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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十章:学園~一年の終わり~
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第390話:それぞれの成長 その二

誤字報告感謝です。

五人が向かう先にいたのはフランだった。


実力で言えばフランはルミニア、ミームに次いで強い。

魔術有りならルミニアと互角である。

本来ならフランをターゲットにするのは悪手なのだろう。

だが、彼等はそこまで最上位クラスの実力を把握していなかった。


模擬戦が始まってからと言うもの、彼等は戦闘に参加する事無くフラン達の戦いっぷりを観察していた。


ルミニア、ミーム、ユミの三人は誰もが一撃必殺。

前に立ったクラスメイト達は防御する事も叶わずぶっ飛ばされた。

二人がかり、三人がかりですら敵わず、五人で挑んでも同じだろう。


本来のターゲットであるファラスアルムは四人に守られる形で魔術を放ち続けていた。

四人の壁を突破するのは容易くなく、人数の減った今ならほぼ不可能である。

何より彼女は無詠唱で魔術を放っている。

接近する事すら叶わないかも知れない。


残る一人。

小柄で双短剣を武器に戦うフランの攻撃は、威力に置いては三人より低く、その分手数で勝負していた。

少なくともぶっ飛ばされる事は無いだろう。


故に、フランなら何とかなると思ったのかも知れない。


・・・否。

何も考えず突っ込んだ先にたまたまフランがいただけなのだ。

残る四人は、その一人目についていっただけである。


それでもフランを選んだのは最善だったのかも知れない。

双短剣という武器はリーチが短く、相手の懐に入らねば届かない。

故に、フランは一人一人確実に倒していかなければならず、複数人を纏めて倒すような真似が出来ないのだ。


向こうから来るなら好きなだけ切って捨てる事が出来る。

囲まれても、フランの俊敏さなら一撃も喰らう事無く囲いを突破できる。

その際何人かを切り捨てる事も出来るだろう。


「うにゃにゃ!!」

「がぺっ!」


ヤケクソに突っ込んできた生徒の懐に素早く入り込んだフランが、両手の短剣を遠慮なく振るった。

ルミニア達に劣るとはいえ、フランの双短剣だって攻撃力はそれなりにある。

ましてやそれが連続で振るわれるのだ。

一撃でぶっ飛ばされない分、総ダメージはむしろ多いかも知れない。


連続で振るわれる双短剣をまともに喰らい、一人目の少年があっという間に倒れた。


一人目を囮にするかのように突っ込んでいった残る四人は、一人目がフランと対峙したタイミングで分散していた。

流石に先頭を盾にするのは躊躇われたのか。

あるいは、真っ直ぐ突っ込んでしまえば順番に倒されるだけだと理解していたのか。


いや、後を追ったのでは二の舞になると判断したのだ。


入学試験でレキに(一方的な)因縁を持ったサマクが右に、中庭での鍛錬や王宮でレキに(一方的に)因縁を持った生徒は左に。

残る一人はまとめ役と顔を見合わせ、それぞれサマクともう一人の生徒の後ろについていった。


「うにゃ?」


残りの四人も突っ込んでくると思っていたフランが、一人目を倒した後で左右を見渡す。

どちらを先に倒すか、どう戦えば効率よく四人とも倒せるか。

思考は僅か、だがその時間が隙となり、四人がフランの横を駆け抜けた。


「うにゃにゃ??」


左右から仕掛けてくるか!と身構えたフランが、油断なく駆け抜けていく四人を目で追った。

フランの後ろには、ファラスアルムを中心にミームとユミが左右に、ルミニアが後方に控えている。


自分が一人倒し、後の四人をルミニア達四人が倒せばちょうど良い計算になる。


「・・・うむ」


ならば良い、と思ったのだろうか。

双短剣を鞘に納め、フランが腕を組みながら中位クラス四人を見送った。


――――――――――


フランの横を駆け抜けた四人にそんな考えがあった訳ではない。

何も考えずフランに突っ込んだ最初の一人が呆気なく倒されたのを見て、慌てて進路を変えたのである。


とは言え今先頭を走るサマクともう一人の狙いは始めからファラスアルムである。

四人に守られるような立ち位置のファラスアルムに、これまで手が出せなかった。


今なら狙うことが出来る。


偶然(?)生まれた好機。

今を逃せば、ファラスアルムを倒し、レキに一泡吹かせる機会は訪れないだろう。

何故か追撃してこないフランをやり過ごし、無傷でファラスアルムの下へと辿り着いたサマク達。

ルミニア達は、どうやらこの模擬戦では受けに徹するらしい。

攻撃すれば容赦なく撃退してくるだろうが、手を出さなければ何もしてこないようだ。


サマクともう一人は、遠慮なくファラスアルムに攻撃を仕掛けた。


「やっ!」

「はがっ!」

「えいっ!」

「ぐふっ!」


サマクの顔面にルエ・ブロウがさく裂し、もう一人の生徒の腹にファラスアルムの杖が突き刺さる。


どちらかと言えば武術を中心に戦うルミニア達と違い、ファラスアルムは魔術を中心に、武術はあくまで自衛程度にしか身に付けていない。

杖を振るい隙を誘う事はあれど、それは相手が自分を良く知るルミニアだったから。

今回の相手はルミニアではない。

頭の良さも、実力も、ルミニアには遠く及ばない。


いくら左右から仕掛けようとも、今のファラスアルムなら対応できる。

