表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の双剣士  作者: ひろよし
二章:王都への旅
35/648

第33話:いざ街へ

誤字報告感謝です。

「姫の考えは理解した」

「おおっ、それでは」

「街では王族ではなくただの平民として、姫ではなくただの女の子として扱う」

「うむ」

「料理も宿も文句を言わないように」

「うむ」

「最悪街の外で野宿することになっても」

「うむ!」


フィルニイリスの念押しに、フランが笑顔で応えた。

監禁生活から逃れられたのが嬉しいのか、平民として過ごす事が楽しそうだからなのか。

いずれにせよ、王族扱いされない事に対する不満はなさそうだ。


「それでは街に行くのじゃ!」

「まだ」

「にゃにゃ!?」

「もう一つ大事な事がある」

「・・・なんじゃ?」


ようやく街に!

と先程以上に意気込んだフランを、フィルニイリスが再び止めた。

不満気な顔をフィルニイリスに向けるフラン。

そんなフランに、フィルニイリスは大事な話をする。


「街での姫の立場について。

 今のうちに決めておかねばどこかでボロが出る」

「「たちば?」」

「身分、と言い換えても良い」

「あるいは役柄ですね」


フィルニイリスの言う言葉にフランが首を傾げる。

隣には、同じように首を傾げるレキがいた。


「さっき言った通り、街へは身分を偽って入る」

「いつわるの?」

「お忍びの旅だと思えば良いのじゃ」

「あ、なんかかっこいい」


変な所で盛り上がるお子様二人。

そんな二人を見ながら、フィルニイリスが更に話を続ける。


「つまり、街では姫を姫として扱わない。

 これは良い?」

「うむ」

「うん」

「でも普段どおり姫と呼べば身分がバレてしまう」

「「・・・あ」」

「だから今のうちに姫ではない呼び方を考えておく必要がある」


普段、フランは姫や姫様と言った身分で呼ばれている。

フランが王族の姫である以上、それは至極当然の事だ。

侍女であるリーニャはフランからの要望もあってフラン様と呼んでいるが、それでも敬称を付け忘れる事は無い。


これからはその姫という身分を隠して行動しなければならない。

当前、姫と呼ぶわけにはいかないのだ。

考えてみれば当然の事で、、思い至らなかったのはお子様だからか。

フランは自分の事を姫などと呼ばないし、レキはレキでフランの事をフランと呼んでいる為、気付かなかったのだ。


「どういう設定にするか」

「そうですね、とりあえず私とフラン様は家族という事にしましょう。

 年齢を考えれば姉妹ですかね?」

「姉妹?

