第11話:森を駆ける
「じゃあ行こう!」
「ウォフっ!」
よほど嬉しいのだろう、両手に持つ剣をぶんぶん振り回しながら歩き始めるレキ。
そんなレキの様子に、先ほどまでの戦闘も、そこで見たレキの凄まじさも、更にはここがこの世界で最も危険な森である事すら忘れそうになるミリス達である。
危険は去った。
だが、その代償は大きく、誰もがレキのように元気な訳ではなかった。
リーニャは怪我こそ治っていても失った血と体力は戻っておらず、ミリスとフィルニイリスも度重なる戦闘で限界が近い。
フランに至っては意識が戻っておらず、リーニャが大事に抱えている状態である。
「レキ」
「なに?」
「レキの家はあとどのくらい?」
「えっと・・・」
その状態で移動できる距離などたかが知れている。
下手をすれば森の外にすらたどり着けないかも知れない。
レキの住む村がどこにあるかは分からないが、このまま移動するのは困難だろう。
かと言って休憩するにもここは魔の森。
あと数時間もすれば、魔素酔いになり一歩も動けなくなってしまう。
まずは森を出る。
森の外なら休憩を取る事も出来る。
そうしてしばらく体を休め、日が沈み切る前に辿り着ければ・・・と言ったところだろう。
その為にも、まずレキの家の場所を把握する必要があった。
尋ねられ、レキが首を頭を傾けた。
家の場所が分からないわけでは無く、ただ説明が出来ないのだ。
「走って行けばすぐだよ?」
「私達には無理」
レキの身体能力であれば一瞬でたどり着く距離でも、今のフィルニイリス達では数時間はかかる。
魔物に対しての危険性はレキが排除してくれるだろうが、走るどころか歩くのも厳しいのだ。
「あっ!
じゃあウォルフに乗ってけば?」
「・・・なるほど」
「えっ?」
レキの提案に、一瞬考えるもフィルニイリスが頷いた。
リーニャが乗っていたのはフィルニイリス達も見ていた為、危険はないはず。
それに、シルバーウルフはランク「7」の魔物。
敵対すれば命は無いが、味方とあればこれほど心強い存在はいない。
「だ、大丈夫なのか?」
「リーニャも乗っていた。
問題ない」
「し、しかし・・・」
馬なら何度も乗ってきたミリスも、さすがにシルバーウルフに乗った事はない。
というか魔物に乗るなどという発想はミリスには無い。
例えリーニャが乗っていたとはいえ、大丈夫だろうかという考えが浮かぶのも当然だろう。
「レキの家がどこにあるか分からない以上、移動手段の確保は必須」
「まぁその、少し速すぎましたが意外と大丈夫ですよ」
「そ、そうか・・・」
唯一の経験者であるリーニャからも大丈夫だと言われ、渋々と言った様子で了承するミリスである。
むしろ諦めたと言った方が近いかも知れない。
魔の森を抜け出していないという状況と、今の自分達の状態を考えれば、一刻も早くこの場所を離れる必要がある。
というのはミリスとて十分理解しているのだ。
「幸いこのシルバーウルフなら姫を入れて三人は乗れるはず。
残りは・・・」
シルバーウルフのウォルフの体躯は通常のフォレストウルフより少なくとも二回りは大きく、フランを抱えたリーニャが乗ってもあと一人くらいは乗れるだろう。
ミリスかフィルニイリスのどちらかがウォルフに乗り、残った一人は。
「ん?」
「レキに背負ってもらう」
この中で一番元気で、力もあるレキに背負ってもらう。
まだ子供のレキに背負ってもらうなど、普通なら考えられない行為だろう。
だが、レキはあのオーガを一蹴するほどの実力を持っている。
今更子ども扱いする必要など無い。
何より、今はそんなことを言っている余裕も無いのだ。
