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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十章:学園~一年の終わり~
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第401話:二年生になったら・・・

卒業式も終わり、レキ達の学園一年目の生活もあと僅かとなった。

授業で習う範囲は既に終わり、最後の試験もなんとか乗り越えた。


なお、成績に関しては・・・。


紺碧の月が終われば、一年前レキ達が学園に入学した深緑の月がやってくる。

レキ達は自動的に二年生に上がり、新しい一年生が学園に入ってくる。

今レキ達が生活している寮は一年生用となっている為、二年生に上がる際に引っ越し(?)する必要がある。

建物の造りはほぼ同じだが、それぞれの学舎までの距離などは異なるのだ。


部屋割りは相変わらず成績順となっている。

二年生になってもレキ達は全員最上位クラスになれる事が決まったが、クラス内での順位には変動があった。


一位のルミニアは不動、二位にはフランに代わりレキが上がった。

これは武闘祭、大武闘祭の結果が大きかった。

それでも一位を死守したルミニアはさすがである。


三位にはフランが収まり、四位のユミは相変わらず。


五位には入学後に無詠唱魔術を会得したファラスアルムが上がった。

元々座学の成績ならルミニアより上だった彼女だが、入学時点では無詠唱魔術を知らず、武術に至っては攻撃の際に目を閉じてしまうという癖があった為、総合的な評価が低かったのだ。

今では目を閉じる事なく攻撃できるようになり、魔術ではレキ、フラン、ルミニア、ユミに次ぐ成績を修めている。

評価が上がるのも当然である。


六位にはファラスアルムに抜かれたユーリが入り、七位にはカルクを抜いてガージュが繰り上がった。


ガージュも何気に努力している。

入学前はそれなりに自信のあった武術・魔術・座学の全てにおいて負けたガージュ。

なまじレキ達が好成績を修めていた分、同じ純人である自分が森人のファラスアルム、獣人のミーム、山人のガドに負けたのが相当悔しかった。

その悔しさをバネにこの一年努力した結果が今回の評価である。

各評価も、座学ならファラスアルム、ルミニアに次いでクラス三位、魔術もファラスアルムに次いで六位の成績だった。


魔術はサボりがち、座学は眠りがちなカルクが抜かれるのも当然だろう。


そんなカルクはミームを抑えて八位。

武術では負けているが、その分魔術で勝っているが故の順位である。

座学は・・・正直ドングリの背比べだった。


ミームが九位でガドが十位、こちらは変わらず。

ガドならもう少し上でも良さそうだが、勉強や鍛錬の時間を鍛冶の勉強と修練に当てている為、評価がそれほど伸びなかったのだ。

それでも最上位クラスに席を残せる程度の成績を修めているのだからさすがである。


順位の変動こそあったが、元々寮は男子と女子で分かれている為、部屋順、寮の入り口からの場所はカルクとガージュが入れ替わったくらいである。


四年生が卒業し、空いた寮にまず三年生が入る。

次に現二年生が三年生の寮に入り、レキ達新二年生の移動は最後だ。


女子と違い、男子であるレキ達の持ち物など多少の服(制服や鍛錬着を含む)と本、武具とたまに使用する茶器の類くらい。

茶器などガージュやユーリくらいしか持っておらず、レキなどはそれこそ服と本、カバンに双剣くらいだった。


部屋に備え付けられている家具、ベッドや机、棚に水桶と竈などは共通で、部屋自体多少広くなっているのは生徒の成長に合わせているからだろう。

食堂や中庭、談話室などの施設も共通で、教室までの距離が若干遠くなっている以外は一年生の時と同じ環境だった。


「あれっ、ガドは?」

「まだ部屋の片づけしてるみたいだぜ」

「ガドは鍛冶道具もあるからね、時間がかかるのは仕方ないさ」


引っ越しは生徒自身で行う事になっている。

レキ達はともかく、ガージュやユーリなどはそこそこ荷物もあるが、それでも他人の手を借りるまでも無い。

反面、女子の多くは男子の倍以上の荷物があるらしく、何度も往復しなければならないようだ。


何がそんなにあるんだろう?

