エピソード3 一縷の希望
ここは、俺のいた世界ではない。そう思をざるを得なかった。
俺はいま、この世界の中枢都市、空中楽園都市に居る。文字通り空中に街があり、ビルも川も空に浮いている。
明らかに俺がいた世界では実現不可能な科学力。ここはきっと俺の世界より数百年進んだ未来なんだ。
こんなものを見せられたら、嫌でも信じざるを得なくなる。
____転校生が言ったことは真実なんだと。
「どうですか、綺麗でしょう。夜空の星屑には及びませんが、室内よりか気分は紛れます」
機械の幼女に心配される始末。さっき吐きかけたからか。
しっかりしろ俺。
ヴィオラ曰く、この世界は第6次世界大戦終戦終戦後、個々の国がなくなり、代わりに全ての国をまとめた『地球国』が成立。破壊の救世主はこの地球国連合軍直属の、異能者のみで構成された異能者集団組織、北極星の精鋭だと言う。
その大戦の際破壊された数少ない環境を保全する為、殆どの人間は大地を捨て、地下と空中に引っ越したとの事。
そして人類は空中に太陽系をモデルにした仮想巨大都市を建設した。それが空中楽園都市、『ふたつめの楽園』だ。
「……なあヴィオラ、ここが楽園ってのは何となく解るが、さっきの部屋は本当に楽園なのか?」
俺はなんとなく気になったていた事を聞いた。
この世界にはふたつの楽園がある。ひとつは、俺が初めてこの世界に足をつけた場所。ふたつ目がここ、空中楽園都市。
ひとつ目の制御室のような楽園と違い、空中楽園都市の方が多くの人間にとっての楽園に感じる。
だがヴィオラはへそを曲げて答えた。
「ここは所詮人間が造った楽園。造花の箱庭ですよ。対してひとつ目の楽園は何たって神様が創られた本物の楽園ですからね」
「……は?」
「はいはい、理解しようとしなくて結構です。早く行きましょう」
「……神様、ねぇ……」
そんなものがいるなら、是非ご対面してみたいものだ。
世界を壊すなんてイカれた頭した神様を一発殴るために。
やがて空中楽園都市の中心、太陽の街にコロニーのように密集したビル群の中で、特に目立つ九つのビルの内のひとつ、異能者管理塔が見えた。俺たちのいまの目的地でもある。
もし施設行きを選んだら、俺はこのビルで一生を過ごす。さっき見たふたつめの楽園の夜景も一生見れないで死んでいくんだろう。
「施設の人に挨拶しときます?いずれお世話になるかもですよ」
「いや、いい。まだ施設に行くって決めたわけじゃないし」
そう、俺の心の中では迷っていた。
どっちがいいのだろう。
生活環境は悪いがこの手を血で染めずにすむ保護施設か、安定した衣食住はあるけど、一生業を背負って生きなければならない破壊の救世主か。
正直、答えは定まっても傾いてもいない。というかどっちも嫌だ。施設がもっといい環境か、軍属でも世界の破壊をしない所だったら選びやすいのに。
……でも今まで生きて来れたのは、きちんとした環境と生活があったから。そして、両親の代わりに引き取って面倒見てくれた叔父さんと叔母さん、二人の元を離れた後生活費を稼いでくれた姉貴がいたからだ。
そう思うと、姉貴と叔父さん達への感謝と、最期までロクな会話ができなかった自分への怒りと、何より…………
俺の世界を壊した、転校生への憎しみが湧いてくる。
澄まし顔で淡々と喋るあいつを思い出すだけで腹が立って仕方がない。世界を、人を殺しておいてよく冷静でいられるもんだ。罪悪感を感じてないのか。俺に謝罪もしないのか。
いや落ち着け。あいつに怒っても仕方ない。今は考えることが俺に出来ることだろ。それしかできないって言った方が正しいが。
考えろ。まず保護施設に行ったらどうなる?
