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この催眠おじさんは最強です

作者: 毒瓦毒尾

かなり適当です

「アリス・イシュタール!お前との婚約を破棄する!」


目の前にいるのは私の婚約者…である。

この男はジルコニア王国の第一王子であり、第一王位継承者のアルバート・フォン・ジルコニアだ。

黄金の髪と蒼い瞳、そして優れた血筋とたぐいまれなる美貌。それゆえに小さいころ頃からチヤホヤされた結果、かなり傲慢な人間に育ってしまったのだ。


「観念しなよ。君の悪行はすべてわかっているからね。」


「まったく、このような毒婦に私たちのノエルが蔑まれるとは…実に腹立たしいですね。」


「…私がノエルを守る。」


「みんな…私怖い…」


そして王子の周りには、宰相、神官長、騎士団長たちの息子たちがいる。

そんな4バカの後ろに隠れている下品な体つきをした女が平民上がりの聖女、ノエル・プリノールだ。

この女は王子とその取り巻きに不躾にも近寄り、わざと躓いたりして、ラッキースケベ状態を繰り返すということをしていた。

そのたびに、私ドジなんです。なんてわざとらしく言っていたが、そのぶりっ子スキルと体を使った攻撃にに4バカは骨抜きになっていった。結局男はでかい胸が好きなんか!?ああん?

…おっと取り乱してしまったが、話を続けよう。


そして、そんな男たちにたった今婚約破棄されたのが私こと、イシュタール公爵家の長女アリス・イシュタールだ。自分でいうのもなんだが、かなり美人な部類に入ると思う。透き通るような黒い髪とスタイルのいい体も自慢できるポイントだ。100人の男子がいたら100人そろって私に惚れるだろう。…ただ胸の大きさは聞かないでほしい。成長途中なのだ。


そして私がいるこの場所は、国の行く末を担う子供を育てるための学校、聖ジルコニア学園の卒業パーティーの会場である王家の大講堂だ。

当然、私たちの周りには卒業生とその保護者である有力貴族たちが大勢いる。

こいつらはいったいなんでこんな場所で婚約破棄なんてしてきたのだろうか。馬鹿なのだろうか。そういえばバカなんだった。

「…殿下。婚約破棄ということですが、わたくしそのようなことをされることに身に覚えがございませんわ。理由をお聞かせいただいても抱いてもよろしいでしょうか?」


「貴様!忘れたとは言わせんぞ!ノエルに対する嫌がらせの数々!すべて明らかになっているんだからな!」


「そうだよ。往生際が悪いよ?アリス嬢?」


「ふぅ…言い逃れできると思っているのか…神はすべて見ていますよ?」


「…許さない。」


…今は、3バカには聞いていないのだが。まぁ、殿下の話によるとどうやら、私がこの聖女に選ばれた平民の女、ノエル・ハーデロイドをいじめたことが理由らしい。

その驚愕の内容は、ダンスパーティーでワインをこの女のドレスにわざとかけたり、私主催のお茶会にこの女を誘わなかったり、ともだちを作れなくしたりと…なんかいろいろやってるらしい。しかし、私はそんなことをした覚えはない。ダンスパーティーでワインをかけたということだが、あれは、目の前に来たあの女が急に自分の頭にワインをかけ始めただけだし、お茶会に招待しなかったのは、一応ではあるが自分の婚約者にすり寄ってくる女を招待するなんて単純に意味がわからないからだ。それに友達ができなかったのはこの女がほかの令嬢の婚約者にも色目を使っていたからだろう。…結局ハニートラップに引っかかったのはこの4バカだけだが、誰がそんなやつと友達になりたがるだろう。私はならない。


とまぁ、ほかにもいろいろあったそうなのだが(ほとんど自演)それだけでは婚約破棄までにはいたらず、私のことを憎み何とかしたいと思いつつも婚約者のままでいたそうだ。ところが、3日前にこの女が私に階段から突き落とされてけがをしたことが決定打となってこうして婚約破棄をすることになったそうだ。