という疑問を抱くのはレキが男の子だからか。

レキの疑問にルミニアは「女の子にはいろいろあるのです」と何故か答えを濁し、フランは元気に「服とかソファーとかぬいぐるみとかお茶の道具とかじゃな!」と教えてくれた。

多分、フランの答え以外の物もあるのだろうが、気にしない事にした。


深緑の月の初日は新一年生の入学試験が行われる。

結果発表は翌日。

レキ達の授業が始まるのはさらにその翌日である。


それまで在学生は休暇となった。

入学試験が行われる学舎は立ち入り禁止となっている為、レキ達は新しい寮か街で過ごす事になる。


「来年の授業はどうなった?」

「ん、ああ選択科目の事か」


休暇となれば一も二も無く街へ繰り出すフランだが、部屋の片づけが終わるまではお預けとなった。

今頃、ルミニアやユミ達に手伝ってもらいながら頑張っている頃だろう。

レキも手伝おうかと尋ねたが、女の子の荷物をレキ様に運ばせるわけには行きませんとルミニアに断られた。


いつも街へ行った時は荷物持ちしてるのになぁ~、と良く分かっていないレキを、ユーリがまぁまぁと宥めつつ、折角なのでガージュやカルクを誘い男子だけでお茶をする事になった。

ガドは部屋の片づけ中との事。

手伝いを申し出たレキ達だが、鍛冶の道具が多いせいかやんわりと断られた。

確かにレキが力加減を誤ったり、カルクが雑に扱う可能性はあるね。

などとぶ~ぶ~言うレキとカルクをユーリが宥めた。


ガドを除いた男子四人でのお茶会。

ユーリお勧めのお茶とガージュが買っておいたというお茶菓子は、ルミニア達が用意する物よりなんとなくレキの口に合う気がした。

もちろんルミニア達が用意するお茶やお菓子だって十分すぎるほどに美味しい。

ただ、いつもより粗雑というか、甘さ控えめなお菓子は食べ応えがあって満足感をレキに与えてくれた。

お茶も、それなりに高級ではあるが高すぎる訳では無く、味もどこか素朴で非常に飲みやすい。

お菓子を食べながら、あるいはおしゃべりしながら飲むのに適している様に思えた。


気の置けない仲間達と過ごす何気ない時間。

この一年でガージュもすっかりレキ達に馴染んでいる。

以前のガージュなら、ユーリが誘っても決して同席しなかっただろう。


そんなガージュも交えたお茶会。

今回の話題は二年生の授業についてである。

二年生から、一日二コマある座学の内一コマはそれぞれが学びたい授業を選択する方式に変わる。

将来を見据え、今の内から必要な知識を自ら選ばせる方式なのである。


それは同時に、己の将来には不要だろうと思える知識、それを学ぶ無駄を除外する事にもなる。

どんな知識も無駄という事は無いが時間は有限、学べる知識には限界がある。

レキやカルクに領地運営に関する知識や帝王学が不要なように、己が必要とする知識を生徒自身に選ばせるのだ。


「全部要らねぇって言ったら先生に殴られたぜ」


一年生同様、座学も毎日ある。

授業は午前中四時間、午後四時間。

一つの授業は各二時間であり、午前と午後にそれぞれ一回ずつ座学が行われている。


朝の座学は抜けきらない睡魔が襲い掛かり、午後の座学は満腹感という援軍を得た睡魔とこれまた戦わなければならない。

武術の後の座学は疲労という名の味方を付けた睡魔と戦い、魔術の後は集中力というエネルギーを使い疲れた頭で睡魔と戦う。

レキ達の一日は、常に睡魔という強敵との戦いであった。


選択科目は、この一日二回ある座学の授業の内一回を使って行われる。

授業はその名の通り各々が選択した内容で全クラス共通。

選択した内容を受ける為に生徒が教室を移動する方式であり、つまり他クラスと生徒と一緒に受ける事になる。


事前に申し合せれば、他クラスの生徒と一緒に受ける事も出来るだろう。

あるいは同じクラスの仲間と常に一緒にいたいと思えば、そうする事も出来る。


レキも授業によってフラン達と一緒だったり別々だったりだ。


「やっぱり二人は魔物学や植物学を取ったのかい?」

「おう、冒険者に必要だって聞いたからな」


レキとカルクは、レイラスと相談した上で受けるべき授業を決めている。

魔物学と植物学はどちらも冒険者として活動する上で有用となる学問なのだ。


