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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十八章:学園~大武闘祭・チーム戦~ 後半
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第346話:二回戦開始

『さあ、六学園合同大武闘祭・チーム戦の部。

 午後からは第二回戦ですっ!

 二回戦第一試合、まずは優先枠での出場となります。

 プレーター学園第一チームっ!』


「「うおぉ~!!!」」


自国のチームの登場に会場が沸き立つ。


グル=ギ率いるプレーター学園第一チーム。

見た目の華やかさこそ無いが、その実力はプレーター学園一である。

武を重んじるプレーター学園はこの六学園合同大武闘祭での優勝回数が最も多い。

当然、今年のプレーター学園も優勝候補の一角である。


『対するは、一回戦第一試合をその圧倒的な魔術で勝利したレキ選手率いるフロイオニア学園第一チームっ!!』


「「うおおぉぉ~~~~!!!!」」

「レキ~!」

「レキ様~!!」

「申し子様~!」


そんなプレーター学園の登場時より明らかに声援が大きいのは、レキ率いる(?)フロイオニア学園の第一チームだ。


今年の六学園合同大武闘祭、その中で唯一となる一年生のみで構成されたチーム。

だがその実力は確かだ。

何故なら、チームメンバーであるレキは先日行われた個人戦で優勝を果たし、更には午前に行われたチーム戦一回戦においても、たった一人で相手チーム五人を圧倒したのだ。

それも、魔術に優れるフォレサージ学園のチームを、その得意の魔術でだ。


そんなレキを有するチームの登場に、いやレキの登場に会場はこれでもかと盛り上がった。

まるで、大闘技場その物が震えているかのようだった。


「いいかレキ。

 一回戦はお前に譲ってやったが次は無いからな」

「うん、大丈夫!」


先の一回戦。

ファラスアルムを落ちこぼれと称し蔑んだカリルスアルムに対し、レキはファラスアルムが努力して習得した無詠唱魔術の素晴らしさと、青系統だけでも十分戦えるというお手本を示した。

更には青系統を極めた先にある紺碧系統の魔術を魅せ付ける為、たった一人で相手チーム五人と戦い、勝利してみせた。

五人の魔術士相手に、ただの一度も魔術を使わせないという完封試合をやってのけたのだ。


それは無詠唱魔術の有用さを知らしめると同時に、落ち込んでいたファラスアルムを励ます事にもなった。

その代わりと言っては何だが、レキが一人で戦った為仲間であるガージュ達はその出番を完全に無くしていた。


事前に事情を説明されていた為納得こそしてはいるが、これでは何の為プレーター獣国に来たのか分からない。

ただでさえ実力的に不足しているガージュ達である。

このままではレキのオマケどころか、武舞台の添え物程度に思われてしまう可能性すらあった。


ガージュ達はまだ何もしていない。

ガージュ達の事を認識している者など、この大闘技場にはほとんどいないだろう。


一回戦は仕方ないと納得した。

だが、その分二回戦以降は自分達も戦わせろとガージュ達はレキに詰め寄った。

もちろんレキもガージュ達の出番をこれ以上奪うつもりはない。


個人で戦う以上に、レキは仲間と肩を並べて戦う事を好んでいるからだ。


本日はチーム戦。

一生懸命訓練し、学園での予選や本戦をみんなで勝ち進んできた。

一回戦こそあんな事態になってしまったが、二回戦からはちゃんとみんなで戦い、勝とう。

そう改めて決意したレキ達である。


「おい、あいつだ」

「レ、レキだ」

「レ、レキだな」

「個人戦で優勝したレキだ」

「あいつが今のところ最強だ」


そんなレキ達の決意もしらず、プレーター学園の生徒達の視線はたった一人に注がれていた。


――――――――――


『プレーター学園側は学園一位のグル=ギ選手を筆頭に、上位十名中男子五人で構成されたチームです』

『華やかさの欠片も無い』

『対するフロイオニア学園側は個人戦優勝のレキ選手を筆頭に、これまた男子五人のチームです』

『レキ可愛い』

『フィルニイリス様?』


「ぶ~・・・」


一回戦最後の試合と異なり、今回は武舞台上にただの一人も女子がいない。

しいて言うならまだ可愛らしさを残しているレキくらい。

もちろんその評価にレキは不満である。


それはともかく。


『プレーター学園側は当然武術のみでの戦いを仕掛けてくるでしょうが、フロイオニア学園側はどうでしょうか?

