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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十六章:学園~大武闘祭・個人戦~
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第310話:六学園合同大武闘祭

六学園合同大武闘祭とは、各国にある六つの学園の代表生徒が集まり武を競う大会である。


学園での予選を見事勝ち抜いたレキは、チームメイトのガージュ達や同じく代表になったアランとその仲間達、更には同じクラスという理由で応援に付いてきてくれたフラン達と共に、大会の行われるプレーター獣国の王都リーハンへとやってきた。


到着した翌日、選手の登録の為プレーター学園に立ち寄ったレキ達は、ついでだからと学園を見学していたところ、休日返上で鍛錬にいそしんでいたミームの旧友達と出会い、何故か試合をする事になった。

と言っても選手であるレキは万が一があるとも限らず、そもそもプレーターの生徒達の狙いはミームである事から、同じ一年生同士フラン、ルミニア、ミーム、ユミ、ファラスアルムの女子五名との試合となった。


結果は五戦五勝。

ファラスアルムは無詠唱魔術で、ユミは獣人を力で上回り、ミーム、フランは持ち前の速度を活かし、ルミニアは槍術で圧倒した。

試合前は森人や純人だと下に見ていたプレーター学園の生徒達も、流石にその偏見を改めざるを得なくなった。


プレーター学園の教師にも良い刺激になったと感謝され、学園を出たレキ達。


以降、レキ達は大武闘祭の日まで獣国の王都リーハンを満喫していた。

初めて訪れた獣国。

引率であるレイラスや護衛のミリス達騎士団が常に付き添っていたとはいえ、レキ達は思う存分他国の文化に触れる事が出来た。


プレーター学園にも後日何度か赴いた。

ミームの旧友がいるという事もあるが、大会前の鍛錬の為、特別に学園にある武術場を使わせてもらえる事になったのだ。


もちろんプレーター学園側の許可は得ている。

というか、交流試合の審判を務めた教師ラーサ=ジが是非にと声をかけてくれたのだ。


純人や森人にも強い者はいる。

交流試合(?)でそれを身をもって教えてくれたフラン達へのお礼なのだろう。

試合後に行われたレキとアランの模擬戦に、特にレキの実力に惹かれたからかも知れないが。

それでも大武闘祭を控えるレキ達にとって鍛錬場所を提供してくれた事は素直にありがたく、アラン達と一緒に遠慮なく使わせてもらった。


もちろんフラン達も一緒である。

ミームの旧友達も、念願だったミームとの手合わせする事が出来て嬉しそうにしていた。

学園に入る前、ミームを無視するかのように鍛錬を共にしなくなったのは、ミームより強くなる為隠れて鍛錬していたからだったのだ。

ミームと一緒に鍛錬してもミームは超えられないとでも思ったのか、あるいはこっそり強くなってびっくりさせたかったのか。


唯一ミームと交流を続けていたラム=サは「好きな子に弱いとこ見せたくないんじゃないの?」と言っていた。

そのせいでミームがプレーター獣国を出る羽目になったのだから、何とも残念な話である。


王都リーハンには、プレーター学園とは別にレキ達の興味を引く施設がある。

街の中心にある大闘技場である。

そこでは毎日何らかの試合が行われており、お金さえ払えば自由に見学する事が出来た。


試合は様々で、それこそただの夫婦喧嘩から狩場の占有権をかけた街や村同士の争いまで。

どの試合もプレーター獣王の名の下に公平に行われ、結果に異論を述べる事は許されない。

獣人達も卑怯な手を好まず、誰もが正々堂々真正面から戦った。


