第382話:帰ってきたレキ達
誤字報告感謝です。
レキ達フロイオニア学園の一行と分かれたゴウヒ達は、ギム達とも交流を深めるべくマチアンブリ学園まで馬車を共にした。
レキが彼等が将来持つであろう店のお得意様候補なら、ギム達は仕入れ先候補である。
鍛冶と採掘の国マウントクラフで作られる武具は当然ながら高品質。
そもそもマチアンブリ商国はマウントクラフ山国で作られる良質な武具を仕入れ、フロイオニア王国やプレーター獣国などに売る事で発展していった国である。
優秀な山人に唾を付けるのは、マチアンブリの者なら当然なのだ。
山人は職人気質で無口な者も多い。
ギムやサラも興味のない事に対しては途端に口数が少なくなる。
レキと別れ、途端に口数の少なくなったマウントクラフ学園の生徒達に対し、商売には話術も必須なのだろう、ゴウヒ達はレキ達の分まで場を盛り上げようとした。
ギム達も商人の口の多さは理解しているらしく、特に機嫌を悪くするような事は無く、話題によっては話に付き合っていた。
「そういやあんたらの作ったっちゅー盾やけど」
「む?
魔術を反射する盾だな」
「あれ、誰かに売ったん?」
「せや、わいらがつかまされたまがい物、あれあんたらの失敗作なんか?」
「ふむ、確かに失敗作に似ていたが、失敗作を誰かに譲るなどせぬ。
鋳潰して再利用するのが普通だ」
「ほならあれは・・・」
「我らが魔術を反射する盾を作っているという話は学園ではそれなりに知られていた。
あるいは生徒の誰かが真似をしたのかも知れん」
完全な偽物であれば、さすがにゴウヒもアミスも騙されなどしなかった。
自分で仕入れた物を確認もせず用いるなど商人としてありえない。
試合前にも確認したが、あの盾は確かに魔術を反射する効果を持っていた。
確認し、問題ないと思ったからこそ試合で用いたのだが・・・。
結局、試合ではただの一度も魔術を反射する事は無かった。
「おそらくあなた達の試した魔術が弱かったから。
弱い魔術なら通常の魔銀でも反射する場合がある。
魔術の強さや種類にかかわらず、どんな魔術でも反射する盾。
それがゴウヒ達の目指す盾」
魔術、というより魔力で生み出された物を反射する盾というのが、ギム達が作ろうとしている盾である。
例え上位系統だろうとも、それが魔力によって生み出された物であれば威力に関係なく反射する。
実際に出来れば完全なる魔術士殺しの盾になるに違いない。
もちろん道のりは険しいが。
「フィルニイリス殿の助言も役に立つだろう。
レキ殿の魔術を見れたのも僥倖だった」
そう言う意味では、彼等もまた大武闘祭に出場した甲斐があったというものだ。
「出来たらワイらにも教えてな」
「ぜひ扱わせてもらうわ」
「うむ」
六学園合同大武闘祭。
その真の目的である他の学園との交流は、レキ達と別れた後でも行われていた。
――――――――――
一方、レキ達はフロイオニア学園に向けて馬車を走らせていた。
大きなトラブルも無く、魔物に襲われる事も無い。
仮に襲われてもレキが瞬殺し、皆の胃を満たす糧となるだろう。
レキ達が進んでいるのは平たんな街道であり、魔物の姿もほとんど見られない。
平和そのものではあるが、レキの狩りを見越して食料を積んでいる以上、全くいないのは少々問題があった。
故に、レキは毎度野営の度にどこかへ飛んで行っては魔物を狩る事になった。
とは言えそれを不満に思うレキではないが。
そうして移動する事数日、レキ達はようやくフロイオニア学園へと戻ってきた。
「着いた~」
「着いたのじゃ~!」
毎度のごとくレキとフランが両手を上げ、到着の喜びを全身で表す。
大武闘祭に出場する為フロイオニア学園を出たのは約一月前。
そのほとんどを移動に費やしていたわけだが、この二人はまだまだ元気いっぱいである。
移動が馬車だったと言うのもあるのだろう。
体力の低いファラスアルムも、野外演習の時ほどは疲れていなかった。
それでも一月ぶりとなる学園である。
何やら感慨深さを感じつつ、レキ達は寮へと入って行った。
――――――――――
本日は学園も休暇のようだ。
昼過ぎに到着したレキ達は、ある程度荷物を整理した後、中庭へと集まっていた。
移動の疲れもあまりなく、何より部屋でじっとしているなどレキ達の性に合わなかった。
「はい」
「まあ、ありがとうございますフラン様」
それに、せっかく買ってきたお土産を早く渡したかった。
今回プレーター獣国に向かったのは、学園の代表として大武闘祭に出場したレキ達と、その応援として共にプレーター獣国へと向かったフラン達の十人のみ。
学園の全生徒で行ければ良かったのだが、予算や日程、移動の手間などの都合で会場へ行けたのは限られた生徒だけだった。
当然、残りの生徒は学園に残り、いつも通りの授業を受けていたのである。
「羨ましいと思うなら、来年は自分達が出場できるよう努力しろ」
不満を訴える生徒達ももちろんいたが、教師の一言で口をつむぐしかなかった。
レキ達はともかくフラン達はただの応援。
それでも彼女達は同じ最上位クラスの生徒であると同時に、学園で行われた武闘祭本戦の出場者でもある。
実力的にはフラン達が学園の代表になってもおかしく無かったという事もあり、例年ほど揉める事は無かったと言う。
不満という点では他の学年の生徒達の方が大きかったようだ。
特に四年生。
他の学園の代表生徒を見れば分かる通り、大武闘祭に出場する生徒は基本的に四年生が多い。
四年生の方が心身も成長しており、他の学年より長く研鑽もしている為実力も高い。
何より大武闘祭に出場できるチャンスは今年が最後とあって、気合の入りようが他の学年より強いからだ。
そんな四年生を差し置いて、今年のフロイオニア学園の代表はレキ達一年生とアラン達三年生だった。
試合の結果である以上不満を訴えたところで意味は無い。
それは四年生達も分かってはいるが、それでも不満を抱いてしまうのは仕方のない事だった。
そんな不満も、さすがに一月も経てば治まるようだ。
あるいはその不満を授業で解消したのだろう、レキ達のいなかった学園では、どの武術場からも非常に気合の入った声が聞こえていたそうだ。
「そういやラム達に会ったわよ」
「まじかよっ!
