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シロと呼ばれた暗殺者のお話

作者: 古宇田節木

キーワードに二次創作が入っており、何だろうと思われるかもしれませんが、とある歌をイメージして書いた、という理由から、キーワードに二次創作を入れました。ストーリー、文章共にオリジナルで、いわゆる「曲の解釈」ではありません。幾つか原曲の歌詞と単語が被ってはおりますが、その程度のレベルだと考えております。

原曲を知らない方でも、十分お楽しみ頂けるかと思います。


お気軽にコメント、評価等頂ければ嬉しいです。

 物心ついた時には、二人は「シロ」と呼ばれていた。いや、正確には「シロ」ではない。ただ、その国の言葉で「白」あるいは「白い」を表す言葉で呼ばれていたのだから、私が…物語の記し手にして日本語の使い手である私が彼らを「シロ」と呼ぶのも、決して間違いではないだろう。

 さて、その「シロ」たちなのだが、全くの赤の他人であった。にもかかわらず、二人はまるで似ていた。いや、似てはいなかった。髪の色、瞳の色、共に二人は異なっていた。だが、似ていたのだ。その眼が、何かを映していることだけは確かなのだが、肝心の何を映しているのか、という点においては、全く分からなかった。それでも、確かに二人の眼は、同じものを映していた。それだけではなかった。二人の顔も、全く似ていないように見えて、全く同じ表情(かお)に見えた。

 これだけ似ていても、二人は兄弟でも姉妹でもなかった。ましてや双子など論外だった。それじゃあ二人は何なのか、友人か、恋人か、そう問われれば、二人はいつだって、「親子だ」と答えた。だが、普通の大人からしてみれば、どう考えてもそうは見えなかった。そうでないことは、明らかだった。二人の都市もまた、同じ…と言うべきか、いや、似たようなものだった。

 そして、もう一つ。二人は共に親に捨てられた子だ、という点でも同じだった。


“Do you have keine mother?” ”Ja ” ”So, I’ll be yours” “Denn I’ll be yours auch”


 二人は幸運なことに、路頭に迷うことはなかった。二人は不運なことに、ある施設に拾われることとなった。

 表向きにはどこぞの富豪が慈善でやっている、児童保護施設だった。本当は、一流の犯罪者を育て上げるための、育成機関だった。いつもにこにこ顔で子供達の世話をする彼らは、実は富豪のライバルを殺し、敵の企業にスパイし、ある時はトップである「どこぞの富豪」とは全く関係のない依頼を受ける、犯罪のプロだった。そしてまた、二人も子供ではあったが、優秀な暗殺者であり、立派な犯罪者であった。


 昼間は専ら「運動の時間」という名の訓練の時間だった。素手で戦う方法、様々な武器の扱い方、演技指導、毒薬づくりのためだけの化学の勉強。工学は爆弾を作るために役に立った。

 時々二人は逃げ出した。皆はそれが束の間の急速だと知っており、さほど気にする者はいなかった。それでも、二人にとってはとても大切な逃避だった。それが、二人が子供に戻れる唯一の時間だった。

 二人の避難場所は大抵、普通の、教会付属の孤児院だった。いや、正確に言えば、その教会の裏だった。教会の裏は、コンクリートの塀を挟んですぐ海になっていており、そのため教会関係者が教会の裏にやってくることは滅多になかった。教会と海の狭間、コンクリートの塀の上。小さな避難場所だった。

 『ジョルノがマリアの頭をぶったの』わー、いけないんだ。『なぁ、エリオ、サッカーしない?』あ、一緒にしてもいい?

 楽しそうな孤児院の子どもたちの声、二人はいつもそれに答えるのだが、それが届く筈がなかった。孤児院のみんなと遊んでるごっこ。これだったら、シロとシロ、二人だけでもできた。

 空がまだ明るいうちに、シスターさんたちは子供たちを建物の中に入れた。そうして、みなと遊んでるごっこが終わってもまだ、二人はずっと塀の上にいた。塀の上にいて、時にはなんとなく話をしてみたり、時にはなんとなく黙ってみたり、そうしながら、海を眺めていた。海が赤色になって、それから黒くなっていくのを、二人はずっとずっと楽しそうに見ていた。


「シロ、ああ…より綺麗な方のシロ。お前、ちょっと来い。」

 ある日、「より綺麗な方のシロ」は、一人で呼び出された初めてだった。それまでどんな仕事をするのにも、二人は一緒だったのに。

「ある富豪が、お前を引き取りたいと言ってきたんだ。」

“Alone? Only me?”

「ああ、本当は二人とも引き取りたかったらしいんだが、こちらとしては二人も渡すわけにはいかないんでね。」

「より綺麗な方のシロ」は、もう一人より、確かに綺麗だった。引き取りたいと思う人が出てくるのも、不思議なことではなかった。


 教会裏でよくする話の一つに、「本当に逃げだす話」があった。二人とも、優秀な暗殺者ではあったが、本当は子どもだった。人を殺すなんて嫌。普通のお家に暮らしたい。パパとママに会いたい。血の繋がりはなくってもいい、家族のあったかさを知りたい。

 でも、偉い人が、大人が恐くて、命令違反なんてできなかった。

 だから、逃げ出そう、シロたち、二人で。

 遠い夢の話だと思っていた。


 シロは聞いていた。偉い人が、「先生」に命令していた。きっとアイツらはすぐにシロが普通の子じゃないことに気付くだろう。そうなれば我々はお仕舞だ。いいか、シロを殺せ。それも、夫婦の目の前でだ。

そこでシロは音を立てた。プロらしからぬミスだった。おや、シロ、話を聞いていたのか。…まずいな、もしかして引き取られるのが嫌になったか?それなら仕方ない。もう一人を引き渡すことにしよう。


 二人は、二人で一人だった。シロは、シロだった。


 シロは、それまで着たことのないような、高価な衣服を身に纏っていた。子供のいない夫婦が養子を迎えたことを祝うため、豪邸の前には、社交界の仲間たちが、たくさんの使用人たちが、まるで蟻のように集まっていた。黒塗りの高級車の戸が開き、夫婦と、それに挟まれたシロが出てくる。そして、狙撃主の十字の先は、しっかりと定まっていた。

 銃声が鳴り響き、シロが倒れた。夫婦は、突然目の前に現れたシロに驚き、それからその手に拳銃が握られているのに気付き、怯えた。

 倒れている方のシロは、腹をつらそうに抑えながら、着飾っている方のシロに向かって言った。お前ばかり幸せになって。そう言って、シロは倒れ込み、シロは強引に背を押され、邸宅の中へと入っていった。


 シロにシロの気持ちが、心が、言いたかったことが分かるのは当然だった。

 二人は、一人だったのだから。


主人公二人がどのような人物だったか、主人公二人の関係はどういうものだったのか、物語の結末はハッピーエンドなのか、

全て、読んで下さった方のご想像にお任せいたします。

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