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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十六章:学園~大武闘祭・個人戦~
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第327話:大武闘祭・個人の部、決着!

『おっ、おお~~っと!!

 二人の魔術がぶつかり爆発しましたっ!

 フィルニイリス様、二人は大丈夫なのでしょうか?』

『ブラスト系は当たると同時に破裂する。

 ブラスト系の魔術同士がぶつかれば当然こうなる』


驚き声を上げる実況のヤランに対し、フィルニイリスが冷静に解説した。

アランのエル・ブラストに対し、レキが放ったのはエド・ブラスト。

破裂する火球と風の塊が二人のほぼ真ん中で衝突し、同時に破裂したのだ。

二人の距離がある程度近かったこともあり、破裂した衝撃に二人は仲良く武舞台の端まで飛ばされていた。


初級魔術とは言えそれなりに威力のある魔術。

その衝撃は二人を軽く吹き飛ばす程度の威力があったのだが・・・。


「あ~、びっくりした」


武舞台の端っこで、レキは心底驚いたような表情をしつつも、平然と立っていた。


「びっくりしたのはこっちだっ!

 ブラスト系にブラスト系をぶつけるとどうなるかくらい分かるだろっ!」


そのちょうど反対側。

こちらは多少なりともダメージがあったらしい、アランが片膝をつきながらもレキに文句を言っていた。


「だって、緑には赤だってっ!」

「それは基本的な話だっ!!

 というか防ぐならウォール系でいいだろうがっ!!」

「俺、ウォール系苦手だし・・・」

「オプリ・ウォール使っただろうが」

「あれ邪魔だし」


『何やら揉め始めましたが・・・』

『レキは魔術が苦手。

 というか考えて魔術を使うのが苦手。

 感覚的に扱えるけど考えずに使うから使うべき魔術を間違える』

『そ、そうなのですか?』

『さっきも別に相殺するならエド・ボールで十分だった。

 レキの魔力量なら系統の相性を無視しても問題は無い。

 良く考えずに使うからああなる』

『おおっ、さすがは宮廷魔術士長フィルニイリス様です。

 レキ選手の魔術にも容赦ない評価』

『私はレキの指南役。

 これも当然』


「みろっ!

 フィルもああ言ってるではないかっ!!」

「え~・・・」


フィルニイリスからの援護を受け、アランがレキを更に攻め立てる。

試合である以上どのような魔術を使おうとも非難されるいわれはないのだが、外ならぬレキ自身が驚いていた為ここぞとばかりに注意するアランなのだ。


「全く・・・お前も脳筋になってないか?」

「えっ!?」


反射的に、それこそ呼吸をするかのように使えるが故に、ろくに考えず魔術を使ってしまうレキ。

それは考えるより先に殴る、あるいは剣で切ってしまうどこぞの騎士団のうきんとあまり変わらない。


そう言われて、レキが驚きに目を丸くした。


『おっと、レキ選手固まりました』

『流石に脳筋は言い過ぎ。

 レキはただ知識が足りていないだけ。

 脳筋になるかどうかは残りの学園生活にかかってる』


脳筋呼ばわりも大概だが、フィルニイリスの説明も頭が悪いと言っているようなモノだった。


「・・・」

「これに懲りたらもっと考えて魔術を使うことだな」

「うん・・・分かった」


アランのダメ押しもあり、フィルニイリスの言葉をレキはしっかりと胸に刻んだ。


――――――――――


「仕切り直しだっ!

 "リム・スラスト"っ!」

「う~ん・・・あっ!」


中断していた試合が再開され、アランが先行で魔術を放つ。

距離が開いた為、下手な魔術では簡単に避けられるだろうと、アランが選んだのは最速の魔術であるリム・スラスト。

対するレキは、一瞬悩んだ末に同じ魔術で迎撃した。


「くっ!」


『おっ、アラン選手の魔術をレキ選手、今度は同じ魔術で相殺しました。

 いや、レキ選手の方が上回った!?

 アラン選手間一髪避けた~!』

『魔力量が同じなら同じ魔術で相殺できる。

 魔力量で勝っているなら相手の魔術を撃ち破る事も出来る』


「たあっ!」

「くそっ!」


アランの魔術を打ち破ったレキは、放った魔術を追従するように迫り剣を振るった。

武舞台の端から端へと一瞬で移動し剣を振るうレキの攻撃を、アランは盾で何とか防ぐ。


「ていっ!」

「くっ」


間近で振るわれるレキの双剣。

身体能力に加えミリスによって鍛えられた双剣術がアランを圧倒する。

全身をほのかに黄金に染め上げながら振るわれるレキの剣は、まるで舞いを見ているようだったと、試合を見ていた者達は後に語ったと言う。

因みに、フォレサージやライカウン学園の生徒は神々しすぎて涙なしでは見られなかったとも・・・。


「くそっ!