ヴィオラの話を総括すると、だ。最低限のものしかない個室、食事は他の異能者たちと一緒に食べ、シャワーのみ、外に出られないから施設内で授業を受け、義務教育が終わるまでそれが続く。大学を卒業したら就職できるが、外の仕事には就けない。在宅勤務、もしくは施設内の清掃員や食堂、管理人の勤務になる。死ぬまで働かないでもいいが小遣いがないので欲しいものが買えない。狭いコミュニティ、刺激のない繰り返される一日。まるで囚人だ。
普通に考えたら施設に入るのが一番いいだろう。一生働かなくても食うところと寝るところに困らないなんて最高だ。元の世界だったら。
でもここには知ってる人間はいない。外にも出られない。てか風呂がないっておかしい。何より、変わり映えのないつまらない生活を死ぬまで送る。それは元いた世界で俺がもっとも恐れていたことだ。
…………じゃあ破壊の救世主になったらどうなる?
きっと施設より質のいい食事にありつけるだろう。部屋もきっとそれなりに広いのを用意してもらえる。風呂もある、外にも出られる、施設より融通が効きやすい。軍人は公務員だから食いっぱぐれることもない。ヴィオラは昇進が早いとも言っていた。貰える給料も、エリートと遜色ないところまでいけるかもしれない。俺この世界の通貨知らないけど。
だがたとえ破壊の救世主になったとして、だ。
安定した衣食住があるのは、仕事の見返りだからだ。その仕事というのが、世界の破壊。
俺も壊す側に回るということは、またあれと同じことが起こる。あの、なにが起きているか理解していない、けれど迫る死の予感に怯えながら死体も残らず死んでいく、あれを、他の誰でもない俺がやるんだ。
…………人を殺すんだ。
一人や二人じゃない、その世界に生きる全ての命を。
俺が殺したことのある生物なんて、蟻とかバッタとかそれくらいだ。それなのにいきなり、比にならない数殺す。俺みたいに生き残る奴がいたら、そいつから恨まれる。いや、死んだ奴全員あの世で俺を恨むだろう。
俺にそれを背負う覚悟は決められるのか?
でも転校生はやってのけている。あいつは俺より遥か遠くにいる。
そもそも世界を破壊したら報酬が貰えるなんて、この世界はおかしい。正気じゃない。世界樹が危機に陥っている、というのは信用していいんだろうか。
なんで世界樹が危機に陥っているのか、なんで世界を壊さなきゃならないのか。
その答えは破壊の救世主にならないと教えてもらえないのだろう。
時間が必要だ。考える時間が。今考えてもらちがあかない。
そう結論づけて、俺は前を向いて歩き始めた。
異能者管理塔の目的の階に着いた。
エレベーターの扉の向こうに転校生が立っていた。色々気まずいからいま一番会いたくなかった。転校生はさっき俺に胸ぐら掴まれたことを気にする風もなく、「遅い」とだけ言った。
「ちょっと街を見て来ましたから」
ヴィオラが返す。この2人、スマホと持ち主というより、姉妹といった方がしっくり来る。
転校生がいま気付いたかのようにこちらを向くと、
「あなたの手続きはもう済んだ。今夜はここに泊まって。ヴィオラは置いていくから、何かあったらヴィオラに伝えて」
そう言って頭からヴィオラ本体を外す。
「……でもさっき本体そっちにあっても姿は俺の近くにいただろ。だったら……」
本体ごと置いていかなくても、そう言おうとしたら
「そんなに長い距離と時間、擬人体と本体は離れられないんですよ」
ヴィオラが口を挟んだ。あくまでスマホ、完璧ではないらしい。
「心が決まったら私を呼んで。何日でも待つ。…………それじゃ」
転校生はこっちを見向きもしないでエレベーターに一直線に向かっていく。
呼び止めようとして____やめた。
あいつから聞けることなんて今は何もない。多分ヴィオラからも。
俺に用意された部屋は、ベッドとトイレ以外特に何もない無機質な部屋だった。窓すらない。外と隔離されているからだ。
だが、やっとひとりでじっくり考えられる時が来た。ヴィオラは俺のことを監視はしているが、呼ばない限り出てこないらしいし。
俺はベッドに横たわって考える。
