現代に降り立つ勇者
空を大量の竜が舞っていた。
火炎弾を地上の彼方此方に爆撃し、凄惨な被害をもたらしている。
ああ、懐かしい魔物だ。
昔の俺は、コイツを一体仕留めるのに何時間も死闘を繰り広げたなぁー。
俺は昔勇者だった。
国王に言われ魔王を倒す旅に出て、その途中に四大魔将を打倒し、そして魔王に殺された。
そんな俺はこの世界に転生して間も無く、女神の神託を受けたのだ。
曰く、貴方の生まれ落ちたその世界にも、何れ魔王の魔の手が伸びるのだ。と。
それから15年間、勉強もせず、鍛錬に鍛錬を重ね、魔法も以前より上手く扱えるようになった。
この世界に魔法は無いが、科学という技術が妙に発達していて、平和な時を過ごせる素晴らしい世界だ。
俺が勉強もせず、鍛錬に打ち込んでいたせいで、調べてないだけなのかもしれないが、軍隊の話も全く聞かない。
俺が戦わずして誰がやる。
「魔物共にこの平和な世界を好きにはさせない!」
そう叫び、決意を固め、虚空から聖剣を取り出す。
高層ビルの屋上で、聖剣を天高く突き上げた俺は、ついに竜に対し、対空魔法を撃ち放とうとした。
その時。
光る煙の尾を引いた飛翔体が竜に直撃し、竜諸共爆散。
後に轟音と衝撃波を拡散させた。
「は?」
あの竜が目の前で、それも一撃で木っ端微塵になった光景は、途轍もないカルチャーショックだった。
しかし、それだけでは終わらない。
寧ろこれから更に俺の常識は崩れていくことになる。
竜に匹敵する大きさの物体が二つ、物凄いスピードで過ぎ去っていく。
音が後から聞こえ、先ほどの飛翔体と同様に、衝撃波を伴っていることから、音速を超えているであろう事が理解出来た。
それらはよく見ると鳥のような形をしていて、金属の身体を持ち、羽ばたくことなく空を飛翔している。
もう何が何だか分からない。
衝撃波に煽られ、窓ガラスにミシミシと亀裂が走り、俺は屋上の内側に転がり落ちる。
もっとよく観察せねば、新種の魔物なら厄介だぞと気を引き締め、屋上の縁に戻り様子を伺う。
すると、金属の鳥が後ろから竜に向かって、無数の光弾を放つのが見えた。
光弾は高速で竜に直撃し、大きな血飛沫と共に竜の片翼をもぎ取る。
続いて、もう一体の金属の鳥も見てみると、先程の光る煙の尾を引いた飛翔体を飛ばしている所だった。
竜はそれをみて咄嗟に回避行動を取るがもう遅い、飛翔体が竜に引き寄せられるように曲がり、直撃する前に爆発する。
竜はその爆風と破片に貫かれ、敢え無く命を落として地に墜ちていく。
戦うと意気込んでいた筈の俺は、飛翔体と光弾により、瞬く間に死んでいく竜を見守ることしか出来なかった…………。
もしかしなくても、俺って要らない子?
そんな疑問が浮かんでくるのも仕方がないと思う。
最初にこの世界に竜が現れてから三ヶ月。
強大な力を持っていた筈の魔王は、戦車の主砲と自走砲、迫撃砲、無反動砲、対戦車ミサイル等の集中砲火によりあっけなく死んでしまった。
魔王が死んだ日。
夢で女神が現れて言った。
「正直その世界の技術レベルは予想外でした。てへっ!」
てへっ、じゃねーよてへっじゃ。
こんなことになるって分かってたなら、勉強して普通のサラリーマンにでもなってたよ!
でも今の学力じゃ入れても底辺高だし、中卒じゃ就職厳しいじゃねーか!
俺の15年間返せ!
科学技術怖い。
魔法より怖い。
魔王よりも怖い。
核兵器って何?……電磁パルス?一体何なんだよそれー!?!?!?!?
その後、彼はミリオタのニートになった後、18歳で自衛隊一般入隊試験に合格。
無事公務員の安定した給料を手にし、養ってくれた両親へ感謝の気持ちを込めた仕送りを行い、20代で幸せな家庭を築き上げましたとさ、めでたしめでたし。
オリジナル小説初投稿
小説と言えるようなものではないかもしれんくらい凄く適当
街の上空で何音速超えてんだとか色々突っ込みどころあるけどまぁフィクションだし……
特に後半とか投げやり過ぎんだろと自分でも思いますね