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黄金の双剣士  作者: ひろよし
二十章:学園~一年の終わり~
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第387話:ティグ=ギの変化

誤字報告感謝です。

合同授業は三年生や四年生とも行われた。

三年生にはお馴染みアラン達が、四年生には武闘祭でレキがぼこぼこにしたティグ=ギがいる。


ティグ=ギとは何かと因縁があった。


個人戦で慢心からミームに負けたティグ=ギは、続くチーム戦でそのミーム要するフラン達一年生最上位第二チームとぶつかった。

その際、ティグ=ギはチーム戦である事を捨て、ただ一人ミームのみをターゲットにしていた。

ミームが一年生の代表であった事を考えれば、チームのエースを封じたと言えなくもない。

実際は、ただ個人戦のリベンジを果たしたかっただけだ。


見事リベンジを果たしたティグ=ギは、その後控室で己の勝利をこれでもかと誇った。

一度は負けた相手であるミームとその仲間達を、所詮は一年生だと見下した。

それがレキの怒りを買い、続く二回戦で徹底的にボコボコにされたのだ。


そのおかげか、レキやフラン達が抱えていた鬱憤はだいぶ解消されている。

今更レキ達の方から因縁を持ち出そうなどとは思っていない。


少なくともそう、レキ達の方からは・・・。


「貴様らか」

「・・・なんでしょうか?」


睨み合うティグ=ギとルミニア。

ルミニアは今更ティグ=ギにリベンジしようとは思っていなかったのだが、ティグ=ギ的にはそれが負けた相手から逃げる臆病者だと思ったのかも知れない。


「リベンジしようとは思わんのか?」

「私達の分までレキ様が戦ってくださいましたから。

 今更武闘祭の因縁を持ち出そうとは思っていません」


「ふん、腰抜けが」


その言葉が引き金となった。

決して好戦的ではないルミニアも、そこまで言われて素直に引けるほど大人では無い。


「なんじゃとっ!」


何よりルミニアが敬愛するフランが、その言葉に反応し憤慨してしまった。

ユミも「む~」と頬を膨らませ、ミームは全身から闘志を燃え上がらせる。


「ひぅ・・・」


唯一、ファラスアルムだけは杖にしがみつくように縮こまっていた。


二年生との合同授業同様、一対一での手合わせを中心に行う予定だった四年生との合同授業は、両クラスの同意の下チーム戦の再戦となってしまった。


――――――――――


「それでどうなったのだ?」


日付は変わり、三年生との合同授業の日となった。

気心の知れたアラン達とあって、またこれと言って因縁も無い為か二年生や四年生との合同授業より和やかに始まっている。


ようやく訪れたフランとの合同授業にアランが張り切り、折角だからと指南しようとしたところを「わらわの指南役はレキじゃ」と一刀両断されたアランがその場に崩れ落ちたりもしたが・・・。

