とした物であると告げられ、プレーター学園のほとんどの生徒達が涙をのんだ。

それでも諦めず試験を受けた生徒は多かったが、残念ながら編入枠を射止めたのはプレーター学園では無かった。


有利だったのはフォレサージ学園とライカウン学園だろう。

どちらも座学には特に力を入れている学園。

精霊学や創世神話などに重きを置いている点はフロイオニア学園とも違うが、少なくともプレーター学園より有利だった事に間違いはない。


仮に、昨年の大武闘祭がフォレサージ森国、ライカウン教国のどちらかで行われていたとしたら、希望者は更に増えただろう。

下手をすれば二年生になる全生徒が希望した可能性すらあった。

それどころか全生徒が、学年は違えどレキと同じ学園で学べると言う理由で希望したかもしれない。


そう考えれば、昨年の大武闘祭がプレーター学園で行われた事は幸いであった。


それでも伝え聞いた話のみで希望者が現れるのだから、フォレサージ学園の魔力や魔術への傾倒、ライカウン学園の精霊に対する信仰心は本物である。


そうした、一部の国では大騒動となった今回の編入試験。

レキという少年と机を並べられる栄冠を勝ち取ったのは・・・。


――――――――――


「ライカウン学園より編入して参りました、ルーシャ=イラーと申します」


レイラスに促され、教室に入ってきたのはルーシャ=イラーという名の女子生徒。


ライカウン学園で行われた編入試験(編入枠争奪戦)で見事一位を取り、他の学園含めて全編入希望者の頂点に立った、おそらくは今年の二年生で最も優秀な生徒である。

実際、座学の成績ではルミニアやファラスアルムに匹敵し、魔術の実力も無詠唱には至っていないにせよ上位、フォレサージ学園の生徒にだって負けていない。

武術に関しては、ライカウン学園自体が護身程度にしか教えない為それほどでもないにせよ、それでもライカウン学園の中でもトップクラスであった。


「光の精霊の申し子たるレキ様と同じ学園、同じ教室で学ぶ事が出来るこの栄誉。

 改めて創生神様、精霊様に感謝いたします」


何より勝っていたのは、どうしても編入したいと言う意思、あるいは執念。

それが最も勝っていたのが、このルーシャ=イラーという少女なのだろう。


たった一つの席を巡り、五つの学園の希望者がし烈な争いを繰り広げた今回の編入試験。

いわばフロイオニアの生徒を除いた五学園の争い。

その栄誉を勝ち取るには、実力や日頃の努力だけでなく、根性などの精神、あるいは執念が必要だったのだ。


因みに今回の試験、ライカウン学園やフォレサージ学園の生徒は大半が座学の試験で満点を取っている。

武術ならプレーター学園の生徒達が優れていたが、そもそも今回の編入試験における武術の比重はさほど大きくなかった。

不公平さは否めない試験ではあったが、編入先の学園に合わせるのが試験である。

「悔しかったら頭も鍛えろ」とプレーター学園の教師が叱責したとかしないとか。


魔術に関しても同様。

だが、ルーシャが優秀である事に変わりはなく、何よりも編入したいと言う強い意志が彼女にはあった。


とは言えルーシャもまたレキと同じ学生。

今日からは同じ学び舎で学ぶ仲間である。

故に。


「ルーシャ=イラー。

 お前の、いやライカウン教国のレキへの執着を否定するつもりは無いが、ここではお前もレキと同じただの生徒だ。

 レキを上に見る必要も無ければ、レキを申し子呼ばわりする必要も無い。

 というかするな」

「ですが・・・」


例え彼女がレキを崇敬の対象に見ようとも、学生である以上立場は同じ。

それは爵位や種族と同じであり、フロイオニア学園においては誰もが平等なのだ。


レイラスの言葉に、ルーシャが分かり易く不服そうにした。


フロイオニア学園へ編入する際、ルーシャは「レキ様に失礼の無いように」と学園長はおろか教皇にまで言われている。

光の精霊の申し子であるレキ。

ライカウン教国に生まれ、一年とは言えライカウン学園で学んできたルーシャは、光の精霊への信仰をしっかりと抱いている。

つまりは言われるまでも無くレキに無礼を働くような真似はしないだろうし、何なら今から崇敬の対象として敬うつもりでいる。


故に、レイラスに言われた程度でレキを同じ生徒として見るつもりは無かったのだが・・・。


「何よりレキ自身がそれを望んでいない」

「はっ!」


外ならぬレキが望んでいる言われれば、従わざるを得なかった。


大武闘祭でも、とあるライカウン学園の代表生徒が、レキを差し置いて優先シード枠に入ってしまった事実に気づき、武舞台で崩れ落ちた事があった。

その時も、レキは優先シード枠を望んでいない、むしろより多く戦えた方が嬉しいとすら思っていると聞かされ、安堵のあまりレキに祈りを捧げたのだが、今回の状況もそれに違いと言えるだろう。