 レキ選手の無詠唱魔術がある以上、うかつには近づけないと思いますが・・・』

『レキの魔術も万能ではない。

 五人同時に仕掛ければ一人くらいは間合いに入れる』


一回戦でレキが圧倒出来たのは、相手が魔術士だったから。

お互い距離を開けた状態での魔術の打ち合いだったからこそ、あれほどまでに優位に立てたのだ。

今回の相手は全員近接戦闘に優れる獣人である。

レキの無詠唱魔術でも、五人が同時に仕掛けたならあるいは一人くらい接近を許すかもしれない。


『なるほど』

『もちろん簡単にはいかない。

 レキにも仲間がいる』


何度も言うがこれはチーム戦。

何より大切なのはチームワークである。

例えレキ一人で圧倒出来るとは言え、レキ本人にそのつもりが無い以上試されるのは五人の連携なのだ。


「おいレキ、さっきは見せつけてくれやがったな」

「さっき?」

「そうだっ!

 アリルとあんなにべったりくっつきやがって・・・

 俺だってまだ手も握った事がないってのによ・・・」

「えっと・・・」


話は変わるが、対戦相手の一人であるグル=ギは同じプレーター学園の代表アリル=サに恋慕の情を抱いている。

それどころか、先日の個人戦では優勝したら付き合ってくれと告白すらしている。

準決勝でアランに敗北し、惜しくも(?)その夢は破れさってはいるが、諦めるつもりは欠片もない。

昼休憩中アリルを探していたのも、チーム戦で優勝したら付き合ってくれと、しつこくお願いするつもりだったからだ。


「今度こそ俺が優勝してやる!

 そしてアリルと・・・アリルと・・・」


「え~っと」

「放っておけ、レキ」

「第三者に出来る事は励ます事だけ。

 でも僕らはそれをする立場にはいない。

 出来るのは、彼等と全力で戦う事だけだよ」

「良く分かんねぇけど全力を出せばいいんだなっ!」

「むぅ!」


栄えある大武闘祭。

勝者に送られる栄冠、それをだしに意中の女性とお付き合いしようと言うグル=ギの動機(想い)は、ある意味純粋かも知れない。

ただ、それをアリルが望んでいればの話だが。


「どうすんだ?」

「え~、どうせレキには勝てないし」


レキには誰も勝てない。

それは戦ったアリルが知っている。

故に、グル=ギの想いが叶う事は無いのだろう。


それでも諦める事なく、グル=ギは武舞台上でアリルとの空想(妄想)に耽っていた。

はっきり言って気持ち悪く、何より武舞台上でする事ではなかった。


なお、この世界にも「類は友を呼ぶ」という言葉が存在する。

フロイオニア王国騎士団が脳筋の集まりであるように、グル=ギの仲間達もまた似た者同士が集まっていたようだ。


「じゃ、じゃあ俺はリリルだ。

 勝ったらリリルに蹴ってもらう」


「げっ!」


「リ、リネを抱っこしたい」

「ネ、ネスをなでなでしたい」


「気持ち悪いです」

「寄ってこないで欲しいです」


「イメイのお、おっぱ、おっぱ・・・」


「死ねばいいのに」


歪んだ性癖を晒す少年にリリル=ヤが表情を歪ませ、大きな体躯故か小さい子が好きな少年達の欲求に双子のリネ=スとネス=スがアリルの背に隠れた。

分かりやすい欲望をさらけ出す少年に、普段は眠そうな顔で間延びしたしゃべり方をするイメイ=ツが真顔で殺意を込める。


プレーター学園第二チームの控室の体感温度が極寒にまで下がっている事も知らず、武舞台上ではグル=ギ率いるプレーター学園第一チームが己の脳内妄想で勝手に盛り上がっていた。


『こ、これは・・・』

『見るに堪えない。

 とっとと始めよう』

『そ、そうですね・・・』


「始めッ!」


大闘技場すら冷め切る中、二回戦第一試合が静かに始まった。

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