魔物学は魔物の生態や生息地域、あるいは討伐する上での弱点などを教わる事が出来る。

どの部位が素材として活用できるか、その価値はどの程度か。

あるいは魔物その物の強さや危険度なども学べるらしい。

冒険者で無くとも、魔物の多い地域に住む者なら学ぶ価値の高い学問である。


植物学は、文字通りこの大陸に生えている様々な植物に関する学問であり、薬草など冒険者ギルドから常時採取依頼の出ているような植物についても学ぶ事が出来るようだ。


学園を卒業し即冒険者になった場合、基本的には下位ランクから始める事になる。

学園で様々な知識を身に付け、武術や魔術の鍛錬をした生徒達は魔木という見習いランクを飛ばして青銅ランクから始める事が出来るらしいが、その際最初に受ける依頼がこの薬草採取だったりするのだ。

必要となるのは薬草の具体的な知識、つまりどんな形でどのような場所に生えているか。

とは言え薬草は大抵の森に生えている物で、探すのには大して苦労しない。

よく似た雑草や毒草もあるが、見分けるのもさほど難しくはない。

それでも知っているのと知らないのとでは採取効率が変わってしまう。

最初で躓かない為にもこの授業は受けるべきだ。


もちろん薬草以外の知識も学べるし、三年生になれば植物を元に様々な薬品を制作する授業も受けられる。

受けておいて損はない。


その他、レキは地理学を、カルクは鍛冶の基礎を学ぶ事にした。


光の祝祭日の休暇中、カルクはガドと共に学園で過ごしていた。

その際、ガドが武具の手入れをしているところを何度も見学し、興味を持ったのだろう。

鍛冶を学んだからと言って鍛冶士になるわけではないが、武具の手入れの仕方などを学んでおけば冒険者になった後でも役に立つ。

金欠になりがちな駆け出し冒険者なら尚更。

最低限の武具の手入れは自分で出来た方が良いと、ガドにもアドバイスを受けたのだ。


「レキは選択しなかったのかい?」

「ん~、迷ったけど」


レキの夢も冒険者だが、同時にこの世界を旅したいと考えている。

そのために必要な土地勘、あるいは地理を学ぶ事はレキの夢には必要だろう。

乗合馬車などで移動すれば目的地にたどり着けるが、自由気ままに自分の脚で旅するのも魅力的だった。


現段階では、レキは地図すら読めない。

この広い大陸で迷子にならない為にも、地理学は学んでおいた方が良いだろう。


「ユーリ達は?」

「ん、僕は魔物学と帝王学、後は商学かな」

「僕も一緒だ」


ユーリとガージュは貴族として必須だろう学問を選択したようだ。


三男であり、将来家を継ぐ事は無いだろユーリだが、それでも学んでおいた方がいざという時役に立つ。

兄達に不幸があった場合を想定した訳ではなく、それでも貴族の家に生まれたのだから貴族の知識はあった方が良いと考えたのだ。

魔物学もまた、領内に魔物が出た時の対処方法を知る為の選択である。


ガージュは純粋に、家を継ぐ為に必要だからだ。


「魔物学は一緒だな」

「まあ、必須だからね」


街から一歩外に出ればそこは魔物の世界。

故に、魔物の知識は学んだ方が良いに決まっている。

むしろ選択科目にする必要も無いほどだ。

もっとも、卒業後料理店に務める生徒や、そのまま結婚する生徒などもいる。

そう言った生徒なら、魔物の知識など通常の授業で学ぶ程度あれば良い。


「フラン達は何選んだのかな?」

「そういや女子は女子だけの授業があるらしいぜ?」


礼儀作法や淑女教育等、女子だけの授業もあるらしい。

礼儀作法はまだしも、淑女については確かにレキ達が学んでも意味は無い。

男子の中にはその内容に興味を持っている生徒もいるが、そこは女子だけの秘密なのだそうだ。


「後はガドか・・・」

「鍛冶は当然として、あとなんだろ?」

「魔物学だろう。

 魔物の素材には鍛冶にも有用だ」


どうせなら来年もみんなと一緒に授業を受けたい。

そういう思いから、女子達やこの場にいないガドの選択したであろう授業について話し合うレキ達。


だが、二年生になったレキ達最上位クラスの教室に、ガドの姿は無かった。

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