04話 勝手に召喚されたので元の世界に帰りたいけど帰れない side男子高校生
気がついたらお城にいた男子の話
スウッとした空気を感じ、自然と意識が覚め、目を開けた。
「?」
目を開いた先に見えたのは、キラキラ光る"何か''がいくつも浮いている空間。一瞬、天国かと思った。しかし、背中から硬く冷んやりした冷気が伝わり、頭がハッキリし、全てを思い出した。通学途中の駅の線路、白い光、ポニーテールの女子、白い光の中で俺を掴んだ小さく力強い手。
はっとなり、俺は勢い良く上半身を起こす。周囲を見渡せば、驚きで目を疑う。
俺の周囲、半径5メートルくらいは、さっきのキラキラした''何か''に囲まれている様だ。更にその先、キラキラの隙間から何十人もの人に囲まれていた事が分かった。皆、似たような布を頭から全身を覆う様に被り、口元しか見えない。そいつらの口は動いているのに、声が聞こえない。
得体の知れなさに、気持ち悪くなる。背中の冷たさが、消えてはくれない。
「…初めまして、異界の子よ。……私の声は、聞こえているかな?」
背後から、男の声が響く。直ぐ様振り返れば、白髪ロン毛で長身の男が優しい笑みを浮かべていた。キラキラの直ぐ手前に布を外していた為に顔が良く見えた。日本人ではない顔立ちだった。日本人だったとしても、知らない男の笑みなど、今は恐怖でしかない。背筋が余計に冷えた。
どこに連れて行かれたんだ、俺は。
だが、目の前の男は、俺の険しい表情などお構いなしに軽い口調で話かけてくる。
「ふむ、声は聞こえたようだね。…なら次に、私の話す言葉は分かるかな?」
俺が無言で男を見上げていると、男は俺の目線の高さに成るよう片膝をついてしゃがみ、片手を振る。
「おーい、坊や〜聞こえるかい? おーい、坊や〜坊や〜坊」
「坊やじゃない」
「おや、失礼。でも、ちゃんと話せるようで良かった、良かった。」
楽しそうに笑う男に、調子が狂う。俺は深いため息をした。