「レキ、私達の誰か一人を背負って移動できる?」
「うん、大丈夫!」
「お、おいおい!」
よほど親しい間柄でもない限り頼まないだろう提案に、レキはまたしても笑顔で了承した。
「さすが、レキ君は力持ちですね」
「へへ~」
「おい、リーニャ」
「何を言っているのだ?」と言いたげなミリスだが、当のレキが嬉しそうにしている為口を紡いだ。
レキは男の子であり、女の人を背負うくらい朝飯前。
何より、こうして頼られるのがレキは嬉しいのだ。
何せレキは、これまでずっと一人で生きてきたのだから。
「じゃあ私がレキに乗る」
「乗るって・・・」
「ミリスはリーニャと共にシルバーウルフに。
姫が落ちないよう気を付けて」
「・・・ああ」
ここまでくればもう何を言っても無駄だろう。
元より議論している余裕もないのだ。
それに、レキが嬉しそうにしている以上ミリスが文句を言う筋合いもない。
そう判断し、というか諦めたらしいミリスが、嘆息しつつ了承した。
余談だが、レキが誰を背負うかで揉めなかった理由だが・・・。
リーニャ:
「私はウォルフの上でフラン様を支えます」
(さすがにこの年でレキ君くらいの子供に背負われるのは・・・)
ミリス:
「恩人たるレキ殿に背負って貰うわけには・・・」
(それに私は重いし・・・いや鎧がだぞ?)
フィルニイリス:
「シルバーウルフにも乗ってみたいが、レキの上も捨てがたい」
(しがみつきながら根掘り葉掘り聞き出そう)
という、三人の思惑が見事に一致したからである。
――――――――――
森の中、一人の少年と一匹のシルバーウルフが駆けていた。
レキがフィルニイリスを、シルバーウルフのウォルフがリーニャとミリス、そしてフランを乗せ、レキの住む小屋へと向かって真っすぐに。
初めて森の小屋に人を招くとあって、レキはとてもご機嫌で走っていた。
とはいえ全力を出しているわけでは無いし、何より跳んでいない。
それでもその速度は常人の全力疾走より遥かに速く、そして馬より速かった。
それでもレキと、レキの後ろを走るウォルフには余裕があった。
だが・・・彼等に乗っている者達には、それほど余裕はなかったようだ。
「レキ、もう少し速度を」
「えっ?
遅い?」
「違う、速い」
「速く?」
「・・・レキ、あなたの感覚は私達と大きく異なる。
それを少し自覚したほうがいい。
主に私の為に」
最初こそ楽し気であったフィルニイリスも、さすがに馬より速く走る少年の背に乗るのはしんどいらしかった。
子供に背負われている状態での、ありえない速度での移動。
地面に近い事もあって振動も凄まじく、体力の突きかけた身としてはしがみ付くのすら辛かったりする。
「急がないと"まそよい"っていうのになっちゃうんでしょ?」
「それはまだ大丈夫」
魔素酔いと言っても、すぐに体が動かなくなるわけではない。
そもそも森に入ってまだ数時間ほど。
魔素酔いの症状が出始めるまで、幾分か余裕があった。
症状が出始めればレキにしがみつく事すら難しくなるが、今のところはまだ大丈夫。
だから、それほど急ぐ必要は無いのだ。
「だからもう少しゆっくり・・・」
「でももうすぐ着くよ?」
魔素酔いになるより前に、レキに酔いそうなフィルニイリスである。
これ以上の振動は、悲惨な結果を招くだろう。
それも、レキを巻き込む形で。
面白そうだからとレキの背に乗ったフィルニイリスが後悔している頃、残る二人はと言えば。
「・・・なぁ、リーニャ」
「はい?」
「大丈夫、なのだよな?」
「ええ、少なくとも振り落とされるような事は無いかと」
「そうか」
「はい」
