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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十五章:学園~プレーター獣国へ行こう~
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第304話:作戦会議?

「そういえばラムはなんでここにいるの?」


レキ達は一先ず宿泊する予定の宿へと向かった。


六学園合同大武闘祭は、文字どおり六つの学園が共同で開催する大会である。

出場する他国の生徒は会場となるプレーター獣国の王都リーハンに集まるのだが、宿泊に関しては別々の宿に泊まる事になっていた。

種族や風習、文化などの違いからくる余計なトラブルを起こさないための措置である。


例えば、獣人と森人は文化や風習、思想などで相容れず、はっきり言えば仲が悪い。

ライカウン教国とマチアンブリ商国も同様で、他種族をその文化や風習ごと広く受け入れているフロイオニア王国の方が珍しいのだ。


そんなわけで、大武闘祭に出場する各学園の生徒は、大会が終わるまでの数日間プレーター学園が用意した宿で過ごすのである。


アラン達三年生は一足先に宿へ向かっている。

レキ達は、久しぶりに会ったミームの旧友とおしゃべりしながらのんびり歩いていた。

引率のレイラス、護衛のミリスやフィルニイリスも一緒だ。


「そりゃわたしはプレーター学園の生徒だし」


プレーター獣国の学園は王都リーハンにある為、今日は休日という事で友達と街を歩いていたそうだ。

数日後に行われる大武闘祭。

その会場になる闘技場を見に来て、たまたまミームと遭遇したのである。


「ミームはなんで?」

「あたしは大武闘祭に・・・」

「出るのっ!?」

「えっ、ちがっ・・・」

『なにっ!!』


ミームの言葉を最後まで聞かず、ラム=サが驚きの声を上げた。

すぐさま訂正しようと口を挟むミームだが、それより先に背後から更なる声が上がった。

ミームが今も思い出せていない、旧友らしき獣人の生徒達だった。

思い出してもらえなかった事に肩を落としつつも、未練がましく後を着いてきていたのだ。


「ミーム、お前・・・」

「一年なのに・・・」

「まじかよ・・・」

「いや、だから違うって」


大武闘祭に出場する選手は各学園の代表、つまりは各学園の最強の生徒である。

プレーター学園もフロイオニア学園同様、学園内で予選を行い、優勝した選手達が学園の代表として参加する。


当たり前だが上級生の方が肉体的にも経験的にも有利であり、必然的にどの学園も代表は三、四年生になりがち。

レキの様に一年生が出場するなどまずもって無い。

実は、一年生が出場するのは大武闘祭が始まって以来初めての事なのだ。


今更ではあるが、ミームはただの付き添いである。

レキと同じ最上位クラスという事で、大武闘祭の見学と応援に来ただけなのだ。


「お、俺達だってあれからだいぶ強くなったのに・・・」

「まだミームには敵わねぇのかよ・・・」

「くそっ、強すぎるだろ」

「あのね、あたしの話を・・・」


ミームは自分の強さを偽るつもりはない。

レキに勝てない事は当然として、学園での武闘祭でアランに負けた事も素直に認めており、今更隠すつもりなどないのだ。

自分がプレーター獣国に来たのはあくまで付き添い。

決して、大武闘祭に出場する為では無い。


そう、言おうとしたのだが。


「こうしちゃいられねぇ、特訓だっ!」

「おう!」

「じゃあな、ミーム!」

「えっ!?」


ミームの話に聞く耳を持たず、獣人の生徒達はミームに背を向け駆け出して行った。


「えっと・・・」

「あっはははっ!」


呆気にとられたミームの横で、唯一残っていたラム=サが腹を抱えて笑っていた。


――――――――――


「ふ~ん、ミームは出ないんだ」

「仕方ないじゃない、負けたんだから」

「う~ん、それが信じらんないんだけどね~」


放っておいても大会を見れば嫌でも分かる。

そうは言うものの、大会を見た彼らが「ミーム出てねぇじゃねぇか!」と大騒ぎする可能性は高く・・・というか確実に騒ぐだろうと、一先ず残っていたラム=サに事情を説明する事にした。

