2.美少女と自己紹介
「…………。」
「…………。」
見つめ合う、私と制服美少女。
……制服。中学生かな、高校生かな?
うーん、高校生に一票! 理由、なんとなく。
さて。ここは、年上として、私から話しかけましょう。
「えっと……」
『ーー、ーーーーーーー!』
………同時。私が少女に話しかけたのと、フード男がなんか言ったの、同時ですよ、どう思います?……本当に止めて欲しいものだわ、運命感じちゃうじゃない。
私(と美少女)は、フード男たちがいる方、つまりドア付近ね、を見る。でも、私達に話しかけてるってより、男1人が他の男4人に話しかけてるみたい。何言ってんのか、わかんないけど……なんか怒ってる?
……ちょい、美少女が恐怖で震えてるのがわかんないの?やめなさいよ。
っていうか、君らが私たちを召喚したんじゃないの、じゃ、なんか説明しなさいよ、もちろん日本語で!
……おぉ、そうだ。美少女に話しかけるんだった。ふむ、フード男の話題をふってみますか。
「………なんか、怒られてますね。」
「え、あ、そう……だね。」
………ねぇ、敬語使わないってことは、もしかして私を年下認定した?そうなんでしょう、ダメよ、人を見かけで判断しちゃあ。
そりゃ、君より身長低いし、どことは言わないけど小さいし?化粧もしてないし童顔だし?………うん、年下認定もしょうがないか…。
うぅ、せめてイヤリングをしていれば……もうちょっとお姉さんっぽかったかしら?
……たぶんダメだと思ってしまう自分が恨めしい……。
とか思ってたら、同じ男がまた喋った。
『ーーーーーー。』
うーん。さっきから喋ってる男ってなんか、他の4人の男と比べて、ローブの色がちょっと違うのよね…。4人は黒なんだけど、喋ってる男は深緑。
やっぱ、喋ってるのは上司かしら?なんか、おじさんって顔してるし。男5人の中で、一番年上っぽい。
………これで年上じゃなかったら、だいぶ失礼なこと考えてるわね……。まぁ、考えることは自由だわ、うん、問題ない。
あれ、じゃあ私のことを年下だと思ってる美少女も問題ないわね……。
『ーーーー、ーーーーーー。』
そして、喋っていた上司は、ぎいいぃぃっ、と音をたてながらドアを開き、慌てて去っていった……。
えぇっ!?私らは放置ですか?放置なんですかー!?さっきも考えたけどさ、とりあえず説明しようとか思わないわけ?
残されたのは、黒ローブ4人と、私ら女子2人。黒ローブさんたちは、なんか所在無げに立ってる。……ちょっとかわいそうかも。
「………私たち、どうなるんだろう。……こ、殺されちゃうのかな」
び、美少女が話しかけてきた!
やっほーい!いやぁ、こんな状況でも、美少女に話しかけられると嬉しいですね。私、男の人観るより可愛い女の子観たいひとですから!
………いやいや、落ち着いて、落ち着いて答えるのよ、そう、お姉さんっぽく!…えっと。
「……それはないと思いますよ。殺すならもう殺されているでしょうし。身代金要求するにしろ、人質にするにしろ、生きてた方が都合はいいでしょうし。」
と、言うことで、殺しは全面否定。まぁ、この言い方だと、用がすんだら殺されるって言ってるのと同じかもしれないけど。
「どうなるかはわかりませんけど、何かトラブルがあったみたいですから、しばらく放置されるんじゃないですか?もちろん監視つきでしょうけど。」
……異世界じゃね?ってとこには触れてない。確証がないことは言いません。
もし今、異世界だと思うって言ったら、ここが異世界じゃなくなる気がするのよね。
なんだろう、じゃんけんで、気合い入れて「勝つぞ」って言ってる人ほど負けやすい、みたいな。期待するほど裏切られちゃうのよね……。
あら?じゃあ私、ここが異世界であって欲しいのね。
うーん、まぁ、なんか組織的な犯罪に巻き込まれるよりは、異世界転移の方が夢がありますしねぇ。……魔法とかあるかもしれないし!ワクワク。
そして、美少女は、少し驚いた顔で私を見ている。ふふ、驚きましたか?
私は年上ですよって、態度で示せたかしら。素で喋るより、敬語の方が大人っぽいでしょう。ちゃんと質問にも答えてるしね!
じっと見つめ合う両者。
……う、可愛い。私好みの女の子なのよねぇ。
髪は、左の下の方でまとめてくくって、前にたらしてる。色は黒、ちょっとフワッとしてる。髪先は胸ポケットよりも下の位置にあるから、結構長いわね。髪をおろしたら、腰くらいまではあるのかしら?
ただのゴムでくくってるんじゃなくて、水色シュシュでまとめてるのが、女の子って感じでいいですね、好きです。
肌は白いし。肌荒れも、ほぼない。一重まぶたなのが、ちょっと残念。でも、まつげは長いね。いいな。
………ふふ、私とは対照的よね。私は、肩よりちょっと長いかな、くらいの茶色の髪ですよ。別に染めてない。傷んでるだけ。ちなみに、寒いからくくってない。
さらに、前髪で隠してるけど、おでこにはニキビがあったりするんですよ……。
そして、肌はちょーっとだけ焼けてる。今年、夏に海に行ったからねー、家族で。日焼け止め、ぬったのに、ちょっと焼けちゃった。それの名残。
服も、暖かさ重視してるしね。私が女の子っぽいのって、ネックレスしてるくらいじゃないかしら。まぁ、服の下にあるから、見えないけどね!
すると、美少女が静かに口を開いた。
「……ここって、異世界だと思う?」
え、それ言っちゃうの?まぁ、私、上から落ちてきたしね……。うん?この子も落ちてきたのかな。うし、聞いてみよう。
「さぁ……、どうでしょうか。ところで、ええーっと。」
あれ、名前知らない。
「………名前、教えてもらってもいいですか?」
質問変更。あと、立ってるの疲れたから、さらっと美少女の横に座ってみる。
「あ、そうだね、私は睦月神楽だよ、よろしく……。」
と、控えめな自己紹介。
神楽ちゃんかー。いいなぁ、そういう名前、憧れるわー。私なんて、私なんて。
「私は……井上麗華です。よろしくお願いします。」
そう、麗華。麗しい華。ないわ、ない。完璧に名前負けしてるもの。だから、私のことはレイカ、とカタカナで呼んで頂戴。
ついでに、名字もどこにでもありそう、平凡。井上だなんて。7画しかないじゃない。なのに、名前は19+10で29画もあるのよ、考えられないわ。
名前を書くときに、どれだけ私が苦労してきたことか。小学校の習字なんて、悲惨だったわよ!