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黄金の双剣士  作者: ひろよし
六章:レキと新しい年
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第126話:魔力低下の原因

「どういうこと?」


レキの言葉にフィルニイリスが食いついた。


魔力というのは本来、何もしなければ自然に回復する。


元となる魔素はこの世界のあらゆる場所、空気中はもちろんの事、水の中や食べ物、生物の体内に至るまでありとあらゆる場所に存在する。

人は水を飲み、食料を摂取し、そして呼吸をする事で体内に魔素を取り込み魔力を生成する。

極端な話、人は生きている限り魔力を生成し続ける事が出来るのだ。


反面、人は生きている限り魔力を消費する。

魔術を使用したり、魔力による身体強化を行わずとも、ただ歩いたり腕を動かしたりするだけでも魔力は消費されるのだ。

つまり人は、体を動かす際、無意識に魔力を使用しているのである。


普段消費される魔力は微々たるもので、自然に回復する量よりも僅かに少ない程度。

普通に生活している限り、魔力が枯渇する事はまず無いと言える。


魔力が枯渇する原因として考えられるのは、主に魔術を使用したり魔力による身体強化を行った場合である。

使用する魔術や身体強化の強さ、あるいは継続時間によって消費する魔力は異なり、使い過ぎる事で魔力枯渇に陥る。

魔力が枯渇した場合、人はまともに動けなくなり、最悪意識を失ってしまう。

命を失う事はないが、回復しない限り指一本動かせなくなる事もあるのだ。


とは言え、意識を失ってもその後何もしなければ魔力は自然に回復する。

人は呼吸さえしていれば体内で魔力を生成するからだ。


ある程度回復し、意識を取り戻した後食事や水分を補給すれば魔力の回復は早くなる。

摂取する食料や水に含まれる魔素が多ければ多いほど回復は早まり、場合によっては一気に回復する事もあるだろう。

そこまでしなくとも、ただじっとしているだけで魔力はやがて回復する。

大抵の者は一晩寝れば完全に回復するのだ。


何もしなければ魔力は回復する。

意識して魔力を使用しない限り、魔力は減る事は無い。


だが、ミアーリアは何もしていないにもかかわらず、魔力が回復するどころか逆に減っているらしい。

それがどれほど異常な事か。

調べたレキには分からずともフィルニイリスには理解出来た。

同時に、このままでは最悪の事態になりかねないという事も・・・。


――――――――――


人は、体を動かすだけでも魔力を消費する。

逆を言えば、体を動かすにも魔力が必要という事だ。

魔力が枯渇した場合に満足に動けなくなるのはその為である。


通常なら、普段生活する際に消費される魔力量より回復する魔力量の方が多い為、どれだけ動いたところで魔力が枯渇する事は無い。

だがミアーリアの場合、消費される魔力量が回復する魔力量を上回ってしまっているらしい。


今、ミアーリアはベッドで体を起こした状態でおしゃべりしているらしく、動いているような気配は感じられない。

にも関わらず、少しずつではあるが魔力が減っているらしい。


もしこのまま魔力が減り続けるような事になれば、やがて魔力枯渇により意識を失うだろう。


それだけならまだ良い。

例え意識を失っても、通常ならば魔力が回復し、そのうち意識を取り戻すのだから。


過去何度か、フィルニイリス自身も魔力の使いすぎによる枯渇状態に陥り、意識を失った事がある。

もちろん彼女も例に漏れず、やがて意識を取り戻し魔力も回復した。


ミアーリアの場合、何もせずとも魔力が消費されてしまう為、魔力枯渇で意識を失っても回復せず、それどころか更に魔力が消費されてしまう恐れがある。

仮にそうであった場合、果たしてミアーリアがどうなるのか・・・。


予想は出来る。

だが、その予想される事態は、おそらく最悪のものだ。


人は生きている限り魔力を消費する。

それは何も、歩いたり腕を動かしたりする時だけでは無い。

意図的に動かずとも、人には生きている限り動いている器官があるからだ。


心臓、あるいは脳といった内臓器官である。


それらは人が意識する事無く勝手に動いており、動いているからこそ人は生きていられる。

もし、それらを動かす為にも魔力が必要なのだとしたら。

人が生きている限り魔力を消費する理由が、心臓や脳などを動かす為であるなら。

魔力が完全に無くなった場合、果たして人は生きていられるのだろうか。


魔力が完全になくなり、回復しなければ・・・。

心臓や脳を動かす為の魔力すら得られなくなれば・・・。

もしかしたら、そのまま意識を取り戻す事無く、命すら失ってしまうのでは無いか。


あくまでフィルニイリスの予想ではあるが、何故か、このままではいけない気がした。


――――――――――


フィルニイリスの予想が合っているかは現段階では不明である。

だが、放置しておくわけにはいかなかった。

原因はともかくミアーリアが体調不良で臥せっているのは事実。

魔力が減少している事もだ。

フィルニイリスとサリアミルニス、魔術に適性のある森人二人が改めて確認したので間違いはないだろう。


レキが気付けたのは、ひとえに魔力は放っておけば自然回復するという事を知らなかったから。

フィルニイリスやサリアミルニスでは知識が邪魔をして気付けなかったかも知れない。

先入観の無いレキだからこそ、ミアーリアの異常に気付けたのだ。


本来なら黙っていても回復する魔力が逆に減少し続ているという異常事態。

