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黄金の双剣士  作者: ひろよし
十二章:学園~武闘祭・予選~一年生の部~
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第249話:一年生武闘祭・個人の部、準決勝第二試合

「えへへ~。

 やっぱミームは強いねぇ~」

「ユミだってあんな強かったとは思わなかったわよ」

「でも勝てなかったなぁ~。

 うん、次は勝つよっ!」

「楽しみにしてるわ」


試合終了後、ユミとミームは仲良く試合を振り返りながらフラン達のいる観客席へとやってきた。

二人とも大きな怪我は無く、簡単な治癒魔術ですっかり回復している。


「ユミがあんなに強かったなんてな」

「ああ、正直意外だった」


見学してたカルクやユーリも驚きが強い。

男子と女子という事もあってか、二人はユミと手合わせしたことがあまり無かった。

レキやガドと言ったアドバイスも出来る者は別として、ユミは普段、フランやルミニア、ファラスアルムとばかり手合わせしているからだ。


ユミの実力とミームの逆転劇。

何とも見ごたえのある試合だった。


「何を言うか。

 ユミは初めから強かったのじゃ!

 のう、ユミ」

「えへへ~」


普段から手合わせしているだけあって、フランはユミの実力を知っている。


「ミームもさすがじゃ!」

「ふふん、あたしは優勝するんだから。

 ユミにだって負けてらんないのよっ!」


そしてミームの実力もしっかり把握している。

どちらも親友であり最上位クラスの仲間。

勝った者も負けた者もしっかりと称賛するフランは、なんだかんだ言って王族なのだろう。


「お次はレキとルミじゃな」


第一試合の余韻も冷めやらぬうちに、第二試合が始まろうとしていた。

武舞台に上がるのはレキとルミニア。

それを見守るのはフラン達、それに一年生全員。


実力的にはレキが圧勝するだろう。

だが、勝負というものは始まってみなければ分からないものだ。


「やっぱレキにゃ勝てねぇだろ?」

「まぁ、いくらルミニア嬢とてレキにはなぁ・・・」

「分かんないわよ。

 レキは身体強化できないんだし、魔術だって」


大会前、レキにのみ課された制限。


レキは素の実力だけでも騎士団に勝る。

身体強化を含めて個人の実力だが、実力差がありすぎては対戦する生徒達に万が一もあり得る。

いくら武闘祭が一年生の成績に大いに影響するとは言え、怪我人ならともかく死者を出すわけには行かない。

レキならよほどの事は無いだろうが、念の為身体強化は無しという事で了承を得ている。


それでもレキは、緑ブロックを難なく勝ち抜いている。

教師陣の判断も間違ってはいなかったと言えるだろう。


「そうじゃ。

 ルミは槍も魔術も凄いのじゃぞ。

 レキにだって通じるはずじゃ」

「でも、みんなでかかっても勝てないんだから、一人じゃ無理じゃないかな・・・」


武術の授業に加え、中庭での鍛錬でもレキは指南役を務める事が多い。

稽古や手合わせでは十分に手加減した上で打ち合っている。

稀に行われる模擬戦では、実力差を考慮に入れレキ対複数人という形式すらとっている。

最上位クラス全員で挑んた時ですら、今までレキにはただの一撃も入れられた事が無かった。


九人で挑んでも勝てない。

それが今のレキと他の生徒との実力差なのだ。


「分からんぞ。

 さっきの試合みたいに善戦するかも知れん?

