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燃えた孤児院


ソラト達がテンジンに休暇を取ると言った時間から15分後のことだった。


その時、アガリアは自室にいた。フードは被っておらず水色のショートヘアーに黄色の瞳が印象的な13歳の少年でレッヒェルンの最年少でもある。


アガリアは黒いリモコンで操縦すると、皿に乗ったプリンの形をしたラジコンが異音を鳴らしながら部屋を走る。


「あーあー。壊れそうだし、新しいラジコン欲しいなぁ。またヤーグさんのお金を勝手に盗んで買っちゃおうかなー?」


その場をクルクルと走らせて遊んでいると、ドアを何度もノックする音がアガリアの耳に入る。


「はいはい。うるさいなぁ」


アガリアがドアノブを回すと、青ざめた顔のハウイエルがアガリアの両肩をすごい力で掴む。


「アガリア。レッヒェルンに入る前に、孤児院で暮らしてましたの!?」


「え? あ、うん。そうですけど……。それよりハウイエルさん。すごく顔が青ざめてますね。 便秘かな?」


アガリアのふざけた返答にハウイエルは怒りからムッした表情になる。


「違いますの!! アガリアが昔に住んでいた孤児院が燃えているみたいで……!!」


「えっ!! 孤児院が!?」


「すでにソラトさんとヤーグお兄様が向かっていますの。だからアガリアも合流してください!! 孤児院はここから近いです」


「分かりました。ハウイエルさん、ありがとう!!」


アガリアはドアを閉め自室に戻り、窓を開けて外へと飛び降りると、青色の両翼を背中からだしてすごい速さで飛んでいく。


「まさか孤児院が燃えるだなんて!! そんなの嘘だよ!!」


しばらく飛んでいるうちにアガリアは孤児院に辿り着いた。


「そ、そんな……孤児院が!!」


アガリアは膝を落とす。黒煙をあげて今も激しく燃え続けている孤児院の様子を目に焼き付けていた。


「アガリア!!」


「ソラトさん……」


ソラトはとアガリアの近くで水の入ったバケツを炎に向かってかけていた。

ヤーグも必死にバケツの水を投げている。


そしてヤーグとソラトの周りには6人の天使がバケツの水を炎へとかけていた。


「なにボーッとしてんのさ!! この場で水の魔法使えるのはアンタだけなんだから早くやりな!!」


「は、はい!!」


アガリアは両手を空に向かってあげると、孤児院の地面と屋根にあたる場所を挟むように魔方陣が描かれていく


2つの魔方陣が揺れた瞬間、滝と同じ水量が現れ一瞬で炎を消していく。


「ヤーグ!! 完全に消化出来たら、孤児院の中に入るよ!!」


「ソラト……でも、きっとみんな死んでるッスよ」


「バカだね!! そんなこと分かってるよ!! みんなを埋葬するために、中に入って探しにいくんだよ!!」


「わかったッス。だから、そんなに怒るなって」


そう言ってヤーグがソラトの顔を見ると強めの風が吹いた。

何か黒いものがソラトの頬に当たる。


「なんだい? これ?」


指で摘まむと大きな黒い羽根の形をしていた。


「これ、羽根だね」


「ソラトさん。こっちにも沢山落ちてるよ!!」


アガリアが指をさすと数十枚の黒い羽根が落ちていた。


「まさか……孤児院を燃やしたのは悪魔!?」


ソラトの声に周りにざわめきが起こる。


「クソ!! 悪魔め!! 自分達の所に絶斬ゼツキがあるからって調子に乗りやがって!!」


「こんな時、伝説の白羽根ヴァイスフェーダーであるルシファーがいてくれれば悪魔どもを葬ってくれるのに……」


「そうだルシファーがいてくれれば悪魔を蹴散らしてくれるに違いない!! テンジンとかいうふざけた存在なんかより、ルシファーのほうがよっぽど信頼できる!!」


周りにいた一人の天使、アイザックが呟いた言葉にヤーグは怒鳴り声をあげた。


「ルシファーがどれほど残虐かアンタ達知ってるんスか!?」


その言葉にアイザックは反論する。


「なんだよ……!! だいたい、レッヒェルンがしっかりしてないからこんなことになるんだろ!! テンジンの所に集まってるだけの無能集団が……!!」


ヤーグは本気でキレる。


「テメーらが絶斬ゼツキを取り戻そうとしないから、オレ達が代わりにやってるんだ!!」


絶斬ゼツキなんて本当は探してないんだろ!! どうせレッヒェルンはテンジンにまもられてるから死にもしないんだろうなぁ!!」


アイザックは命懸けで戦っているレッヒェルンに向けて好き勝手に言う。

我慢できなくなったヤーグがアイザックを殴ろうとしたその時だった。


「ヤーグっち!! やめときな!! レッヒェルンの存在は他の天使達から良く思われてないのは知ってるだろ!!」


「……わかった」


ソラトがヤーグにそう言うと。これ以上、心配をかけないために怒りを抑えたのだった。


ヤーグはアイザックにこう呟いた。


「アイザック。お前がルシファーを信じているのは良く分かったッス。だがな、ルシファーはお前が思ってるような清らかな心は持っていない存在ということを覚えておくッスよ」


「オレはルシファーを崇拝している。天界を良くしてくれる神様だと思っている。だから、神様の事を悪く言うな!!」


ルシファーは天界を作ったと言われており、清らかな心で今も天使達を見守っていると伝えられていた。性格は慈悲深く、人間や天使をとても愛している存在だと言われている。


だが、テンジンがレッヒェルンに伝えていたのは真逆のことだった。


ルシファーは天使達を奴隷にするため、自分の操り人形とするためだけに天界を作り、天使を住まわせたと言われている。

性格は残虐で、全ての種族を拷問することに躊躇いがないと伝えられていた。

天使にとっては悪魔やルシアの一族と並ぶ敵なのだと、テンジンは強く訴えていた。


その事をヤーグは信じていた。


「ヤーグさん。炎は完全に消えましたよ」


消化が終わったようでアガリアがヤーグに声をかける。


「アガリア、ソラト。みんなを助けるッスよ」


「「うん」」


アガリア、ソラト、ヤーグの3人は孤児院の建物へと入っていった。


周りにいた天使達は背中から赤い羽根を広げると、それぞれ帰っていった。

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