さすがに夫婦喧嘩を見物しようとは思わなかったが、冒険者同士の試合は非常に見応えがあった。

集団戦も見学でき、レキ達にも得る物はあった事だろう。


レキ達がリーハンに着いた二日後には、国賓として招かれているフロイオニア国王ロラン=フォン=イオニアも到着していた。


フロイオニア学園の代表であるレキ達は、同時にフロイオニア王国の代表でもある。

国王ロラン直々にエールを送られ、レキとアランは目に見えて気合が入っているようだった。

その他の生徒は、さすがに緊張していたようだが。


試合に出ないフランはリーニャとの再会を喜び、時間を見ては一緒に過ごしていた。

一応、その場にはリーニャの婚約者である副団長のレイク=カシスもいたのだが、こちらは何やら男同士の話があるとかで騎士団長のガレムに連れて行かれた。

どのような話があったかは謎だが、翌日のレイクはより一層鍛錬に励み、ガレムはリーニャにお説教を喰らっていた。


折角だからと、レキはガージュ達を誘いガレムやレイク、ミリスとも鍛錬を行った。

王国騎士団の団長、副団長、中隊長にして剣姫に稽古を付けてもらう機会などそうは無い。

アラン達三年生も巻き込み、大武闘祭前の良い鍛錬になった事だろう。

ガレムがぶっ飛び、レイクまでもぶっ飛んでいたが、有意義だったに違いない。


そんな感じで、レキ達は大武闘祭までを有意義に過ごす事が出来たのだ。


――――――――――


そして迎えた大武闘祭当日。


フロイオニア学園の武闘祭同様、試合は個人戦とチーム戦とで分かれて行われる。

個人戦に出場するのはレキとアラン。

チーム戦に出場するのは、レキを要する一年生最上位クラス第一(男子)チームと、アラン率いる三年生最上位クラス第一チームだ。


チーム戦に出場するメンバーは、初日は一緒に来たフラン達と共に応援に回る事になっている。


会場である大闘技場はとても大きく、数千から数万もの人が入れるほど。

大武闘祭は年に一度の他種族との交流戦という側面も持っている為、この日は生徒以外にも多くの客が集まる。

出場する生徒が各学園の代表という事もあり、他国の王侯貴族も来賓するのだ。

その中には、当然フロイオニア国王ロラン=フォン=イオニアの姿もあった。

愛娘であるフランの出番は無いが、その分息子のアラン=イオニアと、王国の英雄であるレキが出場するのだ。

国王として期待せざるを得なかった。


ただ、あまりやり過ぎればそれはそれで何かと問題になってしまうだろう。

加減しろと言われてはいるが、果たしてどうなる事やら。


「大武闘祭に出場する生徒は私について会場入りする事になる。

 残りの者達はカンザス先生について観客席に行け」


出場する生徒は、この後行われる大武闘祭の開会式に参加する。

応援であるフラン達は、その模様を観客席で見る事になっていた。


「頑張るのじゃぞレキ」

「応援してますから」

「あたしの分まで勝ってよね」

「頑張ってねっ!」

「お、応援しますっ!」


フラン達に見送られ、レキと男子チームは控室へ向かった。

アラン達も、クラスメイト達にそれぞれ激励を受けたようだ。


レキ達の背中を見送ったフラン達は、三年生最上位クラスの担任であるカンザスの案内で観客席へと移動した。


――――――――――


「今年もこの日がやって来た。

 各国の若き才能を持つ者達が一堂に会し、国と、学園の威信をかけ、全力でぶつかり合うこの日が。

 出場するのは各学園の代表生徒である。

 いずれもが最強の名にふさわしい子供達だろう。

 純人、獣人、森人、山人。

 様々な種族の子供が、ここ大闘技場で競い合うのだ。

 彼等こそが各国の、各種族の代表であり、これからの時代を作っていく若者である。

 武術を駆使し、魔術を放ち、若き才能が火花を散らすこの日。

 刮目せよっ!

