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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十八章:学園~大武闘祭・チーム戦~ 後半
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第358話:控室にて

誤字報告感謝です。

『いや~、準決勝の名に恥じない素晴らしい試合でした。

 アラン選手を中心に最後まで戦い抜いたフロイオニア学園第二チームでしたが、最後はプレーター学園第二チームに押し切られてしまいました。

 フィルニイリス様、試合を振り返ってどうでしたか?』

『勝敗を決めたのは純粋な実力差。

 連携もプレーター学園の方が上だった。

 おそらくは日頃の狩りの練習が連携を向上させたのだと思う』

『なるほど。

 フロイオニア学園もチームワークでは負けていなかったように思いますが、プレーター学園の方が一枚上手だったという事ですね』

『アラン以外にもあと一人詠唱無しで魔術を放てる者がいれば勝敗は分からなかった。

 でもそれが今の実力、仕方ない』


ヤランとフィルニイリスが試合を振り返る中、負けたアラン達は控室へと戻っていた。

自分達が待機していた部屋ではなく、決勝に進むレキ達のいる部屋だ。


「惜しかったね」


レキから見ても、アラン達の実力はアリル達に劣るものでは無かった。

フィルニイリスの言う通り、連携の差で敗れたのだろう。

魔術と言う選択肢がある分、幅広い戦術を取ることが出来るアラン達。

対するアリル達は、個々の武術の技量を活かし武舞台上を目まぐるしく駆け回った。


それもまた作戦だったのだろう。

呪文の詠唱は間に合わず、アランの詠唱破棄魔術もターゲットを絞り辛い。

それどころか仲間に被弾してしまう恐れすらあった。

故にアラン達の利点である魔術が使えず、押されてしまったのだ。


「慰めは必要ない。

 負ける事には慣れているのでな」


確かにアランは負ける事に慣れていた。

だからこそこのような状況でも落ち込まず上を向く事が出来るのだ。


「レキ」

「ん?」

「後は任せたぞ」


そう言って、アランが清々しいほどの笑顔を向けた。


レキと違い、アランは最初から強かったわけではない。

王宮で、そして三年間の学園生活で身に付けた実力。


確かにアランは同学年の中では強かった。

それでもレキ以外の生徒にも何度も負けた事があった。

学園の代表になったのも今年が初めてなのだ。


三年生でありながら初出場でここまで来れた。

誇りこそすれ恥じる事ではない。


「私達はまだ三年だ。

 チャンスは来年もある。

 そういう意味では相手の方がこの大会に臨む意気が強かったのだろう」


レキやアラン達を除き、大会に出場している生徒は四年生ばかり。

彼等彼女等にとって、今回の大会は学園生活最後の晴れ舞台にして、四年間の研鑽を魅せる最後の舞台でもあった。

当然、大会への意気込みはレキやアラン達以上。

そんな彼等彼女等と戦い、アラン達は準決勝まで勝ち進んだのだ。

十分満足できる結果である。


「とは言え勝ちたくなかったわけではないがな。

 それは誰もが同じだ。

 誰もがそう思い全力でぶつかるのがこの大会なのだ。

 レキ、お前も全力で・・・だとまずいのだな。

 まあ、相手の全力を受け止め、それでも勝て、いいな」

「うん」


決勝に進むレキに対し、アランが激励を送った。

アランの言葉に、レキも笑顔を見せた。


――――――――――


「良い兄貴やな」

「兄というな」


レキを励まし、他のメンバーにも激励を送ったのち、アラン達は控室を出た。

残りの試合、レキ達の決勝を観客席で見学する為だ。


ただ、すぐには向かえなかった。


「アラン様・・・」

「ごめん、アラン」

「気にするな・・・というのは無理だろうな」


レキ達の部屋を出たアラン達は、今度は自分達が使っていた控室へと戻っていた。

タオルや試合前や試合後に補給する為の飲食物、着替えなどを回収する為だが、この部屋へ立ち寄った理由は他にもあった。


「すまん・・・私の作戦ミスだ」


レキの前では上級生として毅然とした態度を取っていたアラン達。

だが、アラン達とて悔しくなかった訳ではない。

余計な気を遣わせまいと、今まで我慢していただけだ。


「獣人相手じゃしゃあないやろ」

「ああ、作戦自体は悪くなかったはずだ。

 相手が一枚上手だっただけだろう」

「・・・」


アランの為にと全力を尽くしたローザとフィルア。

前衛で剣を振るいつつ、途中策をも講じたラリアルニルスなどは、いつもの武人然とした態度とは裏腹に、目に見えて落ち込んでいた。