さっきまで学校にいたはずなのに、気づいたら異世界にいる。受け入れるしかないのだろう、俺の知っている世界は消え、知っている人は全員殺された。それをやったのが転校生の火酔裂夜。ああ、本名じゃないんだっけ。こいつは分岐した世界の最初に位置する世界の住人。施設に行くか、破壊の救世主になるか。
俺がこの大した事ない頭で理解できたのはこのくらいだ。
正直転校生の言ったことが嘘か本当かなんて今はどっちでもいい。大事なのは俺がこの目で見て、聞いて、体験した事。危険なのは状況についていけず判断を間違える事。それだけは確かだ。
これまでもこれからも俺の世界は退屈なまま変わらないと思っていた。そんな世界に失望していたし、そういうもんだって諦めていた。
だが神様が俺にくれた祝福は、世界を壊すという何ともいかれた物だった。
世界が壊れた。ただそれだけで、俺以外の人類全員死んだ。カーストで最上位に居ようが、勉強ができようが、モテて周りから完璧人間と揶揄されていようが、結局最期は何もできなかった。
…………俺が縋ってたものは、一体なんの役にも立たなかった。
『速水くんてつまらないよね』
『器用貧乏?』
『何も特技ねーのかよ、お前』
『面白くない』
…………俺は。
『いい、有澄、よく聞いて』
『父さんと母さんは死んじゃった。でも絶対お姉ちゃんがなんとかするから』
『だから、大丈夫なんだよ』
…………姉貴。
『俺、楸 風斗。よろしくなアリスちゃん!』
『つれねぇなあ。そんなんだと女の子が逃げちゃうぜ?』
『お前は本当に面白いな!』
…………楸。
なんでだ。俺は望んでいたはずだ。退屈な世界を壊してくれる存在を。
それなのに、実際壊されてみたら、そして俺だけ生き残ってしまったら、
____俺もみんなと同じように死ねたらよかったのに、なんて。
突然俺は女々しい考えが浮かんだ俺に吐き気がして、自分で自分を殴った。
馬鹿野郎。感傷に浸っている暇があるなら考えろ。泣くのは後でもできる。本当に泣きたいのは俺じゃない。
俺は生き残った。なら生きなければ。俺が死んだら、あの世界にいた人やあったものは本当に消えてしまうのではないか。
よく死んだ人は遺された人の心の中で生き続ける、っていうけれど、あれってこういうことか。生者がその存在を忘れた時、死者は本当の意味で死ぬ。
…………だが、やはり考えても進展しない。
それにこの悪魔的状況で意外にも冷静でいられるのもおかしい。まるでこうなるのを知っていたかのようだ。
もしかして俺は教室で居眠りしていて、これは夢なんじゃないだろうか。
俺はため息をついて寝返りをうつ。こんな妄想しかできないなんて、馬鹿馬鹿しい。
と、その時ポケットに違和感を覚えた。探ってみるとガラスの破片が出てきた。
そうだ、転校生がもし敵だった時の為に武器として拾ってそのままだった。
これは多分俺の世界の破片なんだろうが、やっぱりガラスにしか見えない。
これが世界だなんて…………。
____ふと、俺の頭の中を何かがよぎった。
小さな可能性。
だが、俺が生きる目標になる、希望だ。たったひとり残された俺が何をすべきなのか、そのための道が照らされた気がした。
「ヴィオラ!!」
ヴィオラがベッドの端近くに姿を現した。
「いま夜ですよー。なんですか、どうするか決めたんですか」
「いいから、今すぐあいつの所に連れて行ってくれ、早く!!」
破壊の救世主専用だというそのアパートは、まるっきり天体の形をした、見事な現代アートのようだった。明かりがついている部屋が多ければ多い多いほど輝いている。
真夜中だというのに、転校生は相変わらずのつり目で、若干眠い俺と違って状況に慣れている感じだった。
「心が決まったの?」
「それはまだだ。でもお前に今すぐ聞きたい事があって来た」
転校生がちらりとヴィオラを見る。ヴィオラにも何の用なのか言ってないのでヴィオラは『わからない』の類のジェスチャーを転校生に送った。
「とりあえず中に入って。話はそれから」
さっき俺が通された個室もだが、転校生の部屋はそれ以上に無機質で生活感がない。床も壁も天井も白一色で、そのぶん色の付いているものが目立つ。ヴィオラとか。
「で、聞きたい事って何」