 六ヶ国の学園の代表達による、大武闘祭の開始であるっ!」


大闘技場の控室で着替えたレキ達は、しばしの後にレイラスについて大闘技場の武舞台へと整列した。

レキ達の左右には他国の学園の生徒達が同じように並んでいる。


そんなレキ達から見える貴賓室の一室から、獅子のような鬣を持つ偉丈夫が先ほどから大声で演説していた。


プレーター獣国国王、オレイン=イ。

獣王による開催宣言を、レキ達はこれから競い合う武舞台上で大人しく聞いていた。


――――――――――


「なあ、もう少し短くならんか?」

「これでも短すぎる方なのですよ」

「試合なぞ「始めろ!」の一言で良いだろ?」

「それは審判の台詞です」


「オレイン王、よろしいかな」

「おお、ロラン王!」


開催式の少し前。

大闘技場の貴賓室では、挨拶文を渡されたプレーター獣国国王オレイン=イが宰相に文句をつけていた。


大武闘祭は毎年恒例の行事である。

ある程度の威厳は必要なれど、そういった事が苦手な獣王は少しでも短くする為あれこれ策を練っては宰相に却下され続けていた。


文句があるなら本人が考えれば良い。

そう言いたいところだが、そうすれば間違いなく「まどろっこしい挨拶は抜きだ、始めろっ!」で終わってしまいかねない。

というか、そういった前例が既にあったりする。


結局、挨拶文は宰相が考えた案のまま行う事になった。

獣王と宰相の仲の良いやり取りに割って入ったのは、レキ達の試合を見学すべくやって来たフロイオニア王国国王ロラン=フォン=イオニアである。


六ヶ国の生徒達が競い合うこの大会は、六ヶ国の交流試合とも言える。

出場する生徒はそれぞれの学園の代表、つまりは各国の代表である。

国の代表の試合を見る為、この大武闘祭には各国の王族も招待されているのだ。


「聞いたぞロラン王。

 今年はそなたのご子息も出場するそうだな」

「ああ、愚息も学園で大分鍛えられたようでな。

 運も手伝ったのだろうが、何とか代表に選ばれたようだ」


大会の出場選手については、当然ながら大会の主催者である各国の王に伝えられている。

フロイオニア学園の代表選手の一人は、国王ロラン=フォン=イオニアの実の息子アラン=イオニアだ。


「何でもオーガイーターに鍛えられたそうではないか。

 三年生にして代表に選ばれるとは、将来が楽しみだな」

「いや、アランも一応は王族なのでな。

 強さより内面を鍛えて欲しいのだが」

「何、王には強さも必要だ。

 王が頼りなければ誰も付いてこぬ」

「私としては支えてくれる仲間がいれば良いと思うのだがな」


オーガイーターはフロイオニア王国騎士団長ガレムの異名である。

フロイオニア最強の騎士であるガレムの名は、当然のごとく他国にも知れ渡っている。

特にここ、武を重んじるプレーター獣国ではガレムの名はその異名と共に有名だった。

王族の護衛として、幾度もこの国を訪れている事もその理由だろう。


因みに、プレーター獣国の国王は世襲制ではなく、五年に一度国王への挑戦権を賭けた大会で優勝した者が、その時の国王と戦い、勝利する事で新たな国王になる事が出来る。

もちろん優勝したからと言って挑戦しなければならない訳では無く、勝ったからと言って国王にならなければいけない訳でもない。

ただ、プレーター獣国の国王は最強の者がなるべきと考えている者は多く、単純に強い者と戦いたいという欲求もあるのだろう、優勝した者のほとんどは国王との戦いを望み、勝者はそのまま新たなる国王になる事が多い。

今の国王も、そうして国王の座を勝ち取った強者である。


因みに、オレイン=イが国王の座に就いたのは今から十一年前。

彼は既に二度、大武闘祭の優勝者を退け国王の座を守っているのだ。


「獣王はいい加減知性も磨くべきでは?」

「ふん、森王か」


王族専用の貴賓室に新たなる来客が現れた。


「カミル王、久しいな」

「ロラン王も壮健そうで何よりです。

 ところでフィルニイリスは一緒ではないのですか?」

「フィルですか?

