堕天使と天使
「ラグリスの死体を一体どこで……!!」
「直接殺したんですよ。その後にラグリスの子供達と遊びましたが……とても楽しかったです。もう一度遊びたいなぁ」
ルシファーは子供達を拷問したことを遊びと言い切った。
テンジンはその場に居なかったので、遊びの意味が理解出来ずにいた。
テンジンはラグリスという名を聞いて驚きはするものの、それ以上の反応はみられない。
その事をルシファーが疑問に思い問いかけた。
「ラグリスのこと。どこまで知ってます?」
「ルシアの者で天使の脅威になる存在だと言われているのは知っています。 ルシファーの口振りからすると、この男に子供がいたようですが……」
「一卵性か二卵性か不明ですが。双子であることは確かですよ。二人には呪いをかけたので天使の脅威になることはないでしょう」
その言葉を聞いてテンジンは引いていた。
「本当にやることがえげつないですね。ルシファーが天使だなんて未だに信じられませんよ」
「元。ですがね……ところでラグリスの死体は復活させるんですか?」
「復活はさせませんし、あなたの力を借りるつもりもありません」
それを聞いてルシファーは笑いだす。
「クハハハハ!! 今までレッヒェルンの一人として働いてあげたのに、力を借りるつもりがないとは!!」
「何を言っているんです!? ルシファーの……堕天使の気配は感じられませんでしたよ!?」
ルシファーは自分の姿を魔法でテンジンがよく知る天使に変える。
「そんな……カウト!!」
カルミオとの戦いで敗れ、重症で休んでいたはずのカウトの姿があった。
「その名前で呼ばれるのは久しぶりですね」
テンジンは見抜けなかったことがショックだったのか固まっていた。
ルシファーの姿に戻ると笑みを浮かべながら呟く。
「もしレッヒェルンに入れてくださらないのなら、勝手に絶斬を奪いに行きますし、邪魔な天使も殺します」
その言葉にテンジンは反論する。
「させません!! 絶斬は天界のものです!! 堕天使にレッヒェルンの皆を殺させるものですか!!」
テンジンは怒りにより狐の尾が九本に増えると素手でルシファーの片腕を引きちぎるが、すぐに片腕は再生した。
「そんな!!?」
「テンジンさまぁ。無理しちゃダメですよ?」
ルシファーは笑みを浮かべながらテンジンの腹を本気で殴ると吹き飛んでいき、テンジンの体は死体の保管場所へ叩きつけられた。
「その程度ですか?」
テンジンは無傷で立ち上がり、余裕の笑みで手の平から光の球体を飛ばすとルシファーの腹を簡単に貫通させる。
「一番弱い魔法でも絶大な威力を出せるとは、さすがレッヒェルンを束ねることだけはある」
ルシファーは腹が空いたままの状態で魔法で形成した赤色の剣を左手に持つと居合い斬りの構えをとろうとした。
「無駄ですよ」
テンジンはルシファーが剣を振るう前に左手を胸の所まであげ、一気に振り下ろす。
「っ!! これは……重力の魔法!!」
ルシファーは全身に重力を感じ、動けないでいた。指一つ動かせない事にルシファーは歯をギリギリと食い縛る。
「あなたはこの世界に存在してはいけないのです!!」
「実の弟に酷い言葉を浴びせますね!! 姉さん!!」
テンジンは背中から白色の羽根を生やしその二枚の羽根が光だすと、力が凄まじいのか部屋中がひどく揺れる。
「ここで死になさい!! ルシファー!!」
テンジンの九本の尾が逆立ち、二枚の白き両翼から特大の光の光線が放たれる。
「アハハハ!!」
ルシファーは演技をやめて重力を自力で解くと、赤色の剣の一振りで光線を消した。
「そんな……。 ゲホッ!! ゴホッ!!」
テンジンは力を使いすぎたのか口から血を吐くと床に両膝をついた。
ルシファーは近付くとテンジンに向かって言葉を発した。
「ラグリスを復活させてもらうかわりに、姉さんを殺すか操ろうと思ったのですが、交渉は決裂みたいですね。なら、こっちは好きにさせてもらいますよ」
「まち──!!」
テンジンが言葉を言い終わる前にルシファーは姿を消したのだった。
「これは、早急に対処する必要がありますね」
テンジンは口の血を拭うとすぐに召集を開くため亡骸の保管室を後にした。