話を聞いたラム=サは、ミームが負けた事に驚いていた。


イーファンの街でのミームの実力は抜きんでていた。

同じ獣人族ならともかく、ミームなら純人などに負けるはずがないとラム=サは思っていたのだ。

最初はフロイオニア学園にいる他の獣人に負けたのかと思っていたが、負けたのはアランやレキだと言われ、更に驚いた。


三年生のアランはともかく、レキは見た目だけなら強そうには見えなかった。

顔立ちが女の子よりという事もあるのだろう。

背もあまり高くなく、体格もあまりがっちりしていない。

分かる者なら分かるのだが、逆を言えば相応の実力が無ければレキの強さは分からないのである。


そんなレキがあんなに強いミームを倒した。

なかなか信じてもらえないラム=サに、ミームや他の者達がレキに強さについて語りだした。


魔の森云々は信じられず、フロイオニア王国の騎士団長より強いと言われてもその人の強さ知らないしと言われ、なかなか信じてもらえないミーム達。

王都に来る前、イーファンの街でミームの母親と一緒に狩りをしてた事だけは分かったらしく、ようやく驚きと共に納得してもらう事が出来た。


「上には上がいるのよ」

「純人も侮れないね~」


ラム=サの誤解は解けた。

去っていった彼らには、ラム=サが学園で説明してくれるらしい。

今頃は学園で特訓しているのだろう。

久しぶりにミームにあえて、皆やる気になっているようだ。


「ここだ」

「へ~」


あれこれ話している内に、レキ達は滞在中に宿泊する宿に到着した。

今日はこのまま宿で過ごし、明日はプレーター学園に挨拶と、出場する選手の登録に向かう予定である。


「じゃあまた明日~」

「うん」


ラム=サとも別れ、レキ達はそのまま宿に入った。

先に来ていたアラン達は、各自割り当てられた部屋で荷ほどきなどを行っているらしい。

比較的大きめな宿ではあるが、流石に一人一部屋とはいかず五人で一部屋を使う事になった。

もちろん男女は別である。


普通に考えれば、レキは同じ一年生のガージュ達と泊まる事になるはず。

だが、今日はなぜかアランとジガ=グと同じ部屋に泊まる事になった。

一年生からはガージュとユーリも一緒だ。

たまには他学年の生徒と交流しろというレイラスのお達しである。


「やはり純人は弱いと思われているようだな」

「そりゃしゃあないやろ。

 獣人は幼い頃から武術やら狩りやら習わされとるし、学園でも座学や魔術より武術を優先しとるはずや」

「しかし、純人には魔術もあります。

 一概に弱いとは・・・」

「無詠唱ならともかく、詠唱魔術ならその隙をつくのは容易いだろう」

「そやな。

 個人戦なら楽勝や」

「ふ~ん・・・」


ジガ=グはともかく、王族であるアランと同室な事にガージュやユーリが何か言うかとも思ったが、やはりこれまでの学園生活や、何より道中の野営で慣れたのだろう。

レキを交え、雑談に興じる事にした。


とは言えさすがに上級生かつ王族のアランにいつもの口調で話すのは厳しいらしい。

敬語で話すガージュに違和感を感じるレキである。

揶揄うユーリはガージュに睨まれ、ごめんごめんと笑っていた。


「チーム戦ならむしろ僕達の方が有利なはずです。

 獣人はこういっては何だが戦術を練る事もないでしょうし」

「いやいや、確かにややこしい事は考えんけど、狩りん時くらいは連携するで?」

「早い者勝ちとかじゃないの?」

「・・・すまん、それもあるわ」


先程遭遇した生徒達。

大武闘祭には出場しないようだが、休日にも特訓するくらいなのだからおそらくは強いのだろう。

一年生ですらそうなのだから、プレーター学園の上級生は更に強いに違いない。


元々身体能力に長け、武と狩りを重んじる種族なだけあって、プレーター学園の代表は間違いなく強敵となるだろう。

実際、過去の大会でもプレーター学園の成績は常に良く、優勝回数もダントツに多い。

個人戦は特にだ。

接近戦に強く、魔術を使おうにも詠唱を終えるより先に距離を詰められ倒されてしまう。

反面、チーム戦では戦術や連携を無視して全員で特攻する事が多いらしく、個人戦程成績は良くないらしい。


「そもそも座学や魔術をろくに教えない学園なのだ。

 武術や狩りで成績が決まるとしたら、個人の実力は純粋に高いと考えていいだろう」

「そんかわし頭はよろしくないやろうけどな」

「脳筋ってやつですね」

「騎士団と一緒だね」


フロイオニア学園の成績評価は座学・武術・魔術の総合であり、中でも座学の評価が重視される。

対して、プレーター学園は武術と狩りの授業に重きを置いている為、生徒達は純粋に強いが頭の方はそうでもない。

それでも大武闘祭に出場する生徒が各学園最強の生徒である以上、レキはともかく苦戦は免れないだろう。


「フォレサージ学園は逆に魔術に力を入れている。

 個人戦はともかく、チーム戦では苦戦するかもしれんな」

「マウントクラフはどうや?」

「山人は頑強で力も強い。

 加えて防具は各自で持ち寄るのですから、彼らの防御を崩すのは厳しいでしょう」

「ガドもタフだしね」


フォレサージ学園は森人の国フォレサージの学園であり、生徒も当然森人ばかり。

プレーター学園と違い、こちらは魔術と座学に力を入れている為、個人戦はともかくチーム戦なら連携を駆使し、要所要所で魔術を使ってくるだろう。

距離を詰められれば勝てるだろうが、遠距離戦ではどうなるか分からない。


フロイオニア学園では、三年生ではアランが、一年生ではレキを始めとしてフラン、ルミニア、ユミにファラスアルムまでもが無詠唱魔術を習得しているが、何せ相手は森人である。