 彼女でしたら学生の付き添いで観客席にいるかと」

「そうですか・・・」


獣国国王、獣王オレインと剣呑な雰囲気を漂わせた後、フロイオニア国王ロランと親し気に話すのは、フォレサージ森国国王、森王カミルサラルス。


獣人と森人は仲が悪い。

というのはこの世界では半ば常識であり、特にこの獣王オレインと森王カミルは「脳筋」「引きこもり」とお互いを非難し合う仲である。

反面、純人であるフロイオニア国王との仲はどちらも良好。

フロイオニア王国が他種族も広く受け入れているおかげだろう。


前述したガレムや剣姫ミリスの名はその実力と共に他国でも有名であり、武を重んじるプレーター獣国では特に評価が高い。

同様に森人であるフィルニイリスの魔術の実力と知識もまた、フォレサージ森国では有名なのだ。


「無詠唱魔術について詳しく聞きたかったのですが・・・」


森王カミルもフィルニイリス同様魔術馬鹿だった。

獣人のほとんどが脳筋である様に、森人のほとんどが魔術馬鹿なのかも知れない。

そういった面でも、獣人と森人、獣王と森王の仲が悪い原因だったりするのだろう。


「ふむ、皆相変わらずだな」

「おう、サク王」


大闘技場に用意された貴賓室の中でも最上のこの部屋は、各国の王が試合を見る為に用意された部屋である。

部屋は広く、内装も王族が試合を見る為に整えられている。

他にも同様の部屋はあるが、他国との交流の為、大会中は各国の王がこの部屋に集まり見学する事になっていた。


続けてやって来たのは山人の国マウントクラフ山国の王、通称ザク王。

ザク=アクシイク=シドタウン王。

脳筋、魔術馬鹿と来て、こちらは鍛冶馬鹿である。


マウントクラフ山国は鍛冶士の国であり、国を治める国王は国一番の鍛冶士がなるべきだという風習が今も残っている。

ある意味プレーター獣国と同じだろう。

違うのは競われるのが武力が技術か。

国一番の実力者が治めるか、技術者が治めるかの違いでしかない。


因みにフォレサージ森国の国王は建国当初から変わっていない。

森王カミルサラルス。

彼女の年齢は一万を超えているらしい。

見た目は若く、というより幼く、純人族で言うところの十代前半にしか見えないが、おそらくはこの大闘技場に集う大勢の者達の中で最も長命である。


「おや、皆さんお集りで?」

「遅れて申し訳ございません」


貴賓室に再びの来客。

マチアンブリ商国の代表ラッカ=ショーラ、ライカウン教国の教皇フィース=ミル=ライカウン。

二人はフロイオニア国王ロランと同じ純人であり、それぞれが純人を中心に治めている国の代表である。


ラッカ=ショーラはマチアンブリ商国の国家運営を行っている十二の商人達の代表である。

合議制を取るマチアンブリに置いて、ラッカ=ショーラは代表であるとともに外交担当でもあった。

今回の大武闘祭を通じて、他国との通商問題などを話し合う為やってきたのだ。


フィース=ミル=ライカウンはライカウン教国の代表であり、精霊信仰を司る宗教の教祖でもある。

こちらもあくまで代表という立場ではあるが、ライカウン教国はいわば宗教国家である。

その国のトップであるフィース=ミル=ライカウンは、要するにライカウン教国の王、すなわち教皇だった。

創生神と光の精霊の代弁者にして、信仰を持つ者全ての上に立つ権力者である。


「聞きましたで、フロイオニアにえらい強い子供がいるて」

「私も聞き及んでいます。

 創生神のごとく黄金の光を纏った少年だとか。

 その子供が今年の代表なのですよね」


どちらも元々フロイオニア王国から独立した国であるが、同じ純人の国という事もありフロイオニア国との交流は盛んである。

また、マチアンブリ商国はフロイオニア王国とプレーター獣国、マウントクラフ山国と国境を面しており、マウントクラフで作られる良質の武具やプレーター獣国で採れる魔物の素材を中心に商売をしている。

ライカウン教国はと言えば、こちらは精霊を祖とするフォレサージ森国と精霊について学び合い、フロイオニア王国には精霊について広く説いている。

商品と信仰という違いはあれど、どちらも他国との結びつきはそれなりに強いのだ。


「うむ、我が国の恩人にして無詠唱魔術をもたらした少年だ。

 ミリスの弟子にしてオーガイーターを倒した強者でもあるぞ」

「おおっ!