 まあ始まれば分かるだろう」

「むぅ」

「レキ様、ルミニアさん。

 お二人とも頑張ってください」


フラン達も見守る中、一年生代表決定戦の第二試合が始まる。


――――――――――


「一年生代表決定戦第二試合、ルミニア=イオシス対レキ・・・始めっ!」

「よろしくお願いいたします、レキ様」

「うん、よろしく」


試合開始の合図の後、いつもの手合わせのようにルミニアが頭を下げた。

応じるレキもいつもどおり。

武闘祭というより、まるでいつもの稽古の時間のようだ。


「では・・・行きますっ!」


槍を構え、ルミニアが突進する。

レキ相手に小細工は無用、そう言わんばかりの全力の突き。


「やあっ!」

「うりゃ!」


身体強化も全力で施した上での突きを、レキは慌てず冷静にさばく。

双剣の片方のみで軌道を反らし、もう片方の剣をすかさず振るった。


「はあっ!」


突いた槍を回転させ、石突を持ち上げて盾とする。

二年前に王宮で出会ってから、ルミニアは何度もレキと何度も手合わせをしてきた。

左で防御し右で攻撃するレキの双剣術。

その軌跡もタイミングも、ルミニアは何度も見てきたのだ。


「やあっ!」

「ていっ!」


槍を回転させ、レキの剣を振り払う。

かわさず、打ち払う事もせず、ただ槍で防いだだけだが、今はそれで良い。


防御に使った左の剣、レキはそれを槍のように真っ直ぐ突き出した。


「ふっ」


至近距離ではあったが、直線的すぎる攻撃はルミニアをとらえきれず後ろへと下がる事でかわした。


否、これは距離を取らせる為の攻撃だった。


「やあっ!」

「たあっ!」


互いに武器の届かぬ距離から、今度は魔術の打ち合いが始まった。


無詠唱と言えど、若干の為が必要なルミニアが先制する。

青系統ルエ・ボールをレキに放ち、レキが同じ魔術で相殺した。


「まだですっ!

 やあっ!」

「ていっ!」


更にルミニアが地面に手を突き、黄系統エル・ニードルを地面より繰り出す。

武舞台をわずかに削りながら発生した石の杭は、レキの放った風の塊で武舞台の外へと飛ばされた。


「まだま「えいっ!」くっ!」


三度目の魔術でレキの速度がルミニアを上回り、発動したエル・ボールがルミニアに迫る。


「はあっ!」


地に膝を付いた状態で、片方の手をレキに向けルミニアが魔術を行使する。

発動したのは青系統のルエ・ウォール。

己の前方に水の壁を生み出し、盾のように攻撃を防ぐ魔術だ。

熟練の魔術士ならそれこそ己のみならず仲間ごと守れる魔術。

フィルニイリスやレキが使ったならば、あるいは街ごと囲えるかも知れない。


魔術の鍛錬も十分こなしているとはいえ、ルミニアの魔術はそこまで大規模なものではない。

精々が自分とその周囲を守れる程度。

ただ、今回に関しては己を守れれば十分だった。


ルミニアの生み出した水の盾がレキの放った石の塊を見事に防ぎ、その役目を終えた。


消えた水の盾。

その背後には、術者であるルミニアの姿は無かった。


「あれっ!?」

『おおっ!』


一瞬、ルミニアの姿を見失ったレキが声を上げたのと、観客席から声が上がったのはほぼ同時。

レキからすれば消えたように見えたルミニアは、水の盾を作り出すと同時に移動し、レキの死角から再度突進していた。


「貰いましたっ!」

「うわわっ!」


一瞬の油断。

いつものように武術のみ、あるいは魔術のみでの稽古には無いルミニアの作戦にまんまとはまってしまったレキである。

気付いた時にはルミニアの槍の間合いに入っていて・・・。


「やあっ!」

「てやっ!」


キンッ・・・

金属同士が激突したとは思えないほどに澄んだ音が武術場に響いた。


カラン・・・。

そして聞こえたのは、何か堅い物が武舞台に落ちた音。


「「あっ・・・」」

『あ?』


武舞台上と観客席からほぼ同時に声が発せられた。


ルミニアは、自身の渾身の突きが不発に終わった事への無念の声を。

レキは思わずやってしまった自責の声を。

そして観客は、目の前で起きた事態に困惑する声を。


時が止まったように、武術場を静寂が支配した。


――――――――――


「・・・あ~、どうする?」

「・・・どうもこうも槍を切られては試合は出来ません。

 私の負けです」

「・・・ごめん」

「いえ、お気になさらず」


渾身の突きが防がれた事に変わりはない。

ここが戦場であれば、武器を破壊されたルミニアに勝ち目は薄い。

そもそも魔術では負けていたのだ。

槍との組み合わせでようやく虚を付けたと言うのに、それすら切り払われた。


必殺の間合いからの突きを、槍を切断する事で防ぐなどそう簡単に出来る事では無い。

レキの恐るべき反射神経と剣の鋭さが生み出した結果である。


ある意味レキが本気で戦った証とも言える結果に、ルミニアは心から満足していた。


「勝者、レキ」

『お、おぉ・・・おおおっ~~~!!』


お互いが納得したのを見て、審判が試合終了を告げた。

驚きの結果ではあるものの、ルミニアの槍を正面から叩き切ったレキの力量に、試合を見ていた生徒達から歓声が上がった。


一年生代表決定戦、準決勝第二試合、勝者はレキ。

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