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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十一章:学園~二年目の始まり~
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第405話:編入と言う制度について

「あら?」


二年生の授業の初日。

レキ達は九人そろって二年生の学舎へとやって来た。

カルクがガドの愚痴を明るい口調でぼやき、それをガージュが咎め、ユーリがまあまあと宥める。

レキもガドの思い出を語り、フランも全くガドの奴はとぷりぷり怒り、ユミが宥める。

ファラスアルムがあわあわし、ルミニアがふふっと笑う。

一人足りなくてもレキ達は相変わらず仲が良く、そして楽しそうに歩いている。


寮から学舎までは多少距離があるが、みんなと一緒ならあっという間だった。


「どうしたのルミ?」


新しい教室に入るなり、ルミニアが全体を見渡して首を傾げた。


「いえ、机が一つ余っていますので」

「ガド・・・はいないんだったな」

「じゃあ新しいクラスメイトの分だね」

「ええ、ですが」


最上位クラスの人数は十名と決まっている。

一年次は入学試験の上位十名が選ばれ、以降は学年末の評価で決まる。


進級前にガドが抜けた為、最上位クラスにはその代わりの誰かが入る。

可能性が最も高いのは上位クラスの生徒。

その中でも特に優秀なのは、おそらくミルだろう。


ミル=サーラ。

王宮騎士団中隊長・剣姫の二つ名で知られるミリスに憧れ、卒業後は騎士団に入るべく日々鍛錬に勤しむ女子生徒。

座学の成績も優秀で、魔術もそれなりに扱える。

カルクとミーム、二人の武闘祭の成績が悪ければ、おそらくは入れ替わりで最上位クラスに入っただろう。

そう考えられるほどには優秀な生徒である。


ガドが抜けたなら入れ替わりなど無くともミルが新しい最上位クラスの仲間になる。

そう考えるのが普通だ。


だが、もしミルが最上位クラスに入ったのであれば、喜び勇んでレキ達に伝えたはず。


彼女とは昨年の武闘祭以降交流を深めている。

今では一緒に街へ出かける仲だ。


何より、彼女は憧れの剣姫ミリスから直接指南を受けていたレキの事を兄弟子の様に慕っている。

加えて、そのミリスをも超えるレキの実力に敬意を抱き、日々指南を受けているのだ。


そんなレキと同じ最上位クラスになれたのであれば、ミルはこれでもかと喜んだだろう。

いの一番にレキに、フラン達最上位クラスの生徒達に伝え、「これからクラスメイトとして宜しくお願いします」と喜びをかみしめつつも丁寧に挨拶してきたはずだ。


今のところミルからそのような報告は受けていない。

レキ達を驚かせようと思っているなら話は別だが、彼女の性格上そういったいたずらめいた行為もしないはず。

朝の中庭での鍛錬中も特にそんな様子は無かった。


故に、ミルが新たな最上位クラスの生徒という事は無いだろう。


「では誰が・・・?」


ルミニアの疑問は、授業が始まると同時に解決した。


――――――――――


「お前達に編入生を紹介する」

「へんにゅうせい?」


引き続きレキ達の担任を務めるレイラスが発した聞きなれない言葉に、レキが首を傾げた。


フロイオニア学園を始めとした各学園は一学年100人と決まっている。

入学試験はいわばその100人を選別する為に行われたと言って良く、基準に満たなかった子供は入学する事が出来なかった。


最上位クラス十人、上位、中位、下位クラスそれぞれ三十人の計100人が一学年の生徒数であり、これは各学年共通である。


なお、100人というのはあくまで定員であり上限である。

入学後、様々な理由で学園を去ったり、あるいは不慮の事故の為、学年によっては100人を割ってしまう場合もある。

レキ達の学年でも、二年生への進級を目前に控えたある日、個人的な理由で学園を去った生徒がいる。


言うまでも無くガドの事だが。


前述した通り100人いなければならない訳ではなく、ガドが辞めた事に関しては何の問題も無い。

しいて言うなら最上位クラスが九人になった事だが、それは次に成績の良い生徒が繰り上がりで入ればいいだけの話。


「ミルさん、ではないのですよね?」


一年生最後の試験。

上位クラス一位になったのはやはりミル=サーラだった。

故に、普通に考えれば彼女がガドの代わりに最上位クラスに入るのだろう。

彼女ならレキ達も大歓迎だ。


だが、前述した通りミルが最上位クラスに加わる事は無い。

つまり編入生と言うのはミルの事ではないのだろう。


そもそもミルや他の生徒なら「編入」という言葉は使わない。

編入とは新たに組み込むという事。

学園で言うなら、他国や他の学園の生徒が加わるという事だ。


レキ達のいるフロイオニア学園に、他国の学園から生徒がやってくる。


「そんな制度が?」

「一応な」


編入という制度は以前からあった。

大武闘祭などを通じ、他国の学園とは交流がある。

編入生の多くは、その大武闘祭などを通じて他の学園に興味を持ち、自分もその学園に行きたいと願い出た場合などに使われる制度なのだ。


とは言え一学年の定員はどの学園も100人と決まっている。