「…ということだ!今まではまだ嫉妬からくるいじめだから多少は多めに見てやっていたものの!暴力行為にでるとはもう許せん!アリス!お前との婚約は破棄する!そして、お前は国外追放だ!」


会場から息をのむ声が聞こえた。「国外追放」はこの国では非常に重い罪である。聖女とはいえ一人の女をいじめただけで課される罪にしては重過ぎる罪だ。


「殿下。わたくしは今おっしゃられたことをした覚えがございません。私がやったという証拠はあるのでしょうか?」


「証拠だと!!!?ノエルが言っているのだ!!!本当に決まっているだろう!!!」


どうやらこの男たち、この女が言っていることを本当だと思って私を糾弾してきたようだ。


「はぁ…当人の証言だけでは証拠にはなりませんわ。そのような妄言で婚約破棄と果てには国外追放…呆れますわ…」


「もうげっ…!ノエルの言ったことが妄言だと!?許せん!」


「そうです!アリス様!今謝ってくれたら許してあげます!私もう怒こっていませんから!」


…この女脳みそがついてないのかしら。目が笑っているのが見えてるぞ。


「ノエルはなんて優しいんだ…そんなところに僕は惚れたんだけどね。」


「あぁ…自分をいじめた悪魔を許すなんて…なんという慈愛の心…まるで女神のようだ…」


「…好きだ。」


…この男たちには間違いなく脳みそついていないんだろうな。




「このアリス・イシュタール。やってもいないことで謝る気はございません!そして、確固たる証拠もなく、しかもこのような大衆の面前で一人の女に恥をかかすような人間などこちらから願い下げですわ!」


長年の厳しい王妃教育を耐え忍んできた私に向かって、遊び惚けてたやつが婚約破棄だと?と思ったとたんぷっちーんときて、つい言っちゃったぜ!


「きっさま~!!!もう容赦せん!覚悟しろ!」


王子と取り巻きたちは私に向かって剣を抜いて襲い掛かってきた。

これはまずい。啖呵を切ったはいいものの私は結局かよわい乙女なのだ。

あぁ。結局私は一人なんだなぁ。どこかにいないかな私の王子様。





















そのとき私の目の前に光り輝く魔法陣が現れた。


「なっ…なに!?」


光はどんどん大きくなり、私は思わず目をつむった。

しばらくして光が収まると、一人の男が私をかばうように立っていた。


「どうも催眠おじさんですwwwww」


「「「「「「「えっ?」」」」」」」


「催眠おじさんですwww」


違う。聞き返したのではない。あまりの場違いさに理解が追い付かなかったときの「えっ?」だと会場中が思った。



「なっ!なんだこれは!?魔法陣の中からヒトが…ていうか!お前は誰だ!!!」


「だから催眠おじさんですよとwww、この卒業式での婚約破棄シーンは名場面の一つだったんでどうしてもみたくてですねwww見とくだけにしとこうかと思ったんですけど、僕の推しのアリスたんがピンチだったんでつい来ちゃいましたwwwww」


なにを言っているんだ?見てただけ?いったいどこから見ていた?というか今の魔法はなに?


「いやぁwwwアリスたん驚かせてしまいましたかな?今のは催眠テレポーションという技でして、自分以外の間隔を催眠によって遅くすることで一瞬で現れたようにみせる技ですなwwwエフェクトはサービスですぞwww」


男が何か言っているが全く理解できない。というかちょっと待ってほしい。私だけの王子様もしかしてこれ?中肉中背のおじさん?うそでしょ?魔法陣が見えたとき


(この状況でこれって、王子様キターーーーーーー!!!!)


なんて思ってたのに、出てきたのこれ???とても王子といえるような見た目ではないんですが???


