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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十三章:学園~武闘祭・本戦~個人の部~
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第271話:武闘祭本戦・個人の部、一回戦終了

レキとベオーサとの試合が終了した直後、観客席は何故か静まり返っていた。

ほとんどの生徒が、何が起きたか理解出来なかったからだ。


ベオーサが全力で突きを放った事までは分かった。

それが何とも気の抜ける掛け声ではじき落とされ、同時にベオーサが場外へとぶっ飛んでいった。


ベオーサの突きに対するレキのカウンターが見事に決まったのだ。

落ち着いて考えれば分かる事だが、仮にもベオーサは四年生の代表。

レキの実力を知らない者からすれば、たった一撃でベオーサが敗退した事が信じられなかったのだ。


レキの攻撃はそれほど速くなかった。

身体強化もあまりしておらず、ミリスから学んだ剣技のみで戦っていたと言って良い。

レキの素の身体能力が高いのは確かだが、それでも学園で鍛錬を重ねている生徒達なら、先ほどの攻防も十分見えていたはず。


にもかかわらず理解できないのは、やはりレキが一年生だからだろう。

見た目も幼く、服装次第では女子にも見えてしまう少年。

手に持つ双剣も学園で用意された物で、何より開始位置から一歩も動いていない。

ベオーサが全力で突きを繰り出した後、勝手に後方へ吹き飛んだように見えたくらいだ。


同じ一年生のミームは、ティグ=ギとそれなりに打ち合った。

レキとベオーサの試合がたった一度の攻防で決着が着いたのも、生徒達が唖然とした理由である。


もちろん理解できた者もいる。

フラン達は当然として、試合を見ていた実力のある生徒達はレキの攻撃の鋭さに感嘆し、ミームと合わせて今年の一年生は侮れないという認識を持った。


「さすがミリス様の一番弟子ですっ!」


剣姫ミリスに憧れる一年生上位クラスのミルなども、先ほどの攻防がどれだけ高度なものか理解できた一人だ。

彼女の場合、ベオーサよりレキの実力を知っていたおかげだろう。


細剣による全力の突きは実力者が放てば必殺の一撃にもなる。

槍ほどの間合いも威力も無いが、急所に当たればひとたまりもない。

ベオーサが放ったそれは必殺の一撃といって良く、少なくともミルではかわす事も出来なかったに違いない。

そんな一撃を事もなげに打ち払い、カウンターを決めたレキである。

身体能力に頼らない、純粋な剣技のなせる技だった。


その他の生徒達がようやく理解できたのは、ベオーサが控室へと運び出された後だった。

そして、大武闘場がようやく歓声に包まれた。


――――――――――


「は、ははっ・・・」

「ベオーサ様」

「いや、いいんだ。

 さすがフラン殿下の恩人だ。

 あの噂もあながち嘘ではない、という事だろう」


レキの剣をまともに食らったベオーサだったが、刃引きされ、更には手加減されていたおかげで特に怪我する事は無かった。

意識こそ失ったが、控室に運ばれた直後に気が付き、何が起こったかもすぐさま理解できたようだ。


「魔の森でフラン殿下を救ったなどと、ただの誇張された噂だと思ったのだけど・・・」

「そういえばガレム騎士団長を倒したと聞いた事があります」

「そうだね、彼の実力ならそれも可能だろうね」


魔の森の危険性は知識としては知っていても、踏み入れた事は当然無い。

それがどれほど危険な事かを、この大陸に住む者なら子供の頃から聞かされているからだ。

稀に度胸試しなのか森へ向かう者はいたが、大半は帰らぬ人となり、戻った者も満身創痍な有様で、魔の森の危険性に対する信憑性を高めるだけだった。

そんな森でフランの窮地を救ったなど、素直に信じられる話ではない。


まだ、王国最強の騎士ガレムを倒したという話の方が信じられた。


「王国の英雄・・・その実力に偽りなしだね」


レキと戦い、少なくともガレムより強いだろう事を理解したベオーサ達。

四年生の代表を打ち破った英雄を、彼らは素直に称賛した。


――――――――――


控室に戻ったレキを、今度はミームが笑顔で出迎えた。

