変身
「いったい何が起こっているんだ」
五条が封印を解くって言って、そしたらリルちゃんが光をまとっていた。
「変身」
リルちゃんはそう言った。
リルちゃんが変身するっていうんだからきっと可愛らしい魔法少女かな。
いや、ナイスバディのサキュバスかも。
そんなことを期待していると。
「!?」
光の先から出てきたのは茶色い手足、左手なんてドロドロだ。
しかも、右目は飛び出している。
それはまさしく・・・・・・
「ゾンビ!?」
俺は驚いた。
戦っていた会社員は、
「まさか、鈍足のゾンビ!?」
そんなことを言って逃げて行った。
鈍足のゾンビなんか弱そうなネーミングだな。
ゾンビの上に遅いなんて。
「そこにいるのは誰だ」
そんなことを考えていると五条に見つかった。
「俺だよ」
「田中君か、まいったな。どこから見てた」
「変身する前から」
「そうか、じゃあ全部話すか」
五条は名刺を出した。
「群馬モンスター派遣所 所長?」
わけのわからない経歴だった。
「群馬にはモンスターがいてそれを全国のお化け屋敷やゆるキャラの中身に派遣しているんだ」
「そんな胡散臭いこと信用できるか」
「私の変身見たでしょ」
変身から解けたリルちゃんが来た。
シャンプーのいい香りがする。
「ぐっ、確かにモンスターがいることは認めよう。それとさっき戦ってたのは何の関係があるんだ」
「実は最近悪さをするモンスターが増えちゃってそれを捕まえて再教育するのが目的なんだ」
「ふーん」
なんとなくわかった。
「でも、皆元は人間だろ?」
「私はゾンビが本体よ」
「なっ・・・・・・」
なんだってー。
あんなに可愛くてシャンプーのいい香りもするのにゾンビが本体!?
俺の初恋の相手はゾンビだったのか。
こんなの米のないチャーハンだよ。
「もう何でもいいや。群馬モンスター派遣所だのゾンビだの全部信じよう・・・・・・」
「じゃあ、田中君に手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
「なんだよ五条」
「リルちゃんのパートナーになってもらいたい。僕も他の子の世話に負われていてね」
「やだよ、こんなゾンビ女」
「私の事が嫌いなんですね」
いや、人間の姿でそんなこと言われると・・・・・・。
「ちょっとだけだぞ」
「本当ですか」
満面の笑みでこっちを見てくる。
本当可愛いな。
ヤバい、落ち着け俺相手はゾンビだぞ。
「じゃあ、封印を解く携帯渡しとくね、少ないけど時給も出るから」
「マジでいくら」
「時給721円」
「群馬の最低賃金じゃん、まっもらえないよりいいか」
「じゃあ、リルちゃんのこと全部よろしく」
「全部って宿もか」
「そう全部」
そう言って五条は去って行った。
後に残されたのは、満面の笑顔の彼女と寂れてしまったビルの様な俺だけだった。