個体の強さではオーガ以上であるシルバーウルフの上で、いまだ戦々恐々としているミリスに、リーニャが苦笑交じりに応えた。
一度目は、フランを救うべくかなりの速度で走るウォルフの背に必死にしがみついていた。
二度目となる今は、どうやら速度を落としてくれているらしい。
共に乗るミリスと会話できる程度には余裕があった。
落ち着いて乗ってみれば、シルバーウルフの毛皮は天然の絨毯のようで、体躯に見合った深さもある為か馬の鞍はおろか粗末な馬車より遥かに乗り心地が良かった。
毛皮に埋もれる事で体も固定される為、それほどしっかりとしがみつかなくとも落ちる心配はなさそうだ。
難点と言えば、馬と違いシルバーウルフは全身のばねを使って走る為、馬以上に振動が激しい事だろう。
毛皮である程度抑えられてはいるものの、フィルニイリス同様体力的に限界の近いミリスや、怪我こそ治ったものの失われた血の分体力を失っているリーニャには、なかなかに厳しいものがあった。
リーニャに抱えられながらぐーすか寝ているフランが、若干羨ましかった。
それでもミリスは王宮騎士。
いくら体力が付きかけているとはいえ、この程度の振動十分耐えられる。
幾分か慣れてきたのもあり、ミリスは前方を走るレキの事を考えていた。
姫と同じくらいの年齢の少年が、小柄とはいえ大人の女性であるフィルニイリスを背負い、オーガ以上の魔物であるシルバーウルフを従え、魔の森を走っている。
姫だけでなく自分達をも救ってくれた少年。
見捨てざるを得なかったリーニャを連れてきてくれた恩人。
そのリーニャが言うには、追ってきた野盗どもをあっという間に撃退し、更には怪我の治療までしてもらったという。
レキの強さに思うところは多い。
ミリスとて王国騎士団の一人として日々研鑽を積んでいる。
地位こそ小隊長だが、剣の技量は王国でも五指に入ると言われている。
ゴブリンやフォレストウルフはもちろん、ランク「5」の魔物であるオークすら一人で倒す実力を彼女は持っている。
さすがにオーガを一人でとなると厳しいが、的確な支援があれば倒すまでは行かずとも追い返すくらいは出来るだろう。
ただし、どれも通常の個体の話だ。
魔の森の魔物は、どの個体も通常のそれより二段階ほど強くなるらしい。
ランク「2」のゴブリンに手こずり、ランク「3」のフォレストウルフにはこちらが殺されかけた。
オーガに至っては、威圧のみで動きを封じられる始末。
なるほど、魔の森とはよく言ったものだ。
そんなオーガをレキは苦も無く倒した。
手も足も出ず、目の前で姫が食べられそうなところを、ただ見ていることしかできなかったミリス。
自分が強者だと驕った事は無いが、これほどの無力感を味わったのも初めてだった。
自分の力の無さに嘆き、絶望し、助けてほしいと何かにすがった。
何でもいい、誰でもいい、自分はどうなってもいいから、どうか姫をと。
その願いを叶えてくれた少年。
全身に黄金の光をまとい、単身オーガへと挑んでいく様は物語の英雄のようだった。
創世神話に出てくる光の精霊か、あるいは創造神その者か。
信仰の深い者が見れば、間違いなく心を奪われるだろう。
鋼より硬いといわれるオーガの腕を苦も無く両断し、蹴りだけであの巨体を吹き飛ばした。
通常のオーガですら、あれほど一方的に倒せる者などそうはいない。
ましてやここは魔の森。
この森の魔物の強さは嫌というほど思い知らされた。
だからこそ、レキの強さがどれほど異常かがミリスには分かった。
何をどうしたらあれだけの力を身につけることができるのだろうか?
(自分もいつか、彼程の強さを身に着けることができるのだろうか?)