 わらわとリーニャがか?」

「ええ、そのほうがよろしいかと」

「姉妹・・・」


リーニャの決めた設定を、フランが確認するように呟いた。

何か不満でしょうか?とフランを見るリーニャだが、フランの顔には笑みが浮かんでいる。

どうやら気に入ったようだ。


「リーニャはわらわの姉上なのじゃな!」

「え、ええ」

「リーニャが姉上・・・姉上っ!」

「リーニャと姫は平民の姉妹と言う設定。

 出来れば言葉使いもそれ相応のものにしてほしい」

「言葉使い・・・?」

「自分の事をわらわと言う平民はいない。

 姉のことを姉上というのも」

「う~む・・・」


嬉しそうに姉上と連呼するフラン。

そんなフランに、フィルニイリスが追加で注文をする。

その内容は分からないでもないが、口癖というのはそう簡単に直せるものではないだろう。


「王都で働いている父親を訪ねに行く姉妹、という設定でどうでしょうか?」

「問題ない」

「私とフィルは普通に護衛でいいか?」

「ええ、父親の知り合いという事にしましょう」

「普段は王都で活動している冒険者。

 今回は父親からの依頼で村から王都までの護衛を頼まれた」

「それでよろしいかと」


そんなフランをよそに打ち合わせを続ける三人。

やがて


「よし、リーニャのことはリーニャねぇと呼ぶのじゃ。

 そしてわらわは自分の事をわたしと呼ぶ」

「あら、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃ」

「言葉使いがまだ不安・・・でも許容範囲?」

「まぁ、大丈夫だろう」


やはり普段の言葉使いは直せそうも無いが、王族ということさえバレなければ大丈夫だろう、ということで三人も妥協した。

「のじゃ」という語尾に関しては祖父と仲良しの為真似をしている内に移ってしまった、という事に。

事実、少しでも王族らしい威厳を持とうと祖父の口調を真似した結果が今の口調の為、あながち間違いでも無い。


とりあえず設定は固まったようで、残るはレキの扱いだけ。

だが・・・


「どうしましょうね」

「姫の兄、というのは・・・」

「流石に無理がないか?」

「服が普通だったら良かったのですが・・・」


フランやリーニャは旅用の地味めでありながらもしっかりとした仕立ての服を着ている。

フィルニイリスも同様で、その上から魔術士用の簡素なローブを着ているが、護衛の魔術士と言えば問題ないだろう。

ミリスは旅に備え騎士団の鎧は小屋に置いてきている。

剣だけは手放さなかったが、こちらも儀礼用の騎士剣ではなく使い慣れた長剣であるため問題は無い。


つまり、四人はそれなりの格好をしている。

対してレキは、穴を開けた毛皮を頭からかぶり、木の蔓で腰の部分を縛るという服装であり、すなわち野生児そのもの

道中保護した子供、あるいは襲ってきて返り討ちにした野生児を捉えた為に連行した、などと言えば納得されてしまうような恰好なのだ。

とても同じ村から一緒に旅をしているとは言い辛い。

ましてや兄妹とは・・・。


「そんなに変?」

「変じゃな」


自分の格好が何気に気に入っているレキとしては、こうも非難されるのが納得いかなかった。

ただ、みんなと違うというのは自分でも分かっている。

設定云々に関しては良く分からない為、余計な口は挟まない事にしているのだ。


そんなレキをよそにあーでもないこーでもないと言い合いながら、結局は道案内として雇った少年という事になった。

本当ならば下働きの下男という設定にする所なのだが・・・設定とはいえレキをそんな扱いにするのを四人ともが嫌がったのである。


「ではっ!」

「最後に」

「うにゃ・・・まだあるのか?」


今度こそ街に!とさらに意気込んだフランだが、今度も止められた。


「姫は今から姫ではない」

「ん?

 うむ、そうじゃな」

「よって私達は姫を姫と呼ばない」

「うむ」

「よって、街中ではフランと呼ぶのを許して頂きたい」

「なんじゃそんなことか」


王族であるフランを敬称もつけずに呼び捨てにするのは不敬にあたる。

フラン本人から許可があったとしても、だ。

だが、今は非常時。

心苦しくとも名前で呼ばねばならなかった。


と言っても、ミリスもフィルニイリスも王宮での稽古の時間はあえて呼び捨てにしている為、呼び慣れないという事は無い。

もちろん王の許可を得ての言動だが、フラン本人も気にしていなかった。


「まあ、今更ですね」

「むしろリーニャは大丈夫なのか?」

「ええ、問題ありません。

 ね、フラン」

「・・・おおっ!」


唯一侍女であるリーニャだけが、今までフランを呼び捨てにした事が無かった。

突然フランと呼べ、と言われて戸惑うかと思われたが、問題はなさそうだ。


表には出さないが、リーニャはフランを娘や妹のように思っている。

魔の森で別れた時も、こっそりフランと呼び捨てにしたほどで、つまり慣れているのた。


リーニャを姉や第二の母親のように慕っているフランも、その呼ばれ方を気に入ったようだ。

喜ぶフランを微笑ましく見守りつつ、一行はようやく街の入り口へと向かった。


――――――――――


「エラスの街へようこそ!」


門前に控えた衛兵がレキ達一行に対し気さくに挨拶した。

「人の出入りが少なく治安も悪い」とフィルニイリスから説明があったばかりな為、てっきり衛兵もやる気が無いものだと思っていたのだが、案外そうでもならしい。


先程から、街を囲う壁や門、そして目の前の衛兵をキラキラした目でレキが見ていた。

魔の森はともかくとして、生まれ故郷の村はこの街以上に人の出入りなど無く、村全体としては代わり映えの無い日々を送っていたせいか、街も門も衛兵すらも珍しく新鮮なのだ。


