あなたへ
「優雅はいつも優しいな」
雪斗は笑顔で話しかけてくる。
「急になんだよ」
俺はそう言いつつも褒められたことが嬉しくて口角が上がる。
「だってさ、いつも俺がいじめられてるのを助けてくれるし勉強だって教えてくれる。困ったことがあったらヒーローみたいに優雅は登場するんだもん」
雪斗は嬉しそうな表情と悲しそうな表情を混じらせている。だが、悲しそうな表情に俺は触れることが出来ない。
「そんなの当たり前だろ? 俺らは小学校からの長い付き合いなんだからな」
「そんな長い間お世話になっちゃってるんだね。いつも迷惑かけてばっかりだ」
雪斗は自分のことを鼻で笑う。
「迷惑だなんて思ったことは1度もないよ。俺は雪斗を家族みたいな存在って思ってるんだ。家族を助けるなんて当たり前のことだろ?」
俺は聖人君主になんてなるつもりは無い。友達や親友なんて小さなものじゃなくて、貴方を家族を助けられたらそれでいい。大事な人を失いたくない。それだけなんだ。
「家族か。在り来りな言葉ではあるけど優雅から聞けたことが嬉しいな」
今にも泣きそうな表情を雪斗は作る。いつになっても表情豊かな所は変わってないな。だからこそ考えていることは分かりやすい。
「雪斗は自分を卑下しすぎなんだよ。遠くを見るんじゃなくて近くを見て。そうしたら雪斗を大切にしてくれる人がたくさんいることに気づくよ」
「俺を大切にしてくれる人なんて優雅ぐらいのもんだよ。両親だって俺のことを嫌ってる。学校にも家にも俺の居場所なんてないんだ」
雪斗はうっすらと涙を浮かべる。
「雪斗の両親だって嫌ってる訳では無いと思う。大切に思ってるからこそ厳しくするんだよ」
きっと雪斗もそんなことは分かってる。でも、素直になれない。自分がこれ以上傷つかないように周りに味方はいないと言い聞かせているのだろう。
「うるさいな! いつもいつも偽善者ずらして俺に近づいて来て。ヒーローにでもなったつもりかよ」
雪斗は下を向きながら怒りを露わにする。
「確かにヒーローのつもりかもしれないよ。俺がお前を助けられるとも思ってない。けど失いたくないんだよ」
俺も雪斗につられて感情を表に出す。
「そんな言葉口先だけだろ? やっぱり信じなければ良かった。今後一切話しかけてくるな!」
雪斗はこの言葉を言い放ち帰っていった。
俺は、雪斗の言葉に言い返すことすら出来なかった。それは、口先だけで話すことが何度かあったからだ。
今から雪斗を追いかけようにも、かける言葉が見つからず俺は立ち尽くすことしか出来なかった。
あの日から雪斗と話すことは1度もなかった。きっと今後も話すことは無いのだろうと変わることの出来ない自分を憎む。
いっそ死んだ方が楽なのかもしれない……。