慣れているのか授業が始まる頃には復活していた。


二年生とは個人同士の模擬戦、四年生とはチーム戦から始まった合同授業、三年生との合同授業はいつも通り素振りや型稽古から始まった。


素振りは武術の基本であり、型稽古は体の使い方動かし方を身に付け覚えさせる為にある。

どちらもおろそかにして良い物では無い。


武術の華やかさにばかり目が行ってしまうレキくらいの年齢の子供なら、素振りや型稽古をおろそかにしてしまいがちだが、そこは王宮の騎士団に揉まれたレキである。

剣姫ミリスの教えに従い、王宮でお世話になっている頃から基礎をおろそかにした事は無い。


そんなレキに倣っているのか、フラン達も素振りや型稽古はちゃんと行っている。

ファラスアルムの体力が向上しているのも、杖の振り方がしっかりしてきたのも、全ては基礎をおろそかにしていないからだ。


そんな一年生に感心した様子を見せる三年生達。

彼等もまた、アランに倣い基礎稽古はしっかり重ねてきている。


剣を振るう音に交じって、そこかしこから会話が聞こえてきた。

レキはアランと並び、お互い王宮で習った剣を振るう。


その際、アランに聞かれたのが先日の四年生との合同授業の内容であった。


「やっぱ勝てなかった」

「そうか・・・まあ、仕方あるまい」


ある意味フラン達のリベンジ戦となったティグ=ギチームとの再戦。

結果はまたもやフラン達の敗北だった。


とはいえ、武闘祭の時のような内容ではなかった。

授業であり、講師がいたと言うのもその理由だろうが、それ以上にティグ=ギが真面目(?)に戦ったからだ。


武闘祭では個人戦で負けたミームに対し、チームを無視してリベンジを仕掛けたティグ=ギ。

今回はチームのエースとして、終始指揮に従い戦っていた。


今回も前回同様突っ込んでくるのではと警戒していたルミニアは、本格的に連携を仕掛ける四年生に指揮が追いつかず敗北した。

もっとも、それが無くとも負けていただろう。

四年生の実力は、今のフラン達を上回っていたのだ。


無詠唱魔術を中心に戦えばまだ勝ち目はあったかも知れない。

だが、試合前にティグ=ギから挑発じみた言葉を受けたフラン達は、折角の無詠唱魔術を使わず接近戦を仕掛けてしまった。

唯一四年生に勝っている武器を捨て、相手の土俵で戦ってしまった事も敗因だったに違いない。

ある意味、ティグ=ギの作戦勝ちでもある。


「ルミニアもまだまだ甘いという事だな」

「う~ん・・・」


試合後、ティグ=ギと同じ四年生の代表生徒だったベオーサ=キラルに教えてもらった事だが、武闘祭後のティグ=ギは人が変わったように穏やかになったそうだ。

獣人らしい強さへの渇望こそあれど、ただがむしゃらに鍛錬に打ち込む様子も無く、クラスメイトとも良く話すようになった。

武闘祭準優勝者としての驕り、何が何でも優勝して見せるという気概。

それまで鍛錬中は誰も寄せ付けなかったティグ=ギ。

最後の武闘祭が終わった事で、張り詰めていた物が無くなったのかも知れない。


それに・・・。


「当たり前ですが、この世界にはティグより強い者はいます。

 それでも魔術さえ使われなければ勝てる、どこかでそう考えていたのかも知れません」


そんなティグ=ギの驕りはレキによって砕かれた。

純人の一年生であるレキに、魔術無しで圧倒されたからだ。

更には武闘祭終了後に行われたレキ対十六人という変則過ぎる模擬戦でも、ティグ=ギは最後までレキに一撃も与えられず終わった。


圧倒的な強者を前に、学園最強だとか武闘祭優勝と言った目標などどうでも良くなったのかも知れない。


鍛錬こそそれまで以上に真面目に行ってはいるが、それすら一人で行わなくなった。

望まれば手合わせも行い、他者への指南すら行う事もあると言う。

連携訓練にも率先して参加し、ベオーサの指揮にも従うようになった。

四年生としての風格、格下相手に胸を貸すような言動は以前からあったが、驕りも無くなり相手を侮る事も無い。

今のティグ=ギは、武闘祭の頃より精神的に一回りも二回りも大きくなっているのだ。


ルミニア達を挑発したのも、ああいえば向こうから再戦を挑んでくるだろうと考えての事。

四年生として今度こそちゃんと胸を貸し、向こうのリベンジを果たさせようとしたのだろう。


とはいえ手を抜きわざと負けてしまえば相手の矜持を傷つけてしまう。

挑ませ、全力で戦い、勝利して見せる事で相手をより奮起させる。

それが、ティグ=ギなりのルミニア達への激励だった。


「伊達に四年生ではないという事だな」

「ふ~ん」


ティグ=ギは四年生。

あと二月で卒業してしまう。

学園での最大の目標であった武闘祭・大武闘祭優勝の目的は果たせなかったものの、それ以上の物をティグ=ギは得た。


彼は、少しでも恩返しがしたかったのかも知れない。


――――――――――


指南役によっては、鍛錬は無言で行うべしと言う者もいるだろう。

だが、実際の戦闘で無言になる必要は無い。

狩りなど相手に気取られてはいけない場合を除いては、むしろ会話は連携をスムーズに行う為にも必要な行為である。

気合を入れる為に声を挙げる場合もある。

ローザなどは、呪文の詠唱をしながら剣を振るっている。


おしゃべりしたからと言って剣が鈍るようでは話にならない。

まあ、だからと言っておしゃべりばかりして良い訳ではないが。


レキもアランも口は開けど手は一切抜かず、一通りの基礎鍛錬を終えた。


その後は他の学年との合同授業同様、一年生と三年生に分かれての手合わせが行われた。

三年生はアランを除いてレキに群がり、一年生はレキとフランを除いてアランに挑んでいった。

レキは武闘祭・大武闘祭の優勝者であり、アランは準優勝者である。

そんな二人に挑むのは当然の事だ。


アランは武闘祭・大武闘祭を通じて何度もレキと戦っている為、今回は他の生徒に譲っている。

その際、折角だからとまたもやフランに指南しようとしたアランだったが、それより先にフランは将来の義姉であるローザと手合わせを始めてしまっていた。


将来の義妹のお願いに笑顔で応じるローザ。

その片隅でアランが崩れ落ちていた事を、誰もが気づきつつ放置していた。

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