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黄金の双剣士  作者: ひろよし
六章:レキと新しい年
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第125話:原因を探ろう

「次は無いのが望ましい」

「あっ、そっか」

「フィルニイリス様、折角纏まったのですから」


護衛が頑張るという状況はつまり、護衛対象が危険にさらされているという事である。

揚げ足取りの様だが、そんな状況は無いに越した事はない。

あるいはこれも護衛としての心構えの教育なのだろう。


そんなやり取りをしながら、レキ達は最初の部屋へとやってきた。

湯浴みも夕食も済ませて後は寝るだけだが、その前に少し話をしようと集まったのだ。


ニアデルとルミニア父娘はミアーリアの寝室に残っている。

就寝前の、家族の団欒をするのだろう。


「レキ、何か気づいた事はある?」

「ん?」


部屋に入ると同時に、フィルニイリスがレキに問いかけた。

ミアーリアとの会話の最中、フランやレキ以外は極力口を挟まなかった。

客人として招かれているのはフランとレキの二人であり、その他の者はあくまで二人のお供という形だからだ。

当主が許してもそこは貴族、体裁は大事なのだ。


ただ、フィルニイリスが口を挟まなかった理由はもう一つある。


「公爵夫人が体調を崩した理由、それは使用した魔力が回復してないから。

 通常、消耗した魔力は一日あれば回復する。

 夫人は魔力の回復に時間がかかり過ぎている」

「そうなの?」

「魔力は魔素を元にして体内で生成される。

 魔素はこの世界のどこにでもあり、呼吸や飲食物を摂取する事で取り込まれる。

 過剰な魔素は魔素酔いを引き起こすが、それは魔の森などの魔素が極端に濃い場所に限られる」

「ん~・・・?」

「光の祝祭日に魔力を使用し過ぎたと言うのは分かる。

 でも光の祝祭日から既に半月以上経っている。

 魔力が回復していないのはおかしい」


正直難しい話でレキにはちんぷんかんぷんだった。

それでも情報の共有は大切である。

レキ以外の者にも伝える為、フィルニイリスがこれまでに分かっている事を語った。


ミアーリアの体調不良の原因を探るべく、フィルニイリスは彼女の体内魔力を探っていたのだ。

その結果、魔術を使用してから半月以上経った今でも、彼女の魔力は回復しきっていなかった。


「レキは他者の気配を探るのが得意。

 それで公爵夫人の気配を探ってみて」

「気配?

 ん~・・・普通だったと思うけど」


レキの気配察知能力は凄まじく、それは魔の森から王都への道中でもいかんなく発揮されている。

はるか遠く、視界にすら入らない程の距離にいる魔物を仕留め、皆の夕食として提供しては感謝されていたレキである。

その能力はもはや野生の獣以上だ。


レキはその気配察知を常に行っている。

それは、魔の森といういつ魔物に襲われるか分からない危険な場所で、三年もの間生き抜いてきたが故だ。

いつ木の陰から魔物が襲ってくるか分からない環境では、気配察知を怠る事は死につながる。

レキは、それこそ呼吸をするかのように気配察知を行っている。


その卓越した察知能力で、何か気付く事は無いかとフィルニイリスは期待した。

だが、レキに思い当たる事はないらしい。


「普通?

 あれほど弱っているのに?」

「ん~・・・弱かったかなぁ?」


ミアーリアが寝込んでいる理由は魔力の使い過ぎによる疲労だと言う。

病気などで体が弱っている訳ではない為、肉体的には問題が無いのかも知れない。

少なくとも、レキの気配察知能力では分からないようだ。


気配には個人差があり、レキはその違いを読み取る事が出来る。

例えばゴブリンとオーガなら気配は違って当然だが、同じゴブリンの中でも強い個体と弱い個体で気配も異なる。

その違いを読み取る事で、レキは相手の強さがある程度分かるのだ。


「う~ん、やっぱ弱ってないよ」


病気や怪我を負っていれば体力や気配も弱まるはずで、瀕死の状態なら顕著だろう。

注意深く気配を探ってみたレキだが、結果は変わらず。

肉体的には問題なく、魔力の使いすぎによる疲労で寝込んでるミアーリアは、レキ曰く弱ってはいないらしい。

魔力は回復していないが、その分いつもより多く寝ている為、体力的には万全の状態なのかも知れない。


「他に分かる事は?

 例えば魔力が少ない理由など」

「使い過ぎちゃったからじゃないの?」

「減った理由はそう。

 でも回復しない理由が分からない」

「ん~・・・」

「因みに、レキは魔力を使い過ぎて疲れた事は?」

「ん?

 無いよ?」

「・・・そう」


レキほどの膨大な魔力を持つ者なら、どれだけ魔力を消費しても疲労を感じないのだろう。

魔術を覚えるより前、つまり魔の森にいた頃も、レキは無意識に身体強化を行い魔力を消費していた。

魔の森は通常より濃い魔素に覆われた場所である。

故に、どれだけ魔力を消費しても即座に回復してしまうのだろう。


なお、魔力が過剰に回復する事による弊害、それが魔素酔いである。


自身の魔力容量を大幅に超えて魔力が生成された結果、溢れた魔力が体内を巡り、満足に体を動かせなくなってしまうのが魔素酔いの症状である。

通常なら自身の魔力容量を大幅に超えて回復する事は無く、何より人はただ生きるだけで魔力を消費する為、どれだけ生成されても即座に消費され溢れる事は無いのだが、魔の森のような以上に魔素が濃い環境ではそういった事が起きてしまうのだ。