転校生は俺に茶請けのようなものを出し、椅子に腰掛けながら聞いてきた。
俺は大きく息を吸い、頭の中で羅針盤を組み立てた。人生最大の、一縷の希望をかけて。
「俺の世界を、再生する事は可能か」
やっと転校生の表情が変わった。ヴィオラといえば目を丸くし、ぽかんと口を開けている。
随分長めの沈黙が流れた後、ヴィオラが静寂を破った。
「ええぇ〜〜〜〜…………」
呆れた、とでも言うような声を出した後、転校生に目を移す。
転校生が顔を上げた。
「あなたには話す必要ないと思っていたけど、あなたがそれを望むのなら話す」
ああ、望んでいる。
なぜ俺だけが生き残ったのか。それは世界を再生し、元の世界へ帰るためだ。それが俺の生きている理由になる。
壊されてからその大切さに気づくなんて、馬鹿にも程があると思う。
でも今の俺にはこれしかない。退屈で嫌なこともたくさんあった世界、たとえ破壊されず未来が続いていても、暗く平和でない理不尽な世界。
だけど、大事なものがある。大切な人がいる。
生きていて欲しかったんだ。俺はまだありがとうも言えていない。
それだけで、俺はあの世界を取り戻したいと思った。それだけで、これからの俺を差し出していいと思えた。
転校生がどう答えても、俺のする事は変わらない。
転校生が重たげに口を動かす。
「……私達には『意識』というのがある。自分が自分だと理解しているものが。そして世界も『意識』を持っている。意識が残っていれば、本来の世界で肉体が滅びても別の世界へ行けば肉体が再構成される。でも……世界を壊すということは、その肝心の世界の『意識』を壊す事」
____理論的には無理ということか。
「……それでも、どうにか再生したいんだ。俺はそのためなら何でもする。俺はあそこに大事なもの全部置いてきた。かけがえのないものだ、どうしても失いたくない、だから…………!」
「ちょ、ちょっと待ってください。アリス」
ヴィオラが割って入った。だいぶ言いづらそうに、腰が引けている。
「わたし達はあなたの世界を壊した側ですよ?国王陛下から直々に下された重要な任務なのです。あなたの世界が壊されたのには意味がある。それをあなたの『失いたくない』という意思だけで再生されては、国家への叛逆罪、それだけでは収まりません。ことは全てのパラレルワールド、世界樹に関わります。本気で、わたし達があなたの世界再生に手を貸すとお思いですか?」
腰は引けていたのにど正論を返されて、自分の早計さを思い知る。
そうだ。こいつらは奪った側だ。それを仕事にして生きている奴らだ。
どうして協力してくれるって何の疑いもなく思ったんだろう。
「…………そうか、そうだった。奪ったのはお前らじゃないか…………俺から帰る家を、家族を、友達を、生活を、明日を、世界を奪ったのはお前達だ!!なにも悪いことしてないのに、問答無用で殺しやがって!!世界樹のため?言い訳にしか聞こえないんだよ、ちゃんと謝れよ、俺にもみんなにも、謝ったあとで俺が殺してやる!!お前達は俺から何もかも奪ったんだ、ひとつくらい俺に与えてくれよ、俺が取り戻したい世界を!!!!」
吐き出した。
俺の奥深くに渦巻いていたものを、このとき初めて吐き出した。
やっと吐けて気分がいいのと同時に、見たくもない月の裏側を見てしまったかのように気持ち悪かった。ここまで汚いものを出したのか、と自分が嫌になるのだ。
ヴィオラは愕然としていたが、転校生はやはり表情ひとつ変えなかった。ただ俺を見ていた。いや、俺の目に映る自分自身を見ていたのかもしれない。
転校生はしばらく黙っていたが、椅子から立ち上がると俺の隣に来て、
____土下座をした。
「____は?」
思わず椅子を引いた。
俺もヴィオラと同じくらい愕然としていたに違いない。
白い髪が床に流れ、俺を見上げる。その姿は謝罪ではなく懇願のようだった。
「ごめんなさい。私達の都合であなたの世界を破壊し、あなたの大切な人と世界を奪った。そこに間違いはない。本当にごめんなさい」
まさか土下座で謝られるとは思っていなかったので何て言えばいいか分からず、言葉がつまる。
この転校生、一体なにを考えている?