「見たところ女性と子供だけのようですが、これで全員ですか?」

「ええ、そうです」


そんなレキを横目に、とりあえずリーニャが対応にあたった。


「申し訳ありませんが、どういった用件でこのエラスの街へ?」

「私達は王都に住む父親を訪ねて旅をしていました。

 ですが道中、魔物の襲撃にあい馬車を失くしてしまいましたので、急遽この街にて新しく馬車の手配をしようと思いまして」

「・・・なるほど、それは大変だったでしょう。

 馬車ならこの街の北に店がありますのでそちらで手配できます。

 ちなみに宿もその近くにありますよ」

「ギルドはどちらに?」

「冒険者ギルドはこの門をくぐってすぐの場所にあります。

 商業ギルドは街の中央ですね。

 詳しい位置は宿の店主に聞けばわかりますよ」

「分かりました、ご親切にありがとうございます」

「いえ」


当初、女性と子供のみの一行に不審な目を向けた衛兵だが、リーニャが事情を説明する事で納得したようだ。

エラスの街周辺に魔物は少ないが、いないわけではない。

被害が馬車だけだったのは不幸中の幸いだろう。

事情を知り、馬車の手配から各施設の位置まで説明してくれる衛兵。

やはり、事前に聞いていた情報とは大分違うようだ。


そんな衛兵に見送られつつ、一行は街に入った。

王都に比べれば栄えているとは言えない街ではあるが、それでも想像していた街とは明らかに様子が違った。


「話に聞いてたのと大分違うな」

「ええ、てっきりスラムのような街だとばかり・・・」


とは言えこれは嬉しい誤算である。


王族であるフランを身分を隠しつつ守る必要がある一行にとって、街の治安はそのままフランの安否に関わる問題である。

スリや酔っぱらい程度ならミリスやフィルニイリスでも対処できる。

だが、手練の強盗などが襲ってきた場合、人数によっては対処が難しくなる恐れがあるからだ。


その点、このエラスの街は見たところそういった問題は起こりそうには無かった。


「馬車や宿なんかは北側だったな」

「ええ、まずは宿の手配を済ませますか?」

「先に冒険者ギルドへ向かう」

「何故だ?」

「この街について少し情報を集めたい」


予想と違った事に胸を撫で下ろしつつ、一行はとりあえず移動を開始した。

目指す冒険者ギルドは目と鼻の先。

街の治安や周囲の状況、何よりこの街の実情を知るには、冒険者ギルドで調べるのが手っ取り早い。


「冒険者ギルドかあ」

「ん?

 どうしたレキ?」

「えっ、べ、別に、何でも無いよ」


なんでもない、などと言いながら、レキの顔は先ほどから緩みっぱなしだった。

誰がどう見ても楽しみで仕方ないと言った様子だった。


「この街は他の街と違ってそれほど賑わってない。

 だから冒険者の数も少ないと思われる」

「ん?」

「期待しないほうが良い」


そんなレキに、フィルニイリスが念の為釘を刺した。


レキの想像する冒険者がどういうものかは分からないが、レキの両親が元冒険者であり、そんな二人をレキが尊敬しているという事から、冒険者そのものに対して憧れがあるのだろう。

実際、レキは大人になったら冒険者に成りたいと言っていた。

だが、この街は人の出入りも少なく、また討伐や採取の対象となる魔物も少ない。

当然、この街に訪れる冒険者も少ない。

冒険者ギルドもまた、閑散としているに違いない。


それに、冒険者は腕っぷしのみを頼りに生きる者達である。

お世辞にも品が良いとは言えない。

実力をかさに来て無法を働く者すらいるほどだ。

もちろんそういった連中はギルドから制裁を食らうのだが、それも発覚した場合の話。

見えない場所で無法を働こうとするのは、冒険者でなくともいるのである。


そんなギルドや冒険者を見て、レキが落胆しないようフィルニイリスは事前に忠告したのだ。


フィルニイリスの忠告を聞きつつ、一行は冒険者ギルドの建物内に入った。

ギルド内はフィルニイリスが言った通り閑散としていた。

だが、それでも数人の冒険者が依頼書の貼ってある掲示板を見たり、ギルドの職員と話をしたりと、それなりに活動はしているようであった。


「うわぁ~・・・」


ギルドの建物に入るなり、レキが感嘆の声を上げた。

目などこれでもかというくらいに輝いていた。


ここは自分の尊敬する両親が活動していた場所。

毎日のように聞かされていた、両親の冒険。

レキにとってそれは、両親の話であると同時に英雄譚の一節でもあった。


そんな英雄が毎日のように訪れていた建物、そこに自分がいる。

感動するのも無理は無い。


建物に入ってすぐの場所で立ち止まり、輝くような目でギルド内を見渡すレキ。

気持ちは分からないでもないが、流石に入り口付近で立ち止まるのは問題だったようだ。


「ほら、レキ君。

 そんな場所で立ち止まってると・・・」

「おうこら坊主、んなとこで立ち止まってんじゃねぇ」


立ち止まるレキを促して建物の中へと進もうとした直後、まるでタイミングを図ったかのように一行の後ろから声がかかった。

一行が振り向くとそこには、熊のような大柄な男が立っていた。


身長は2メートル以上。

全身を使い込まれた革鎧でつつみ、背中には一振りの大剣を背負っている。

鎧の隙間から見える体は筋肉で覆われ、ところどころ傷が見えた。

左目や頬にも傷があり、何故か髪の毛は全く無く、その分迫力が増している。

一言で言えば歴戦の戦士と表現できるその男は、おそらくは冒険者だろう。


そんな男がレキに暴言とも思える言葉を吐いたのを見て、ガラの悪い冒険者が絡んできたのかと危惧したリーニャ達。

だが・・・。


「冒険者に憧れる気持ちは分からんでもねぇが、んなとこで突っ立っててもしょうがねぇだろ。

 ほれ、とっとと中入っていろいろ見ろよ」


続く言葉は粗雑だが、決して害のあるものではなかった。


「う、うん」

「なんだ坊主、緊張してんのか?

 大丈夫だ、取って食いやしねぇよ」


お世辞にも柄の良くなさそうな男は、戸惑うレキの頭を少し荒っぽくも優しく撫でながら、建物内へとレキを案内した。


「・・・大丈夫そうだな?」

「ええ、意外と親切そうな方みたいですね」


"人は見た目によらない"を地で行くような男に、ミリスとリーニャが安堵した。

二人が立ち止まっている間に、レキは男について建物の中へと進んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