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禍々しいオーラ


ラグリスは2つの剣を構えると、父親の動きに注意していた。


──今ならやれる!!


ラグリスがそう確信した瞬間、父親は素早く大剣たいけんミカエルを地面に深く突き刺すと、ラグリスの足元から特大の斬撃が15本も飛び出してくる。


2つの剣を振るい斬撃を次々と斬っていくも、斬られた斬撃は数を増やしてラグリスに襲いかかってくる。

なんとか回避しようと素早く移動するも、全ての斬撃はラグリスを追尾する。


「……うあぁッ!!」


数多くの斬撃のうち2本がラグリスの太股に直撃する。両方の太股には深く抉れた傷がつき、大量の血が地面を赤く染めていく。

ラグリスはその場に倒れている。


残り全ての斬撃はオロバスの刃とともに止まっていた。


──まだ呪いは解けないのか……すまない、ネーヴェ


父親は悔しがる表情をすると、ルシファーの視線を空から感じていた。


オロバスの巨大な刃はラグリスの背後にあり、いつでも攻撃できるようになっている。


──本当に……娘を殺さなければならないのか……!!


父親は気持ちを押し殺せず、大剣たいけんミカエルをガタガタと震わせていた。


「ネーヴェ。これで終わりにしよう」


オロバスの刃と残り全ての斬撃を一斉にラグリスに向かって放った瞬間──


「壊せ!!」


突然、赤色の斬撃が横から飛んでくると、オロバスの刃と全ての斬撃を破壊した。


赤色の斬撃を飛ばした人物がラグリスを守るように立つと、父親の顔を真っ直ぐ見つめた。



「貴様、誰だ!!」


「この子の仲間よ!! こんなにボロボロにさせて……何が目的なの!?」


羅奈達はダウの魔方陣でこの場所に来た。羅奈達は別々にラグリスを探していて、羅奈が襲われているラグリスを見つけ、助けに来た。


「ソイツを殺せと命令されたまでだ!!」


父親は倒れているラグリスを指差す。


「アナタ、何者なの!!」


「いいからそこをどけ!!」


「私の大切な仲間を殺させはしない!!」


羅奈は絶斬ゼツキを構え父親と戦おうとすると。突然、絶斬ゼツキの刃全てが禍々しい紫色のオーラを纏った。


──このオーラは!?


絶斬ゼツキの中にいるフィリアの魂は驚くと、エルザから聞かされたある言葉を思い出していた。


「もし、ブラウの意志とは無関係に刃が紫色のオーラに包まれたら注意しろ。絶斬ゼツキは勝手に動き、所有者の身体がどれだけ傷つこうとひるむことなく突っ込むことになる」


──羅奈ちゃん、大丈夫!?


(大丈夫だけど、何が起こっ──!!)


羅奈は勝手に身体が動き、攻撃を開始した。


絶斬ゼツキを大きく斜めに振るうと紫色の斬撃を飛ばす。

父親は大剣たいけんミカエルで真っ二つに斬ると同時に、ミカエルの刀身が折れてしまった。


(なんで絶斬ゼツキが勝手に動くの!?)


──暴走してるんだよ!! 待ってて、今わたしが何とかするから!!


フィリアは絶斬ゼツキを必死に抑えこもうとするも、何者かの声が聞こえた。


──邪魔されたら困るんですよね。


それは空高くから戦いを見ていたルシファーの声だった。


──!?


フィリアは声に驚いた瞬間、絶斬ゼツキの中から姿を消した。

ルシファーが転移魔法を使い、フィリアの魂を魔王カルマの城へと送る。


(フィリアちゃん!! どうしたの、返事をして!!)


羅奈は呼び掛けるもフィリアの反応はなく、絶斬ゼツキの刃はさらに禍々しいオーラに包まれていく。


「っ……オロバス!! 元に戻れ!!」


オロバスは巨大な刃から黒い馬の姿に戻ると父親が素早く跨がる。

左手で手綱を握ると、空いている右手をラグリスの側にある血にかざし、音もなく500発の銃弾を形成する。


──羅奈が危ない!!


ラグリスも父親と同じように血を使い、銃弾を形成するが50発が限界だった。体力の消耗が激しく、すぐに銃弾は消えてしまった。


羅奈の背後には銃弾、数メートル先にはオロバスに跨がるラグリスの父親が目に映る。


その銃弾は一発でもくらえば致命傷を受ける。


羅奈は背後に銃弾があることに気付かずに、右手から離れない絶斬ゼツキが勝手に構えられた。


再び、羅奈の身体が勝手に動こうとした時、背中全てに銃弾が当たり弾は回転しながら肉を抉って腹や胸を貫通した。


その威力はエルザが魔力を込め形成した弾丸よりも遥かに上だった。


羅奈の体に無数の穴が開くも、血は流れていない。


「………ぐぅぅ!!」


──なぜ血が出ない、どういうことだ!?


羅奈はよろけると、その場で絶斬ゼツキを父親に向かって勢いよく振り、離れているオロバスの目の前に火柱が高く上がる。


羅奈は絶斬ゼツキを離そうとするも右手が石のように固く、動かないでいた。


「ヒヒィィン!!!!」


オロバスは羅奈を仕留めるため、火柱をよけて全速力で走る。


「ゆくぞ、オロバス!!」


父親は折れた大剣たいけんミカエルの刃にいかずちまとわせる。

バチバチと紫色の雷が音を鳴らすと、そのいかずちは折れた刀身の代わりになった。


「散れ!!」


「!?」


羅奈の頭上に紫色の雷を落とし、それを直撃させた。


羅奈の全身は感電し黒焦げになってその場に倒れると、遠くからラグリスが叫ぶ。


「羅奈!! 羅奈、しっかりするんだ!!」


羅奈はピクリとも動かず、倒れたままだ。


ラグリスは両太股から血を流しながら、地面を這うように移動する。


「ネーヴェ。もう死んでいる。呪いを解くことができれば、こんなことには……」


父親は羅奈を殺したことを悔やみながら、ラグリスにそう告げる。


「よくも……!! よくも!!」


ラグリスは右手を離れている父親に向かってかざすと、戦いで付いた切り傷を開かせ大量に出血させる。


「ぐっ……甘い!!」


だが、父親はその血を使い、折れた大剣たいけんミカエルの刃を形成した。

肩で息をしながら、父親はラグリスを見る。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


ラグリスは怒りから声をあげると、服を突き破り、背中から2枚の紫色の羽根を生えさせる。


「まさか!?」


父親はラグリスにかけられた呪いが解かれる寸前だと感じていた。


「許さないぞ……父さん!!」


ラグリスの身体にさらに変化が起こり、尾てい骨からはホワイトタイガーの長いシマ模様の尻尾を生やす。


「待ってろネーヴェ、お前の呪いを解いてやる!!」


父親は真剣な表情でオロバスに跨がりながら大剣たいけんミカエルを右手で構えた。

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