レキなら当然という雰囲気こそあったが、期待を裏切らない試合でもあったからだ。


「ま、レキなら当然ね」

「ベオーサ=キラルの実力も高かったが、、相手が悪かったとしか言えないな」


同じく控室で試合を見ていたアランが、腕を組みながら当然と言うより仕方ないと言った様子で試合を振り返った。

ベオーサが負けたのは相手がレキだったから、ただそれだけが理由である。

もちろんそれは誰にでも言える事。

相手がレキである以上、誰が戦おうが勝ち目など無いのだから。


「強かったか?」

「ん、ん~・・・」


四年生代表である以上強いに決まっている。

少なくともこの学園では最高位の実力者だ。

レキが首を傾げたのは、ベオーサの実力が思っていたほどではなかったからだろう。


「レキに比べれば当然か」

「違う違う。

 えと、アランとか、ローザの方が強かったと思うよ」

「そうですか?」

「うん」


年齢=強さではない事は他ならぬレキ自身が証明している。

そのレキを除けば、四年生には三年生より一年分の積み重ねがある分強いのが当然である。

だがレキは、ベオーサよりアランやローザの方が強いと感じたようだ。


「まあミームも勝ったしな。

 一年生の生徒が二人して四年生を倒したのは素晴らしい事だ」

「ええ、おそらくは前代未聞ですね」


レキはそもそも入学前からけた外れの実力を持っていたが、ミームがこれほど強くなったのはそのレキと毎朝手合わせをしていたからである。

レキがいなければミームも初戦を勝ち抜く事は出来なかったに違いない。

それほどレキとの手合わせで得られる経験値は高いのだ。


これほどの実力者などそうそう現れるはずも無く、過去一年生の生徒がそろって初戦を勝ち抜いた例は一度もない。

ローザの言う通り、前代未聞の出来事であった。


「別に相手が弱かっただけよ」

「ん~・・・」


どうも、ミームは対戦相手のティグ=ギに良い印象を持っていないようだ。

「胸を貸す」という事は手を抜く事。

真正面から挑むかと思えば背後に回ろうとした事も含めて、ミームが望むような撃ち合いが出来なかったというのもあるのだろう。


「胸を借りる」という言葉なら、王宮にいた頃レキが良く言われていた言葉だ。

アランは「今度こそ勝つ!」としか言わなかったが、他の騎士達や、ルミニアの父親ニアデル=イオシスなどは、レキを強者と認めるが故にそう言って手合わせを挑んできた。

つまり「胸を貸す」のは強者だから出来る事であり、お互いの力量を理解した上で言うべきなのだ。


「ふふっ、今年の一年生は頼もしいですね」

「そうだな。

 私達も負けてはいられんな」

「はい、アラン様」


レキとミーム。

二人の実力を知り、アランとローザもやる気を見せた。


次は二回戦第一試合。

アランとミームの試合である。


――――――――――


「二回戦第一試合を始める。

 三年生代表、アラン=イオニア」

「はいっ」


「「アラン様~!」」


相変わらずの声援を受け、アランが武舞台へと上がる。

声援の量はむしろ増えているかも知れない。

先ほどの試合、アランは武術と魔術両方を使い二年生代表の獣人カム=ガを圧倒した。

改めてアランの実力を知り、所謂ファンになった生徒も多いのだろう。


「一年生代表、ミーム=ギ」

「はいっ!」


対するはミーム。

一回戦では見事昨年の準優勝者を打ち破った彼女。

魔術こそ使えないが、真正面から四年生代表を打ち破ったその実力は本物だ。


「フランやレキの友人と言えど手加減はせんぞ」

「望むところよ」


アランの言葉にミームが獰猛な笑みを浮かべる。

先ほどの試合は消化不良だった。

胸を貸すだの油断したなど、今思えば何様のつもりなのだろうか。

折角の試合、お互い全力でぶつからないでどうするのだ。


アランの実力は先ほどの試合である程度理解した。

レキ曰く、アランの実力はミームより上らしい。

そんなアランとの戦いを、ミームは一回戦同様楽しみにしていた。


ティグ=ギと違い、アランは一年生である自分にも手加減をしないと宣言してくれた。

その言葉がどれほど嬉しく、高揚するか・・・。


試合開始の合図を待ち遠しく感じ、ミームの全身にやる気が満ちていった。

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