あいつら元気だったか!?」
「まあね」
気合が入っていたのは一年生も同じだった。
レキ達が学園を離れている間、残った生徒達はそれはもう一生懸命授業に取り組んでいたそうだ。
「来年こそは自分が」と気合を入れ、レキ達が学園を離れている間に少しでも実力を伸ばそうと頑張っていた。
武術や魔術の評価は武闘祭の結果も大きく影響する。
武術などは武闘祭の結果が一年間の評価にそのまま繋がると言っても良いくらいだ。
故に彼等の努力は一年の評価にはさほど影響はない。
それでも努力したのは、それだけレキ達の影響が強いという事だ。
応援のため一月もの間学園を離れていたフラン達は、鍛錬という面では後れを取った事になるのだろう。
いくら最上位クラスの生徒と言えど、この一月の間で差を詰められ、あるいは超えられている可能性もある。
上位クラスのミル=サーラ達は休みであるにもかかわらず自発的に中庭に出て鍛錬していた。
中位や下位クラスの生徒達もちらほらと中庭に出ては、一生懸命剣を振っている。
誰もが武闘祭で己の実力とレキ達の強さを知った。
自分達と同じ一年生であるにもかかわらず、四年生と互角に戦い、あるいは勝利したレキ達。
そんなレキ達に触発され、休暇であるにもかかわらず鍛錬していたのである。
「私達もうかうかしてられませんね」
なお、鍛錬こそしていなかったフラン達ではあるが成果はあった。
レキを始めとした強者の試合を間近で見れた事だ。
特に、プレーター学園やフォレサージ学園の生徒の戦い方は、フロイオニア学園には無い物が多かった。
個人戦はもとより、獣人だけ、森人だけのチームの戦い方は参考になる点も多かった。
まあ、その内の一チームはレキが何もさせなかったのだが。
お土産として購入したお菓子を広げ、ミル達と一緒に食べるフラン。
話題は当然大武闘祭の事である。
「さすがレキ様っ!
ミリス様の一番弟子として素晴らしい成果ですっ!」
そう言って、我が事のように喜ぶミル。
話を聞いていた者も、レキの実力を知っているからかさほど驚かずに聞いていた。
なお、一年生が大武闘祭で優勝したのは大会史上初めての事である。
その事実を知れば、あるいは違う反応があったかも知れない。
とはいえレキならばと誰もが思うのは、学園の武闘祭でのレキの活躍を見ていたからだろう。
同じ一年生にしながら四年生を圧倒したレキなら、他種族の生徒だろうと勝てるに違いないと、大武闘祭も他の学園の事も知らない彼等は単純にそう考えてしまったのだ。
その考え自体間違ってはいないのだが。
そんなレキの優勝を聞き、他の生徒達は改めて思う。
同じ一年生のレキが優勝できたのなら、自分達だっていつかは勝てるかもしれないと。
レキの真の実力を知らないが故の考えではある。
だが、その考えを持つ事で、生徒達今後も成長していく事が出来るに違いない。
来年、レキ達は二年生になる。
進級時には所属するクラスの見直しが行われるのだが、おそらく最上位クラスの生徒はこのままのメンバーになるのだろう。
座学の評価はまだついていないが、武術や魔術の評価に関しては最上位クラスがダントツだからだ。
それでも来年こそは・・・。
そう誓い、ミル達もまた鍛錬にいそしむのであった。
なお、座学の評価については、日々の授業と後日行われるテストで付けられる事になっている。
フロイオニア学園は純人族の学園であり、どの種族の生徒も平等に身に着けられる座学こそが最も大きく評価される。
故に、テストの結果があまりよろしくない場合は、いかにレキ達でも来年は下のクラスになるかも知れないのだ。
「「「えっ!!」」」
レキ達の新たなる戦いが始まろうとしていた。