 魔の森で育ったと言う子供だな!」

「無詠唱の少年。

 本当にいるのですね」


レキについてもまた、他国にも伝えられている。


魔の森で生きていた事、無詠唱魔術の祖である事。

五年前、魔の森周辺の街や村が一斉に滅んだ事件の、唯一の生き残りという事も含めてだ。

フロイオニア王女フラン=イオニアの恩人であり、襲撃してきた野盗がまだ捉えられていない事もあって、レキの情報を伏せるのは限界があるのだ。


そもそも魔の森周辺の街や村が滅んだ一件は、フロイオニア王国に限った話ではない。

魔の森に面している全ての国でほぼ同時期に起きた事件である為、以前より魔の森の魔物の仕業だろうと結論付けられていた。

レキの証言だけではさすがにその結論を完全に覆す事は出来なかったものの、再調査する動きも現れている。


無詠唱魔術に関しては、レキに倣いいち早く習得したフロイオニア王国の魔術士達が各国へ散らばり、その技術を広めている最中である。


フォレサージ森国は新たなる魔術の可能性に歓喜し、ライカウン教国はそれをもたらしたレキと、レキの持つ黄金の魔力に興味を示している。

プレーター獣国に関しては、レキが魔の森で生きていたという情報に非常に食いついた。

ぜひとも手合わせすべく、以前よりレキをプレーター獣国に招待しようとフロイオニア王国に打診中だったりする。

幸いなのか生憎なのか、その時レキはフロイオニアの王宮での学習期間中であり、その後もフロイオニアの学園に入った為、その誘いに乗る事は無かったが。


「して、その少年は当然」

「うむ、我が国の代表だ」

「おおっ!」


今回、レキはフロイオニア学園の代表としてプレーター獣国にやってきている。

ある意味これも、他国の王へのお披露目になるのだろう。


「その話が真実なら優勝は間違いないだろうな。

 どうだロラン王。

 大会優勝者との特別試合を」

「寝言は寝てから言ってください、王よ」


獣人として、それほどの強者とは戦わずにはいられないのだろうか?

大会終了後、これまでの予定にない特別試合、すなわち今年の開催国であるプレーター獣国の王と優勝した学生との特別試合を勝手に組もうとする獣王。

最後まで言い切る事なく自国の宰相に止められたが、その顔は諦めているようには見えなかった。


「貴様はもう少し融通をだな・・・」

「王位争奪戦でもないのに獣王が戦ってどうするのです。

 仮に負けたら・・・」

「その時は潔く王位を譲ろうぞ」

「・・・はぁ」


獣王オレインの言葉に、深く、それはもう深くため息を吐く宰相である。

オレインが冗談で言っていないのが分かる為、余計に性質が悪かった。


オレインは王位にこだわっておらず、ただ強い者と戦いたいだけなのだ。

王になったのも、五年に一度行われる王位争奪戦の優勝者と戦えるからという理由である。

仮に負けても、その時は鍛えなおして次の機会をうかがうのだろう。

目的は王位を取り戻す為ではなくリベンジする為だが。


それでも国は治められているのだから、それなりに優秀なのかも知れない。

宰相を始めとした国の重鎮が優秀なのか、あるいは強者を頂に据える事を良しとする獣人の国の気風だからこそなのかも知れない。


「獣王こそもう少し知性を身に付けなさい」

「んだと、やるのかババア!」

「なっ、私はただ長命なだけです。

 あなたこそ脳筋ではありませんかっ!」

「獣人は脳筋じゃねえ!

 考えるより殴った方が早いだけだ」

「それを脳筋というのです!」


獣王と森王のいつものじゃれ合いが始まり、宰相が頭をおさえる中、武舞台上では今年の代表選手達が集まり始めていた。

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