 "エドっ」

「ていっ!」

「ちっ!」


何とか距離を取ろうと魔術を放とうとするアランだが、レキはその隙を与えなかった。

魔術名を唱えなければ魔術を放てないアランでは、レキと剣を交えている最中に魔術を放つ事は出来ないのだ。


状況を何とか打開しようとあがくアランの魔術は不発に終わり、それどころか状況を更に悪化させた。


「えいっ!」

「がはっ!」

「てやっ!」

「ぐっ!」


至近距離で魔術を放とうとしたアランを見て、レキもそれに倣ってしまったのだ。

元より魔術名すら唱えず魔術が行使出来てしまうレキである。

一瞬の間も無く風の塊を放ち、顔をのけぞらせたアランに剣で追撃した。


『レキ選手の素晴らしい攻撃。

 剣と魔術両方を使った連撃に、アラン選手防戦一方ですっ!!』

『アランと違いレキは一瞬の溜めも無く魔術を放てる。

 剣を振るいながら放たれる魔術は、分かっていても避けられるものではない』


今までそれをしなかったのは、単純に忘れていたという事と、それをしなくとも勝ててしまったから。


これまで、レキは相手に全力を出させる為あえて相手に合わせて戦っていた。

相手に花を持たせる為ではなく相手に悔いを残させない為、レキが全力を出せば何も出来ず何も分からず試合が終わってしまうからだ。

対戦相手のみならず、観客すらも理解できない戦いをしてしまえば余計な混乱すら招きかねない。

故に、レキは相手に合わせる形で力を加減し戦っていた。


つまり、レキは相手の知らない戦い方をこれまでしてこなかったという事になる。


今回の相手はアランである。

フロイオニアの王宮で何度も手合わせした相手であり、フロイオニア学園の武闘祭でも戦った相手だ。


アランは、レキが今までやった事のない接近した状態で魔術を放とうとした。

レキが今までやらなかった、やろうと思わなかった戦い方だった。


アランが新たな戦い方を見せれば見せるほど、それだけレキの戦いの幅が広がっていく。


剣を振るい、魔術を放つ。

振るった剣からも魔術を放ち、放った魔術を追う様に剣を振るう。


剣と魔術、その両方を縦横無尽に振るい、レキがアランをなおも圧倒する。


「てやっ!」

「くっ、このっ!」


レキの双剣を盾で受け、負けじとアランが剣を振るった。

その一撃をしゃがみ込む事でかわしたレキが、生まれた隙に容赦なく剣を逆袈裟に振るった。


「しまっ!」

「やあっ!」

「がはっ!」


剣も盾も間に合わず、レキの一撃を喰らったアランが場外へと飛んでいく。

それはフロイオニアの王宮では見慣れた光景。


『あっ!』


今は大武闘祭の決勝。

これまでも武術、魔術両方で対戦相手を圧倒してきたレキの、全力では無いがそれなりに力を込めた黄金の一撃に、観客達が一瞬息をのんだ。


『レキ選手の強烈な一撃っ!

 アラン選手立てるかっ!!』


「それまでっ!

 勝者、レキっ!」


『アラン選手立ち上がれませんっ!

 優勝はレキ選手ですっ!!』


『わ~っ!!!』


審判の宣言と実況のヤランの声に、観客席からの歓声が爆発した。


――――――――――


「うおぉ~!

 レキが優勝じゃ~!」

「あったりまえじゃないっ!

 だってレキよっ!」

「ええ、さすがレキ様です」

「うん、凄い、凄いね」

「はい・・・素晴らしいです」


「当然だぜっ!」

「ああ、でも凄いな、レキは」

「・・・ふん」

「むぅ」


レキの試合を見守るフラン達も、諸手を上げて喜んでいる。

若干名素直に喜べない者もいるようだが、横目でちらりと見つつその顔は笑みをこらえている様に見えた。


「きゃ~っ!

 レキ~!!」


「剣から魔術を放った・・・あの剣はやはり魔銀ミスリルではない?

 もう一度ちゃんと見せてもらわないと」


「ああ、申し子様・・・」


レキと拳(蹴り)を交えた者も、レキの剣に興味を惹かれた者も、レキを崇拝する者も。

皆、等しくレキに称賛を送った。


「・・・アラン様」

「仕方ない」

「せやな」

「むしろあのレキにあれだけ食らいついたのだ。

 褒められこそすれ非難されるいわれは無い。

 ローザもアランを褒めるべきだ」

「・・・ええ、そうですね」


アランを応援していた者達も、アランの奮闘に心から称賛を送った。

結果は結びつかなかったが、自分達の代表があれほどの戦いを見せてくれた事に誇らしさすら感じていた。


「あれが・・・」

「申し子様・・・」

「すげぇなおい!」

「いやはや、末恐ろしいお子さんやな」

「うむ」


各国の王達も、噂に聞いていた少年の実力に驚きつつ、各自称賛を送る。


六学園合同で行われる大武闘祭。

個人の部で優勝したのは、フロイオニア学園代表レキ。

一年生の生徒が優勝したのは、この大武闘祭始まって以来初めての事。


レキの名は、この歴史的快挙と共に他国へと広まっていく事になる。

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