「なっ?なによこれ!あんたみたいなやつが出てくるシナリオなんて知らないわよ!?ゲームじゃこんなのなかったわ!?」


あの女が何か言っている。シナリオ?ゲーム?いったい何を言っているんだろう。


「おっとwwwやはりあなた転生者ですなwww王子と宰相、神官長、騎士団長の息子全員攻略ルートなんて聞いたことありませんからなwwwうすうすそうだと考えていましたぞwww」


「なに言っているんだノエル?っていうか口調が急に…」


あの女も動揺して本性が出てしまったようだ。王子とその取り巻きたちが驚いている。


「いやぁwww本当はアリスたんはこのイベントで婚約破棄された後、修道院に入るんですなwwwで、そのあと王家の捜査によって無実が証明され、そのあとはこやつらのざまぁ展開に入るというものなんですがなwww ノエル氏はどうやらその展開を知っていてアリスたんを亡き者にすればなんとかなると思ったみたいですなwww国外追放の後におそらく盗賊などに襲わせようとしたんでしょうなwwwそんなことしてもお前たちの罪はなくならないwwwバカすぐるwww」


この男の話によると王子たちは私を殺そうとしていたらしい。しかし、これも王子たちの話と同じように証拠がない。


「「「「なっなんでそのことを!?」」」」


…こいつらバカなのか?今自供しなかったら証拠なんてなかったのに。

「…でっでも!アリスさんが私を階段から突き落として殺そうとしたのは事実!そしてそれは到底許されることではありません!!!」


おっ。またネコを被ったようだ。


「「「そうだ!」」」


王子たちも気を取りなおしたみたい。


「本当にそうなんですかな?wでは真相を聞いてみましょうかwww」


次の瞬間、男は私の前から消え、あの女の額に指を押し付けていた。


「本当のことをいってくださいwww」


「ひっ!」


男があの女に向かって何か言うと、指先から魔法陣が現れあの女の額に吸い込まれていった。


「なっ!一瞬で後ろに!?貴様!ノエルに何をする!」


王子が剣で男を切りつけようとする。


「あぶない!」


しかし、剣が通りぬけた場所に男はおらず、すでに私の前に戻っていた。


「おお怖い怖いwwwアリスたんの言葉がなかったら死んでいましたぞwwwサンキューですなwww」


と男はずっと軽い調子でいる。


「さて、ノエル氏www話してもらえますかな?www」


「なっなにをしたの!?「私は日本からの転生者で、このゲーム「乙女の罪」のことを知っていました。」えっ、なに!口が勝手に…!「私はイケメンたちに囲まれて、王子の金で贅沢して暮らしたかったので、結末で私を貶めるアリス・イシュタールの存在がじゃまだったので嘘をついて殺してしまおうと考えました。」いやっ!?「例えば…」

っと、あの女は、自分の野望と今までついてきた嘘のことを抗おうとしつつも語りだし、途中で王子や取り巻きたちとの肉体関係についても話し出した。なかなかすごいプレイをやっているようだ。

…胸が大きいとそんなことをされるのか。恐ろしい。


王子と取り巻きたちは最初、「ノエルは操られている!」とか「貴様!ノエルをもとに戻せ!」とか言ってるが、肉体関係が自分だけではないということに驚き、お互いで言い争いを始めた。


「どういうことだノエル!愛しているのは私だけではなかったのか!?私の金目当てだったのか!」


「ちょっと!君たちもノエルと寝たのかい!?神に仕えるものがそんなことをしていいのかい!」


「ちっ違う!私はそんなことはしていません!あっあなただって「王子とノエルが幸せだったらそれでいいんだ…」とか言っていたじゃないですか!!!」


「…俺はノエルに縛られるのが好きだ。」



一人アブノーマルな奴もいるが、どうやらそれぞれと肉体関係があったのは本当のようだ。

つまり、この催眠おじさんはあれだけの動作でノエルに本当にあったことを自供させているらしい。


「ホッホッホwww修羅場ですなwwwともかくこれでアリスたんの無実は証明され、逆に王子たちの不貞な行動が明らかになったということですなwwwいかがですかジルコニアの国王様www」