どれほど感謝をしてもし足りない。
この恩は、おそらく生涯をかけても返しきれないだろうと思う。
今もまた、黄金の光をまといながら自分たちの前を走るレキの背中を見ながら、ミリスはそんな事を考えていた。
――――――――――
前を行くレキの背中を見ながら、様々な思いを巡らせるミリス。
そんなミリスを気にしながらも、両手でしっかりとフランを抱きしめ、リーニャもまた思考を巡らせていた。
二度と会えないと思っていた。
森の入り口で別れを告げ、自分はここまでだと諦めた。
フランさえ無事ならそれで良いと、心から思っていた。
そんな時に現れた少年、レキ。
森の中から突然現れ、襲い来る野盗を撃退したかと思えば、命を捨てるつもりだった自分にこれでもかと言うほどの感情をぶつけてきた少年。
その想いに、自分がどれほど間違った事をしようとしていたかを思い知らされた。
そして願った。
もう一度会いたいと。
一度は諦めた命を、どうか助けて欲しいと。
そして、フランの元へと連れて行って欲しいと。
そんな自分勝手な願いを叶えてくれた。
フランを救い、フランと会わせてくれた。
こうしてフランを抱きしめ、そのぬくもりを感じられるのは彼のおかげだ。
どれほど感謝をしてもし足りない。
ミリス同様、この恩は一生を賭けてでも返そうと思っている。
ただ、レキは自分達がどれほど感謝しているかなど知らないし、欠片も気にしていないだろう。
自分達にとっては絶望的な状況でも、レキにとっては片手間で一蹴出来てしまう事だからだ。
お礼の一つでゆるしてくれそう、というか既に忘れてすらいそうだ。
もちろんリーニャもミリスも忘れる事は無いだろうし、お礼一つで済ますつもりもない。
むしろ国を挙げて感謝をしなければならないほどだ。
何せレキは、フロイオニア王国の王女を救ったのだから。
問題は、どうやってお城へ連れていくか。
別に護衛が欲しいわけではない。
もちろん付いてきてくれるならこれほど心強い事は無いが、レキにはレキの事情があるだろう。
レキが感情と共にぶつけてきた言葉。
その言葉でレキの素性をリーニャはある程度理解していた。
だが、それはあくまで過去の話。
何せレキはフランと同じくらいの年齢だ。
その年の少年が、いつまでも一人で暮らしているはずがない。
おそらくはどこかの村か、あるいはもっと小規模の集落にでも身を寄せているのだろう。
そして、レキはその強さで狩人として貢献しているに違いない。
そんなレキを、自分達の都合で連れまわして良いものだろうか・・・。
そもそも、レキにお礼をしたい、恩を返したいという考えすら自分達の都合なのだ。
(結局、レキ君次第ですね・・・)
前を行くレキの背中を見つめながら、そんなことを考え思わず苦笑するリーニャだった。
――――――――――
森の中を駆けるレキの背に乗りながら、フィルニイリスは激しい振動に耐えながらも思考を巡らせていた。
先程レキに注意した為か、速度も振動も多少はマシになったおかげだろう。
考える事は多く、考えたい事はなお多かった。
幸いにして、現在置かれている状況は思考をするのに十分な余裕があった。
状態的にはあまり余裕が無く、むしろ思考を放棄して眠りたいのだが。
考えるべきはこれからの事。
レキの村に着いてから、休息を取り王都を目指す。
馬車は使えず、森の外にはまだ野盗がいるだろう。
数日もすれば連中も諦めるのだろうが、さすがにそれまで待つわけにはいかない。
なにせ、フロイオニア王女であるフランが王都への帰路の最中野盗に襲われ消息不明なのだ。
今頃は共に居た他の護衛達が捜索ないし近隣の領主に報告へ向かっている頃だろう。
あと数日もすれば、国を挙げての大捜索が始まるに違いない。
可能なら、その前に戻りたいところだ。
ルートはどうするか。
野盗が待ち伏せしている可能性がある以上、来た道をそのまま戻るわけには行かない。
幸いと言えるかは分からないが、魔の森は広大であり、出る方角を変えてしまえば野盗の追撃も緩くなるだろう。
いっそのこと反対側へ抜けてしまえば、とも思うが、あいにくと森の反対側は他国の領土である。