一年生の前ではと言われ、今まで耐えていたのだ。

今はアラン達以外誰もいない。

付き添いである教師も席を外してもらっている。


だから、もう我慢する必要は無かった。


「アラン様・・・アラン、様」

「ローザ、お前は良くやってくれた。

 リリルの攻撃から私を守ってくれたな。

 助かったぞ」

「そ、そんな・・・私こそアラン様のお力に、もっと・・・」

「フィルアも、獣人相手に良く戦ってくれた。

 身体能力で上回る相手と互角に戦えたのだ、もっと誇っていい」

「・・・足りない。

 こんなんじゃアランの力になれない。

 もっと強くならなきゃ」

「・・・ああ、そうだな」


アランの肩に顔を埋め、嗚咽を漏らすローザ。

フィルアもまた、アランの背に隠れながら拳を強く握りしめた。


ラリアルニルスは控室にある椅子に深く腰掛け、項垂れる。

ジガもまた、先ほどの試合を振り返りもっと何か出来なかったかと考えていた。


「先程レキ達にも言ったが私達はまだ三年生だ。

 今回の敗北を糧に、あと一年死ぬ気で頑張れば来年こそは優勝も出来るはずだ」


そんな中、アランは来年に向けて決意を新たにしていた。


皆の代表として、フロイオニアの王子として、一年生のみならず仲間の前でも情けない姿を見せるわけにはいかなかった。


――――――――――


『さあ、いよいよやってまいりました大武闘祭、チーム戦の部、決勝戦ですっ!

 個人戦同様様々な戦いがありましたが、フィルニイリス様、これまでを振り返ってどうでしょう?』


残るは決勝のみとなり、ここで三十分程時間を取る事になった。

盛り上がりを見せる大闘技場では、司会進行役のヤランと解説のフィルニイリスが、個人戦同様これまでの試合を振り返っていた。


『チーム戦は個人の力量よりチームワークが重要だと言われていた。

 それは間違いではない。

 だが時に超絶した個人の実力が相手チームを覆す事がある』

『それはレキ選手の事ですね?』

『そう』

『レキ選手以外はどうでしょうか?』

『マウントクラフ学園は己の武器を試す為、マチアンブリ学園は己の商才を披露する為、ライカウン学園は魔術士としての研鑽を魅せる為。

 どの学園も良い試合をした。 

 特にフォレサージ学園の第二チームは森人の新たな戦い方を見せてくれた。

 魔術士が後衛で呑気に魔術を放つ時代は終わった。

 ミルアシアクルはこれからの森人の戦い方の一つを見せてくれたといって良い』

『無詠唱魔術と剣術の組み合わせは先ほどのアラン選手が得意とするところですが、それでもプレーター学園の武術と連携力には敵いませんでした。

 そんなアラン選手と同じフロイオニア学園第一チームと、アラン選手のチームを破ったプレーター学園第二チームで競われる決勝戦、間もなく開始です!』


一回戦は無詠唱魔術でカリルスアルム率いるフォレサージ学園第一チームを圧倒したレキ。

二回戦ではレキ一人を狙ったかのように五人がかりで攻めてきたプレーター学園第一チームを難なく下し、三回戦では体力を消耗させる為(?)一人ずつ順番にレキに挑んできたミルアシアクル達フォレサージ学園第二チームも倒したフロイオニア学園第二チーム。

レキという絶対的なエースを中心に、実力では数段劣ると知りながらも必死になって戦うガージュ、ユーリ、カルク、ガドの四人。

一回戦は出番が無く、二回戦では何とか活躍できたものの、レキのおこぼれを預かった感じも否めなかった。

だが、三回戦では相手チームの代表であるミルアシアクルに、四人で挑まねば負けるかも知れないなどと言わしめた。

彼女の言葉に励まされると同時に、これ以上レキのお荷物になるものかと奮起している。


そんなレキ達が戦うのは、一回戦でサラ=メルウド=ハマアイク率いるマウントクラフ学園第一チームを実力差で下し、二回戦は魔術を駆使するライカウン学園第二チームを接近戦で倒し、そして三回戦では総合力で勝るアラン達フロイオニア第一チームを武力と連携で下したプレーター学園第二チーム。

個人戦の一回戦でレキに敗れた、アリル=サ率いるチームだ。


彼女達の実力は本物である。

瞬発力に優れるアリルとリリル。

小柄で小回りが利くリネとネス。

力に優れるイメイ。

見目も麗しく、実力もあるプレーター学園のいわばアイドル達。


当然、彼女達を応援する声は大きい。

だが、個人戦に引き続きチーム戦でもその圧倒的な実力を見せつけたレキを応援する声はなお大きい。


六学園合同大武闘祭、チーム戦の決勝は、まるで大闘技場が震えるような大歓声の中で行われようとしていた。

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