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呪い


父親はホワイトタイガーの尻尾とカラスに似た紫色の背中の両翼をはやしたラグリスを見つめていた。


「やはりお前は、母親のヤムと同じ種族だったのか」


「そんなこと、今は関係ないだろう!!」


ラグリスは怒りを隠さないまま紫色の翼に魔力を込め、オロバスに向かって大きく羽ばたかせると巨大な竜巻を2つ発生させた。


「オロバス!! お前の好きに動け!! 僕が合わせる!!」


オロバスは鼓舞するように大声で鳴きながら巨大な2つの竜巻を避けようと大きく左に曲がる。

父親は魔法で出したいかずち大剣たいけんミカエルとオロバスの全身にまとわせ、オロバスは音速を越えて光速でラグリスに突っ込む。


「させないよ!!」


風の流れにより動きを見切ったラグリスの回し蹴りはオロバスの右頬に直撃したかに見えたがオロバスは簡単に避け、跨がっていた父親はオロバスの背を踏み台にし高く飛び上がった。


「ハァァァァ!!」


いかずちを纏わせた大剣をその場で真っ直ぐ振るい雷の衝撃波を2つラグリスに向かって飛ばし、魔法を使い2つの衝撃波を透明にしてそのうちの一つをラグリスの背後へと魔法で移動させた。


バチバチと耳をつんざくほどの音を鳴らしながら、ラグリスを挟むようにして2つの衝撃波が襲いかかってくる。


「クッ……!!」


ラグリスは魔力を込めた左手で地面を殴ると大きな土の壁を前と後ろに出現させ防ごうとするが、オロバスがラグリスの目の前にある土の壁に体当たりをし壁を破壊する。


ラグリスの目の前にはいかずちの衝撃波が迫ってくる。

両翼に力を込め、空へ逃げようとしたラグリスの背後からはオロバスが前足を高く上げながら大きな体でのしかかってきた。


「グア゛ァ゛!!」


オロバスの全身には雷が纏ってあり、バチバチと青色の光に音をたてながらラグリスの全身を感電させ、黒い巨体の重さ全てがラグリスの背中に集中しており、ミシミシと背骨の鳴る音がラグリスの耳に入ってくる。


ラグリスは意識を朦朧もうろうとさせながらも諦めてはおらず。背にある紫色の羽根のサイズを大きくさせると長さを伸ばし銀色に硬化させ、いかずちの衝撃波を防いだ。


父親は羽根を羽ばたかせその場で宙に浮きながら呟く。


「あとほんの少しで呪いが解けそうなんだが。この様子だとネーヴェが気を失うほうが先のようだね……」


「まだ……だ!!」


ラグリスはオロバスに乗られたまま言葉を発すると、銀色に硬化させた無数の羽根を父親に向かって飛ばそうとするも、体力に限界がきているようで父親に当たらずに逸れると羽根は近くの木に突き刺さった。


「ちゃんと狙ったのに……!!」


「急に呪いが解けはじめたんだ。思うように動くことは難しいだろう」


父親はそう言えばラグリスの体が男から女に戻っていく様子を見つめる。


──次はネーヴェの妹、ユリィの呪いを解かなければ


「…嫌だ!!…女に戻りたくない!!」


ラグリスは女に戻ると能力が弱まるのを嫌い、女に戻っていく体をどうにかしようとするも倒れたまま何も出来ないでいた。


その様子を父親は呆れた顔で眺めると論するように声を発した。


「ルシアの一族は血を武器に変えるという特異体質と一人ずつ専用の武器を持っている。女と男で能力が違うといわれているが、実際は違う」


「じゃあどうして、僕は父さんのように専用の武器を持ってないんだ!!」


「お前がまだルシアの力に目覚めていないからだ。ヤムと同じ尻尾が生えて羽根があるくらいで強くな──っ!!」


話の途中で突然、父親の様子がおかしくなる。


──もういい、わたしがソイツを殺します!!


上空から見ていたルシファーが父親の脳に声を送り、さらに魔法を使い自分の意識の半分を父親の体に憑依させた。


「グアッ!!……に……げ……!!」


「父さ──!!」


父親は両膝を地面に着かせると、痺れを切らしたルシファーに意識を乗っ取られてしまった。


オロバスは主人の気配が変わったと感じればラグリスの背中からおりて、額から角を生やすと音速で向かって行く。


「邪魔です!!」


憑依したルシファーは自分よりずっと大きなオロバスの体に人差し指を軽く触れさせると、オロバスの肉体はガラスの破片のように粉々に砕け散り地面に落ちた。


「砕けちる寸前に魂と肉体を分離させましたか……ということは、まだ魂がどこかにあるということですね」


そう言いながらもオロバスの魂を探す素振りは見せずに、目の前で倒れたたまの元の姿に戻ったラグリスを見下ろす。


「父さん……。いや、違う!! お前は誰だ!!」


「さて、アナタには消えてもらうとしましょうか」


ルシファーは指をパチンと鳴らすと、ラグリスの周りを囲むように白いフードを被った青い羽根が生えた3人の天使が召喚されると全員、手のひらをかざし魔法を放とうとしていた。


1人は茶髪、もう1人は紫色の髪、そしてオレンジ色の髪をした若い男の天使達だ。


「帰りますか。この男に死なれては困りますからね」


「待て!!」


「もう二度と会うことがありませんように……ククク」


そう言えば魔方陣を描き、上空にいるルシファーと一緒にどこかへ姿を消したのだった。

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