別段他国ともめているわけでは無く、むしろこの大陸にある全ての国とは良好な関係を結んでいる。
どの国だろうと、援助を求めれば応えてくれるだろう。
もちろん相応の対価は求められるが、この場合やむを得ない。
レキの村がどこにあるか分からないが、たどり着き次第後の行動を改めて考える必要がある。
移動手段は・・・馬も馬車ももう使えず、徒歩になるのが残念だ。
体力的な問題もあるが、何より野盗に見つかった場合に逃げ切れる可能性が低くなるからだ。
いっそのこと相手を殲滅してしまえば、追撃の可能性も無くなるのだが、ミリスとフィルニイリスの二人では正直難しいだろう。
森を抜けたら、一番近い街へ向かう。
そこで馬車を手に入れ、あとは王都へ帰還する。
明確な方針としては現状それだけ。
それがどれほど困難かなどわざわざ考えない。
困難だからと言って諦めるわけにはいかないからだ。
何としてもフランを王都へ。
考えるべきはそれだけ。
具体的な計画は、ミリスやリーニャを交えて練る必要がある。
基本的にこの一向の方針はフィルニイリスが決める事が多い。
だが、何もかもフィルニイリスが決めているわけでは無い。
ミリスやリーニャはフィルニイリスを信頼し、ほぼ一任してくれているが、だからこそ事前に相談と周知をする必要があるのだ。
あまりに独断が過ぎれば不満も溜まるだろう。
上手くいっている間ならまだ良いが、今回のように窮地を脱するための無謀な案など、何度も繰り返せば間違いなく破綻をきたす。
今回だってレキがいなければ全滅していたのだ。
同じ過ちを繰り返さない為にも、皆を交えてじっくりと話し合う必要があった。
考えるべき事はこれまでとし、フィルニイリスは考えたい事に思考を向ける。
目の前、と言うかフィルニイリスが乗っている少年。
黄金の光を纏い、魔の森の魔物を苦も無く倒す少年。
リーニャの怪我が治ったのも、おそらくはその光のおかげだろう。
「レキ」
「ん?
何?」
「その光は魔力?」
「光って?」
レキ自身も良く分かっていないらしいその光。
宮廷魔術士として、これほど興味深い事象は無い。
おそらくは魔力だろうその光は、フィルニイリスが今まで見た事も聞いた事もない黄金の光だった。
「それはいつから?」
「ん~・・・ずっと前から?」
「その光はレキにどのような変化を?」
「変化?
ん~・・・強くなるよ?」
「リーニャの傷を癒したのもそれ?」
「リーニャの傷?
・・・あ~~~~っ!」
叫び声と共にレキが急停止した。
危うく落ちそうになり焦るフィルニイリスに、レキがそれ以上に焦った表情をフィルニイリスに見せた。
「そ、そうだよ
リーニャ怪我してるんだった。
な、治さないと・・・」
「レキ、落ち着く。
リーニャの怪我は治ってる」
「えっ?
あ、お姉さんが治したの?」
「違う、おそらくはレキの魔力のおかげ」
「?」
そう言われ、レキが落ち着くと共に首を頭を傾げた。
治したという自覚がないのか、あるいは治癒魔術自体使っていないのか。
という事は、レキの魔力によってリーニャの自己治癒力が活性化したか、あるいは無意識に使用したか。
自己治癒力の活性化、というのは初歩の治癒魔術と同じ現象である。
消費されるのは術士の魔力と対象者の体力。
怪我は治るが、その分対象の体力を大幅に消耗してしまうそれは、瀕死の相手に行えば怪我の治癒と引き換えに対象の命すら奪いかねないものだ。
リーニャは怪我こそ負っていたが体力はそこまで消耗していなかったのだろう。
それでも相応の体力は消耗しているはずだ。
結局、フランの従者三人全員、森を抜けるほどの体力は残っていないという事になる。
「リーニャは大丈夫。
十分な食事と睡眠を取れば明日には回復する」
「そっか、良かったね」
「レキのおかげ」
「・・・へへ~」
良く分からないがリーニャが無事で良かったとレキは思った。
ついでに、良く分からないが褒められたのでレキが照れた。
レキについて聞きたい事はまだまだ山ほどあるが、どうやら時間切れのようだ。
「着いたっ!」
「ん?」
目の前にあるのは、いろんな意味で予想外な小屋。
どうやら、目的地に到着したようだ。