レキは例外として、通常魔力は使えば使っただけ消費される。

人は体を動かす際にも魔力を消費する為、魔力を消耗した状態で体を動かせばその分体力を消耗してしまう。

魔力によって動きを補佐していた分が無くなる為、更に体力を消費するのだ。


ミアーリアが寝込んでいるのも、魔力が回復しておらず、その分通常より多くの体力を消耗しているから。

臥せっていた為体力は回復したようだが、肝心の魔力がまだ回復していない。


なぜ魔力が回復していないのか。

レキに聞いたのも、自分と異なる視点を持つ者からの意見が欲しかったからだろう。

何せ、レキはこの中で最も常識外の存在だからだ。


「何か分かる事は?」

「ん~・・・魔力、魔力」


フィルニイリスの問いかけに、腕を組みながら頭を捻る。

気配こそ呼吸するかのように察知しているレキだが、魔力探知は最近覚えたばかり。

当然、ミアーリアの魔力も探っていなかった。


だからこそ、分かる事は無いかと聞かれて困ったというか、そもそも調べてないと言うか。


「今から調べれば良いのでは?」


そんなレキの考えが分かったのか、レキに魔力探知を教えたサリアミルニスが、そう提案した。


――――――――――


本来、魔力探知の範囲は狭い。

誰もが持っている魔力を離れた場所から探ろうとするのだから、距離が離れれば離れるほど探知し辛くなるのは当然である。

宮廷魔術士長であるフィルニイリスですら、その範囲は己を中心に数Kmと言ったところだ。


レキの魔力探知の範囲も、気配察知に比べれば大分狭い。

それはレキが慣れていないからだが、それでも王都全域をカバー出来るほどには広い。

精度に関して言えば、普段良く接している者の魔力なら王都のどこにいても探し出すことが可能である。

ただ、初対面のミアーリアの魔力が分かるかと聞かれれば、正直自信が無かった。


「ミアーリア様のお部屋はここからさほど離れておりませんし、お部屋に居られるのはニアデル様とルミニア様、そしてミアーリア様のお三方のはず。

 ニアデル様とルミニア様ならレキ様もご存知ですから、残ったミアーリア様の魔力に集中すれば良いかと」

「ん~・・・」


魔力探知の有効範囲に問題はなく、ミアーリアの魔力を探るには一緒にいるルミニアとニアデルを除外すれば良い。

これならミアーリアだけを特定する事は可能だろう。


「ダメ元、という言葉もある。

 レキ、やるだけやってみて」

「最近ちゃんと練習していますし、きっと大丈夫です」

「ん~・・・分かった」


やらないよりマシというフィルニイリスに後押しされ、寝る前に魔力探知の練習に付き合ってくれるサリアミルニスから太鼓判を押され、レキはとりあえずやるだけやってみる事にした。

寝る前の練習と言ってもほんの数分程で、その日の勉強のついでという感じだが、それでも根が真面目なレキは毎晩欠かさず行っている。

レキの部屋からフランやミリス、フィルニイリスなどレキの良く知る者の魔力を探ってみたり、その日手合わせした騎士の魔力を部屋から探しだしてみたり。

以前立ち寄った武具屋の主人の魔力を王宮から探したり、深夜に王都を出入りするものがいないかどうか探ったりと、範囲や精度を高める訓練のような事を毎晩行っているのだ。


日頃の練習内容を思えば、同じ屋敷内にいるミアーリアの魔力を探るなど造作も無い。


深呼吸をし、精神を集中させる。

周りの者達は、そんなレキの邪魔にならぬよう黙って見守っている。


こんな時騒ぎ出しそうなフランが静かなのは、話が難しすぎて入れないというのと、ルミニアの母親の事なので邪魔しちゃまずいと思ったというのと、旅の疲れと腹が満たされた事で若干眠いからである。


「・・・ん~、分かった」


集中し始めてから間もなく、レキが声を上げた。

どうやらミアーリアの魔力を探知出来たようだ。


「公爵夫人の魔力におかしいところは?」

「んっと、ちょっとまってね」


魔力を探知しただけでは意味は無い。

フィルニイリスが指示を出し、レキが更に魔力を探る。


魔力探知は特定の人物の魔力を見つけ出す方法であり、それは主に質と量によって判別される。

例えば、フランなら緑系統に特化した魔力を持ち、その量は(現段階では)ミリスより上でリーニャより下と言ったところ。

まだ慣れていないレキに分かるのはこの程度だが、フィルニイリスが探れば緑系統に特化しつつ赤系統の魔力も持っている事と、フィルニイリス自身の魔力量を「100」とした場合フランはおよそ「23」くらいと言った感じで量る事が可能である。


フィルニイリスがレキに期待しているのは、レキの持つ類まれなる気配察知力と、王都全域をカバーできるほどの魔力探知能力を組み合わせる事による、フィルニイリスとは異なる視点からの調査である。

レキには魔の森で培った野生の感のような物が備わっている。

加えて広範囲に及ぶ気配と魔力探知。

それらをミアーリアただ一人に集中した時、あるいはフィルニイリスにも分からない何かが分かるのではと、そう考えたのだ。


「んと・・・あれっ?」

「何か分かった?」

「ん~、なんだろ。

 えっとね、なんか弱ってる?みたい」

「それは分かってる」


ひたすら集中していたレキが何やら掴んだ。

だが、残念ながらレキの調べた内容に新しい情報はなさそうだった。

ミアーリアが弱っているなど今更である。

その原因を探る為、こうしてレキにお願いしたのだから。


やはりレキでも無理だったかと、フィルニイリスが諦めかけたその時。


「ん~、なんか減ってる?」

「・・・ん?」


レキの口から、新たな情報がもたらされた。

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