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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十章:学園~一年の終わり~
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第403話:ガドからの手紙

何も言わずに去ることをお許しください。


吾輩、これまで皆様のご厚意に甘えておりました。

皆様が吾輩に武具を預けて下さるのは、吾輩を信じ頼って下さるから。

そこに友愛の情がある事は分かっておりました。

それでも吾輩の技術に対する信頼があったとも思っておりました。


だがそれは、吾輩以外の山人がいなかったから。


サラ=メルウド=ハマアイク殿、ギム=ビルヒル=ピアスイク殿。

お二人ともさすがマウントクラフ学園の代表者。

吾輩より確かな技術と鑑定眼をお持ちでした。


お二方に比べれば、吾輩など武具の表面しか見えていない、鍛冶士の真似事をしているただの子供でございました。


これでは皆様のお力になれない。

今はまだよくとも、今後いくたの戦いを経験されるであろう皆様のお力になり続ける事は難しいでしょう。

さりとて純人の国フロイオニア学園でこれ以上鍛冶の技術を学ぶのもまた困難であります。

お世話になっております街の鍛冶士殿に相談した結果、吾輩は改めて技術を学ぶべくマウントクラフへ帰国する事を決意した次第でございます。


幸いマウントクラフには優秀な鍛冶士である我が父上がおられます。

大武闘祭の道中で知己を得ましたマウントクラフ学園の先輩方も吾輩の修行にお付き合い下さるとおっしゃってくださいました。

サラ=メルウド=ハマアイク殿には、我が父上を紹介するという条件でマウントクラフ学園で得た知識と技術を教えて下さるとの確約もしてございます。

レイラス教諭にはマウントクラフ学園への転入も勧めて頂きました。

多くのご厚意を受けながら、吾輩は再度修行をすべく帰国を決意した次第でございます。


皆様と過ごした学園生活。

多くの刺激を受け、吾輩の生涯で最も充実した一年だと断言できます。


レキ殿のお力は素晴らしく、それを間近で見続けられた吾輩は幸福でございました。

カルク殿には武骨な吾輩に良くして頂きました。

ガージュ殿は変わられ、立派な指揮官へと成長されました。

ユーリ殿は飄々としつつ確かな観察眼をお持ちで、吾輩が何の憂いも無く前衛に立てるのはユーリ殿のおかげでございました。


フラン殿の明るさは王国を照らすに相応しく、そんなお方が王族であるフロイオニア王国の未来は明るいでしょう。

もし陰りが生じても、ルミニア殿という頼もしきお方が御傍にいられるのであれば、どんな困難も払いのけられるでしょう。

ミーム殿の向上心は素晴らしく、吾輩も敬意を抱かずにはおられませぬ。

ユミ殿は長剣にも既に慣れたご様子で、もはや吾輩の助言等いかほどの役にも立たないでしょう。

ファラスアルム殿の不屈の精神は、才能など関係ない事を吾輩に教えてくださいました。


皆様にお逢いできたことは、吾輩の一生の宝であります。

故に、そんな皆様に置いて行かれぬ様改めて吾輩は腕を磨き、いつの日か皆様の武具を預かるに相応しい鍛冶士になるべくこれからも精進いたします。


願わくば、皆様のこれからが素晴らしい日々になりますように。

マウントクラフ山国より願っております。


ガド=クラマウント=ソドマイク


――――――――――


「ガド・・・」


レキ達は何度も何度も手紙を読んだ。

最初はレキが手紙を読み、他の者はそんなレキの肩や頭越しに、あるいはレキの膝の上に座り、あるいは反対側から器用に顔を出して。

一通り読み終えたレキの手から手紙をひったくって読み始めたのはガージュだった。

ガージュが読み終わればカルクが、次はユーリが、更にはミーム、フラン、ルミニア、ユミ、ファラスアルムと周り、再びレキの手に手紙が戻った。


まるで何かを確認するように、手紙に隠された暗号を読み取ろうとでもしているかのように、何度も何度も読んだ。


何度読んでも、伝わってくるのはガドの決意だった。

少なくともこの場所を嫌い、レキ達を嫌って去って行った訳ではないという事は分かった。

むしろ、レキ達の力になるべく去って行ったという事がひしひしと伝わってきた。


「あの野郎・・・」


珍しく口汚い台詞を吐いたのはカルクだった。

拳を握り込み、おそらくはギリギリまで耐えていたのだろう歯を食いしばり、目には涙が滲んでいた。

最上位クラスでもおそらく一番長い時間ガドと接していたのはカルクだろう。

光の祝祭日の休暇中も一緒に寮に残り、試合中も何かと二人で前に出る事が多かった。

カルクが攻めでガドが守る。

そんな役割分担は、ある意味相棒の様だった。


そのカルクにも、ガドは一言も相談する事無くマウントクラフへと帰ってしまった。


ガドが自分達を好ましく思ってくれている事は分かる。

それでも一言くらい相談してくれても良かったと思うのは間違いではないだろう。


「ちっ、これだから山人は・・・」

「ガージュ・・・」


呆れ、あるいは嘲笑するかのような台詞だが、ガージュの表情を見ればそれが違う事が分かった。

以前のガージュなら、それこそ鼻で笑う様に侮蔑しただろう。

だが、今のガージュは仲間と自分の夢や向上心を秤にかけ、それでも未来の為に別れを選んだガドの心情を察し、無理矢理納得しようと、あるいは振り切ろうとしていた。

つまりはカルクと同じ憎まれ口のようなものだ。

違うのは、カルクが衝動的に発してしまったのと違い、ガージュのそれはガドを理解した上での言葉だ。

理解した上で、それでも抑えきれなかった心が、言葉となり口から出てしまったのだ。


「・・・レキ様」

「うん?」


誰もが項垂れ、鼻をすする音も聞こえてきた。

そんな中、ふとルミニアがレキに声をかけた。


「覚えていますか?