と、いつの間にか王座にいた国王に向かって催眠おじさんが問いかけた。


「う…うむ。いろいろと言いたいことはあるんじゃが…まあいい。

ごほん…どうやらわしは息子を甘やかしすぎたようじゃな。そして、宰相、神官長、騎士団長、貴様らも教育に失敗したようじゃ。証拠もなく一人の女を貶める行為それも、このような大衆の面前で!このようなことは到底許されることではない!よって、アルバート・フォン・ジルコニアの王位継承権をはく奪し廃嫡とする!ほかの3人とノエル・ハーデロイドに関しても国外追放とする!はぁ…誰じゃ、あのようなものを聖女などといったのは…」


「そっそんな!考え直してください!父上!」


「うるさい!もう貴様は息子ではない!衛兵!連れていけ!」


すると、いまかいまかとスタンバイしていた衛兵たちが4バカと聖女ノエル様(笑)を連れて行った。最後まで、あの女は本当にあったことをしゃべり続けていたが、あれ元に戻さなくていいんだろうか…?


「うーんwちゃんとしたシナリオではないが、ざまぁは果たされたwwwww」


お前は少し黙れ。

それにしても、こいつはいったい誰なんだ。唐突に現れて簡単に私のことを救ってくれた。見た目と口調はちょっとあれだが、私に対する好意は有り余るほど伺える。そして、その好意を嫌ではないと思う自分がいる。

ってちょっとまて!こんなちびデブハゲのおっさんにトキめいてどうする私!私はアリス・イシュタール!イシュタール公爵家の一人娘にして、だれもがうらやむ美貌を持った女だ!こんなどこのだれかもわからないおっさんとは住む世界が違う!

でも、前に立って庇ってくれたときの後ろ姿///ってあああああああああああああ!!!!


もだえる私を横目に国王が催眠おじさんに向かって話しかける。


「さて、いろいろ聞きたいことはあるんじゃが、貴方は聡明な魔法使いであると見受ける。あれほどの魔法を息をするようにお使いになられる。そのような方にあげられるものは何もないんじゃが…ぜひ、この国を魔物の進行から守っていただきたい。」


まじか!国王!こんな得体のしれないおじさんを国においていいのか!?


「んんんwwwすまんがそれはできないwwwなぜなら僕はアリスたんを見守るという使命があるからwwwwww国にかまっている暇はないwwwww」


そういえば見守るって何なんだ!?こいついつから、どこまで見ている!?

「ふーむ。そうか。貴方を取り込むためなら、アリス嬢との婚約も視野に入れておったんじゃが…しかたないのぅ。」


「ちょっとまった。」


「「えっ?」」


「今の話詳しく。」


突然おじさんの口調が変わった。


すると、国王はにやりと笑い、


「いやぁ、アリス嬢も婚約破棄されたという汚名がついてしまったじゃろ?つまりは嫁ぎにくい状況になってしまったと、そこで現れたのがおぬしじゃて、おぬしをわが国にとどめるためにもな?そういう方法もあるのかと考えておったんじゃ。」


「ふむ…確かにこれ以上ないほど見守ることができる場所ですな…いいでしょう。その話謹んでお受けします。」


ちょっと待て!私の意見は!?


「おおー!素晴らしい!それではアリス・イシュタールと催眠おじさんの婚約をここに認める!これは王命である!」


最悪だ!この爺王命を使いやがった!腐っても国王、権限だけはある!

おい!確かにこのおじさん嫌いではないけど!婚約は話が違う!

誰か!助けてくれる人はいないのか!

おい!父!母!何を泣いているんだ!感動してるんじゃない!

誰かどうにかしてくれーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!



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