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運命ゲーム  作者:
6/18

006話

気が付くと再び体育館に戻っていた。

辺りを見回しても俺一人であることから他の参加者は未だゲームの最中であることが窺える。


「やぁ、早かったね。君が一番乗りさ」


案内人が拍手をしながら壇上から降りてきた。

正解者には優しくするルールでもあるのか?

案内人は苦笑するかのように口元を歪めた。


「そんなルールはないよ。これは私の個人的な価値観での感想さ」


正直どうでもいい。


「つれないねぇ…しかし君は凄いね。あの問題を正解出来た人は過去を遡っても存在しないよ」


当然だろう、あんなインチキ紛いの答えに気付ける奴はいない。

思考に冷静さを欠くこの状況なら尚更だ。


「君はどうやら優秀なようだね」


褒めてくれているようだが嬉しくない。

苦々しい俺の表情に気が付いたのか、案内人も苦笑を浮かべる。


「すまない、こんなとこに連れてきた奴に言われても嬉しくはないよね」


愚問だ。

しかし意外だな、人間のように表情が多岐に渡る案内人を見ているとその正体が分からなくなる。


「案内人は人間なのか?」


「人間と言えば人間だし人間ではないと言えば人間ではなくなる。そんな曖昧な存在さ」


他の参加者が帰ってこないので案内人との会話を続ける。

案内人も優秀だと認めた俺には比較的口が軽くなっているようだ。


「なぁ、素朴な疑問なんだが俺のクイズは卑怯過ぎるんじゃないのか? 正直俺以外の奴が正解を導けるとは到底思えん。それにあの関係性もそうだが隠された選択肢なんてアリかよ」


「アリじゃないよ。まぁだからこそ使えるんだけど」


「…なるほどね、そこで脱落するから結局アリになるのか」


「御名答、実際過去にこの問題を出された人間は全員不正解を出している。事実、どの選択肢にも先の展開がある程度は期待出来たはずだ。だからこそ第四の選択肢には誰も気が付けないし少女と狼の立場に気付くなんて不可能だ」


よく出来ているな。

髪の暇潰しにそんなクオリティを求めること自体が間違いの気がするが。


何より不可能を可能にした自身の力に自分のことながらも信じられん。


「ちなみに問題は全てそのゲームの案内人が考えているからね」


今回はどうにも卑怯な案内人に当たったらしい。


「一つ、気になっていることがあるんだが…」


「何かな? 優秀な君の質問には誠意を持って答えさせて貰うよ」


大仰に両手を広げる案内人。

その姿にこれからする質問が肯定されるであろうことをどこか確信した。


「あの世界は現実世界での出来事ではないよな?」


「そうだね、所謂異世界ってやつだね」


こいつ、あっさりと認めやがった。


「別世界の出来事で問題を作るなんて卑怯を通り越して卑劣だろ」


「おおっと、私は問題提示の際にこの世界と限定したかな?」


確かにしていない。

してはいないが…それを言ったら何でも有りになってしまう。


「君の言う通り、こちらにも多少の非はある。何よりも正解を出されてしまったことでそれがはっきりと露見してしまった。この償いはきちんとさせてもらうから安心してよ」


「ほう…意外と融通がきくんだな」


「人間の思考回路や価値観はそれなりにプログラミングされてある。多少は機転が効くさ」


「その言葉を聞く限り、やはり案内人ってのは作られた存在みたいだな」


「神によって作られたのが案内人さ。まさか神直々にこのゲームを運用する訳がない」


トップが動かないのはどこでも同じか。


「しかし驚いたよ。君はもう少し寡黙かと思っていたら存外喋るんだね。他の参加者とはそんなに会話してなかっただろ?」


「必要だと思えば俺だって話す」


「私との会話を必要と思ってくれてるなんて光栄だね」


イヤミか。


「他の参加者へのクイズは俺と同等なのか?」


「まさか。君へのクイズの難易度が100だとしたら他は20程度の問題ばかりさ」


待遇を良くしてくれるのは有難いんだが良くするベクトルの向きが違う。


「さっき償いって言ったよな? 具体的に何をどうしてくれるんだ?」


「そうだね………どうして欲しい?」


腕を組み、どこか思案げな顔を浮かべていたが結局俺に聞いてきた。

直接聞いて償うのは償いとは言えんだろ。


「一理あるね。じゃあ今回及び今後の運命ゲーム終了後もゲーム中の記憶を現実世界にまで保持することが出来る、なんてどうかな?」


それでも聞くのかよ…。


「運命ゲームが終わると運命ゲームに関する記憶を失うのか?」


「うん、そして運命ゲームが再開すると同時に今までの運命ゲームに関する記憶が蘇る」


「…情報漏洩を防ぐため、か?」


「それもあるけど一番は参加者が自殺することを防ぐためと脳を守るためだね。前者は言わずもがな、後者は人間の脳じゃ対処しきれなくて廃人になる人もいるからその保護かな」


それってつまり俺の廃人化が確定されるんじゃ。


「あぁ、その点は大丈夫だよ。見たところ君は大丈夫そうだから」


「俺へのメリットが少なくないか? 所詮は一個人の俺にどうこう出来る程の権力はないが」


「まぁ簡単に言えば心構えみたいなもんでしかないよ」


それで償いをした気になるとは案内人さんぱねぇっす。




その後他の参加者が戻ってきたので案内人との会話は打ち止め。

俺への償いの件は一先ず保留にした。


戻ってきた面々を眺めていると制服を着ていた女の子がいないことに気付いた。


「案内人、制服を着ていた女の子がいただろ? 彼女は?」


「不正解者だね」


「じゃあ死んだのか?」


「もしくは神の性欲処理機にでもなってるんじゃない?」


神にも性欲が存在するのか。

それを聞いたところ暇潰しに人間の真似事をしているらしい。

本当に暇なんだな、神ってやつは。


みんな憔悴しきった顔をしている。

命が懸かっているのだ、限界まで脳を酷使したのだろう。

全員が集まったのは俺が終わってから一時間程経過していた。


「それじゃあ今日のゲームはこれで終了。また夜の12時にまた会おうね」


何もかもを無視した案内人のその言葉を最後に今日何度目か分からないブラックアウトを再び体験し俺の意識は落ちた。







-初日終了時点-

主人公

ヤンキー風の男

中年のサラリーマン

キャバ嬢

OL

熟女

女子高生 ← 死亡


残り六名


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