 武闘祭で私の槍をレキ様が切断されたのを」

「うん」

「もしあれが実戦だったら、切られていたのは槍だけでは無かったでしょう。

 相手がレキ様でなければ、今頃私はここにいなかったでしょう。

 その時、残された槍を見て作った鍛冶士の方は何を思うのでしょうね」


学園側で用意されていた槍はレキ達の鍛錬でも折れない程には頑丈であり、レキ以外の生徒なら例え刃引きされていなくともそうそう切断できる物では無い。

レキの力と剣術があって、初めて出来た芸当である。

それでも試合中に槍が使えなくなったことに変わりはなく、試合はそれで終了した。


武器が使えなくなった時点でルミニアの負け。

試合だったからこそ降参する事で終われたが、もしあれが実際の戦闘だったなら・・・。


そしてそれが、鍛冶士の不手際によるものだったなら。


不完全な武器。

不足な手入れで生じた事なら鍛冶士を責める事も出来るだろう。

だがそれも命があってこそ。

物言わぬ躯と残された武器を前に、鍛冶士は己の不手際を嘆くしかない。

謝ったところで、使い手はもうこの世にはいないのだから。


もちろん使用者が未熟だったというケースもあるだろう。

相手が強すぎたからというのもある。

レキを相手にしたら、どんな武器だろうと同じ運命をたどる可能性は高い。


それでも、もう少し技術があれば・・・。

そう考えるのは、武器を生み出した鍛冶士に誇りと責任があるからだ。


ガドはまだ一から武器を作った事は無い。

故に、己が生み出した武器のせいで誰かが傷ついた事も、命を無くした事も無い。

それでも想像してしまったのだ。

己の技術不足で壊れた武器と、傷つき倒れる仲間の姿を。


実戦を経験した事も、この場合は影響している。

ゴブリンだろうと魔物は魔物、相手はこちらを殺すつもりで襲い掛かってきている。

そんな中武器が壊れでもしたら、間違いなく命が危うい。

助けに入る仲間すら巻き込み、最悪全滅してしまうかも知れない。


ガドはその光景を想像し、鍛冶士としての責任の重さを知った。

そして、サラやギムと言った同じ学生でありながらガドより技術を持つ者達と出会い、己の技術不足を知った。

それが言い訳にすらならない事もだ。


故に、ガドは決意したのである。

鍛冶士としての誇りと責任から逃げ出さず、仲間の命である武器を正しく預かれる力を身に着ける為、鍛冶士の国であり己の故郷であるマウントクラフ山国で修行する事を。


仲間の為、そして自分の為に。

ガドは更なる力を得る為、仲間との別れを選択したのである。


――――――――――


「僕が街の鍛冶士に武具の手入れを頼んで、そこに不備があったとしよう。

 戦闘中に武器が壊れ、戦いに負けたとしたら、僕は間違いなくその鍛冶士を責める。

 お前のせいで戦いに負けたんだと、間違いなく罵倒すると思う」


だがそれは、その鍛冶士が赤の他人だから。

その鍛冶士がガドだったら、少しくらい文句は言うが罵倒はしない。

何故なら、ガージュはガドを信頼し任せていたからだ。


誰にだって間違いはある。

ガージュだって指揮を間違えるし、カルクだってへまをする。

ユーリも遊撃のタイミングを間違えるし、レキなら加減を間違えた事もある。


つまりはそれを許せるかどうかの話。


仲間のミスは許し、赤の他人なら許さない。

あるいは、仲間ならフォローをし他人なら罵倒する。


それは、許せるのは仲間だからであり、そうでなければ決して許さなないという事でもある。


許されたところで本人がどう思うか。

ガドのような誇りと責任を持った者なら、自分のミスで仲間が窮地に陥ったならむしろ罵倒される事を望むだろう。


自分の手入れが不足したから、自分にもっと技術があれば。

ましてやガドが扱うのは仲間の命とも言える武具だ。

故に、そういった後悔をしない為、ガドは故郷へと戻った。


「そっか・・・」

「ガドは選んだのじゃな」


レキ達に出来るのは、そんなガドの決意を尊重し、背を押す事だろう。


ガドは既に旅立った。

それでも、レキの脚なら追いつけるかも知れない。


だが、レキ達はこの新しい教室から、遠くガドを見送る事を選ぶのだった。


――――――――――


深緑の月はレキの学園生活が始まった月であり、新たなる出会いをもたらしてくれた月だった。

学園に来てからも、レキは多くの仲間と出会った。

そして今、レキはそのかけがえのない仲間との別れを経験した。


それもまた、レキの糧となるのだろう。


別れたと言っても二度と会えない訳ではない。

ガドも手紙で書いていた。

レキ達の武具を預かるに相応しい鍛冶士になると。


ガドが一人前になり、レキ達の武具を扱えるほどに技術を身に付けたその時にはきっと会えるはず。

その日を信じ、その日を楽しみに、レキ達はこのフロイオニア学園で新たな日々を過ごすのだ。

これにて学園編、一年生の部終了です。


同時に、文章のストックが完全に切れてしまいました

大変申し訳ございません。


ある程度溜まりましたら更新を再開させて頂きます。

それまでしばしお待ちください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一番楽しみにしている小説です。一年我慢しました。そろそろ復活してほしいです!
[一言] 更新まだですかー?
[一言] しっかり休息もとりつつストック貯めてください、更新楽しみにしてます!
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