それは同時に、ミアーリアの命に係わる可能性が高い事を示している。

光の祝祭日から半月、ミアーリアの魔力が消費され続けていると言うのであれば、近い内に魔力枯渇状態に陥ってしまうだろう。

そのまま意識を取り戻す事無く、下手をすれば命すら落としかねない。


それがいつになるかは分からないが、ミアーリアは既に満足に起き上がれない状態になっている。

無理をすれば起き上がれると本人は言っていたが、逆を言えば無理をしなければ起き上がれないという事でもある。


食事を通じて魔力を回復するという方法も、今のミアーリアでは難しい。

それこそ一瞬で魔力が完全に回復するような食事や薬でもあれば話は違うのだろうが、あいにくとそんな物は存在しない。

魔素を多く含む食材はあるが、それも通常の食材に比べてわずかに多い程度。

お腹いっぱい、満腹で動けなくなるほど食べてようやく、と言った感じである。

元々食が細く、加えて体調不良により胃腸も弱く、食欲すら衰えている今のミアーリアに、それほどの食事を摂らせるのは逆効果にすらなりえる。

魔素の多い食材をシチューのようにじっくり煮込み、ゆっくりと摂取させるくらいしか、現状では対処のしようがなかった。


体が弱っているなら食事と休息を、と言うのはどの世界でも共通の手段だ。

ミアーリアもまた、体に良く消化も良い食事を摂り、ゆっくりと体を休めている。

その結果が現状であるなら、通常の食事では回復しないという事だろう。


必要なのは通常よりはるかに多くの魔素を含んだ食事。

例えばそう・・・。

魔の森の魔物の肉や、野草や果実などを使った食事。


「レキ、墓参りはいつ行く?」

「へっ?」


唐突に話題を変えられ、レキが首を傾げた。

話の内容が変わった事もそうだが、いつ行くかなどあまり考えてなかったのだ。


元々はレキがお墓参りに行きたいと言い出した事で決まった今回のフィサス領訪問。

フランが行きたがり、それなら私達と一緒に行きましょうとルミニアが提案した為、目的がフィサス領へと変わり、レキのお墓参りはついでのような形にになっていた。

レキ自身、フランやルミニアとの移動を楽しみ、初めて訪れる事になったフィサスの街も楽しみにしていた為、お墓参りの事を若干忘れていたのかも知れない。

それに、お墓参りにはフランやルミニア、フィルニイリス達も同行する。

いつ行くかはフィルニイリス達に任せているのだ。


「明日一日は準備するのに当てて、明後日からではどうでしょう?」

「分かった。

 レキもそれでいい?」

「ん?

 うん」


代わりに答えたのはリーニャである。

レキも特に不満はなく、行けるならいつでもいいやとすら考えている為、リーニャの提案に素直に頷いた。


「ミリス」

「こちらは問題ない」


馬車の手配と、それに同行する騎士団の取りまとめは部隊長であるミリスの仕事だ。

フィサスの街から魔の森までは馬車で四日ほど。

付近に街や村などは無く、馬車は森の入口から少し離れた場所に置いて行く必要がある。

その為、レキ達がお墓参りをしている間、馬車を守る人員が必要となるのだ。


王都からレキ達に同行した護衛部隊の面々がそれに当たる予定で、その為の準備も必要となる。

準備と言っても、武具の手入れと数日分の野営の用意や食料の確保、後は精々出発まで体を休める程度だろうが。

それにはリーニャの言うとおり一日もあれば十分だろう。


「ねえフィル」

「何?」

「魔の森で何かするの?」


本来の目的であるレキのお墓参り。

その予定を確認しただけとも思えるフィルニイリスの台詞だが、話の流れ的に別の理由がある事くらいレキにも分かった。

レキですら気がついたのだから、この場にいる者なら誰でも気付いただろう。


「魔の森の魔物の肉や野草には通常より多くの魔素が含まれている。

 それを食べさせれば、一時的にとは言え公爵夫人の魔力を大きく回復させる事が出来るかもしれない。

 魔の森まで往復で八日、のんびりしている余裕は無い」


自然回復する魔力量より消費される魔力量が上回っているのが現在のミアーリアである。

光の祝祭日から約半月、今はまだ大丈夫そうだが、何時魔力枯渇状態に陥るか正直分からない状態だった。

少しでも早く対処すべきだろう。


魔素を多く含む食物を与え、魔力の回復を促すのが最善であると考えたフィルニイリスが、魔の森へ行くついでにそれらの食材をとってこようと提案しているのだ。


魔の森で食べたオークの肉。

あれは味も良く、なにより非常に多くの魔素を含んでいた。

森に生えている野草や果実も同様だろう。

それらを持ち帰り、ミアーリアに食べさせれば多少は改善するはず。


そしてもう一つ。


魔の森の小屋に残してきた大量の書物。

伝説の賢者ガルストムが残したそれらの中には、ミアーリアの症状に有効な手段が書かれている可能性があった。


ガルストムが研究していたのは魔の森そのもの。

この大陸で最も魔素の濃い場所である魔の森。

その森について研究していたガルストムが残した書物になら、何かしらの情報があってもおかしくは無い。


例え無くとも、魔の森の食材を持ち帰るだけで十分だろう。


全ては魔の森に行ってみなければならない。

流石に明日明後日にミアーリアの症状が悪化するという事は無いだろうが、かと言ってあまりゆっくりしている訳にもいかないだろう。


一行が魔の森へ向かうのは明後日。

レキの初めてのお墓参りは、様々な目的の下で行われようとしていた。

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