「さ、サクヤ、なにも土下座しなくても……」
ヴィオラが転校生の隣に素早くしゃがむ。だが転校生はなんの前兆もなくぱっと顔を上げる。
「でもアリス、あなたは三つ、間違っている」
その言葉は俺の神経に触れた。蜘蛛の糸を風が撫でるような穏やかなものだった。
「……間違っている?」
「ええ。まずひとつ目に、あなたから奪ったのは『お前ら』じゃない」
転校生が腰を上げ、立ち上がった。今度はその瞳に俺が映った。
「世界の意識を破壊し、殺したのは『私』。ヴィオラはなにもしていない」
「サクヤ!それはあなたが」
ヴィオラは抗議の文章を綴る気だったが、転校生はきっとわざと遮った。
「ふたつ目に、私たちはあなたに協力しないとは言ってない。あなたの行為が罪になると伝えただけ。私はあなたの世界再生を手伝う。責任は、私が負う」
「サクヤ……ッ!!」
転校生は…………サクヤは無表情だ。
初めて会った時から変わらない。ずっとそうだった。こいつはずっと、
「みっつ目、私は全ては奪っていない。あなたの命と肉体、そして意思は自由のまま、あなたに決定権がある。あなたが決めたことをあなたはしていい。私は命令しないし告げ口もしない」
____俺に嘘をついていない。
「サクヤ、本気ですか!?お上にばれたらただじゃすみませんよ!」
「責任は取るって言った」
「そうじゃなくて、そしたら司令にも迷惑が……!」
俺の世界を壊した張本人なのに。
俺から何もかも奪ったくせに。
こいつは俺を奪わなかった。
「…………さては馬鹿だろ、お前」
「よく、言われる」
「……本当に協力してくれるのか」
「私は嘘は苦手」
「あなたがいた世界が壊される運命から逃れられるように世界を回って歴史を変えるか、何らかの影響を与え続ければ、あるいは……あ、でも世界が再生できてもそこにいた生物の意識が無ければ……」
だめか、転校生は少し肩を落とす。
転校生は本当にちゃんと世界再生を考えてくれている。ヴィオラも「知らないですよ」と言いながら意見を出している。
破壊したやつが再生に手を貸してくれるなんておかしな話だが、今のところは信じてもいいだろう。この転校生は世界を壊す仕事のせいか、だいぶ肝が据わっているらしい。
そこにヴィオラが口を挟んだ。
「それなら大丈夫です。世界の意識が壊されただけで、そこにいた生命の意識は破壊されていません。意識にはその世界の波長のようなものが記憶されていて、多分ですが、もし世界が再生されたらその波長に引き寄せられて戻って来るんじゃないでしょうか」
?…………つまり……。
「うん。……なら、行けるかもしれない」
希望が____繋がった。
言ってることはよく解ってないし、まだ始まってもいないが、俺のやるべきことが見えた。
待ってろ世界。俺が必ず再生する。
「でも、素人の憶測で決めるのは早計。専門家にちゃんと聞かないと」
言いながら転校生の顔が曇る。嫌な思い出をほじくり返されたかのように。
「……何かまずいのか?」
ヴィオラは心当たりがあるのか気まずそうに転校生を見ている。
「サクヤの知り合いでその手の専門家なんて“あいつ”くらいですけど……会いたくないんでしょ?」
「そういうのじゃない。会ったら会ったで面倒だから。…………でも仕方ない。明日、あいつに会いに行こう」




