3.帰ってきた深緑フード
「睦月さんは、どうやってここまで来たんですか?」
神楽ちゃんも、落ちてきたのかしら。もし落ちてきたなら、大変だったでしょうね、スカートだもの。
「自分の部屋のベッドに腰かけたら、いきなりベッドが消えちゃって。その後は、なんか、ずっと落ちてた気がする。……でも、よくわかんないや。ごめん。」
………つまり、落ちてきたのね、スカートで。しかも、その状況だと、何も持ってないんじゃないかしら。私はリュックに細々した物なら入ってる。
女の子だもの、色々必要よね。直ぐに帰れそうになかったら、半分こしましょうか。
「そうですか……。
私は、自転車に乗っていたら、地面が消えました。
……ちょっと、自転車とリュック、取ってきますね。」
「うん、わかった。」
神楽ちゃんの了解を得て、自転車の方へ行く。大丈夫かなぁ、カゴとか曲がってないといいけど。
私が立ったのを見て、フード男4人がちょっと焦った気がしたけど。……まぁ、気にしない、気にしない。
私は、部屋の隅に転がっている自転車とリュックに向かう。まずリュックを拾って背負う。次に、自転車を起こす。ふむ、特に変なトコはないわね、普通に押せるし。良かった。
自転車は、適当な所に停めておく。……魔法陣の中は怒られそうなので、魔法陣のちょっと手前に停めた。うん?そう考えると、私たち、魔法陣の内側で、おしゃべりしてたのか。ありゃりゃ。
「睦月さん、すみません。そこ、魔法陣の中みたいなんで、もう少しこっちでお話ししませんか?」
「あ、本当だ。」
神楽ちゃんは、慌ててこちらに来てくれた。別に慌てる必要はないのに、かわいいなぁ。
そして、またフード男たちがビクッてなったけど、気にしないね。なんかソワソワとドアの方を見てるから、………伝令でも待ってるのかしら?
まぁ、いいや。
私は、神楽ちゃんと、魔法陣の外側に座る。
「………。」
「………。」
沈黙。な、何話そう、「お話ししませんか」とか言っときながら、何話すか決めてなかったわ……。えーっと。
「………。」
「………。」
えーっとね、ちょっと待ってね、うんと。そうね……。
「………、睦月さんは、何か持ち物はありますか?」
……情報交換は大切よね。うん。
「いや、私は何も………、あ、シャーペンは1本あるよ。」
そう言って、胸ポケットからシャーペンを取り出す。……あらまー、かわいいシャーペンね。星の飾りが付いてるわ。
「そうですか、ありがとうございます。……私は家に帰る途中だったので、少し荷物があります。もし、そのー、何か困ったことがあれば言ってください。」
具体的には、女の子の日とかね。
「うん。」
と、言ってにっこり微笑む神楽ちゃん。……ちゃんと、わかってるのかな、即答したけど。
………ふむ。噂をすれば影、と言うし。深緑フードのことについて話してたら、帰ってきて、なんか説明してくれるかしら。
やっぱり、説明がないと、わからないことだらけだものね。……と、言うことで。
「さっきの人、どこに行ったんでしょうね。」
「……うん、そうだね、私も気になる。
残ってる人たちに、聞いてみる?」
……え、すご。その行動力、すご。て言うか、神楽ちゃん、ちょっと前まで震えてたよね?よくそんなこと言えるわね。
「恐くないんですか?」
「恐いよ。でも、私も、しっかりしないといけないし。それに、このままでいても、何も変わらないかもだし。」
……すごい。私は普通に、このまま待つつもりだった。だって、女子2人に(私は女子に入るのか?)、男4人ですよ。
でも、そうね。動くことも大切よね。
「……そうですね。確かに、このまま待ち続けるよりは、行動した方がいいかもしれ………おぉぅ。」
いきなり、ドアがぎいいぃぃっ、と開きました。…驚いた、あのドアの音、どうにかならないのかしら。……夜には絶対に開けたくないわね。
入ってきたのは、さっき出て行った深緑フードの男、だけじゃなくて、ぞろぞろと、5人くらい入ってきた。
深緑フードさんは、部屋の隅、壁際まで行ってから、頭を下げた。部屋に残ってたフード男4人も、それに続く。まるで、執事ね。
……うん?てことは。深緑フードの後に入ってきた人たちって、結構身分が高かったりするのかしら。
……………。
私は、無言で壁際まで行き、フード男の隣で、同じように頭を下げた。ワンテンポ遅れて、神楽ちゃんも壁際まで来て、頭を下げた。
「………………。」
誰も、何も言わない時間が過ぎ去っていく。
『ーー、ーーーーーー。』
『ーー!?ーーーーーー………。』
『……ーーーーー。ーーーー。』
たぶん、深緑フードの後に入ってきた人たちが話し出した。
………、ねぇ、最初の方?あなた、ため息ついたでしょ。何言ってるのかわかんないけど、ため息くらい、わかるんだから。
一体、何がご不満なのよ?……まぁ、明らかに、私たちも頭を下げてることでしょうけど。