種族的に魔術の適性が高く、無詠唱魔術を習得している可能性もある。

魔術の撃ち合いでは勝ち目が無いかも知れない。


マウントクラフ学園は山人の国マウントクラフの学園である。

フォレサージ学園同様、こちらは山人が多い。

授業は座学と鍛冶、細工、採掘などが中心で、鉱石等の授業もあるらしい。


武術や魔術にはそれほど力を入れていないが、何分山人という種族は生まれつき頑強で力も強い。

防具を纏い、斧やハンマーを持たせればそれだけで十分脅威となるだろう。

半面、瞬発力や素早さはそれほどでもない為、こちらは遠距離から魔術を撃ち続けば勝てる可能性が高い。

とはいえ、山人もそれは理解しているだろう。

魔術抵抗の高い防具を身に纏い、特攻してくる可能性は無きにしも非ずだ。


「えっと、あとは?」

「ライカウンはフォレサージに近いが、フォレサージより更に座学へ力を入れている学園だ。

 武術は最低限といったところだろう。

 油断は出来んが、まあ問題は無い」

「マチアンブリも座学中心ですね。

 ただ、あそこは商人の国なので・・・」

「商売に繋がるような戦いをするかも、やろ?」

「?」


ライカウン学園とマチアンブリ学園はフロイオニア同様純人の国の学園である。


ライカウン学園はライカウン教国にあり、創世神話や精霊信仰に関する座学に力を入れ、それに付随する魔術も多少は教えているが武術に関しては護身程度。

大武闘祭自体、他の学園との繋がりの為仕方なくと言った感じで参加しているらしく、成績もこれまであまり良くは無い。

もちろん油断はできないが、他国に比べればそれほど注意する必要は無いだろう。


反面、マチアンブリは己の商人としての才覚を披露する為、大会用に独自に入手した武具のお披露目の為に参加する生徒もいるらしい。

マチアンブリで売られている武具がどれほど優秀なのかを知らしめる為、武具頼りの戦いをするそうだ。


武具の披露という点では、それを造るマウントクラフ学園も同じである。

違いと言えば、山人は商売する為に作るのではなくただ作りたいから作っている点にある。

己が生み出した武具の優秀さを披露する事はあるが、武具を試し満足できればそれで良いらしく、試合の途中で帰ってしまう生徒すらいるそうだ。


対して、マチアンブリの生徒は勝利すれば武具を自慢し、その武具を入手した自分を売り込む。

売り込みの為に出場するようなものであり、他の学園の生徒が優勝したらしたでその生徒とコネを作ろうと近寄ってくる者もいるらしい。


「今年はアランもおるしな」

「ああ、そうだな・・・」


フロイオニア学園の代表にしてフロイオニア王国の王子であるアランなど、商人からすれば何としてでもコネを作りたい相手である。

大会終了後まで待たず、試合中に売り込んでくる可能性すらあった。


ジガ=グに肩を叩かれ、アランがげんなりした。


「レキも例外ではないぞ?」

「そうですね、レキの実力なら目を付けられてもおかしくは無いでしょう」

「ご愁傷様やね」

「え~」


レキの実力は抜きんでている。

今回の大武闘祭でもおそらくは優勝するだろう。

まだ一年生にしてこの強さ。

商人ならずとも目を付けられるのは確実である。


「まあ、有力な商人とのコネはこちらにも有益だ。

 優秀な武具など優先的に卸してもらえるかも知れんぞ」

「高名な冒険者に武器使ってもろたら宣伝になるしな」

「山人も優秀な者にはそれにふさわしい武具をと考えているらしいですし、自分の武器を使ってもらうのは誉れらしいですからね」

「あっ、ガドも言ってた」


その武具を売るのが商人であり、売る相手を見つけるのも商人である。

優秀な職人と冒険者との間に立ち、商売をするのが商人の生き方なのだ。


それはともかく、各学園の授業内容と大会の傾向た対策を纏めれば以下の通り。


「個人戦は獣人、チーム戦は森人が有利という事ですね」

「獣人は距離を詰められる前に攻撃、森人は魔術を放たれる前に接近して攻撃やな」

「純人は武術では獣人に勝てず、魔術では森人に適わない。

 逆を言えば武術では森人に勝ち、魔術なら獣人に勝てる。

 総合力こそが純人の強みだ」

「うん!」

「まあ、例外もいるがな」

「せやな」

「そうですね」

「まったくだ」

「え~」

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