それだけの研鑽を、ファラスアルムも重ねてきたのだ。


魔術で一人を討ち、もう一人に杖を突き出す。

何の防御もせず突っ込んできた二人は、それだけで武舞台に沈んだ。


――――――――――


先行した二人が沈んだのを見て、残る二人は向かう相手を更に変えた。

サマクの後ろをついていた生徒はユミへと向かい、纏め役の生徒は意地もあったのか最上位クラスで二番目に強いだろうミームへと向かった。

実力的にはルミニアの方が上なのだが、武闘祭でしかルミニア達の実力を知らない彼には分からなかったのだ。


それに、こういっては何だが彼の実力なら誰に挑もうが結果は変わらない。


「え~い!」

「がはぁっ!」


「やっ!」

「ぐふっ!」


ユミの長剣が振るわれ、一人が場外に落ちる。

その生徒を目で追うより前に、纏め役の生徒もまたミームの下段からの突き上げを喰らい、軽く宙を舞った後に場外へと落ちて行った。


試合開始から三十分と立たずに、中位クラス十五人はルミニア達「仲良し五人組」(チーム名)に敗北した。


――――――――――


勝って当たり前の試合。


それでもルミニア達はこの勝利を大いに喜んだ。

実力差は明白でも、人数差で押し切られる可能性もあった。

ルミニア達が固まっていたのは、その万が一を警戒しお互いに守り合う為でもあった。

中央にファラスアルムを置いたのは、この中では一番接近戦に弱いファラスアルムに魔術に専念してもらう為の陣形なのだ。


にもかかわらず突っ込んできた二人をそのままファラスアルムに当てたのは、二人ぐらいなら倒せるだろうと判断したから。

十五人の内十人を難なく倒せたからの判断である。

案の定、ファラスアルムは魔術と杖術で二人を難なく沈めた。


この一年、最も成長したのはファラスアルムなのである。


――――――――――


一番弱いであろうファラスアルムを倒し、レキに一泡吹かせようと企んだ中位クラスの生徒二人の目論見は、そのファラスアルムの手によって打ち砕かれた。

一番弱いと思っていたファラスアルムに倒された二人が落ち込む中、武舞台では次の模擬戦が始まろうとしてた。


お次は最上位クラス男子チーム対中位クラスの残り十五人。

ただし、レキは実力差があり過ぎるという事で参加せず、ガージュ、ユーリ、カルク、ガドの四人で相手をする事になった。


レキを除けば誰もが女子より弱い。

それでもガージュ達には最上位クラスとしての矜持と、何より大武闘祭をレキと共に勝ち抜いたと言う少しばかりの自負がある。

例え十五人が相手だろうと逃げるわけには行かなかった。


勝てないまでも半数くらいなら・・・。

そんな事を考えるガージュだが、結果はガージュ達の勝利だった。

圧勝とまではいかず、ルミニア達ほどでは無くとも、それでもガージュ達は四人で十五人に勝利した。


実力差もあったが、やはり大武闘祭を勝ち抜いたと言う経験がガージュ達を成長させたのだろう。

レキのオマケなどではない、ガージュ達も立派な最上位クラスの生徒なのだ。


そして最後、レキ対三十人の戦いが始まった。


これに関して語る事は無い。

学園での武闘祭終了直後、各学年の代表者を交えた十六人相手に一度も触れさせる事なく勝利したレキである。

大武闘祭でも、プレーター学園とフォレサージ学園の代表十人を圧倒したレキが、三十人とはいえ同じ一年生の中位クラス相手に負けるはずが無い。

触れさせる事すら無く、レキは開始から数分と経たず全員を沈めた。


これが自分達の代表にして大武闘祭の優勝者なのだと、中位クラスの生徒はレキの実力を改めて思い知った。

同じ年齢にこれほど強い生徒がいるのだ、レキこそが自分達の代表なのだと喜ぶ生徒すらいた。


なお、若干二名ほど開始直後に特攻して、場外にぶっ飛ばされた生徒がいた。


――――――――――


合同授業はその後も行われた。


他の学年の上位、中位、下位クラスとも行われ、交流を深めていくレキ達。

レキが平民である事や年下である事から、意味も無く高圧的に接してくる生徒も中にはいたが、爵位の高い者はより高いフランやルミニアが、年齢に関しては実力で黙らせた。


と言ってもそんな生徒はごく一部だった。


殆どの生徒はレキを学園の代表として迎え、手合わせの際には頭を下げてまで願い出た。

入学前に起きたフランやルミニアの事件を知る貴族の子息子女の中には、その件で改めてレキにお礼を言う生徒すらいたほどだ。


本来、この合同授業は一年生が上級生に教わり、上級生は下級生に教えるのが通例だった。

だが、レキは学園の代表にして大武闘祭の優勝者。

実力はこの学園で最も高く、しかもその実力は確かな剣術と魔術に裏打ちされたモノ。

今更誰に何を教わる必要も無く、むしろレキの方が教える立場となっていた。


合同授業中、レキは人気者だった。

誰もがレキとの手合わせを希望し、あるいは無詠唱魔術のコツを教わりたがった。


レキも出来るだけ相手をし、魔術もレキなりに教えようとした。

だがレキは、膨大な魔力に任せ強引に魔術を放っているだけで、残念ながら無詠唱のコツなど教える事は出来なかった。

それでもレキの無詠唱魔術を見た生徒達は、感嘆の声を漏らしつつレキにお礼を述べた。


一月の半分は合同授業が行われ、その都度レキは多くの生徒に囲まれた。

それはつまり、その分だけフラン達の相手をする時間が無かったという事でもあった。


そしてそれは、朝夕の中庭の鍛錬でも。

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