いくら編入を希望しようとも、希望先の学園に空きが無ければ編入する事は叶わないのだ。


例年、そういった事情で涙を飲んだ生徒も多い。

だが今年は、一名分とは言え空きが出来たのだ。


――――――――――


編入と言う制度は以前よりあったが、これまで他の学園を希望する生徒など滅多に現れなかった。


皆、自国の学園で満足しているからだ。


各学園の教育内容はその国や種族に合わせた内容になっている。


武術や狩りを重んじるプレーター獣国。

魔術や魔力を重んじるフォレサージ学園。

鍛冶を習得するならマウントクラフ学園。


と言った感じだ。


もちろんプレーター学園でも魔術は習うしフォレサージ学園でも護身程度とは言え武術の鍛錬も行う。

どの学園もその国に合った教育方針であり、他種族の技術を本格的に学びたいと考えない限り自国の学園で十分なのだ。


それに、編入するにはまず自国の学園を辞め、更には国すら出なければならない。

今まで互いに切磋琢磨してきた学友と別れ、見知らぬ者達ばかりの学園に行くなど、まだ子供の生徒達には辛い選択だろう。

ガドの様に、将来の為仲良くなった友人達との別れを決断できる生徒などそうはいない。


だが、今年ばかりは少々事情が違った。


ガドが辞める意向を示したのは大武闘祭が終わった直後。


レキ達には相談できなかったのだろう。

試験終了後一人教員室へとやって来たガドは、レイラスに自分の考えと胸中を余すことなく伝えた。

もちろんレイラスは止めたのだが、ガドの意思が固い事を知り、二年に上がるまでまだ時間はある、もう一度よく考えろと告げつつも、おそらく決意は変わらないだろうと学園長に報告しておいたのだ。


ガドが辞めれば一人分の枠が空く。

他の学園に希望者がいるなら、その枠に編入する事が出来てしまう。

それは同時に、他国の子供をフロイオニア王国で預かると言う事でもある。

それも国が運営する学園にだ。


事はフロイオニア王国内の話に留まらない。

故に、学園長は更に学園を運営している国へ、つまりフロイオニア国王へと報告した。

報告を受け、フロイオニア国王ロラン=フォン=イオニアは軽くではあるが頭を抑えた。


例年なら、報告を受けた後他国にそのまま伝えるだけで良かった。

前述した通り、枠が空いたからと言って他国の生徒がわざわざフロイオニア学園を希望する等そうは無いからだ。


武術の腕をもっと磨きたいと思ったならプレーター学園を希望するだろう。

魔術の研鑽をしたいと願うならフォレサージ学園に、鍛冶の技術を学びたいと考えるならマウントクラフ学園へ行けばいい。

武術や魔術、鍛冶といった専門的な技術を学びたいなら、それに合った学園に行くのが一番なのだから。


だが、フロイオニア学園が他の学園より優れている点などはっきり言ってない。

座学に力を入れてはいるが、それはむしろ公平に評価する為である。


身体能力で純人は獣人に敵わず、魔力や魔術の才能では森人に劣る。

鍛冶や細工、器用さで山人の上を行くのは困難だが、座学だけはどの種族だろうと平等に身に付ける事が出来る。


それでも他の学園とそこまでの差があるわけでは無い。

プレーター学園に比べれば遥かに上だろうが、その他の学園は別に座学をおろそかにしている訳では無く、特にライカウン学園、マチアンブリ学園は同じ純人の国という事もあり、フロイオニア学園同様武術や魔術より座学に力を入れている。

ライカウン学園は神話や精霊、マチアンブリは商学と学ぶ内容こそ違いがあるが、だからこそフロイオニア学園に編入してまで学ぶ事など無いと言えるだろう。


今年のフロイオニア学園は違った。

何故なら、今のフロイオニア学園にはレキがいるのだ。


大武闘祭であれだけの活躍をしたレキである。

そんなレキのいるフロイオニア学園に興味を示さない生徒はいない。

武術で獣人を下し、魔術で森人を圧倒し、剣を振るうレキの姿は山人が描く理想の使い手に映ったに違いない。

創生神や光の精霊と見紛うばかりの黄金の魔力はライカウン教国の者達を魅了し、一年生ながらに大会を優勝して見せたレキの将来性はマチアンブリ商国の商人達が無視できないほど。


そんなレキのいるフロイオニア学園に編入枠が生まれた。

それもレキと同じ二年生に。


他国に告げれば、間違いなく希望者が殺到するだろう事がフロイオニア王国国王ロラン=フォン=イオニアには容易に予想できたのだ。


かと言って告げない訳には行かない。

編入制度は他国との取り決めで定められた制度である。

大武闘祭を通じて他国の学園を希望する生徒は少なからずおり、他国の学園はそれを受け入れてきた。

今更、フロイオニア学園だけが編入を受け入れないなど出来るはずも無い。


他国の生徒が編入を希望する理由は間違いなくレキである。

何としてもレキに近づきたい、友誼を結びたいと願い、その為わざわざ他国であるフロイオニアの学園を希望する。

その願いや思いを無下にするわけにもいかず、下手に隠して後に発覚でもすれば国際問題にすらなりかねない。


これから繰り広げられるだろう、フロイオニア学園編入枠争奪戦。

受け入れ先のフロイオニア学園は元より、報告を受けた他国の王や代表すらを巻き込む一大騒動となったのだった。

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