レキの望みを叶える為なら、レキを必要以上に敬う事もやめる。

ライカウン教国の教えは意外と柔軟なのだ。


ルーシャの自己紹介の後は、レキ達がルーシャに自己紹介をする番となった。

レキやフラン達の事は事前に聞かされていたのだろう、それでもルーシャとレキ達は初対面である。

寮で出くわさなかったのは、ルーシャが学園に来たのが今朝だったから。


ガドが学園を辞める事が正式に決まったのが一月前、そこから編入試験を行い、評価を他国の学園と共有、編入生がルーシャに決まったのがおよそ半月前。

そこから手続きなどもあり、日程的にはギリギリだったのだ。

むしろ二年生の初日に間に合っただけマシなくらい。

他国の生徒、フォレサージ学園やプレーター学園なら初日には間に合わ無かったに違いない。


まあ、これも編入希望者が多かった弊害ではあるのだが。


「これもまた創生神様のお導きです」


とはルーシャの台詞である。


「イラー・・・どっかで聞いたような」

「確かライカウン学園の代表の一人も同じイラーさんだったと」

「ファイナさんですね。

 レキ様とは一度も戦われませんでしたが」


レキ達の自己紹介の後、友好を深める為この時間は特別に自由時間となった。

二年生の初日、今日くらいは無理に授業を進める必要も無い。

幸いレキ達最上位クラスの授業ペースに問題は無く、大武闘祭で空けていた期間で他のクラスとの差が埋まりはしたが追い越される事は無かった。

もちろん編入枠を勝ち取ったルーシャもだ。


「はい、ファイナは私の姉の様な方です」


元ライカウン学園代表ファイナ=イラー。

先の大武闘祭、個人戦では優先シード枠を勝ち取りながらも二回戦でアランに、チーム戦でも同じく優先シード枠からの二回戦でアリル=サ率いるプレーター学園第二チームに敗北してしまった女子生徒。

レキとの対戦を望みつつ最後まで叶わなかった彼女だが、その後の大武闘祭の慰労の宴で念願叶いレキとの面識も出来た。

フラン達ともだ。


「姉のようなって?」

「私とファイナ姉様は同じ孤児院で育ちました。

 イラーというのはその孤児院の名前なのです」


この世界、魔物や野盗に襲われ親を失った子供などどこにでもいる。

そんな子供を保護し育てる孤児院などの施設もまた、大抵の街に一つは存在していた。


孤児院の運営については国や領地事に異なる。


例えばフロイオニア王国であれば、資金は国が出し、直接的な補助は領主が行うが、実際の運営は各孤児院の職員が行っている。

国や領主が直接運営できればそれで良かったが、流石に手が行き届かないからだ。


もちろん定期的に訪問なり視察なりを行い、正しく運営されているか、虐待など行われていないか管理している。

最低限の教育や食事なども与えられており、子供達は正しく育つ事が出来るのだ。


飢えに苦しむ事も無ければ寒さに震える事も無い。

豊かとまでは言えない生活ではあったが、それでも一般的な平民並の生活が保証されていた。


とは言え孤児院はあくまで子供を受け入れ育てる場所。

成長すれば個人を出て自活しなければならない為、どの子供も将来を見据え真面目に勉強し、巣だっていく。

お世話になった孤児院に恩を返そうと、職員になったり騎士や冒険者になり得た金銭を寄付したりする者も多い。


ライカウン教国の場合、資金は国が出す事は同じだが、それ以外は各地の教会が全て行っている。

と言うより教会の一部に孤児院があると言った方が良い。

運営は国から派遣された管理者、教会で言うところの司祭に当たる者が受け持ち、各地で創世神話や精霊に関する布教を行いつつ孤児の面倒を見ている。


そんな体制であるが故に、孤児院で育った子供達は幼い頃から創世神話や精霊学に興味を持ち、あるいは勉強に勤しんできた。

成長し、入学できる年齢になれば大抵誰もが更に勉強する為学園に入る。


ファイナもルーシャも幼い頃に両親を亡くし、共にイラー孤児院で育っている。

年も近い事から、二人は姉妹の様な関係なのだ。


「そうなんだ」


レキも家族を失ったいわば孤児である。

村を滅ぼされ、母親に連れられ魔の森へと逃げ延びたレキだが、賢者の小屋の存在が無ければあるいは今頃どこかの街の孤児院に入っていたかも知れない。


もっとも、そうなればフランやルミニアと出会う事も無ければ、こうして学園に入る事も無かっただろう。

仮に学園に入れたとしても、今の様な力も無ければ魔力も無い、普通の生徒として過ごしていたに違いない。


全ては創生神のお導き。

と、言うのはルーシャを始めとしたライカウン教国の決まり文句だが、案外レキも創生神に導かれたのかも知れない。

もちろんレキの努力の結果でもあるが。


ファイナやもう一人の代表生徒だったリーラ=フィリーのように、レキの前で膝をつき祈りを捧げ始めたルーシャに、レキ達はライカウン学園の生徒はやはりこういう人達なのだと何となく理解した。

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